なぜ、ゲームが終わらない?サービス終了時間は、もうとっくに過ぎてるのに。
なぜ、NPC達が勝手に動いている?まるで、魂が入ったかのように。
なぜ、コンソールがでない?これでは、運営に連絡もできない。
なぜ、自分の身体全体に、感触や触感などの感覚があるのか?まるで、自分の身体がゲームの身体と合体したような感じに。
そして…
なぜ、NPC達は、自分達にしがみつきながら泣いているのだろうか?皆、必死に自分達を引き止めようとしている。
行かないで下さい。
ログアウトなんて言わないで下さい。
私達を置いて行かないで下さい。
私達、もっと頑張りますから、見捨てないで下さい。
モモンガもたっちもペロロンチーノもヘロヘロもウルベルトも、自分達の置かれている状況に理解が追いつかない。
だが…
1つだけ、理解できる事があった。それは…
自分達はまだ、このナザリックに居る
「状況を整理しよう。」
ギルド長は、NPC達が居なくなった玉座の間でギルドメンバーに言った。
皆、いろいろありすぎて疲れている。
先程まで、NPC達を落ち着かせるのに奮闘していたからだ。
〜1時間ほど前〜
ギルド長であるモモンガがNPC達をなだめ、説明する。
「ナザリックに異常事態が起きた事を察知したため、帰るのは中止にする!」
と。
すると、NPC達の表情が変化する。
主人達が居なくならないですんだ喜びの顔と、
異常事態という言葉に緊張の顔をする。
「セバス!」
「はっ!」
「ナザリックの外にでて、周囲の偵察を命ずる。なるべく、戦闘は避けるように。」
「畏まりました。では、行ってまいります。」
セバスが玉座の間から退出する。
「そして、アルベド、シャルティア、アウラ、マーレ、コキュートス、デミウルゴスはここに残れ。少し話がある。話が終わるまでは、代理でプレアデス達が各階層の守護。他の者は持ち場に戻り、警戒レベルを最大にして警備にあたれ!」
「「「「「はっ!」」」」」
名前を呼ばれた、各階層の守護者達だけが残り、他の者達は玉座の間から退出する。
守護者統括の役割をもつアルベドが代表して質問する。
「それでモモンガ様、異常とはどのようなものですか?」
「う…うむ。それはだな…」
返答に困るモモンガ。
自分ですら、その異常を把握できていない。
チラッとギルドメンバーを見るが、皆も同じ状況だ。
すると…
「モモンガさん、ちょっといいですか?確認したいことがあるんですが…」
ウルベルトが少し前にでて言う。
「何でしょうか?」
すると、ウルベルトが後ろにいた、たっちの方を向く。
「たっちさん、盾はもってますか?」
「盾?たしか…ランクの低いやつならもってるが…」
と、さも当たり前のように、何もない空間に黒い穴があき、そこにたっちが手を突っ込んで盾を取り出す。
みんなが驚く。
「え!?たっちさん、今のなんですか!?」
「どうやったんです?教えて下さい!」
みんなの驚く顔を見て、たっちも自分がしたことに驚く。
「なんだコレ!?今、どうやった!?」
至高の御方達のやり取りをNPC達が不安気に見ている事も気づかず、彼らは続ける。
ウルベルトも少し驚いていたが、すぐに冷静になり、空間に手をかざす。すると、ウルベルトの手の前にも黒い穴があき、ウルベルトが手を突っ込んでポーションを取り出す。
「なるほど。こうゆう仕組みですか。」
「ウルベルトさんどうやったんです!?」
モモンガが問う。
「あー…モモンガさん。ポーション持ってます?」
