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まだ国民のほとんどが寝ている時間だった。
起きている人間は、見回りの兵士やお店の営業前の下準備している店員、後は軍関係の施設で働く人間ぐらいである。
スレイン法国のとある市街地にある家で、ある男が寝ていた。寝室の寝具で横になり、睡眠をとろうと頑張っているが、寝つけずにいた。
カルネ村にて行われた、
『首なし騎士デュラハンの暗殺作戦』
その作戦から帰還した漆黒聖典の隊長だ。
彼には国から、つかの間の休息を与えられていた。
隊長は、スレイン法国でも貴重な『神人』と呼ばれる存在なのだが、その存在は秘匿されており、隊長は身分を偽り、一般の国民と同じ生活をして、誤魔化している。
暗殺作戦では、多くの仲間の犠牲を出したものの、首なし騎士デュラハンを名乗る人物の殺害に成功した。その事を、最高神官長に報告した。
「これで、我がスレイン法国が
と、最高神官長は喜んでいた。
たが…
隊長はそう思わなかった。
あの『リュウノ』という女が、
それに、疑問も残っている。
①心臓を刺したのに動いていた。
②口や傷口から出血した血で戦っていた。
③『第八席次』の盾が破損する程の頑強な肉体。
アンデッドなら、心臓を刺しても動けるだろう。
血を操るタレント能力なら、血も操れるだろう。。
破損した盾は、防御系あるいは装備破壊系の武技や魔法を使っていたのだろう。
いろいろ説明はつく。しかし、あの『リュウノ』という女が
生還した陽光聖典の情報では、
①首なし騎士デュラハンには
②ドラゴンを三体連れていた。
③
④
⑤赤と黒の禍々しいオーラと凄まじい殺気を放つ。
⑥神を召喚できる。
⑦神より偉い。
⑧天使の羽が生える。
という沢山の情報があったが、リュウノという女はどれにも該当しない。
「やはり、『番外次席』の言うとおり、首なし騎士デュラハンではない人間の女を殺害したのでしょうか?」
そんな事を呟いた直後だった。
大きな衝撃音と振動が起き、隊長の家がガタガタと震えた。
「い、今のは!?」
隊長は、慌てて起きて、窓のカーテンを捲って外を見た。
空から、数個の巨大な水の球体が降ってきて、地上に着弾する光景が見えた。着弾した球体は、着弾地点の建物を跡形も無く全て破壊し、大きなクレーターを作る程の威力だった。
「これは、いったい!?」
隊長が驚愕しながら見ていると、周りの家の住民も同じように窓から覗いて、外の光景に驚いている。
すると、敵襲を知らせる警鐘がなり始める。
それを聞いた隊長は、素早く戦闘装備に着替え、身支度を整えると、外に出た。
大勢の人間達がパニックを起こし、逃げ惑っていた。
「逃げろ!逃げるんだ!」
「必要な物だけ持って、外に出ろ!いそげ!」
「息子を知らないか!?はぐれたんだ!」
「兵士は何やってる!状況を教えてくれ!」
寝間着のまま飛び出した者、貴重品だけでも持って行こうとする者、家族や知り合いの名前を叫ぶ者、近くにいる兵士に状況を聞く者など、大混乱な状態である。
「落ち着いて皆さん!避難所へ!避難所に逃げて下さい!」
隊長は、逃げ惑う人々に、指定の避難所に逃げるよう伝えつつ、軍本部目指して走っていた。
が、隊長が走っていた軍本部へ続く道の数メートル先を、空から突如現れた、水でできた光線が横切っていく。その瞬間、光線が横切った地面が捲り上がるかのように、大量の水が地面から噴き出し、建物や道を呑み込み破壊していく。軍本部へと続く道が崩壊し、瓦礫で通れなくなる。
「今のは何だ!?」
「見ろ!空からまた、何か降って来るぞ!」
逃げ惑う人間達が空を指さし叫ぶ。
隊長が目を凝らし、空を睨む。
