首なしデュラハンとナザリック   作:首なしデュラハン

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第29話 エ・ランテルの危機

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──エ・ランテル共同墓地──

 

 

「──という訳で、リュウノ様に関する報告は以上でございます。」

 

『──ふむ。報告感謝しますよ、デミウルゴス。フフッ、お前をエ・ランテルに向かわせてリュウノさんの監視につけておいて良かった。──』

 

「はい。リュウノ様も、私がすぐに現れた事に驚いておられました。」

 

『──そうか。それはそれはww。それで、例の女は?──」

 

「はい。部下に輸送させてます。」

 

『──よしよし。ズーラーノーンの方は?()()()()()()()怪しまれないよう、対策はしましたか?──』

 

「はい。ズーラーノーンの人間達全員に精神支配系の魔法を施しました。彼等の記憶から、リュウノ様の事を忘れさせました。リュウノ様が召喚したアンデッドは、自分達が召喚したと思いこませてます。これで、安心かと。」

 

『──上出来です、デミウルゴス!ああ…お前に直接会って褒めてあげられないのが残念だよ。──』

 

「な、何を仰いますか!ウルベルト様はお忙しい身!今回の件が片付きましたら、私の方から伺いますので御安心を!」

 

『──そうですか。なら、引き続きリュウノさんの監視を。彼女は今、多くの敵に狙われている1番危険な立場ですからね。彼女が危ない橋を渡らないよう、お前が守ってあげなさい。──』

 

「はい!畏まりました!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

◇午後7時

 

──冒険者組合1階──

 

「なるほど。盗賊団のアジトから数km離れた森の中にヴァンパイアの屋敷が…」

 

「はい。結界魔法のようなものが使われていて、アンデッドの気配を探れるリュウノさんでなければ見つけられない程、巧みに隠されていました。」

 

「念の為、我々の方からも明日の朝に調査隊を派遣しても良いかね?君やリュウノ殿の事を疑っている訳ではないが、どの程度の冒険者に依頼させるべきか、査定する必要があるのでね。すまないね。」

 

「いえいえ、お構いなく組合長さん。私は冒険者ではありませんが、冒険者は信用が大事だと聞いています。リュウノさんはその…怒りっぽい方ですが、決して悪い人ではないんです。そちらの調査で、リュウノさんが信用に値する人物だと思っていただければ嬉しいですが…。」

 

現在、冒険者組合では、たっちが持ち帰ったヴァンパイアの調査報告に関する議論が行われていた。1階には、カッパーからミスリルまで冒険者達が集まっており、全員で情報を交わし、ヴァンパイアに対する対策案を練っている。

 

「しかしだ…要注意のヴァンパイアとして報告されたヴァンパイアは、どちらも過去のデータにないモンスターという事に驚きが隠せんな…。」

 

「オリハルコン級の冒険者を圧倒する吸血王(ヴァンパイアロード)・『串刺し公ヴラド』、第3位階の魔法を扱える吸血姫(ヴァンパイアプリンセス)・『姫騎士エリザベート』…名前を聞くだけでもヤバそうだな…。それが部下30名を率いているとは…。」

 

「まさか第3位階の魔法を使えるヴァンパイアが屋敷にいるとは!これは、最低でもミスリル級の冒険者じゃなければ無理じゃないか?」

 

「王都に応援を要請するべきだ!エ・ランテルの冒険者だけじゃ太刀打ちなんて無理だ!」

 

「その前に奴等が攻めて来たらどうする!?王都からエ・ランテルまで応援が来るまで約六日はかかるんだぞ!」

 

「帝国や法国にも応援を要請しましょう!帝国なら、アダマンタイト級の冒険者を1チームくらい派遣してくれるんじゃないか?」

 

「神殿勢力にも力を貸してもらえないか頼んでみよう!」

 

冒険者組合長のプルトン、魔術師組合長のラケシル、神殿に縁がある高位神官のギグナルらを中心に、それぞれ自分達が出来うる限りの対策案を出していく。

 

しかし、半ば混乱状態になり始めているのは、誰が見ても分かる状況だった。

 

だが──

 

「皆、静かに!」

 

その混乱状態をある人物が一声だけで静める。都市長のパナソレイが重々しく口を開く。

 

