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「お待たせ致しました、ウルベル様、モモン様。」
空からゆっくりと、モモン達の前に着地したデミウルゴスは、片腕を胸に当てながら、ウルベルとモモンにお辞儀する。
「わざわざ呼び出してすまないな、デミウルゴス。」
スクロールの素材集めで忙しいはずのデミウルゴスに、モモンがねぎらいの言葉を言う。
「何をおっしゃいますか、モモン様!至高の御方のご命令であれば、何処へなりとも馳せ参じるのが、我々守護者の務めでございます。モモン様は、ただご命令するだけでよろしいのです。」
ナザリックの守護者全員が同じ事を思っていると、言わんばかりの忠義を込めてデミウルゴスが言う。
その忠誠心の高さに未だに慣れてないモモンは、若干戸惑いながらも、その忠誠心を受け取る。
「そ、そうか。お前のその忠義、私は嬉しく思うぞ、デミウルゴス。」
「勿体なきお言葉でございます!それでモモン様、今回はどのような用件でごさいましょうか?」
「うむ。この覆面男をナザリックに連行してもらいたい。後、死体の回収もな。」
モモンがそう言いながら、転がっている死体と捕まえた覆面男を指さす。
「畏まりました。ところでモモン様、この人間と死体は、どのような物で?」
「愚かにも、勝さんの暗殺を企て、襲撃してきたスレイン法国の者達だ。」
「な、なんと!?勝様の暗殺を!?」
デミウルゴスが驚愕した表情をする。
「ああ。人間のフリをしていた勝さんこと、リュウノさんを背後から刺し、重症を負わせたのだ。こいつ等は。」
「リュウノ様が重症!?リュウノ様はご無事なのですか!?」
「落ち着きなさい、デミウルゴス。リュウノさんなら大丈夫ですよ。」
ウルベルが、狼狽したデミウルゴスを落ち着かせる。
「も、申し訳ございません。ウルベル様。」
デミウルゴスが姿勢を正す。
「3人程逃げられてしまったが、この覆面男を尋問して情報を得るつもりだ。第五階層の氷結牢獄に入れておけ。」
「畏まりました、モモン様。この人間の尋問は、私が?」
「いや、私とウルベルトさんとでやる予定だ。私達がナザリックに帰還してから尋問を行うつもりでいる。それまで、覆面男は絶対に死なせるな。あと、パンドラズ・アクターを一時的にナザリックに帰還させるので、回収した装備品は、パンドラズ・アクターに渡して欲しい。」
「はっ!では、下僕達を呼んで参ります。」
デミウルゴスが立ち上がり、後ろを向く。
すると、モモンが呼び止める。
「おっと、言い忘れるところだった。このカルネ村の住民達は、一部を除いて眠っているので、こっそりやる必要はない。襲撃された時にウルベルトさんが、村人達が起きてパニックにならないように、眠りの魔法をかけていたらしくてな。まだ起きていた一部の者達以外は、朝まで起きないそうだ。」
「承知致しました。ですがモモン様、1つ質問が。」
「なんだ?デミウルゴス。」
「その、まだ起きている者達に見られても大丈夫なのでしょうか?」
「安心しろ。そいつ等は、リュウノさんが自ら正体を明かすほど信頼している人物達だ。お前達を見ても、『リュウノさんの…首なし騎士デュラハンの知り合い』というふうに認識してくれるだろうさ。回収が全て終わったら、次の指示があるまでデミウルゴスもナザリックの守護をするように。」
「畏まりました。では、作業を始めさせていただきます。」
「うむ。さて、ウルベルトさん。パンドラズ・アクターがナザリックに帰還している間、リュウノさんの新拠点にガーゴイルを手配してもらえませんか?」
「構いませんが、理由は?」
「スレイン法国は『首なし騎士デュラハン』を狙っていました。という事は、
スレイン法国の集団が襲撃してきた時、時間稼ぎの為とはいえ、首なし騎士デュラハンは王都に帰った、という
人間化していたリュウノが、首なし騎士デュラハンを名乗ったものの、敵がそれを完全に信じたと判断するのは早計だ。何より、明日のプレート授与式でバレる事が確定している。