まだ日が昇っていない暗い空から、雲煙を纏いながら降ってくる11個の物体が見えた。
「アレは…魔獣!?」
11体の様々な魔獣が、スレイン法国の各地に降り立ち、手当り次第に暴れ始める。建物を破壊し、逃げ惑う人間達や兵士、召喚された天使に襲いかかっていく。
隊長の近くにも、魔獣の1匹が降り立ち、人間や兵士を襲い始める。
「クソ!何がどうなっているんですか!?まるで、悪夢でも見ているようだ!」
隊長は槍を構え、魔獣へと向かって行った。
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大パニック状態のスレイン法国を、遥か彼方の雲より高い上空から見下ろす者がいた。
「さあ!私の可愛い
ティアマトが命令を下す。
水の
『ティアマトの11の怪物』
と呼ばれる、11体の
・双貌の獣『ラフム』
・知恵者『ギルタブリル』
・7つの頭の蛇たち『ムシュマッヘ』
・水蛇『ウシュムガル』
・獅子『ウガム』
・獅子犬『ウリディンム』
・悪霊『ウム・ダブルチュ』
・魚人『クルール』
・人牛『クサリク』
・炎の竜頭蠍尾獣『ムシュフシュ』
・竜獣『バシュム』
60Lv前後の強さを持つ。
子供達が地上に降り立ち、近くにある物や生き物を手当り次第に襲っていく姿が見える。
スレイン法国の兵士や天使は、ティアマトの子供達の処理に忙しく、遥か上空にいるティアマトまで手が回らないでいる。
「貴方達がご主人様を殺そうとしたのが悪いのよ。ま、自業自得なんだし、当然の報いよ!フハハハハハハ!」
ティアマトが、高笑いをしながら愉悦に浸る。
「さて…もう少し荒らしましょうか。
ティアマトの片方の手の指先から、細いビームが射出され、スレイン法国の領土に直線の切り込みを入れる。切り込みが入った地面から水が噴き出し、周囲の物を破壊していく。
もう片方の手の平から、巨大な水球が射出される。着弾地点の建物が水圧で押し潰され、周囲にある物は吹き飛ぶ。地面には大きな穴が出来上がる。
それらを何度か繰り返す。スレイン法国の街並みは、ぐちゃぐちゃに散らかった大量のドミノのような光景になりつつあった。
「やはり最高だわ!為す術なく逃げ惑う人間共を眺めるのは!んー…でも、そろそろ時間も危なくなってきたし、終わりにしましょうかしら。」
ティアマトが、スレイン法国にトドメを刺すための魔法を唱え始める。唱え始めたのはもちろん、超広範囲魔法である、<
この魔法の威力がどれ程なのかを、分かりやすく説明するならば──
砂浜に作った砂の城に、波が当たって一瞬で溶けるように崩れさる。
──このような例えが分かりやすいだろう。
そして今まさに、スレイン法国の北側正門前に、巨大な水の壁が…いや、巨大な水の山が生まれはじめていた。
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一方スレイン法国では、ティアマトの攻撃と、ティアマトの子供達の被害によって、軍の指揮系統は崩壊していた。
各々の兵士達が独自の判断で対応していた。
漆黒聖典の隊長も、他の兵士達と協力しながら、目の前の魔獣を追い詰めていた。
しかし、そんな戦いの最中、逃げ惑う人々が法国の北側を指さし叫ぶ。
隊長が視線を向けた先には─
「なんです…アレは!?」
どんどん巨大化していく、水でできた山が見えた。
いや、もはや崖ともよんでもよいような水の壁だった。それが今にもコチラに倒れてくるような、そんな光景だった。
隊長は悟った。アレは我が国を崩壊させるものだと。アレが我が国を襲えば、国の全てが呑み込まれるだろうと。
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「さあ!海の底に沈みなさい!