「それで…たっち君。他に何か報告はあるかね?」

 

「はい。リュウノさんがヴァンパイアの屋敷にアンデッドのフリをして侵入して得た情報によりますと、エリザベートが今夜にでもエ・ランテルに奇襲を仕掛けにくる可能性があると言っていました。」

 

「なんと!それは本当かね!?」

 

「はい。エリザベートは普段美しい貴族の娘の姿をしているらしいのですが、たまに凶暴な醜い姿に変化するらしいです。そして…その姿を人間に見られるのを極度に嫌うらしいです。見た人間は、必ず殺す程らしいですよ。」

 

そう言うと、たっちはブリタとブリタの生き残りチームメンバーの方を見る。

 

「私とブリタさんのチームは、それを目撃しました。エリザベートが、私やブリタさん達を殺すためにエ・ランテルに来る可能性が高いと、リュウノさんは言っていました。」

 

「そ、そんな!冗談でしょ!?」

 

ブリタの顔が恐怖に歪む。ブリタのチームメンバーも不安な顔をしている。

 

「それと、リィジーさん。貴方も狙われる可能性があると、リュウノさんは言っていましたよ。」

 

「ワシもか!?何故じゃ!?」

 

「ポーションですよ。ヴァンパイア達はポーションを警戒していたそうです。エ・ランテルにあるポーションの破壊工作を匂わせる発言をしていたそうですよ。なら、ポーションを作っているアナタも狙われる可能性が高いかと…」

 

「なんという事じゃ!おお…恐ろしい…!」

 

自分も狙われるかもしれないと知り、リィジーが身を震わせる。

 

「なあ、アンタ、ちょっといいか?」

 

イグヴァルジがたっちに語りかける。

 

「はい。何でしょうか?イグヴァルジさん。」

 

「あのおっかねぇアンデッドのねぇちゃんとその部下達はどうしたんだ?」

 

「リュウノさん達なら、『エ・ランテルの共同墓地を調べに行く。』と言って途中で別れましたよ。」

 

「何故墓地なんか調べる?」

 

「さあ?ヴァンパイアから得た情報から、何か気になる事があったのでは?」

 

「気になる事ねぇ…、それで?いつになったら、あのバケモノ女は帰ってくるんだ?」

 

バケモノ女──それがリュウノの事を言っている事はたっちにもすぐに理解できた。

 

「イグヴァルジさん、そんな言い方しないでくれますか?彼女が聞いたら怒りますよ?」

 

実際は、自分の方が苛立っている。ギルドメンバーをバケモノ呼ばわりされるのは嫌だったからだ。

 

「バケモノをバケモノと言って何が悪い?組合の施設内で平然と武器を使うような奴だぞ?あんな非常識なアンデッドが英雄と称されるアダマンタイトなんて、俺は信じないぞ!」

 

「イグヴァルジ!失礼だぞ!」

 

プルトンが注意するが、イグヴァルジは無視する。

 

「きっと、ヴァンパイアの情報も俺たちを怖がらせるために、あのアンデッドが作ったデマだ!もしかしたら今頃、ヴァンパイア達に情報を流して手助けしてるかもしれないだろ!」

 

「イグヴァルジ!いい加減にしろ!」

 

魔術師組合長のラケシルも注意するが、イグヴァルジはさらに続ける。

 

「みんなはどうだ!?あのアンデッド野郎の事を信用するのか!?みんな、あのバケモノを信頼できるのかよ!」

 

「静かに!」

 

都市長のパナソレイが注意し、ようやくイグヴァルジが静かになる。

 

「イグヴァルジ、そこまでにしておけ。それ以上言うと、たっち君が剣を抜くやも知れんぞ?」

 

パナソレイがとある所を指さす。

 

「──ッ!」

 

それを見たイグヴァルジがたじろいだ。

 

何故なら──

 

たっちが腰の剣に手を伸ばしていた。体がカタカタと震えているのを見るに、必死に怒りを抑えているのだろう。

 

「イグヴァルジさん…アナタの不安は理解できます。しかし、リュウノさんはアダマンタイト級冒険者です。それだけの資格があると、認められた人なんです。そんな私の友人を、バケモノ呼ばわりするのだけは止めて下さい!」

