今回の話は少し試験的な意味で、『視点』にこだわった書き方をしています。小説創作に対する私の技術向上を兼ねた取り組みのようなものだと、読者の皆様に事前にお知らせしておきます。
後、更新が遅くなって申し訳ありません。
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では、皆様には説明しておきましょう。この私…ヤルダバオトの計画を。
まず第一に、リュウノ様とたっち・みー様を英雄にするのが目的でございます。
正体を未だ隠していらっしゃるたっち・みー様は人間だと思われているので問題ないでしょう。このまま計画通りに行けば、たっち・みー様は英雄という立場を確立なさることでしょう。
しかし、竜人という正体を明かし、人間ではない事を証明してしまったリュウノ様は、英雄として扱われない可能性がありました。
ウルベルト様の情報によれば、200年程前……この異世界には『十三英雄』という存在が居たそうです。ですが、『人間ではなかったから』という理由だけで歴史から抹消された異形種の英雄も数多く存在したそうです。であるならば、竜人であるリュウノ様も英雄として認められない可能性があった訳です。
そこで、ウルベルト様がある提案をなさいました。それは、御伽噺として語られている『十三英雄』の『暗黒騎士』にリュウノ様を当てはめて、人間達に認知させるという提案でした。実際、リュウノ様の防具は『十三英雄』の1人である『暗黒騎士』と思わせるような部分が多く、オマケに『暗黒騎士』が使用していた武器まで入手なさっていました。外見だけなら文句無しの『暗黒騎士』が出来上がっていた訳です。
『暗黒騎士』が人間と悪魔との混血児という情報も、200年程前の人間達がリュウノ様の竜人の姿を悪魔と見間違えた──という事にしてしまえばいい。そうする事で、リュウノ様を『暗黒騎士』に仕立て上げる条件が見事に揃った、という訳です。
ですが…まさか──
リュウノ様御自身が、悪魔のような姿に変身なさるとは夢にも思いませんでした。そのあまりに美しい姿に、このヤルダバオト……不覚にも見惚れてしまいました。そして思ったのです!
リュウノ様こそ、我が創造主たるウルベルト様の子を孕むにふさわしい女性だと!
私は、ある事を危惧していました。それは──ウルベルト様やアインズ様といった──至高の御方々であらせられる皆様がナザリックから居なくなってしまうのではと!現に、41人居た至高の御方々のほとんどがナザリックに姿を現さなくなり、お隠れになられました。
今ではたったの6人……いえ、つい最近まではアインズ様と勝様だけがナザリックを毎日訪れて下さるくらいで、他の至高の御方々──ウルベルト様やたっち・みー様、ペロロンチーノ様にヘロヘロ様──はまったく姿を現さない日々が続いておりました。
いずれは、アインズ様も勝様も……──ナザリックから姿を消し、お隠れになられてしまうのでは?──と、私は思ってしまうようになっていました。
無論、いつ帰って下さるかもわからない至高の御方々の帰りを待ちながらナザリックを守護するのも守護者としての務めの1つである事は理解しています。
ですが、そうなると残された私達はいったい誰に忠義を尽くせばよいのでしょう。主の居ない住居を、ナザリックを守り続ける事に意味があるのでしょうか?
ですのでせめて子供を──至高の御方々の──子孫を残して欲しい。
後継ぎとなる子供を残して頂ければと、私は思っておりました。
最終的に、お残りになられた至高の御方は6名、全てが男性でした。つまり、子供を作るには女性が必要となります。
至高の御方の妻になるにふさわしい存在は、ナザリック内部では──まず守護者統括であるアルベド、次にシャルティア、次にアウラが候補にあがるでしょう。残りは──ブラック達にプレアデスくらいですか。
後は、至高の御方々が気に入られた女性でしょうか。
現状のナザリック内部において、ペロロンチーノ様がシャルティアと結婚し、シャルティアを妻にするとおっしゃっていたため、後継ぎ候補となる子供ができる可能性は高くなっております。勝様も、ブラック達三姉妹を部屋に連れ込み、ブラック達にご寵愛をお与えになったと、メイド達から聞いております。
後は、ソルシャンがヘロヘロ様の妻候補になる可能性が高いという情報がナザリック内で噂されている程度であり、アインズ様やたっち・みー様に関しては未だ妻候補をお決めになられた様子はありませんでした。
──が!なんと!