山のような高さの水の壁──巨大な大津波が、スレイン法国を呑みこもうと倒れてくる。
しかし──
突如、ティアマトの背後から、巨大な火球が飛んできて大津波に命中し、大津波を吹き飛ばした。大量の水蒸気を発生し、スレイン法国全体が霧に包まれたような状態になる。
「なっ!?私の魔法が相殺された!?」
ティアマトが後ろを向く。
「ティアマトォォ!」
ティアマトの後を追ってきたバハムートが現れる。
「見つけたぞ、ティアマト!主人の命令に反して、何勝手な事をしている!」
「げっ!?バハムート!?何故アンタがココにいるのよ!?」
ティアマトが、心底嫌そうな顔をする。
「ウロボロスが教えてくれたぞ!スレイン法国へ、ティアマトが単騎で出撃したとな!」
「アイツ、裏切ったわね!」
「馬鹿者か、貴様は!ウロボロスもお前と同じ悪竜だぞ!信用し過ぎだ!」
「だって!ご主人様に召喚された仲間同士よ!?ウロボロスが私を騙す理由なんて、ご主人様の奪い合い以外無いわよ!?」
ティアマトの言葉に、バハムートがため息をもらす。
「
バハムートの説明を聞いて、ティアマトがしばらく考え、ようやくウロボロスの企みに気付く。
「じゃあ…ウロボロスは、私とバハムートが勝手な行動に出たと、ご主人様に教えて、命令違反で消させるために!?」
「だろうな。だが、主人がまだ寝てる今なら、まだ間に合う!我々は主人に召喚された身、召喚者の側に帰還するスキルを使えば一瞬で主人の元に戻れる!」
「でも!あと少しでスレイン法国を滅ぼせるのよ!このまま滅ぼさずに引き下がったら、またご主人様が狙われるわ!」
バハムートがスレイン法国の現状を見る。
「いや…大丈夫だろう。あれだけ被害が出れば、自国の修復に追われ、しばらくは外にまで手は回らないはずだ。幸い、霧のおかげで我々の姿は見られてない。プレイヤーが出てくる気配もないので、スレイン法国はそこまで脅威にはならんさ。」
「だといいけど…」
スッキリしない、といった表情を浮かべるティアマト。
「それにだ。我々竜王の制御が難しいと、主人が判断した場合、他の竜王全てが消される可能性もある。それでは、我々竜王が主人を守るという事すらできなくなるぞ!」
バハムートの言葉に、ティアマトは今一度自分の行動を考え直す。主人を守るどころか、自分が消されてしまったら、
「それもそうね…。わかったわ。戻りましょう、バハムート。」
2人がスキルを発動させ、転移する。
もしウロボロスの企み通り、ティアマトとバハムートが争っていたらどうなっていたか。
それを知る者は…少なくとも、スレイン法国の者達が知る事はなかったであろう。
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「ハァ…ハァ…ようやくおさまったようですね。しかし、先程の水の壁と巨大な火球はいったい…。魔獣も急にいなくなりましたし…。」
隊長は、周囲を見渡す。
濃い霧がスレイン法国全体を包むかのように、広がっている。
視界は悪いが、国のあちこちから聞こえていた悲鳴はなくなっていた。
「魔獣の襲来…ですか。まさか、首なし騎士デュラハンの差し金?…なら、『番外次席』の予想通りと言う事に…」
隊長が考え混んでいると、兵士達が駆けつけてくる。
「隊長!此方におられましたか!至急軍本部に来るようにと、神官長様達が!先程の襲来に関する、緊急会議を開くそうです!」
「わかりました。すぐに行きます。」
隊長が兵士達と共に歩き出す。
「(首なし騎士デュラハンに関しては、要注意案件になるかも知れませんね。)」
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これは夢の世界だ。
そう、一目で理解できた。
だが──後から思い出すなら、これは過去の記憶だったかもしれない。
今いる自分の状況を把握する。
自分の家であり、自分の私室。
そう、現実世界の自分の部屋だ。
私は今、自分の部屋の中に立っている。
そして目の前には、
鈴木悟からの『俺と付き合ってくれませんか?』という告白文が書かれたメッセージカード、それを読んでニヤけている私が居る。
「思い出した…私、最初は嬉しかったんだっけ…」
悟に告白された事を、私は嬉しく思った。
目の前の過去の私は、メッセージカードを手に持ちながら、ベッドの上に移り、寝そべりながら足をバタバタと動かして照れている。
「そして…そう、デートするならどんな服にしようか考え始めたんだっけ…」
過去の私がベッドから起きてクローゼットを開ける。
「…あ…」
思い出す。クローゼットの中にあるのは、全て
そのクローゼットを開けた過去の私の表情が曇る。
「…ここで疑問に思ったんだっけ…」
悟は、いつから私の事が好きだったのか。
中学時代の、男装して男っぽい雰囲気を出していた頃からだろうか?
それとも今の、正真正銘の女として、女性らしい格好をするようになった私を好きになったのだろうか。
「でも…この時の私は、高校時代の姿…女性らしい格好をしている自分が嫌いだったんだよね。」
だから困った。もし悟が、
女性らしい格好している私を好きになったのなら、悟の告白にYESと答えた場合、『女性として生きていく覚悟』を
言い方を変えるならば、
『本当の自分を
それは嫌だった。やはり悟とは、『本当の自分』で接したい。
逆も然りだ。
男っぽい私を好きになったのなら、今の女性らしい私はどうでもいい、という事になる。それはそれで複雑な気持ちだ。
「で…この辺りから、悟の告白の仕方に対する文句の言葉が、心の中で出始めるんだっけ。」
そうだ!だいたい、告白をメッセージカードでするのはおかしくないか!?せっかく悟は喋れる口を持ってるのに!こういったものは、直接言うべきだろ!
