首なしデュラハンとナザリック   作:首なしデュラハン

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第28話 ズーラーノーン

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◇夕方

 

──エ・ランテル共同墓地──

 

外周部の城壁内のおおよそ1/4を使った巨大な墓地。西側地区のほとんどがこれで、衛兵隊や冒険者が毎夜巡回して弱いアンデッドのうちに退治している。

墓地の使用率は100%で、新しい死者が出た場合は古い墓を掘り返して骨を粉砕して墓の空きを作っている。

 

そんな巨大な墓地の真ん中に、黒い鎧を身につけた人物が立っていた。

 

「──という設定と作戦でいくから。モモン達も問題ない?」

 

現在リュウノは伝言(メッセージ)を使って、ヘロヘロ以外のギルドメンバーと会話している。

 

『──ええ。リュウノさんの設定事情は理解しました。しかし、その作戦、たっちさんが反対しませんか?──』

 

「うん。反対された。だから、市民は襲わず冒険者だけ襲うって条件で何とか納得してもらったよ。冒険者はモンスターとの戦いも多いし、モンスターに襲われて死んでも仕方ない職業だからって事で。」

 

『──まぁ、理屈で言えばそうですが…。念の為確認しますが、たっちさんもそれで良いですね?』

 

たっちの性格を理解しているモモンが、ギルドメンバーを代表して最終確認をとる。

 

『──はい。私のミスでヴァンパイア騒動が起きた訳ですし、協力してくれてるリュウノさんに我儘を言いすぎるのも悪いですから。──』

 

『──ほう?意外ですね。たったそれだけの条件でアナタが納得するとは。異形種化の影響で、人間に対しての感情が薄くなりました?──』

 

『──………ッ!──』

 

リュウノが考えた作戦には、少なからず死人が出るのだ。それを考えると、今回の作戦にたっちが賛同するのが、ウルベル個人の思いでは納得いかなかった。

そのため、少し意地の悪い質問をしたのだが、たっちからの返事がすぐに返って来なかった。

 

『──たっちさん?大丈夫ですか?──』

 

ウルベルがたっちを心配するという奇妙な事態に、他のギルドメンバー全員が僅かに動揺するが、何も喋らずにたっちの返事を待つ。

 

『──モモンさん…──』

 

『──何です?たっちさん。──』

 

『──ユグドラシルで、私がアナタを助けた時の事、覚えてますか?──』

 

『──ええ。もちろん。一生忘れませんよ。人間種のプレイヤーからPKを受けて、引退を覚悟しそうになった時、アナタに助けられましたから。──』

 

『──では、皆さんに質問します。私がモモンさんを助けた事を、この異世界で再現した場合…私は人殺しになるんでしょうか?──』

 

全員が息を呑む。

ユグドラシルの世界ならば、人間種のプレイヤーをキルしても罪悪感などなかった。何故ならゲームだからだ。

しかし、ここは異世界。人を殺せば本当に死ぬ。

ましてや、自分達は異形種になってしまっている。

たっちがモモンを助けた場面を再現した場合、モンスター(たっち)が人間を殺してモンスター(モモン)を助けた、という形になってしまうのだ。

 

『──今でも迷ってるんです。私は、人間を助ける存在になるべきなのか、異形種を助ける存在になるべきなのか…──』

 

重苦しい雰囲気が続く。

誰も返事が返せない、そう思った矢先──

 

『──くだらないですね。──』

 

沈黙を破ったのはウルベルだった。

 

『──なに?──』

 

『──くだらないと言ったんですよ、たっちさん。アナタ、自分の決めゼリフを忘れていませんか?──』

 

『──わ、忘れる訳無いだろ!──』

 

『──だったらしっかりして下さい。今、エ・ランテルの冒険者組合はヴァンパイアの脅威に困っています。それを理解していますよね?』

 

『──もちろんだとも!──』

 

『──リュウノさんの作戦で少なからず死人が出るのも理解していますよね?』

 

『──ああ…──』

 

『──だったら、少しでも死人が出ないように努力するのがアナタではないんですか?』

 

『──·──ッ!──』

 