少し前にアインズ様からナザリックの全守護者に通達がありました。勝様が人間に変身可能な手段を見つけたと。しかも女性に変身したと!
私としましては、これはまたとないチャンスが来たと思いました。何故なら、子供をお作りになられるのでしたら、至高の御方同士の間にできた子供が望ましいと、私は思っていたからです。
ですので、できる事なら勝様……いえ、リュウノ様に、現存する至高の御方の誰かの子供を身篭って欲しいと思いました。
すると!なんという事でありましょう!
先程ウルベルト様から、アインズ様とリュウノ様がお二人でデートしていたという情報をお伝えして下さったのです!至高の御方のまとめ役であらせられる最高支配者たるアインズ様と、ナザリックに最後まで残って下さったリュウノ様が結婚し、リュウノ様がアインズ様の子供を身篭って下されば!私としては万々歳でした。
しかし…ここで我が創造主たるウルベルト様がおっしゃったのです。
『同じギルドメンバーの仲間として、アインズさんとリュウノさんが付き合う事は応援したいですね。ですが、アインズさんはスケルトンのアンデッド…あの骨だけの身体ではリュウノさんを孕ませる事はできません。子供が作れないのでは二人が可哀想です。何より、アインズさんは性欲がないので子作りまでしようなどとは思わないかもしれませんね。』
ウルベルト様のおっしゃる通りでした。このままでは、至高の御方同士の子作り計画が台無しになります。せめてリュウノ様に、至高の御方の誰かとの子供を身篭ってもらえないか相談するべきかと、私は思考を張り巡らせました。
すると、ウルベルト様がおっしゃいました。
『ですので……悪魔として私は思うのです。私が彼女の夫になって、代わりの子供を作ってあげるべきかなと。アインズさんはアンデッドですから性欲がありません。上手く交渉すればアインズさんから一時的な協力を頂く事ができるかもしれません。』
『アインズさんが協力してくれれば、隙を見て私が人間化したリュウノさんに精神支配の魔法をかけて、私をアインズさんと思い込むように操作してリュウノさんを孕ませる事ができます。そのまま操り続けて、デュラハンに戻らないようにしつつ、妊娠してできた子供をアインズさんとの間にできた子供であるとリュウノさんの精神を操って誤認させるのも1つの手段ではありますね。』
『妊娠して子供を産んだ後は、記憶を消してから再びアインズさんとのラブラブな関係に戻してあげれば、アインズさんも許してくれるのではと、私は思うのですよ。産まれた子供は私達でこっそり育てましょう。リュウノさんには申し訳ない事ではありますが……悪魔である私には、このような背徳的なやり方でしか、あの二人の幸せを叶えてやれないのですよ。わかってくれますね?デミウルゴス。』
なんと
確かに、アインズ様とリュウノ様には申し訳ないやり方ではありますが、ナザリックの真の後継者を作るためには仕方のない事だと…私も涙ながらに言わせていただきます。
『ですが……万が一の可能性を考え、念の為私もリュウノさんに妻になってくれと言ってみましょうか。彼女の返答次第では、こちらも少々やり方を変える必要があるかもしれませんからね。という訳でデミウルゴス、私が告白しやすいシチュエーションを頼みますよ。では、私はパンドラと交代する用意がありますので…では──』
私は考えました。ナザリックを防衛する時に使用する知能の数倍は考えたかもしれません。結局、やや強引なやり方になってしまいましたが、リュウノ様が私の考えの意図を理解なさって下さったおかげで、スムーズな流れでウルベルト様が登場できる流れが出来上がりました!