 

仲間の事でたっちがここまで怒るのには理由がある。それは、ユグドラシルで行われていたP(プレイヤー)K(キル)が原因だ。

 

ユグドラシル時代、異形種だからという理由で気味悪がれ、人間種のプレイヤー達から攻撃された者達が大勢いたのだ。中には、モモンのように引退を考えた者や実際に引退したプレイヤーもいた。

 

もちろん例外もいた。悪名名高きギルドのメンバーでありながら、様々な種族のプレイヤーと共闘した人物が。

 

だが、今はその人物──リュウノですら、人間から警戒されている。第一印象が悪かったという部分があるかもしれないが、元々リュウノが怒った原因も人間側がちょっかいを出したからだ。あの時、人間がちょっかいを出さなければ、リュウノがバケモノ呼ばわりされる事もなく、エ・ランテルの冒険者達と上手くやれていただろう。

 

しかし、既にリュウノの正体がアンデッドであるという情報が広まっている以上、最低でもリュウノが人間に害を与えない存在であると認識してもらいたいのだ。

 

だが、イグヴァルジという男は、種族が違うという理由だけでリュウノを差別し、信用できないと言う。

 

─お前にあの人の何がわかる─

─リュウノさんは仲間思いの良い人なんだ─

─あんな良い人がバケモノと言われるなんて─

 

異形種を敵視する目の前の男を切り殺して黙らせたい──そのような気持ちが湧き出てくる。しかし その衝動を必死に抑える。

 

ここはゲームの世界ではない。殺せば本当に死ぬ世界だ。

 

リュウノさんがハゲ頭の冒険者ともめた際、リュウノさんの雰囲気は明らかに相手を殺す勢いがあった。

その時、殺しては駄目と自分は注意した。

 

なら、自分も我慢しなくては。リュウノさんに面目が立たない。

 

「お願いです…イグヴァルジさん…。」

 

剣から手を離し、頭を下げるたっち。

しかし、彼の周りからは、『二度とバケモノと言うな』という気迫を感じさせるプレッシャーが漂っていた。

 

「わ、分かったよ。悪かった。だが、俺はあのバケ──じゃなくて、黒騎士女を…俺は信用はしないからな!」

 

たっちのプレッシャーに根負けしたのか、イグヴァルジが椅子に座る。

流血沙汰にならずに済んだ事で、その場にいた皆がホッとする。

 

 

 

そう、ここまでは──

 

 

 

「誰が信用出来ないって?」

 

 

 

突如聞こえた声に全員に緊張が走る。

 

──怖い奴が帰って来た──

 

誰もがそんな思いで、声が聞こえた方へと全員が顔を向ける。

 

ヘルムを小脇に抱えたリュウノが、()()()()()()いた。

 

「なっ!?」

「あれは!?」

「黒騎士!?」

「リュウノさん!?」

 

全員が気付いたのを確認すると、リュウノはたっちの隣に飛び降りて着地する。振り向きながらヘルムを首にはめると、組合長の方を向く。

 

「組合長、緊急の知らせだ!」

 

「緊急?何があったのかね?」

 

「エ・ランテルの共同墓地にアンデッドが大量発生している!」

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

◇共同墓地・西地区防護壁門◇

 

 

「おいおいおい!何だよありゃ!?」

骸骨(スケルトン)動死体(ゾンビ)!他にもうじゃうじゃいるぞ!」

「こっちにゆっくり向かって来てます!どうします!?警備長!」

 

墓地と都の境界線にもなっている、3m程の高さと厚みのある防護壁、その壁の上から見下ろすように監視しながら警備していた衛兵達は、大量のアンデッド達が墓地から歩いてくるのを確認してパニック状態に陥っていた。

 

「すぐに冒険者組合と駐屯基地に連絡して応援を呼ぶんだ!それまで、我々でアンデッドの進行を少しでも遅らせるんだ!」

 

「「「はい!」」」

 

全員が槍や剣などの武器を持ち、迎撃の準備を始める。壁の上に等間隔で陣取り、討ち漏らす隙間が少なくなるようにしているが──

 

「百…二百…ダメだ多すぎる!」

「千はいるんじゃないか!?コレ!」

「こっちの人数は百もないんだぞ!?」

「こんなの、俺達だけで防ぐなんて無理だ!」

 