『──救える人間には限りがあります…アナタ1人で世界中の人々を救える訳ではないんです。なら、せめて自分の手が届く範囲の人助けをして下さい。わかりましたか?』

 

悪を強調していたウルベルからのたっちへの励まし、誰もが信じられないという気持ちになるが、ウルベルの言葉に嘘やイタズラめいた雰囲気は感じられなかった。

 

 

『──ああ。すまなかった皆…相談して良かったよ。ウルベルさんも、その…ありがとう。──』

 

『いえいえ。ギルドメンバー同士で助け合うのは当然ですから。そうでしょう、ギルド長?』

 

『──そ、そうですね。ウルベルさんの言う通りです。──』

 

『──ハハ。ウルベルさんこそ大丈夫ッスか?何か悪いもんでも食べました?』

 

『──いえいえ。私はいつも通りですよ?ただ、私のライバルがうじうじ悩んでいるのが気に食わなかっただけです。──』

 

『──もっと良い言い方があるでしょう、ウルベルさん。まぁ、なんです、いろいろ気持ちに整理がつきました。リュウノさんには申し訳ありませんが、できる限り人命救助させてもらいますよ?』

 

「構わないよ。元々、私も大勢殺すつもりはないし。」

 

『──そうですか。なら、私は先に冒険者組合に行ってきますね。──』

 

「はーい。私も後から行くから。」

 

そう言うと、たっちの伝言(メッセージ)が切れたのが伝わる。しばらく待って、リュウノが口を開く。

 

「…で?ウルベルさん、正直なところどうなの?」

 

『──決まってるでしょう?たっちさんが悪に堕ちたら…──』

 

『──だれが悪の私を止めるんです?──』

 

『『「やっぱり」』』

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「さて…では作戦を実行する前に、()()()をどうするか考えるか…」

 

リュウノの目線の先にいるのは、共同墓地の最奥にある霊廟の地下神殿を隠れ家にしていた組織『ズーラーノーン』の人間達だ。リーダーらしき魔術師の男が1人、その弟子と思われるローブを纏った魔術師ふうの人間の男が6人、同じくローブを纏ったビキニアーマーっぽい装備の女が1人。全員、リュウノが大量に召喚したアンデッドに取り囲まれて身動き出来ない状況にされている。

 

ズーラーノーンとは、強大な力を持つことで名の知れた盟主を頭に抱き、その下に十二高弟と、高弟に忠誠を誓った弟子たちによってなる邪悪な秘密結社である。死を隣人とする魔法詠唱者からなり、アンデッドを使い過激な行動をとる為、近隣国家から敵と見られているカルト集団でもある。

 

そして、ここエ・ランテルを活動拠点としていた組織のリーダーの名は──

 

『カジット・デイル・バダンテール』

 

外見は、頭髪も睫毛も眉毛も体毛らしいものは一切ない。

目はくぼみ、体は痩せ細り、生きていることが不思議なほどに顔色は悪く、土気色という言葉が相応しい。

 

カジットは、まるで血のような黒い赤のローブを纏い、小動物の頭蓋骨をつなげたネックレスを首にしている。

骨と皮しかないような腕の先には、黄色の汚い爪の生えた手があり、その手で黒い杖を握っている。

 

リュウノから見て、カジットという男は人間というよりアンデッドモンスターのような姿に見えた。

 

リュウノが彼等を見つけたのは、本当に偶然だった。

とある理由で、エ・ランテルの墓地にシャドウナイトの能力で侵入し、アンデッドを大量召喚したものの、召喚したアンデッド達が生者の反応を感知、それがリュウノに伝わったのだ。

感知した場所を探索すると、霊廟の奥にあった地下神殿を発見、そこにいた彼等を見つけたのだ。

 

こんな陰気な場所で何をしていたのか問いただそうとしたら、魔法で攻撃してきたため、やむを得ず召喚したアンデッド達で無理矢理取り押さえたのだ。

 

そして現在、霊廟の外へと担ぎ出されたカジット達は、外に大量召喚されていたアンデッド達にビビり、リュウノの質問に素直に全て答えてしまっていた。

 