「リュウノさん自身の召喚モンスターに守らせればいいのでは?というか、まずリュウノさんに確認するべきだと思いますが?」
「う…うむ。そ、そうですね。先にリュウノさんに確認を取るべきでしたね。」
バツが悪そうな態度のモモンを見て、ウルベルがニヤニヤする。
「もしかしてモモンさん、告白まがいなことをした後だから、リュウノさんと会話しづらいんですか?」
「ち、違いますよ!?何言ってるんですか!」
図星だったのだろう。モモンが慌てて否定してくる。
「フフッw仕方ないですねぇ。私からリュウノさんに、後で確認を取っておきますから、安心して下さい。ギルド長。」
「お、お願いします…。私、竜王達と一緒に、周囲の巡回をしてきますね。」
「わかりました。気をつけて下さいね、モモンさん。まだ、油断はできませんから。」
「わかっています。では。」
モモンが立ち去ってから、ウルベルはリュウノに
すると、繋げた瞬間に、リュウノの声が聞こえる。
「──スレイン法国をどうするかって?そんなの──」
リュウノが誰かと会話しているようだ。ウルベルは、気付かれないよう、その会話を盗み聞く。
「──滅ぼすに決まってるじゃん。私の忠告を無視して、私を殺そうとしたんだ。自業自得ってやつさ。」
スレイン法国を滅ぼす。
リュウノがそう宣言したのだ。
「──え?───ん〜どのように滅ぼすか、か。…手始めに、大量のアンデッドで攻めて、プレイヤーが居るかどうかの確認と、相手の実力や防衛力を測って見る感じかな。召喚で生み出した戦力なら、失っても私には問題ないし。」
ワールドアイテムのおかげで、リュウノは召喚モンスターを出し放題という状態だ。リュウノが本気を出せば、大量の軍勢を召喚し、国を滅ぼす事など朝飯前である。それどこらか、世界すら制覇可能かもしれない。
「――む!?ダメダメ!!お前達が出撃するのは無しだ。ドラゴンの軍勢だと、首なし騎士デュラハンの仕業ってバレるだろ!王都の異形種の冒険者が召喚したモンスターが国を滅ぼしたなんて噂が流れたら、冒険者業ができなくなる!」
ウルベルは、自分達が冒険者登録をした時に、受付嬢から説明された事を思い出す。
冒険者組合は人々を守るために活動しており、国から独立した機関である。
組合は、国の政治や戦争には加担しない規約があり、それを守ることで国家を越えて活動が可能になっている。
スレイン法国に軍勢を送って滅ぼすのは、完全な戦争行為であり、冒険者である
「──ただでさえ、王国に財宝を寄付したり、カルネ村に義援金を送ったりして、規約違反スレスレの事をしてるんだぞ?王国の政治に影響を与えるような事をしている私が問題ならないのは、国王に認可してもらい、あくまで『国が行った』という状態を作ってもらってるからなんだぞ。」
ウルベルは、リュウノが話していた王都での出来事を思い出す。
寄付金の話は王国側からお願いしてきた事。
規約違反にならないように、王族が手を尽くしてくれる予定らしい。
義援金の話は勝側から持ちかけた話だが、義援金は『国から送られた』という形にする事で、こちらも問題にはならないはずである。国王の直筆の書文まであるので、証拠にもなる。
「アンデッドの軍団なら、首なし騎士デュラハン以外の勢力の可能性も有り得ると、思ってくれるかもしれないだろ?──え?タイミング的に、スレイン法国にはバレる?」
逃亡したスレイン法国の三名から、首なし騎士デュラハンに関係する人物を襲った事が、スレイン法国に報告されているはずである。
その後すぐにアンデッドの軍勢が来れば、首なし騎士デュラハンが送って来た部隊だと思うだろう。
「そこで組織、アインズ・ウール・ゴウンの出番さ!『よくも我が組織の仲間を襲い、我らの活動を邪魔したな!滅ぼしてやる!』と、組織がアンデッドを送ってきたようにすれば、デュラハンのせいにはならない!どうよ?」