衛兵の数が少ない事と、防護壁下に集まり出したアンデッドの数に気圧され、衛兵の士気がどんどん下がる一方であった。

 

「狼狽えるな!」

 

警備長が部下に喝を入れる。

 

「三十分もすれば、応援がやって来るはずだ!それまでは我々で食い止めるしかない!我々の後ろには、守るべき多くの市民の命があるんだぞ!」

 

「警備長…!」

 

警備長の励ましが効いたのか、部下達が武器を構える。

 

「防護壁を乗り越えようと登ってきた奴だけを狙って攻撃するんだ!固まって来たら、先頭を押してまとめて落とせ!いいな!?」

 

「「「はい!」」」

 

防護壁下に溜まりだしたアンデッド達を、後から来た他のアンデッド達が踏み台にしながらよじ登って来る。

衛兵達が懸命に迎撃するが、数分もすると疲労が見え始め、動きが鈍くなる。

その反面、疲労しないアンデッド達はどんどん登ってくるため、次第に処理が間に合わなくなってくる。

 

「くそぉ、このぉ!」

「誰かぁ!こっちを手伝ってくれぇ!」

「無理だ!どこもかしこもアンデッドだらけで手が離せない!」

 

劣勢になり始めた衛兵達。流石の警備長も、大事な部下達を死なせないために、撤退を視野に入れ始めた時だった。

 

「大丈夫か、お前達!加勢に来たぞ!」

「手伝いに来たわ!」

 

11人の全身フルプレートの竜騎士達が駆けつけてきた。

 

「アンタらは!?」

 

「主人の命令で加勢に来た護衛兵だ。」

 

「主人?主人って誰だ!?」

 

「話は後だ!今はアンデッドを食い止めるのが最優先だろう!」

 

そう言うと、竜騎士達はそれぞれの武器を構えながら、防護壁の上からアンデッドの群れの中に飛び込んでいく。

 

「ちょっ!?アンタら!そんな事したら危な──」

 

衛兵達が驚きながら、アンデッドの中に飛び込んだ竜騎士達の安否を確認するが、すぐにそれが無駄だと知る。

 

灰色の竜騎士(ファフニール)は、堅実な動きで地味ではあるものの、大剣を1振りする度にアンデッド数体を確実に狩っていく。

 

真紅の竜騎士(バハムート)は、炎を纏った拳でアンデッド達を殴り飛ばしながら、周囲にいるアンデッドも焼き払っていく。

 

茶色の竜騎士(ナーガ)は、地面から土を吸い上げ、巨大な手を形成し、アンデッド達を叩き潰す。

 

黄緑の竜騎士(リヴァイアサン)は、毒沼のような水溜まりを自分の周囲につくり、生者の気配に釣られて寄ってきたアンデッド達を誘い込み溶かしている。

 

青色の竜騎士2人(青龍・黄龍)は、足からバチバチと火花のような電気を発しながら、目にも留まらぬ速さで移動しつつ、レイピアでアンデッドを串刺しにしていく。

 

紫の竜騎士(ウロボロス)は、狂戦士のような荒々しい動きで薙刀を振るい、アンデッドを切り払っていく。薙刀の刃の部分には、闇の炎の付与(エンチャント)がかかっているのか、切られたアンデッド達が黒い炎に包まれて焼け死んでいく。

 

水色の竜騎士(ティアマト)は、水の壁を作り、そこに入り込んで動きが鈍くなったアンデッドの頭を拳で破壊していく。

 

白と金が入り交じった竜騎士(神竜/ゴッドドラゴン)は、

神聖魔法<聖域(サンクチュアリ)>を唱えて、自分の周囲に神聖な領域を作って味方の安全地帯を確保している。その領域に入り込んだアンデッド達は、一瞬で浄化され消えていく始末である。

 

緑の竜騎士(ヤマタノオロチ)は、刀を1振りする度に風の斬撃が巻き起こっており、攻撃範囲内にいるアンデッド達が見えない斬撃によって切り刻まれて薙ぎ払われている。

 

白の竜騎士(白竜)は、地面を滑りつつ、アンデッド達を凍りつかせながら、踊るように白い槍を振るい、アンデッド達を叩き割っている。

 