「え?あっ、ハイ。持ってますよ。」
「どうしてわかるんです?見たところ、モモンガさんの衣装にポケットらしいものが見当たらないのですが。」
「ん?あれ!?なんでわかるんだろ?……まさか…わ!できた!アイテムが取り出せました!」
モモンガも成功する。
モモンガ曰く、どうやら何を所持しているかが頭の中に鮮明に出てくると言う。
所持しているアイテムを想像しながら手をかざすと、そのアイテムを取り出せる仕組みらしい。
ペロロンチーノとヘロヘロも、モモンガの説明を受けて実践する。
「お!出た!武器も取り出せましたよ!」
「素材アイテムもOKみたいですね。」
「とりあえず、自分の所持品が取り出せる事がわかりました。えーと、話が逸れましたが、たっちさん。盾を構えて下さい。」
「え…こ、こうか?」
たっちが盾を構えて防御の姿勢にはいる。すると…
「ファイヤーボール!!」
「えっ!?」
「なっ!?」
突如、ウルベルトがたっちに向かって魔法を唱える。
出てきた火球がたっちの盾に当たって飛び散る。
「熱ぅ!?アツアツアツっ!?おい!ウルベルト!何の真似だ!?殺す気か!貴様ぁ!」
「熱つっ!たっちさん、大丈夫ですか!?」
「ウルベルト様!?どうなされました!?お気を確かに!」
ギルドメンバーとNPC達が慌てる中、ウルベルトだけが冷静だ。
「やはり…そういう事ですか…」
「ウルベルト!どういうつもりだ?わけをはなせ!…っ…少し火傷した…」
「たっちさん!?大丈夫ですか!?火傷、見せて下さい。」
「ん?ああ…ココだよ。」
モモンガがたっちの身体に触る。
「アダだだだぁっ!?ちょっと!?モモンガさん!?あなたが触れると痛いぞ!?」
「えっ!?そんな強く触ってないですよ!?」
「…もしかして、ネガティブタッチ発動してません?あれって、触った相手に継続ダメージを与えるスキルでしたよね?」
「そんな!パーティー設定をした味方には効かないハズです!FF(フレンドリファイア)なんて、ユグドラシルにはありせんよ!?」
「ひとまずたっちさん。さっきはすみませんでした。火傷、痛みますか?」
「あ…ああ。少しだけな。」
「これ。使って下さい。」
ウルベルトがたっちにポーションを投げる。
ギルドメンバー達が驚く。
たっちと仲が悪いあのウルベルトが、たっちにポーションを渡したのだ。しかも謝りながら!
「え!?あ!す…すまん。ウルベルトさん。」
「なに驚いてるんですか?私達、仲間でしょ?」
「お、おう…」
たっちは、ウルベルトの意外な一面を見て、不思議そうに思いながら、ポーションを飲む。
たっちの火傷がみるみる治っていく。
それを見たモモンガが安心する。
「良かった。ポーションはちゃんと効くようですね。」
「そのようだ。もう痛みはない。助かったよ、ウルベルトさん。」
「いえいえ。元はと言えば、私のせいですから。」
「そういえば、なぜたっちさんにファイヤーボールを撃ったんです?」
ヘロヘロが、皆が思ってる疑問を問う。
「なぜって、異常事態の原因を探るためですよ。そして、その原因がわかりましたよ。」
「え!?ホントですか!ウルベルトさん。」
「本当でございますか!?ウルベルト様!」
ウルベルトは、NPC達の居る方向を見ながら言った。
「どうやら私達は、[弱体化]してしまっているらしい!」
「ええっ!?」
「んなっ!?」
皆が驚く。とくにNPC達は、ありえないとばかりに狼狽えている。
(至高の御方達が、弱体化!?)