しかし、本当に美しい……リュウノ様があの様なお姿になって下さるとは、本当に…本当に思いもしませんでした。
闇を表現する紫色の鱗。
サキュバスを超える美しい肉体美。
インキュバスすら敵わない大きな翼。
デーモン顔負けの逞しい角。
何ものも寄せ付けない禍々しいオーラ。
そして──誰もが震え上がるであろう──奈落に引き込むような黒い眼球と絶望を与える紫色の瞳。
どれもこれもが素晴らしい!リュウノ様、どうか我が創造主であるウルベルト様との間に子供を!後継ぎを!ナザリックの真なる後継者を!私に下さいませ!このデミウルゴス、全身全霊をもって産まれた子供を育てますゆえ!
いやはや、私が創造した
でも、我が子が嬉しそうにはしゃぐ姿を見ていると、創造した親としていろいろしてやりたくなってしまうのですよ。
例えば、スクロール(羊皮紙)の調達に伴い牧場を作りたいとデミウルゴスが言ってきたのですよ。
表向きは、スクロール(羊皮紙)の原料となる動物の養殖です。
では、裏は?
密かに『交配実験』を行う為の実験場にしたいと、デミウルゴスが言っていたのです。交配実験の目的は、人間種・亜人種・異形種の3種類の種族達を交配させて、新たな生命を誕生させたいという。
ああ──私はなんと最高な子供を創造してしまったのでしょう!人間では思いつかないであろう非道の数々……私ですら引いてしまいたくなる悪行……嫉妬したくなってしまう程の悪魔的アイデア。どれもこれもが素晴らしい!
そして
『至高の御方同士の間に産まれた子供をナザリックの後継ぎにしたい。』と。
ですが、私達ギルドメンバーの中で女性なのはただ1人。アインズさんと幼馴染みであり親友のリュウノさんだけ!しかも2人は両想いですよ?他の男が入る余地なんて無い……そう思っていました。
しかし!アインズさんはスケルトンのアンデッド、リュウノさんは人間、これでは子供は作れません。アインズさんが例の玉手箱で人間になれば子作りも可能でしょうが、ナザリックの後継者が人間の子供なのは頂けない事態だと私は思ったのです。人間種は弱く、寿命も短い。対して異形種は種族次第で永遠に近い人生を歩めます。何よりナザリックそのものが、人間にとって住みづらい環境が多いのです。ナザリックのNPCのほとんどが人間を見下す設定になってますからね。
という訳で、デミウルゴスを納得させる為に私がリュウノさんと子供を作るという『嘘』をつきましたが……
まさか──
リュウノさんがあんな禍々しい姿になるとは……正直に言います。ずるいですカッコイイです羨ましいです!何ですか、あの禍々しいオーラは!?私もああいうエフェクトをユグドラシルのショップで購入しておけば良かった!それにあの目!いかにも悪魔的で魔王的で絶対的で、素晴らしい!
なのに──
リュウノさんは悪逆な性格ではありません。なので魔王のような振る舞いや非道な行為を好んでしないのがもったいない。悪の道を辿れば、リュウノさんは立派な悪の女帝として君臨できるのに。本当にもったいない。
もったいなさすぎて──悪の道に引きずり込みたくなります。というか引きずり込みたい。彼女に悪の素晴らしさを伝えるには、悪に染めるのが手っ取り早い──私という悪で染めてあげたい。そう思ってしまうのです。
最初は、リュウノさんにそこまで興味はありませんでした。ですが、ひたむきに頑張り続ける彼女を見ていたら、なんだかほおっておけなくなってきてしまったのですよ。だってほら彼女……基本的に誰かに頼らずに自分の力で解決しようってする人じゃないですか。
スレイン法国の暗殺部隊に狙われた時は自力で凌ごうとしてましたし、たっちさんの件も召喚魔法を駆使して解決しようとしてますからね。
アインズさんとの恋愛もそうです。アインズさんがスケルトンという性欲がない種族だと知っていながらリュウノさんは猛アプローチしてましたからね。無論、子作りもできないのに。
何よりリュウノさん自身も、ブラック達という結婚候補を自ら作っています。最終的には、人間の女性ではなくデュラハンの男性として生きて行かなくてはならないでしょう。
そう!つまり!リュウノさんとアインズさんの恋愛は、所詮恋愛止まり。子作りも結婚もできないのです。
ああ…なんと悲しい二人なのでしょう。あの二人がどんなに頑張っても、あの二人の幸せはこの異世界では叶わない夢なのですから。
現実世界であれば問題ないかもしれませんが、その場合リュウノさんはブラック達と離ればなれになりますからね。リュウノさんは、必然的に片方の幸せを自らの判断で捨てなければいけない。
さて……彼女はどちらを取るのでしょうか?