リュウノは頭を掻く。

 

「(まさか、アンデッドを使ってエ・ランテルを滅ぼそうと考えている奴がいるとは…)」

 

リュウノにとって、彼等の計画は作戦の邪魔になる。彼等を殺してしまうのが手っ取り早い解決策なのだが──

 

「ねぇ?アンタらさ…私に協力してくれない?」

 

「なぬ!?協力だと!?」

 

「うん。私さぁ、アンタらと同じ事をやろうと思っててさぁ…いろいろ下準備してる最中なんだ。けど、1人だと大変なんだよね。だからさ!協力者になってくれない?」

 

絶対的強者からのまさかの誘いだ。断る理由がない。

 

「も、もちろんだ!協力しよう!」

 

案の定、カジットも弟子達も藁にもすがる思いでリュウノの誘いにのる。

 

「本当に!?ありがとー!いや〜助かるよ〜!」

 

リュウノはカジットと握手する。

 

「我々も、貴方のような凄腕の魔術師(マジックキャスター)に会えて嬉しく思っております!」

 

その場で思いつく限りの褒め言葉を、カジットは言ったつもりなのだろう。

 

「(魔術師(マジックキャスター)ねぇ…。私は召喚に特化してるだけなんだけどなぁ…)」

 

優秀な魔術師(マジックキャスター)は他にいるのだが、カジット達からして見れば、大量のアンデッドを従えさせているだけでも凄いらしい。

 

「いやだなぁ〜、そんなに褒めないでよ〜。まぁ、もし私の誘いを断っていたら──」

 

そう言いながら、リュウノはヘルムを取り小脇に抱える。

 

「──全員、腐肉漁り(ガスト)のエサにしてたよ〜。」

 

と、軽い口調で言い切った。

凍りついた彼等を見て、リュウノはわざとらしく質問する。

 

「どうしたの?私の顔に何かついてる?」

 

意地悪な質問だ。顔が無い奴から、顔について質問されたのだから。

当然、カジットの顔が困惑した表情になるが、すぐに引きつった笑顔を作って返答する。

 

「い、いや!何も!なんでもないぞ!…ないです…。」

 

「そう?まぁいいや。なら、協力者としてカジットさんには教えておこうかな。」

 

そう言うと、リュウノはメモ帳を取り出す。先程尋問して聞き出した情報をメモを見ながら確認する。

 

「えーと、『死の螺旋』だっけ?アンタらが実行しようとしてた計画は。この『死の螺旋』を使って、表向きは強力なアンデッドを作り出すという目的で活動しているんだよね?」

 

アンデッドが集まっている場所にはより強いアンデッドが生まれる傾向があり、そしてより強いアンデッドが集まればさらに強いアンデッドが生まれてくる。その螺旋を描くように、より強いアンデッドが生まれてくる現象から名付けられた都市壊滅規模の魔法儀式が”死の螺旋”である。

 

「しかし、本当の目的は、そうやって集まった負のエネルギーを己に封じ、自分自身を強大なアンデッドにするのが目的と…うーむ…。」

 

リュウノはカジット達の目の前で胡座をかきながら、カジット達から押収したアイテムを並べる。と言っても、大したアイテムはなく、せいぜい興味をそそられた物は2つだけであった。

 

1つは、カジットが『死の宝珠』と呼んでいた黒い鉄のような輝きを持つ無骨な珠。

磨かれてもいないし形も整っていない為、珠というより原石に近い見た目である。

河原にでも行けば似たようなものがありそうなほどで、到底価値があるようには見えない。

が、ユグドラシルにはない『知性ある(インテリジェンス・)アイテム』というレアアイテムだったため、コレクター欲が高いアインズにプレゼントすれば喜ぶかもしれないという単純な理由で押収した。

 

押収時に死の宝珠がリュウノを操ろうと精神支配の魔法をかけてきたが、シャドウナイトと合体して竜人化していたリュウノには効果がなかった。

 

もう1つは、ビキニアーマーの女が持っていた『叡者の額冠』という蜘蛛の糸のような金属糸の所々に小粒の宝石がちりばめられた蜘蛛の巣のようなサークレット。中心部分には黒い水晶のような大きな宝石が埋め込まれている。