「ウルベルト様!弱体化とは、どれほどまでなのでしょうか?」
「まず、防御面かな。今までは、どんなに威力の高い攻撃でも、痛みは感じなかった。第3位階魔法のファイヤーボールなんか、なんとも思わないほどに。だが今は、そのファイヤーボールですら、危険だと感じてしまった。たっちさんの慌てぶりをお前達も見ただろう?」
「なんと!そこまでヒドイ弱体化を…」
「あっ!ウルベルトさん!まさか私を実験台がわりに試したのか!?」
「そうですよ。」
「どうりで優しかったわけだ!実験台にするなら、最初から言って下さいよ!」
「あれは自然な流れでしょう?回復ポーションが効くか、確かめる事もできましたし。」
「効かなかったら、どうするつもりだったんだ?」
「回復魔法とか、他の手段を試すつもりでしたよ。」
「ああ…そうか!私の感じた違和感はそれか。」
今度はモモンガが喋り出す。
「弱体化と同時に我々は記憶の一部も弄られたようだ。」
「本当でありんすか!?モモンガ様!」
「ああ…。道具の出し方や使い方などの基本的な事が上手くできないし、忘れかけていたりするのだ。」
本当は、この異常事態のせいでいろいろ仕様が変わったせいなのだが、NPC達に説明しても理解できないので、誤魔化すための嘘をつく。
「なるほど…先程からいろいろ試されてるのは、忘れた事を思い出すためだったのですね!」
デミウルゴスが納得する。
アルベドや他の守護者達も、今までの至高の御方達のやり取りの原因を知って安堵する。
「下僕たちよ。見苦しい所を見せてすまなかったな。」
「と、とんでもごさいません!むしろ、至高の御方の皆様がそのような状態になっていた事に気づけなかった私達の失態でもあります。この失態、統括である私の命で償いを!」
「ま!?待てアルベド!お前の忠義の高さは理解した。お前の全てを許そう。それに、私以外のギルドメンバー達も察知できなかったのだ。お前達は悪くないぞ。」
「なんと!?私達、守護者達の失態をお許しになってくださるのですか!?なんと、お優しい…。我ら守護者一同、全霊をもって忠義に励みます!」
「お、おう。よろしく頼むぞ。」
「「「「「「はっ!」」」」」」
「モモンガ様、ただいま戻りました。」
いいタイミングでセバスが帰還してきた。
「セバス。調査の結果はどうだ?なにか、見つけたか?」
「はっ!申し上げます。ナザリックの周囲に異変が
「草原だと!?」
「ナザリックごと転移とか、ヤバすぎじゃね!?」
「外にまで異常が起きてたのか…」
「なにがなんだか…わからなくなってきましたね。」
「もうなんでもアリな感じですね。」
ナザリックが別の場所に転移したという事実に、皆が困惑する。
「とりあえずだ。今はもう深夜だ。周囲の状況がわからない以上、迂闊に行動するのは危険だ。どんな敵がいるかもわからんしな。明日の昼、皆で集まって相談するとしよう。守護者達は全員持ち場に戻り、最大警戒レベルで警備に当たれ。アルベド、プレアデスを呼び戻し、9階層の警備にあたらせろ。私達も少し疲れたので、後で自室に戻る。よいな?」
「はっ!畏まりました。後で警護の者を呼び、そちらにむかわせます。」
NPC達が玉座の間を去る。
モモンガ一行は、ようやく落ち着ける時間を得たのだった。
そして、現在。モモンガ達プレイヤーは、得られた情報を整理していた。
1.魔法やスキル、アイテムは問題なく使える。
2.FF(フレンドリファイア)が可能である。
3.自分達の身体に痛覚がある。
4.ナザリックがまったく知らない土地に転移している。
5.NPC達は、自分達に絶大な忠誠を誓っている。
「これって、やっぱり…ゲームが現実になった。という事なんでしょうか?」
モモンガが、誰もが考えた事を言う。
「……」
誰も答えない。信じられないと思うのが当然である。
すると、ウルベルトがとんでもない事を言う。
「皆さんは…現実に戻りたいと、思いますか?」
「……!」
それはモモンガにとって気になる質問だった。
1人暮しの自分は、このままナザリックに居てもいいと考えていた。
しかし、他の皆はどうなんだろうか?