ウルベルはほくそ笑む。国にケンカを売る、大義名分ができたからである。
「──え?いつ攻めるのかって?うーん…アインズさんや他のギルドメンバーと相談して決めないといけないから、すぐには攻めないかな。ウルベルトさんとか、世界の1つを支配したいとか言ってたから、即OK出してくれそうだけど、たっちさんが反対しそうでねー…。」
ウルベルも、たっちが反対するだろうなと、思う。
『スレイン法国で暮らす、罪の無い民達まで襲うのは間違っている!』とか、言うだろう。
(なんともくだらない正義感だ。)
悪魔という体になったウルベルにとって、人間に対する感情はほとんどなくなっている。
知りもしない赤の他人の人間がどうなろうと、気にしないで良い、という考えが、当たり前のように出てくるのだ。
「──というか、国を滅ぼすにはどれだけの数が必要なんだろ?ドラゴンなら、数匹で余裕なんだろうけど…うーむ…デミウルゴスに聞いてみるか。知将という設定があるデミウルゴスなら、いい戦術を教えてくれ──む?どうした?バハムート。ああ、モモンさんが来たのか。なら、この話はまた今度な。皆お休み。」
どうやら、リュウノは
おかげで、ウルベルの
ウルベルが、一旦
「リュウノさん。寝ているところすみません。」
「ん〜?ウルベルさんか…。どうしました?」
寝ていたと言わんばかりの演技をしてくるリュウノに、ウルベルはニヤニヤしながら伝言を伝える。
「──という訳なんですが…」
「ああ、それなら大丈夫です。
意外にも、拠点の防衛はしっかりやっていたらしい。
「そうでしたか。ところで、今回、スレイン法国に狙われた訳ですが、リュウノさんはあの国をどうするつもりでいます?アンデッドの軍勢でもけしかけるつもりで?」
「え!?いや…それはまだ考え中かな。プレイヤーが居るかもしれないのに、そんな迂闊な事、できませんって。ははは。」
「本当ですか〜?ま、私で良ければ、デミウルゴスと一緒にいつでも相談に乗りますよ。フフッ。」
「あ、ありがとうございます。で、では、私は眠いので、失礼します!お休みなさい!」
「フフッ。これは…なかなか、いい流れですねぇ…。デミウルゴスに、『世界征服を本格的に行う』事を伝えておきましょうか。スレイン法国には、その礎になってもらう事も…フフフ…。」
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──カルネ村防護柵外周──
「ご主人様は優しすぎる。そう思わない?ウロボロス。」
「まあ、それがご主人様の良いところなんだろ。」
ティアマトとウロボロスが一緒に歩きながら、村の外周を巡回している。
「私だったら、怒りにまかせてスレイン法国をぶっ潰しに行ってるわ!」
ティアマトがシャドーボクシングのような動きをする。
「ははは!悪を司る、お前らしい発想だな。」
「でも、ご主人様にご迷惑をかける訳には行かないし…。」
「なら、『姿を見せず』にぶっ潰せばいいだろう。」
「はぁ!?どういう意味よ?」
「お前の魔法、<
「できるけど〜、私を見た人間達が慌てふためきながら逃げ惑う光景を間近で見たいのよ。」
「くははははは!だろうな!わかるぞティアマト。我も同じだ。人間達を踏み潰しながら、我が闇のパワーで恐怖させ、さんざん弄んだ後、最後は即死魔法で一瞬で終わらせたい!そう思ってしまう。」
「わかるわかる!私の水圧で潰れていく人間達の哀れな姿を見ながら、人間達の宝を奪う!正しく、私達ドラゴンにのみ許された行為よねぇ。人間なんて、ご主人様以外アリ以下だわ。」
悪属性のドラゴン、特にティアマトといったドラゴン達から見れば、人間はドラゴンに宝を貢ぐだけの存在でしかない。宝を貢げない人間なんぞ、生きてる意味すらないと判断し、容赦なく殺すのだ。
「ああ!でも…逆に、ご主人様は何故あんなにも
ティアマトが、神にお祈りするシスターのようなポーズをする。
「それは我も同意する。ああ!我が主人を、