竜騎士達が次々と、アンデッド達をなぎ払い、屠っていく。その姿を見た兵士達が驚愕しながら歓声をあげる。

 

「すげぇ!何なんだアイツら!」

「アンデッドの群れをものともしねぇ!」

「心強い!これなら何とかなるぞ!」

 

竜騎士の1人が衛兵達に向かって指示を出す。

 

「我等が防護壁の下でアンデッド達を引きつける!アンタらは、我等が討ち漏らした敵を倒してくれ!」

 

「わかった!だが、無理はするなよ!」

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

◇冒険者組合◇

 

 

「墓地にいたアンデッドの数は、私の見立てでは二千はいたと思う。」

 

「二千だと!それは本当かね!?」

 

二千という数を聞いて、その場にいた冒険者達からどよめきが上がる。

 

「本当だ!嘘だと思うのなら、誰か手の空いてる冒険者を調査に行かせたらどうだ?まぁ、後十数分もすれば、墓地の衛兵が知らせに来るだろうが。」

 

その場にいた冒険者達がざわざわと話出すなか、1人だけリュウノに疑いの目を向ける人物がいた。

 

「もっとマシな嘘をついたらどうだ?黒騎士女。あそこの墓地にアンデッドが大量に出現した事なんて1度もない。毎日定期的に冒険者が見廻りしてアンデッド達を駆除して──」

 

「アンデッドが大量発生したのは、ズーラーノーンという組織が原因だ。」

 

リュウノはイグヴァルジに突っかかる事なく、組合長に向かって報告を続ける。

 

「ズーラーノーンだと!?確か、アンデッドを使って悪さをするテロ集団だったな。」

 

「奴らは今、共同墓地奥にある霊廟前でアンデッドを大量に召喚する第7位階魔法『不死の軍勢(アンデス・アーミー)』を発動させる大儀式を行っているんだ!」

 

驚愕の情報に、その場いる皆のざわつきがより一層酷くなる。しかし、イグヴァルジはまだ信じない。

 

「第7位階だぁ!?とうとう頭がおかしくなったか?第7位階の魔法なんて存在するわけ──!」

 

「こうしてる間にもアンデッドがどんどん増えていく。早く手をうたないと、被害がさらに広がるぞ!」

 

リュウノは強く訴えかけるが、組合長は迷っている。

 

「黒騎士女、いい加減にしろ!そんな話、誰も信じる訳──!」

 

「それに、奴等はヴァンパイア達とも手を組んでる!私達冒険者がズーラーノーンと墓地でやり合ってる隙に、ヴァンパイア達がポーションの破壊と市民を襲う計画を企ててる!駐屯基地の軍兵と一致団結しなければ、エ・ランテルはお終いだぞ!」

 

俄然、イグヴァルジの文句を無視しながら、リュウノは真剣な雰囲気で言い続ける。そんなリュウノの様子を、プルトンは注意深く観察するが、彼女が嘘をついてるようには思えなかった。

 

「…どうしますか?都市長。」

 

「う、ううむ…」

 

パナソレイが決定を出せずに悩んでいる様子を見たイグヴァルジは、ニヤケながらリュウノに向かって言う。

 

「ハッ!見ろ!組合長も都市長も、アンタの話が信じられないってよ!」

 

リュウノは周囲を見る。周りにいる人間達全員も、リュウノの報告に半信半疑といった表情をしている。

 

イグヴァルジがトドメと言わんばかりに捲し立てる。

 

「誰もアンデッドであるアンタの言葉なんか信じないんだよ!アンデッドはアンデッドらしく、墓にでも入って死んでろ!」

 

「お前ぇぇ!」

 

頭に怒りが上り、剣を抜こうとするたっち。しかし──

 

「やめて、たっちさん。」

 

リュウノが手で制す。

 

「別に私、怒ってないから。」

 

「でも!あんな事言われて──!」

 

「いいから!」

 

リュウノに強く言われ、たっちが剣から手を離す。それを確認したリュウノは、イグヴァルジの方を向く。

 

「私がアンデッドだから…信じられないのか?」

 

「当たり前だろうが!生者を憎むアンデッドの言葉なんか、信じられる訳ないだろ!」

 