デュラハンの姿でブラック達との結婚人生を取るか、
人間の姿でアインズさんとの結婚人生を取るか、
それとも……どちらも諦めるのか。はたまた、何かしらの方法で両方を取る事を可能にするのか。実に楽しみです。彼女の生き様は、見ていて飽きないのですよ。彼女がどんな未来を目指すのか、勝ち組になるのか負け組になるのか、その結末を見てみたいものですねぇ…。
私は思うのです。この世界は生まれた段階で二極化されすぎていると。産まれた時から勝ち組と負け組に分かれていると。
不公平だと思いませんか?貴族や王族は裕福な生活が当たり前、面倒な作業は他人にやらせて何の苦労もなく偉ぶる事ができる。
それに対して、平民に産まれた者は貧しい生活を余儀なくされます。毎日汗水ながして得た少ない給料でやりくりしないと生きていけない。場合によっては仕事すらもらえず、最悪の場合寝泊まりする家すらない者もいるでしょう。貧しい生活から脱出するには、何かしらの功績を作って出世しないと駄目なんですから。
しかし、中にはどんなに頑張っても功績すらだせず、貧しい生活のまま終わる者もいます。
私達のギルドメンバーにも似たような経験をしてきた者達がいます。
まずアインズさん。
現実世界では、ただただ毎日会社に出勤して帰るを繰り返すサラリーマンの日々であり、ゲームであるユグドラシルでのプレイ中が楽しい時間であると、本人が言っていました。
ペロロンチーノさんも、現実世界ではエロゲを満喫するばかりで、リアル彼女は無し。オマケに、ペロロンチーノさんのお姉さんであるぶくぶく茶釜さんがエロゲ声優であり、自分の姉が声優をやってるエロゲが多くて嫌だと言っていました。最終的に、ユグドラシルで自分の理想の幼女(シャルティア)まで作るという残念っぷり。
ヘロヘロさんが1番酷く、ブラック会社に勤めているせいで毎日社畜のように働く日々が続いていたそうです。
それに対して勝ち組なのが、たっちさんです。
ユグドラシルでは、ほぼ負け無しのチャンピオンであり、現実世界では警察官というエリート職に勤めながら、美人の奥さんと子供までいるリア充です。ゲームの世界でも現実世界でも成功している、まさに勝ち組。
なんで現実世界でリア充してるのにゲームなんかしてるのですかね?そんなに余裕なのでしょうか?ムカつきますよね?