「あら…私の目の前でそんな事を堂々と言うだなんて…殺されたいの?ウロボロス。」
ティアマトの言葉には、途中から殺意が混じっていた。
「おっと!口が滑っただけだ。気にするな。というか、お前も同じ思いではないのか?ティアマトよ。」
「愚問ね。私は
「くははははは!言うではないか、ティアマトよ!しかし、主人の意に反すれば、お前は消されてしまうぞ?」
竜王同士の争いは、主人であるリュウノが禁止している。問題を起こすようであれば、強制的に魔力のパスを切り、消滅させるから。と、言われている。
「そこなのよねー。ご主人様が絶対的すぎて、逆らえないというか、ついつい従っちゃいたくなるの!ご主人様の命令なら、どんな事だってやっちゃうわ!」
「我もだ。いいや、我らだけでなく、他の竜王達も同じだろうさ。逆らおうと思えば逆らえるのに、何故か主人の命令に
ウロボロスの言うとおり、リュウノの命令に『強制的な支配力』はない。だが、リュウノに命令されると、その命令に従う事に『喜び』を感じてしまうのだ。
「でも〜、そんな大切なご主人様を殺そうとしたスレイン法国は許せないし〜…。」
「なら、ご主人様が寝てる間に滅ぼしに行くか?」
「命令に反するわよ?私達は、カルネ村を警護して、ご主人様を安眠させるのが目的なのよ。」
「ああ。だから、
「なるほど。アンタ、考えるわね!」
「だろう?ここからスレイン法国までなら、カッ飛ばせば片道約3時間で着く。スレイン法国を滅ぼしてから、朝までに戻ればバレず済むさ!」
「いい考えね!でも、スレイン法国に行くのは私だけよ。アンタは、スレイン法国に存在を知られているから、ご主人様の仕業だとバレるわ!」
「大丈夫か?王都の人間達に1番姿を見られておるのがお前なんだぞ?お前がスレイン法国を滅ぼしたなんて噂が流れて見ろ!大問題になるぞ!」
「大丈夫よ、ウロボロス。私には秘策がある!」
「まさか…第二形態になるつもりか!?」
「当たりー!第二形態なら、誰にもバレないわ!それに、スレイン法国の人間を『全て殺せ』ば、私の姿を見た者はいなくなるし。じゃあ、早速いって来るわ!」
「朝までには戻ってこいよ。ティアマト。お前の不在は、我がテキトーに誤魔化しておくから。」
「ええ、感謝するわ、ウロボロス。さあ、待っていなさい!スレイン法国!この水の竜王たる私が、貴方達を海の藻屑にしてあげるわ!」
ティアマトが翼を広げ、スレイン法国の方角へと飛んで行く。
それを見送ったウロボロスは、ニタニタと笑いながら眺めていた。
「あーあ。行ってしまったか。悪いがティアマト、我も悪竜の一人だと言う事を忘れてないか?」
ウロボロスが巡回の続きを始める。
「ライバルは一人でも少ないほうが楽だからな!主人を我が物にするのは、我だ。お前はせいぜい、主人の敵を少しでも殺して、暴れた罰として主人に消されるが良いさ。」
同じ主人に仕える者同士であっても、欲しい物のためならば容赦なく蹴落としていく。
それが悪竜である。
それはウロボロスだけに限った話ではない。
ティアマト、ウロボロス、ファフニール、リヴァイアサン、青龍・黄龍、シャドウナイト…
そして、ブラック。
これら悪竜達にとって、自分の欲しい物を奪いに来る奴は全て敵である。
一時的に協力関係を築く事はあっても、最後は自分の事しか考えない。
主人であるリュウノが命令しない限りは、彼らは蹴落とし続けるだろう。
「さて…バハムートに報告でもしようか…。善を司る奴なら、ティアマトを止めに行くだろう。ティアマトがスレイン法国を滅ぼし始めるタイミングで止めに入るのがベストか。アイツら2人が争えば、それこそ周辺が更地になるからな。どっちにしろ、スレイン法国は滅ぶし、争いあった2人も消える!一石二鳥だな。クハハハハハハッ!!」
FGOのイベントやってたら、投稿が遅くなってしまった。
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