こちらは、リュウノと合体しているシャドウナイトの物欲精神の影響か、大して欲しくもないはずなのにキラキラした物だったからという理由だけで押収したアイテムだ。

 

リュウノは彼等の持ち物を見てため息をつく。

 

「(自分自身を強大なアンデッドに変えるという目的を持ってた奴等だから、人間をアンデッドに変えれるアイテムでも持ってるかと期待したのにな〜…。)」

 

人間とアンデッドの種族を入れ替えるアイテムが玉手箱以外にも存在するかもしれない、と期待していたのだ。だが、現実はそう甘くはなかった。

 

リュウノは彼等の持ち物を改めて確認して考える。

アンデッドになりたいという彼等の気持ちには大いに共感できる。なんせ、自分も早く本当のデュラハンに戻りたいからだ。

しかし、彼等の持ち物を踏まえても、彼等のやり方ではアンデッドになれない。それは間違った方法だからだ。

 

「このやり方だと、アンデッドになるのは無理だよ、カジットさん。」

 

「そ、そんなバカな!?この計画のために、5年間もの月日を費やしたのだぞ!それが、無意味だと言うのか!?」

 

「残念ながら。アンデッドの私が言うんだから。嘘じゃないよ。」

 

「そんな…そんなバカな…。」

 

カジットはガックリと項垂れている。当然だ。信じていたやり方が5年間も費やして無意味だと知れば、誰でもそうなる。

 

「なんでそんなにアンデッドになりたいのさ?」

 

「新しい蘇生魔法を研究するためだ。人間のままでは時間が足りぬのでな…。」

 

「蘇生魔法の研究?誰か生き返らせたい人でもいるのか?」

 

「…ワシの母だ。しかし、現存する信仰系魔法では復活させる事は不可能なのだ。」

 

「母親の復活ねぇ…ふーむ…。」

 

理由は素晴らしいが、その為に大勢の人間を殺すのは間違いだ。とても良い事ではない。

 

「(ギルドの皆なら、どうするかなぁ…)」

 

アインズさんやウルベルトさんなら、面倒事を避けるために彼等を殺すだろう。そのほうが、余計な気苦労もせず楽だからだ。

なら、たっちさんならどうするのか…。

 

秘密結社ズーラーノーンの活動そのものは悪行だ。カジットの組織がやろうとしていた事も、エ・ランテルを壊滅させる規模を予定している悪行ではある。

しかし、目的さえ解決すれば実行する必要はないハズだ!なら──

 

「カジットさん、アンタが言う現存する信仰系魔法って、第6位階までの復活魔法の事?」

 

「そ、そうだが…。」

 

「なら…コレならアンタの母親も復活できるんじゃない?」

 

リュウノが取り出したのは1枚の巻物(スクロール)

 

巻物(スクロール)とは、

事前に魔法を込めて作成しておくことで、一度だけその魔法を行使することができる。しかし、使用するには自身がその魔法を使うことができる、もしくはそのクラスで習得できる魔法リストに載っている必要がある。

 

「それは?」

 

「ドラゴンハイド…簡単に言えば竜の皮で作った巻物(スクロール)だよ。込められている魔法は、第9位階の信仰系の復活魔法だ。」

 

異世界では第6位階以上の魔法はありえないと言われている。当然、カジットの反応はと言うと──

 

「な!?そんな馬鹿な!第9位階だと!ありえぬ!そんな魔法は存在しないはず!」

 

──まぁ、信じてもらえないか。──

 

「嘘だと思うなら、鑑定の魔法で調べて見ろ。魔術師(マジックキャスター)ならそれくらいできるだろ?」

 

カジットが恐る恐るといった感じで、リュウノが手に持つ巻物(スクロール)に手を向け鑑定の魔法を唱える。

 

「──おお─おおおおっっ!?そんな馬鹿なぁぁぁ!?」

 

「(うわ〜…この反応、ポーションの婆ちゃんと同じ反応だぁーww)」

 