では、勝さんことリュウノさんはというと……
まぁ、負け組と呼べるでしょう。
産まれた時から声がだせない。これだけでもかなりの苦労です。さらに親の都合に振り回され、高校時代は自分らしさを殺して生きていたそうですし。さらには、アインズさんとの恋愛も上手くいかず、大好きな動物園での仕事も廃園を理由に無くす始末。最終的に、ペロロンチーノさんと同じく、自分の将来の彼女と動物をかき混ぜたNPC達まで作ってしまう。
ホント、世の中って不公平ですよね。何故、皆が等しく幸せになれないのでしょうか?神様は残酷な存在だと私は思っています。
ですが──
この異世界に飛ばされた瞬間、今の私達は全員が勝ち組となりました。現状、この世界に飛ばされた私達は、異世界の住民達からすれば最強に近い存在であり、神のような存在にすら見えるようです。
オマケに、ナザリックのNPC達が私達に忠誠を誓って尽くしてくれるおかげで、王様のような暮らしができるようになりました。
努力すれば上に行ける、そう言う言葉はデマだと思っていましたが、今回ばかりは信じる価値がありましたね。ナザリック地下大墳墓は、ギルドメンバーと協力しながら苦労して得た場所です。その後も『遊び』とは言え、私を含むギルドメンバー達の熱意や思いを試行錯誤して形にしたものが、今こうやって具現化されたのですから。
アインズさんはナザリック地下大墳墓の最高支配者になり、疲労や睡眠、寿命とは無縁のアンデッドになりました。私もほぼ同じ状態になりました。
ペロロンチーノさんは、理想を具現化した存在たるシャルティアとイチャイチャして幸せそうです。
ヘロヘロさんは、ブラック企業に勤める必要がなくなり、自由な時間が増えましたし。
たっちさんは…まぁ、相変わらずですかね。現実世界の奥さんと不仲になった事は、私的には嬉しい情報でしたが。
しかし──
リュウノさんは微妙ですね。
デュラハンという姿で人間達から受け入れてもらえるように努力したり、
人間になって喋れるようになったのに、念願のアインズさんとのデートを邪魔されただけでなく、瀕死の事態にまで追い詰められたり。
何より、彼女の努力が報われない未来が待っているのが実にわかりやすい。
アンデッドのアインズさんと結婚しても子供が授かれない。玉手箱で一時的に人間になったアインズさんとなら子供を授かれますが、ブラック達の事も考えるならリュウノさんはデュラハンの姿で過ごす時間の方が多くなるでしょう。
つまり──
仮に、人間のアインズさんと子作りした場合、産まれてくるのは人間の子でしょう。それに対して、アインズさんとリュウノさんはアンデッドという寿命がない種族です。すなわち……産まれた子供が先に死ぬ悲しみを背負う事になります。
ああ──なんと悲しい運命なのでしょう。ギルドのNPC達の事を考えるなら、アインズさんもリュウノさんも簡単に死ぬ訳には行かないので、人間の姿のままで暮らす事はできないでしょう。
デミウルゴスが言っていたナザリックの未来を考えるのなら、リュウノさんは私との間に子供を作るしかないのです。
アインズさんはスケルトンの姿では性行為が不可。
ヘロヘロさんも人間との性行為ができる気はしません。 ペロロンチーノさんはシャルティアが居ますし。
たっちさんは……現実世界に奥さんがいるので、プレイヤーであるリュウノさんとの子作りは望まないでしょう。
となると、残るは私だけです。
私としましては、本当に──本当に不本意ではありますが!ナザリックの未来の為に、リュウノさんには私の子供を産んでもらいましょうか……
これも、
最初は信じられなかった。リュウノさんが暗黒騎士かもしれない、暗黒騎士の子供…あるいは後継者かもしれない、という話に。
暗黒騎士は悪魔との混血児だ。でもリュウノさんは、どこからどう見ても普通の人間だった。だからリュウノさんが暗黒騎士やその後継者というのはありえないはずだ。
そう──思っていた。
しかし、墓地に来て見てしまった。
彼女が黒い甲冑を身につけ、戦う姿を。
その時私は──ウルベルさんが言っていた、『暗黒騎士の正体がリュウノさんだったらどうします?』という質問を──思い出す。
「(リュウノさんが暗黒騎士……いや、そんなまさか……)」
別人なのでは?と、最初は思った。別人だと思うのは当然だ。カルネ村で出会った時と、リュウノさんの格好がまるで違ったからだ。けど、鎧を来た彼女に話かけて本人だと確認がとれた。
カルネ村でのリュウノさんは、仕立てのいい黒い服に黒い帽子、オリハルコンのプレートを付けていた。
墓地でのリュウノさんは、黒い甲冑に黒いマント、アダマンタイトのプレートを付けていた。
どうしてリュウノさんがカルネ村の時と違う服装をしているのかを考えたが、カルネ村の時は普段着で黒い甲冑は戦闘用の装備だろう、という予想しかできなかった。
問題はプレートだ。何故リュウノさんがアダマンタイトのプレートを持っているのかがわからなかった。
1日で昇級試験を終えた?ありえない。私達が今まで受けた昇級試験でも、1日で終わるような試験内容はなかった。ましてやアダマンタイトの昇級試験なら、より難しい内容のハズだ。
それに、王国にアダマンタイト級冒険者チームは二つしかない。3つ目のアダマンタイト級冒険者が現れたという噂は聞いた事がない。なら、他国のアダマンタイト級冒険者である可能性が高い。バハルス帝国?それとも、王国の隣国であるアークランド評議国の可能性もある。
となると、カルネ村でオリハルコンの冒険者を装ったのは身分を隠すためだったと予想できる。アダマンタイト級の冒険者だと数が限られるため特定されやすいからだ。
しかし、ある1つの疑問が生まれる。それは義援金の配達だ。国王が他国の冒険者に義援金を運ばせたりするだろうか?