「私は残りますよ。ナザリックやNPC達を見捨てるなんてできませんよ。」
「流石モモンガさん。私も同じ考えです。現実に戻っても、クソッタレな人生しかありませんし。」
「僕もです。現実に戻ってもブラック企業に通うだけの男ですし。それに、コッチならメイド達に囲まれながら、社長気分が味わえるんですから!」·
「エロゲができないのが残念ですが、俺も残ります。だってシャルティアとイチャイチャできますから!」
それぞれが自分の思いを言う。
「たっちさん。あなたはどうなさるんです?たしか、奥さんと子供がいるんでしょ?」
ウルベルトが遠慮なく聞く。
「残るよ。」
たっちが言う。
「意外です。たっちさんは、帰るつもりかと思ってたんですか…」
「本来なら、帰ると言ってたでしょうね。でも、生憎今、妻とケンカして帰りづらいんですよ。仕事と家族、どっちとるの?って聞かれて…」
「あちゃー。仕事って言っちゃったんですね。」
「フッ!ざまぁwwww」
「ウルベルト!貴様ァ!さっきから私に恨みでもあるのか!?」
「まぁまぁ、まぁまぁ!二人とも落ち着いて!みんなが残ってくれるだけで私は嬉しいですよ。ナザリックに活気が戻った感じがして。」
皆が残る。それだけでもモモンガにとっては最高だった。
「さて、皆さん残るという事ですし。明日から忙しくなりますよ!明日に備えて、今日はもう寝ましょう。」
「そうですね。俺もなんとなく眠くて。」
「僕もですね。」
「私も。」
と、ペロロンチーノ、ヘロヘロ、たっちが言う。
皆で歩きながら、玉座の間の出入り口に向かう。
「睡眠かー。モモンガさん、眠気あります?私、眠気も食欲もあまり感じないんですよねー。」
「あー…実は私もです。食欲も眠気も感じないんですよねー。…アンデッドだからかな?」
ウルベルトは悪魔、モモンガは骸骨という、睡眠や疲労感を感じない種族である。
「そういえば、モモンガさんって骸骨なのに声とか出せるんですね。不思議です。仕組みが気になりますね。」
ヘロヘロさんがコチラを見る。
言われてみれば、ここにいる皆は異形種だ。
現実世界では人間なのに、身体に違和感を感じない。
最初からこの身体で産まれたかのように、馴染んでいる。
皆に聞くと、皆も同じ感覚だった。
「ヘロヘロさんが1番、人間離れした身体ですけど、スライム種って、どうなんです?」
「んー…なんと言うか、僕の場合、身体全部が動かせる気がします。慣れれば、変形できる気がしないでもないですね。」
「ペロロンチーノさんはバードマンだよな。背中の羽は、うごかせるのか?」
「ええ。慣れれば、飛行できる気がします。そういうたっちさんも、昆虫系の異形種ですよね?羽はあります?」
「バッタ種だから、飛べるといえば飛べる…のか?」
「ウルベルトさんは、頭がヤギ?だから、角って寝転ぶのに邪魔なんじゃぁ…」
「あー、そうだった。角の存在忘れてた。横向きで寝れないな。これじゃあ。」
皆、自分の異形種の特徴や特性を調べつつ歩く。
今まで気にしてなかったせいか、気付くと気になって仕方ない。
「そういえば、勝さんってデュラハンでしたよね。頭が無い感覚ってどうなるんでしょうね。」
モモンガの発言で話題が勝とデュラハン種の話になる。
「頭が無い…それってヤバくね?」
「目の位置とかどうなるんでしょうね。」
「鼻も耳もないから臭いも音も感じないんじゃあ…」
「プレアデスのユリ・αは頭ありますけど…」
いろいろ言いながら、玉座の間のドアに近づく。