ただでさえアンデッドみたいな顔をしているカジットの目が見開き、飛び出んばかりの表情になっている。

 

「私の計画に協力するなら、この第9位階の復活魔法が込められた巻物(スクロール)を渡すけど?」

 

「協力する!いや、させて下さい!」

 

「よしよーし!なら、私の計画を教えるね。と言ってもアンタ達にやらせる仕事は簡単な事だから。」

 

「何をすればいい?」

 

「陽動だよ。私が召喚したアンデッドを使って、墓地で待機していればいいから。」

 

「待機していれば良いのか?」

 

「そうそう。私が今から冒険者組合に人間のフリをして、ズーラーノーンとか言う組織が墓地にアンデッドを大量召喚してるー!って報告して、大量の冒険者達を墓地に送らせるから。」

「私の召喚したアンデッド達が冒険者と戦うから、アンタらは奥で高みの見物でもしておけばいいよ。で、冒険者達が墓地でアンデッド達と悪戦苦闘してる隙に、私がエ・ランテルの中心部でヴァンパイアを大量召喚して街の市民をヴァンパイアに変える!」

「墓地のアンデッドとヴァンパイア化した市民に挟まれた冒険者達は補給も出来ずにあっという間に壊滅する。エ・ランテルは死の都になる。どうよ?完璧な計画でしょ?」

 

「なるほど!それなら、王都や帝国、法国からの人間の増援も間に合わんな!素晴らしい作戦だ!」

 

カジット達も納得している。

 

「(まぁ、半分は嘘だけどな!中心部でヴァンパイアとか召喚しないし。)」

 

エ・ランテルをアンデッドで攻め落とす気など元からない。ヴァンパイアの1件も含め、ズーラーノーンに全て押し付ける事にしただけである。

 

「よし。なら、もう少しアンタらが安心できるように、戦力を強化するか。」

 

リュウノが先に召喚していたアンデッド達は、

 

骸骨(スケルトン)(Lv1)/500体

骸骨弓兵(スケルトン・アーチャー)(Lv2)/300体

骸骨騎兵(スケルトン・ライダー)(Lv2)/200体

骸骨の魔法使い(スケルトン・メイジ)(Lv4)/100体

 

動死体(ゾンビ)(Lv1)/500体

食屍鬼(グール)(Lv1)/300体

腐肉漁り(ガスト)(Lv5)100体

 

合計2000体のアンデッドだ。

 

そこから更に追加で、

 

骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)(Lv16)/300体

骨の竜(スケリトル・ドラゴン)(Lv16)/40体

死者の大魔法使い(エルダーリッチ)(Lv22)/150体

死の騎士(デス・ナイト)(Lv35)/10体

 

合計500体のアンデッドを召喚した。

 

「(これだけあれば十分かな。たっちさんにモモンチーム、さらに私と竜王達が参戦するんだ。全然余裕で倒せる範囲だ。後で追加した戦力は、エ・ランテルの冒険者達では苦戦は必至!モモンチームや私達に頼るしかない!これでモモンチームも一気に冒険者のランクが上がるはず!)」

 

召喚を終えたリュウノは、カジット達に確認する。

 

「どうだ?これなら、エ・ランテルの冒険者共を相手に負ける気がしないだろう?」

 

「なんという事だ…お主は何者なんだ?」

 

「ん〜…スレイン法国に恨みを持つアンデッド…かな。私が強大なアンデッドを作りたいのは、スレイン法国を滅ぼしたいからなんだよね。」

 

「──っ!」

 

スレイン法国というワードを口にした際に、ビキニアーマーの女がピクリと反応した気がするが、ただの偶然かと思い、無視する。

 

「スレイン法国を滅ぼす…それが貴方の目的なのか?」

 

「そうだよ。アイツらには散々殺されそうになってね。うんざりしてるのさ。」

 

「………。」

 

スレイン法国の話をし始めてから、ビキニアーマーの女がこちらをじっと見てる気がしてならない。

 

「(もしかしてこの女、スレイン法国の人間か?もしやスパイ!?)」

 

ビキニアーマーの女の反応を気にしつつ、リュウノは話を続ける。

 