いや、ありえない。わざわざそんな手間のかかる事をするハズがない。でも、国王陛下の直筆の書文まで持っていたし……いや、待てよ?そもそも国王陛下の直筆の書文が偽物だったのでは?カルネ村の人々が国王陛下の字を見たところで、それが本当に国王陛下の直筆かどうかなんてわかるはずがない。
仮に書文が偽物だとして、あの大量の金貨はどうやって用意したのだろうか?あれだけの金貨を冒険者が村に無償で寄付するなどありえない。余程金銭に余裕がなければ無理だ。貴族や王族のような身分であれば、あれくらいの額も用意できるかもしれないが……。
『暗黒騎士と王族の間にできた隠し子ではないかと!』
ウルベルさんの言っていた言葉を思いだす。
リュウノさんが本当に王族の子だったのなら、あれくらいの金貨がだせるのも納得行く。
まさか、憧れの暗黒騎士が王族との間に子供をつくった?そこから産まれたのがリュウノさん!?……駄目だ!それは私が許さない。
私が旅を始めた理由は、タチの悪い領主に妾として連れて行かれた姉を救うための力を求めたからだ。それゆえに私は貴族や王族が大嫌いだ。
だからこそ、あんな気さくで優しいリュウノさんが貴族や王族の血縁者であって欲しくない。
そう願った。けど、後からリュウノさんを主人と呼ぶ騎士達が近付いて来た。リュウノさんの周りには騎士鎧を来た部下らしき人物がたくさんいる。あんな立派な鎧、エ・ランテルでは見た事がない。買うにしても、かなり高額な部類に入る。高額な鎧を部下に与え、主人と呼ばれるリュウノさん……まさか、本当に王族なのだろうか…。
そんな事を考えていた時だった。
私達の前に悪魔が現れた。そして言う。リュウノさんが『暗黒騎士』だと。リュウノさん自身が『暗黒騎士』であり、200年前──御伽噺で語られている時代から生き続けていると。
リュウノさん自身が暗黒騎士……でも、リュウノさんは人間だ。悪魔との混血児ではない。200年以上生き続けるなんて無理だ。
そう思ったが、そんな思いをリュウノさん自身があっさり打ち砕いた。鎧を脱いだ彼女の姿は人間ではなかったからだ。
角に翼、鱗のような手足、褐色の肌。カルネ村で出会った時のリュウノさんとは違う姿……その姿の彼女が、『自分は竜人』だと悪魔に言い返したのだ。
リュウノさんが人間じゃなくなっていた、あるいは人間ではなかった、という事に大いに驚いたが、暗黒騎士は悪魔との混血児なので竜人であるリュウノさんは暗黒騎士ではないという事になる。
しかし、悪魔は食い下がった。暗黒騎士が悪魔との混血児ではなく、勘違いによるものだと言い張ったのだ。
そんなはずない。あの暗黒騎士が悪魔との混血児ではないなんて……そう否定したい気持ちを、再びリュウノさんが打ち砕いた。
彼女が第二のタレント能力で悪魔のような姿に変身したからだ。
『これが悪魔と勘違いされた原因かな?我自身、この姿をするのは久しぶりなのだが?』
悪魔に対して言ったリュウノさんの言葉の意味……それは、過去にも同じ姿で過ごしていた事を意味する。しかも、最初は暗黒騎士ではないと否定していたリュウノさんが、後から暗黒騎士である事を否定しなくなったのだ。
『悪魔の血が混ざっているのなら、エルフ族のように長寿の可能性もありますよ?』
再びウルベルさんの言っていた言葉を思い出す。
まさか本当にリュウノさんは十三英雄の1人、暗黒騎士なのだろうか。それとも、暗黒騎士と王族の間に産まれた子供であり、暗黒騎士の後を継いだ後継者なのだろうか?