「なら…アンデッドでなければ信じるんだな?」

 

「はぁ?それはどう言う──」

 

困惑しているイグヴァルジをよそに、リュウノは鎧を全て外した。一瞬で鎧が消え、焦げ茶色の鱗をした褐色肌の竜人の姿を皆に曝け出す。

 

「なっ…!?」

 

リュウノの正体を知った人間達が驚きの声を上げる。

 

「私はアンデッドではなく竜人だ。この見た目、見覚えある奴等も居るんじゃないか?特にリィジー・バレアレ、アンタは良く知ってるだろ?」

 

「お主、あのデュラハンが連れていた竜人の知り合いか?」

 

「ブラック達だな。アイツらは私の妹達だ。」

 

「なんと!それは本当かい!?」

 

「ああ。だが、今はその話をしている暇はない。アンデッドではない事を証明したんだ。これで信じてもらえるか?」

 

リュウノはイグヴァルジの方を見ながら確認をとる。

 

「待て!お前、頭がなかったろ?あれはどう言う事だ!」

 

「ん?ああ…あれは私のタレント能力さ。ほら、胴体に鎧を着ると体が消えるだろう?幽霊(ゴースト)みたいに。」

 

鎧を着けたり外したりする度に、リュウノの体が消えたり現れたりする。

 

「私は鎧を着ると、体が幽霊(ゴースト)化するタレント能力なんだ。」

 

幽霊(ゴースト)化のタレント能力だと!?」

 

まさかの事実に、その場にいた全員が驚く。

 

「誤解を招いた事は謝ろう。あの時は、皆になめられるのが嫌で、ちょっと怖がらせるためにやった悪ふざけだったんだ。すまなかった。」

 

リュウノは頭を下げて謝る。

そして頭を上げると、プルトンの方を向く。

 

「今、私の部下達が必死にアンデッドの群れを抑えている。私もこれから墓地に向かい、部下達と合流します。」

 

そう言うと、リュウノは出口の方を向く。

 

「伝える事は全て伝えた。後はアンタら次第だ。たっちさん、行くぞ!」

 

「はい!行きましょう、リュウノさん!」

 

リュウノとたっちは、外へと走り去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

─冒険者組合・屋上─

 

 

「──はい。たった今、リュウノ様とたっち様が冒険者組合を出て、墓地の方へ向かわれました。」

 

『──そうですか。今、私達もエ・ランテル内に入ったところですよ。人間達の様子は?──』

 

「半信半疑といった感じでございます…。リュウノ様は真実を告げていらっしゃったのに、それを信じないとは!ましてや、下等生物ごときがリュウノ様にあのような無礼を振る舞いを!やはり人間は皆殺しにした方がよいのでは?ウルベルト様。」

 

『──駄目ですよ、デミウルゴス。それは()()()()。今は、リュウノさんとたっちさんが()()()()()事が大事ですから。──』

 

「か、畏まりました、ウルベルト様。」

 

『──あ!そうだ!デミウルゴス、お前に追加でやってもらいたい仕事があるのですが?──』

 

「お任せ下さい!このデミウルゴス、どのような任務でも全身全霊でやらせていただきます!」

 

『──そうかい?なら、仕事の説明だ。と言っても凄く簡単な仕事だよ?お前には、この世界に魔王を生み出してもらいたいのさ!──』

 

「─ッ!」

 

『──もちろん、魔王は私だ。さあ、デミウルゴス…ここまで言えば、お前ならば理解できるだろう?私の期待通りの働きをしてくれると信じているよ、デミウルゴス。──』

 

「はい!お任せを!このデミウルゴス、この命にかえましても、任務を果たさせていただきます!」

 

『──フフッ。ええ…期待してまっていますよ。では…──』

 

悪魔であるデミウルゴスは笑っていた。

─自分の創造主から、圧倒的な期待を持っていただけている。─

ならば、その期待に答えるのが下僕としての喜びだからだ。

 

建物の屋上から悪魔が見下ろす。今まさに、最悪の知らせを伝えに来た衛兵が冒険者組合に入って行ったところだった。

 

「さあ、冒険者の皆さん。仕事の始まりですよ。精々リュウノ様達を英雄として崇めて下さいね。」

 

 

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