すると、ドアが開き、アルベドが慌てて入って来た。
後少し遅かったらぶつかってたかもしれない。
「これは!し、失礼をモモンガ様!」
「あ!いや!アルベドこそ大丈夫か?何やら慌ててたようだが?」
「はっ!?そうです!皆様にご報告が!」
「なにかトラブルでも?」
「それが…ログハウス勤務のユリ・αから連絡があり、ログハウスで勝様を発見しましたと報告が!」
「えっ!?勝さんが居たの!?」
「ログアウトしてなかったのか!」
「まさかずっとログハウスに居たなんて!」
「なら、すぐに呼びましょうよ。」
「NPC達も勝さんが来たこと聞いたら喜びますよ。」
と、歓喜の声を上げる。
しかし、アルベドの顔が暗い。
アルベドが恐る恐る言う。
「恐れながら勝様は今、声をかけても反応が無く、意識不明の状態だそうです!」
「なんだって!?それは本当か!?」
「はい。ユリ・αが、寝ていた勝様に声をかけて起こそうとしましたが、ピクリとも動かず。近くに居たブラックに聞いたところ、深夜の0時頃から急にベッドに倒れ動かなくなったと…」
「深夜0時…!私達が異常を感じた時からか!」
「まずい!早く行きましょう!ログハウスへ!」
指輪の力でナザリックの表層の入り口まで転移する。
アルベドは指輪が無いため、ついて来れない。
ログハウスまで急いで行くと、玄関の所にユリ・αが立っていた。
「コチラです、モモンガ様!」
ユリ・αがログハウスの扉を開ける。
中に入ると、部屋の奥のベッドに勝が倒れている。
勝のNPC達が、起きない主人に必死に呼びかけている。
「ご主人様!起きて下さい!ご主人様!」
「ガウッ!ガウウゥ!」
「ガウガウッ!ガウーッ!」
勝のNPC達には、ある共通の設定がある。
それは、勝と以心伝心し、言葉無しでも連携がとれるという。要は、勝の意思がわかるのだ。
ただ、ブラックだけが人語を話せ、他の2人は話せない。という設定になっている。
モモンガとペロロンチーノが勝に駆け寄る。
「勝さん!勝さん!しっかりして下さい!」
「勝さん?大丈夫ですか!?」
その2人の後ろから、たっち達が心配そうに見つめる。
「勝さん、大丈夫ですかね?」
「意識不明ですか…まさか…頭が無いせい…とか?」
「まさか!?ユリ・αだっけ?勝さんが意識不明だと、言ってたそうだが、なぜわかる?」
たっちがユリ・αに問う。
「はい。勝様は私と同じデュラハンでアンデッド種です。アンデッド種は睡眠を取らないため、寝る必要がありません。しかし、頭が存在するデュラハンは、気絶などをする事はあります。声をかけても反応が無いという事は、勝様が何らかの原因で気絶状態になってると思われます。頭が無い勝様が気絶する、というのは些か謎ですが、至高の御方の御身体、私達とは仕組みが違うのかもしれません…」
「気絶か…頭の感覚が無くなったのが原因ですかね?」
「可能性はありますね。0時という時間は、私達の身体に異常が出たタイミングでもありましたし…」
「至高の御方の身体に異常…ですか?」
ユリ・αは[弱体化](仮称)の話を知らない。
すると、アルベドとデミウルゴスがログハウスに入ってくる。息を切らしているとこを見ると、走って来たのだろう。
「勝様が意識不明とは、本当ですか!?」
「やはり、勝様も弱体化の影響を!?」
アルベドとデミウルゴスも加わり、事態解決のための方法を模索する。
「魔法や呪いによる状態異常の可能性は?」
「解除系の魔法やアイテムを使用してみたが、特に変化はないな。」