それに、『俺と付き合ってくれませんか?』もおかしい!なんで弱気なんだよ!なんで私に『付き合う、付き合わない』の判断を求めるだよ!
『俺と付き合え!』とか『俺の女になれ!』的な、もっとこう…
だから次の日の学校で聞くことにした。
何が何でも、悟の口から言わせてやる!
そう言う決意を抱いていた。と、過去の自分を見ながら思い出す。
すると、全てが消えて、一瞬白い空間になる。
次に場面が切り替わり、学校になる。
席に着いた過去の私に、悟が歩み寄ってくる。
「竜之さん。ちょっといい?」
悟が竜之に語りかけている。
竜之は、小さなホワイトボードを取り出し、水性ペンで、【なに?】と、書いて返事をする。
「昨日の…ホワイトデーのやつの…その…メッセージカード読んでくれた?」
竜之は首を振る。
悟が困った顔を浮かべる。
「え…読んでないの?」
【昨日は、他の男子からもお返し貰ってて─】
【─そっちを先に開けた。悟のは─】
【─最後の楽しみにとってる。今日開ける。】
と、書いて返事をする竜之。
すると、悟の表情が明るくなる。
「あ!そ、そうだったのか!なら、メッセージカードの返事は、明日でも良いよ!」
【急ぎの内容だったりした?】
「いや…そういう訳でもないっつーか、なんと言うか…」
【なんて書いたの?
「ふぇっ!?えっと…その…!」
よし!上手くいった!これで、悟がメッセージカードの文章を口で言ってくれれば!私は!私はぁぁ!
「よーし、お前ら席に着けー。朝礼始めるぞー。」
先生が入ってきた。
悟が慌てて席に戻った。
くそぉう!タイミング読めよ先生ぇ!せっかくのチャンスがぁぁぁ!
そういう思いのこもった舌打ちをする過去の私。
その光景を見た私は、懐かしい気持ちになりつつ、苦笑いをする。
また、全てが消えて、白い空間だけになる。
そしてまた学校…おそらく、次の日だ。
また悟が歩み寄ってくる。
「竜之さん!見ましたか!?メッセージカード!」
過去の私が、首を縦に振る。
「そ、それで!その!…返事は…?」
竜之は、予め用意していた3枚の小さな紙を取り出す。
その紙には、こう書いてあった。
【悟が好きになったのは──】
と、書かれた紙を机に置き、
【─私か?】
【─俺か?】
と、書かれた小さな紙を両手に持つ。
『私』は、女性らしい雰囲気の竜之、
『俺』は、中学時代の男っぽい竜之、
を意味する。
これは、おそらく悟も気づいていたはずだ。
両手に片方ずつ持った状態で、悟に向かって突きつける。
『選べ』という意味だと、悟も理解する。
「……っ!」
悟は迷っていた。紙を取ろうとする手が右往左往している。
何故迷う?私が好きなんだろ!俺が好きなんだろ!なら、両方取れよ!私の全てを好きになれよ!