「今回の計画が成功すれば、私は強大なアンデッドが手に入る。アンタらズーラーノーンは、『これが我等の力だ!』と、近隣国家に知らしめる事ができ、ズーラーノーンという秘密結社をさらに強大にできる。互いに得する話でしょ?」

 

「た、確かに!」

 

「スレイン法国さえ滅ぼせれば、後はどうでもいい。死の都になったエ・ランテルにも興味ないから、その後はアンタらが好きにアンデッドを使いなよ。」

 

「おおお!それはありがたい!貴方は本当に素晴らしい!」

 

「ンフフー!よーし!今の私は機嫌が良いから、カジットさんには友好の証として、コレをプレゼントしよう!はい、あげる。」

 

リュウノは懐から巻物(スクロール)をもう一個取り出し、カジットに投げ渡す。

 

「これは?」

 

「第7位階の復活魔法『蘇生(リザレクション)』だよ。私の計画の前払い報酬だよ。」

 

「第7位階だと!?」

 

「ただ、第7位階でもカジットさんの母親の蘇生に失敗する可能性が高い。ただの村人だったかもしれないアンタの母親だと生命力が足りなくて灰になるかもね。」

 

蘇生に失敗する可能性がある。そう言われただけで、カジットの顔に不安な表情が浮かび上がる。

 

「コッチの第9位階の『真なる蘇生(トゥルー・リザレクション)』なら確実に蘇生できる。まぁ、コッチは私の計画が成功した場合の報酬にするつもりだけど…どうする?計画の途中で私の事が信頼できず、今アンタに渡した巻物(スクロール)だけ持って逃げる事もできるけど?」

 

途中で逃げようものなら、召喚したアンデッド達に始末させれば良いだけだ。

 

「いや、最後までやらせてくれ!第9位階の魔法なぞ、ワシでは二度と手に入らないかもしれないからな!」

 

カジットは即答した。

 

「よし!交渉成立だね!なら、私は冒険者組合に行ってく──」

 

そこまで言った時、ビキニアーマーの女が立ち上がる。

 

「待って!」

 

「はい?(来たな!ビキニ女!)」

 

「どうした?クレマンティーヌ。」

 

クレマンティーヌと呼ばれた女がリュウノに歩み寄る。

 

「私、アナタに付いて行ってもいいかな?」

 

「どうして?理由は?」

 

「私もスレイン法国に追われているの!アナタに押収されたティアラ、あれスレイン法国から盗んだ物なんだよね。ね~お願~い♡。私も~連れてって~。」

 

「(うわ〜気持ちワル!何この女!しかも…)」

 

リュウノは初めて気付く。女の着ていたビキニアーマーには、大量の冒険者プレートが付いていたからだ。1番下のカッパーからオリハルコンのプレートまでがたくさんあるが、アダマンタイトのプレートだけがない。

 

「アナタ、そのプレートなんなの?」

 

「あ!コレ〜?ハンティングトロフィーだよ〜。今まで殺して来た相手から奪ったんだ〜。凄いでしょ〜!」

 

「アナタ、殺し屋かなんかなの?実力はあるみたいだけど…」

 

「あながち間違いじゃないけど〜…元スレイン法国の特殊部隊『漆黒聖典』に所属してたんだ〜。だから、実戦経験は豊富だよ〜。それに、スレイン法国の内部情報にも詳しいわよ〜!ねぇ〜良いでしょ〜。」

 

「本当!?スレイン法国の情報はメッチャ欲しいわ!」

 

「(思わぬところからスレイン法国に関する情報をゲッチュ!こういうの棚からぼたもちって言うのかな?まぁいいや。)」

 

「でしょでしょ〜!」

 

「よし。分かった!アンタ、私について来て良いよ!」

 

「ありがと〜う!じゃあ、ガジッちゃん。後は頑張ってねー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと!コレ何!?アナタの影が私に絡みついて解けないんだけど!?ねぇ!」

 

「デミウルゴスー!大至急来て!スレイン法国に関する情報持った人間捕まえたから!早くぅぅぅ!」

 

 

 


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