「電気ショックはどうかしら?身体に刺激をあたえてみては?」
「勝様はアンデッドです。心臓が動くのとは訳が違うと思いますが…」
いろいろ案を出し、試せるものはできるだけ試すが効果はない。
すると、後ろで様子を見ていたブラックがモモンガに話しかけた。
「モモンガ様。あの、少しよろしいでしょうか?」
「何だ?ブラック。」
「勝様が…ご主人様が気絶する前、気になる事を言っていたのですが…正確には、ご主人様の心の意思なんですが…」
「気絶する前…か。なにを言っていた。」
ブラックは言う。
勝さんがもう時期ユグドラシルに居られなくなる事。
ずっとナザリックに居たい、と言っていた事。
皆と別れたくない、と言っていた事。
1人になりたくない、と言っていた事。
ブラックが言った事に、プレイヤー一同は沈黙する。
モモンガにとっては、全てに賛同できる思いである。
しかし、モモンガ以外の4人にとっては、賛同はできても口には出せない。
彼らは一度、ココを離れたから。
あるいは捨てたからだ。
もしくは、もう終わるものだと、見限りをつけていたからか。
ブラックは涙を流しながら問う。
「勝様は…ご主人様はもう…戻って来ないのですか?」
少し前に、玉座の間でNPC達に言われた事を思い出す。
行かないで…
置いて行かないで…
見捨てないで…
「違う…違うぞ、ブラック!勝さんは絶対戻って来る。お前達を残して去る人じゃないぞ!」
「モモンガ様…でも勝様は…」
「そうだ…勝さんが、こんな可愛いブラックちゃん達を置いて行くわけない!」
「勝さんは毎日ログインして会いに来てたんだろ?なら、絶対帰ってくるさ!」
皆がブラック達を励ます。
そして、未だ目を覚まさない勝に言う。
「おい!勝さん!いつまで寝てるつもりだ!アンタの可愛いNPCが、主人であるアンタの帰りを待ってるんだぞ!いい加減起きろ!戻って来い!」
「勝さん!こんなに可愛いブラックちゃんやブルーちゃんやレッドちゃんを放ったらかしにするなんて許さないぞ!」
「ご主人様!私達、ご主人様が私達の事をだいじにしてくださってた事覚えてます!だから、戻って来て下さい!ご主人様!」
………。
…………………。
…………………………………。
……誰かの声が聞こえる……
懐かしい声も聞こえれば、あまり聞いた事がない声もする。
だれの声だろう。でも、何度も会っている気もする。
モモンガさん?ペロロンチーノさんも居る?
でも、時折聞こえる女の子の声は…誰だ?
わからない…わからない…が、これだけはわかる。
この子には会わないといけない気がする。
忘れてはダメな気がする。
会わないと…起きないと…
……………………………………。
「モモンガ様!勝様の手が!?動いています!」
「起きたのか勝さん!?」
勝の手が少し上がり、ブラックの方に動く。
なにかを掴むような動きをしているが弱々しい。
が、手以外は以前動かない。
「ブラック!勝さんの手を握って呼び続けるんだ!」
「ブルーちゃんとレッドちゃんも!反対の手を!」
「ご主人様!起きて下さい!私達はココにいますよ!」
………………………………。
さっきよりも声が強く感じる。
女の子の声は1人だが、他にも感じる。
後2人…そう、後2人いるはずだ。
忘れてはいけない大切な存在。
毎日会うのが楽しみだった。
毎日接するのが嬉しかった。
会えなくなるのが嫌だった。
別れるのが辛かった。
もう1人になりたくない。
みんなに会いたい
もう一度、みんなに!