怒りが込み上げくる。
だが、それを表情に出す事はなかった。
結局、朝礼が始まるまでに、悟がどちらかを選ぶ事はなかった。
それ以来、告白に対する返事をする事はなかった。
次の日から、普通に親友としての振る舞いに切り替え、悟と接していた。と、記憶している。
この時のやり取りを客観的に見て、私は自分を酷い女だと思った。
勇気を振り絞って告白した悟に対して、なんてわがままで、なんて酷い仕打ちをしたんだろう、と。
素直に『好き』と言えなかった自分…それを見て、後悔と苛立ちが募る。
カルネ村でのあの時…モモンが言っていた、『振られたと思って─』という言葉を思い出す。
─ああ。私はなんてわがままで酷い女なんだ。2度目の過ちを繰り返した事を、今になって気付くなんて──
でも──やはり──思ってしまう。
これが乙女というやつなのだろうか。
悟から、悟の口から、告白の言葉を言って欲しい。
そう思ってしまう。
やはり──私は──わがままで──酷い──
───強欲な女なんだな───
目が覚めた。
腕時計を見る。
時間は朝四時を過ぎていた。
「ご主人様、大丈夫ですか?」
ブラックが添い寝しながら、コチラを心配してくる。
反対側には、ブルーとレッドが同じように添い寝している。
「ん…大丈夫…うん…」
元気のない返事で返す。
「本当に大丈夫ですか?ご主人様、涙が流れてますよ?」
「え?」
目元に指を持ってくる。ブラックの言う通り、私は涙を流していた。
「本当だ。嫌な夢を…見ちゃったせいかな。」
「嫌な夢…ですか?」
「うん。わがままで─酷くて─強欲な私が─自分の欲しいものを得ようとして、大切な人を傷つける夢。」
「そうですか…欲しかったものは、手に入れたのですか?」
「うーん…ダメだった…かな。なかなか上手くいかなくてね。」
「ご主人様でも苦労する、その欲しいものとはなんなのですか?」
「うん。それはね──」
ブラックに向かって言う。自分と瓜二つの存在であるブラックなら、わかってくれるだろうと。
「──私の全てを好きになって、奪ってくれる存在──かな。」
言った。素直に言ってみた。
「なら!私が適任です!私はご主人様の全てが好きですから!」
「うん。知ってた。」
クスクスと笑うリュウノ。
ブラックも同じように笑う。
「だが、油断してはダメだぞ、ブラック。」
「何故でしょうか?」
「私が逆に、お前の全てを奪うからだぁ〜、コチョコチョԄ(¯ε¯ԅ)」
「あ!ご主人様、ずるいですよ!クフッアハッwwくすぐったいですw」
ブラックとじゃれつく。
朝早くから何やってんだ私は!と、一瞬思ったが、先程まで心にあった暗い感情がなくなったので、まぁいいか、と気持ちを切り替えた。
「ブルーとレッドも奪ってやるぅ〜、コチョコチョコチョコチョ〜」
「
「
四人でじゃれつき始めて夢中になる。
「ご主人様〜♥私もコチョコチョして下さ〜い!」
「主人よ、我もくすぐって欲しいぞ!」
いつ間にか、ティアマトとバハムートが部屋に居た。リュウノ達が寝ているベッドのすぐ脇に立っていた。
「うおっ!?」
リュウノが驚いて跳ね起きる。
「ティアマト様とバハムート様!?」
ブラック達も驚いている。
「お前らいつの間に!?」
「今ですね。」
「たった今です!」
「そ、そうか…。いや!何故、ココに居るんだよ!」
「主人が心配になってな。」
「ご主人様が心配で〜。」
ティアマトとバハムートが、まるで打ち合わせでもしてたかのような反応を示す。
「本当か〜?善と悪の両極端のお前らが2人揃ってるのが、ものすごく怪しいんだが〜?」
リュウノが激しく怪しむ。
ティアマトとバハムートは冷や汗をかいている。
さっきまで、スレイン法国上空に居たなんて言えないのだ。
すると──
「主人よ!ティアマトとバハムートが命令を無視して──」
ウロボロスが部屋の扉を開けて慌てて入ってくる。
が、部屋の中にいたティアマトとバハムートを見て黙る。
「どうした!?ウロボロス。」
「あ、えーとですね…ティアマトとバハムートの姿が見えなかったので、主人の命令を無視してどこかに行ってしまったのではと、思って知らせにきたのですが、ココにいたのか2人とも。心配したぞ?クハハハ…。」
ウロボロスの態度が妙に怪しい。
リュウノが声をかけようとした矢先、ティアマトとバハムートが移動し、ウロボロスの肩に手をかける。
「心配をかけてすまなかったな、ウロボロス。」
「ええ。ごめんなさいね、ウロボロス。」
「お、おう…。」
ウロボロスの顔が引きつっているように見える。
「?」
リュウノが、3人の行動を不思議そうに眺めている。
「主人よ、我々は見張りに戻ります。ごゆっくりお休みを。さあ、ウロボロス。我らと共に、警備に戻るぞ!」
「ええ!そうね。ゆっくり休んで下さい、ご主人様。ほら、ウロボロス、行くわよ。」
「えっ!?ちょっ!?まっ──」
ウロボロスを強引に引っ張り、部屋の外に連れ出す二人。
部屋の扉が閉まる。
「何だったんだ?あの3人…」
「私にもわかりません…」
「「
リュウノとブラック達は、首を傾げるしかなかった。