…………………………。
デュラハンの身体がムクリと起きる。
周りをキョロキョロと確認するような動作をする。
次に自分の身体を見つめたり、ぺたぺた触っている。
「勝さん…?」
「ご主人様…?」
皆が心配しながら見つめてくる。
状況がわからない。
しかし、これだけはわかっている。
みんなが自分の事を心配してくれていた。
そしてまた、みんなに会えたのだ。
ゆっくりと、ブラックの頭に手を乗せ、優しく撫でる。
それだけで彼女は理解する。
涙を流しながら、嬉しそうに言う。
「おかえりなさいませ、ご主人様。」
その瞬間、側にいた三姉妹が勝に抱きつく。
みんな、嬉しそうに喜びあっている。
しばらくの間、ログハウス内は感動に満ちていた。
目覚めた勝は、モモンガから今まで起きた事を説明された。
たっち、ウルベルト、ペロロンチーノがサービス終了直前に来た事。
サービス終了時間を過ぎても強制ログアウトにならなかった事。
ゲームが現実になった事。
ナザリックが知らない場所に転移した事。
NPC達が勝手に動くようになった事。
今まで勝が意識不明だった事。
あまりに信じ難い事だらけだが、実際に動き回るブラック達を目にして、その全てが本当だった事が知れる。
「ご主人様は混乱なさってますね。一度休まれた方が良いのかもしれませんね。」
「そうだな。いろいろありすぎて、私も少しつかれた。みんな、そろそろナザリック内部に戻ろうじゃあないか!」
そう行って皆、ログハウスを出る。
【とりあえず、私も自室に戻ろう…】
みんなに続いて自分も外にでる。
そして見る。空に浮かぶ、綺麗な夜空を。
あまりの美しさに、となりにいたモモンガの袖を引っぱりながら、空を指さす。
「すごく綺麗だ。これが、ブループラネットさんが作ろうとしていた夜空なんだな。」
他のギルドメンバーも空を見上げ驚きの表情をする。
モモンガ達が住む現実世界では、環境汚染が原因で綺麗な夜空は見れないのだ。
すると、勝がブラックに、こっちにくるように手招きする。
「なんでしょうか?ご主人様。…えっ!?ドラゴン形態ですか?わかりました。」
突如、ブラック、ブルー、レッドが大きなドラゴンへと変身する。
「勝さん!?何してるんですか!?」
「ご主人様は私達の上にのって、夜空を飛び回りたいそうです。それに、今ならモモンガ様達も一緒に乗せて飛び回りたい、とご主人様は言ってます。」
「ドラゴンに乗るんですか!?大丈夫ですか、勝さん!?」
「ご主人様は、私達に乗れる気がする!と、自信がお有りのようです。」
NPC達が動くという事実を聞いて、密かに夢に思っていた事が実現できる!
そう、ドラゴンの背中にのって一緒に飛ぶという夢が叶う。
勝はウキウキしている。
「うそぉ、マジで!?じゃあモモンガさん、レッドちゃんに一緒に乗りましょう!」
「僕もドラゴンに乗りたいけど、スライムだからなぁ…」
「なら、私が支えましょう!勝さん!ブルーに乗せて下さい!私もドラゴンに乗ってみたいです!」
ブラックに勝が、ブルーにたっちとヘロヘロが、レッドにモモンガとペロロンチーノが乗り、空へと飛び上がる。
みんな子供のように、歓喜の悲鳴を上げて喜んでいる。
ドラゴン達がくるくると空を旋回する。
その様子を地上からウルベルトとNPC達が見上げている。
「ウルベルト様は、ドラゴンに乗らなくてもよかったのですか?」
「ん?私かい?そうですねぇ…もう少し、この光景を眺めてたいですねぇ。みんなが子供のようにはしゃぐ姿を綺麗な夜空と共に見る機会なんて、そうそうありませんからねぇ。」
「ウルベルト様が……いや、至高の御方の皆様が望むのなら、この宝石箱のような空を、すべてを!ナザリックの全戦力をもって手にいれてごらんにいれますが?」
「ハハッ、それではまるで、世界征服じゃあないか。…しかし、世界征服か…。ここがもし、ユグドラシルとは違う世界であるなら…それも面白いかもな…」
ウルベルトの言葉に、デミウルゴスが嬉しそうに顔を上げる。
「ま、それはまだ先だな。この世界について、いろいろ調べる必要があるからな。世界征服はその後にでもするさ。おーい、勝さーん。私もブラックに乗せて下さーい。」
6人の至高の御方達が、嬉しそうに飛び回ってる光景をNPC達が見上げる。
(至高の御方の皆様が、お喜びになるのなら、この世界を欲するのなら!私達の手で叶えて差し上げなければ!全ては、至高の御方達のために!)
NPC達がそんな決意を固めてるとも知らずに、
プレイヤー達は美しい夜空の下ではしゃいでいるのだった。
いよいよ主人公が目覚めました。
ここから本格的にストーリーを盛り上げていくつもりなので!たぶん(笑)
更新はやや遅めです。
なぜなら私も社会人だからね。
特に忙しくなる時期だからね!
のんびりとストーリーを追加していくつもりです。