いろいろ聞きたい事が山ほどあるが、今は──目の前の悪魔、アレイン・オールドとその部下ヤルダバオトをどうにかしなくてはならない。
しかし、私達はこの後思いしった。実感した、体験した、目撃したのだ。英雄の領域……伝説に謳われる価値があるであろう、激戦を。
「そこの悪魔のような姿をした最高に美しい竜人の方、私の妻になっていただけませんか?」
「はぁぁああ!?」
魔王アレイン・オールドから突然告白された。というかこれ、結婚を前提にした告りだよな?妻ってそう言う事だよな?いや!落ち着け私!冷静になれ!前にも似たようなシチュエーションがあったはずだ!そう、あれは……竜王達から
リュウノは一旦咳払いをすると、魔王に問う。
「あまりに急だな、魔王よ。そんなに我が欲しいのか?」
「ええ。貴方を私の妻にして、貴方との間に子供を作りたい。」
「( °≡°)ファッ!?」
ド直球過ぎだろぉぉぉ!?結婚だけでなく子供まで作る予定かよ!?そんな──いや、待てよ?落ち着け私。きっとこれはウルベルトさんの演技に違いない。いわゆる悪ふざけの類いだろう。なら!
「そ、そうか、子供まで作るつもりなのか。しかし、我はそう安い女ではない。我が欲しいのなら力づくで奪うしかないぞ!魔王よ。」
ドラゴン的に言うなら、この条件が一番しっくりくるだろう。ドラゴンという種族にとって、『欲しいのなら奪え!』精神が当たり前だし!
「ほう?そうきましたか……」
リュウノの意外な返事に、しばらく考え込む魔王。しかし、すぐに顔をあげると、魔王はニタリと笑う。
「わかりました。では、そこの邪魔な純白の鎧の騎士を倒し、貴方を奪い去りましょう!」
「えっ!?」
いきなり矛先が自分に向けられた事に驚くたっち。今までの流れで魔王がピンポイントでたっちだけを指名するのはおかしいのだが……リュウノには察しがつく。ウルベルトとたっちは昔から仲が悪い。今回もきっと、ウルベルトの個人的な思念によるものだろうと。
「そこの純白騎士!さっさとそこの美しい竜人を私に渡しなさい。そうすれば……命までは取りませんが?」
「な、なんだと!?」
「貴方と彼女では不釣り合いだと言ったのです。貴方のような正義気取りの男に彼女はもったいなさ過ぎます。彼女にふさわしいのは、魔王であるこの私なんですよ。」
「ふざけるな!リュウノさんを……お前のような悪魔には決して渡さない!渡すものか!彼女は私の大切な人なんだ!」
あれー?なんかこの流れ、たっちさんも私が好きでした見たいな雰囲気になってるんだけどぉ!?なに、私、ヒロインポジションなの!?こんな悪魔チックな見た目なのに!?
「美しい竜人の方!この悪を司る魔神である私が、そこの正義を気取る純白騎士をはっ倒して差し上げましょう!」
「リュウノさん!正義の騎士であるこの私が、貴方を最後まで守りきります!あの悪魔は私が退治しますので!」
「お、おう…」
いや、どうするのさ、この状況!私が一番対応に困っているんだが!?か弱いヒロインならともかく、私も戦闘可能なんですけど!?
リュウノが困惑していると、イグヴァルジを筆頭にしたミスリル冒険者達が武器を構え出す。
「え?イグヴァルジさん達、何を──」
「おい、悪魔!」
イグヴァルジが魔王に向かって怒鳴りながら剣を突きつける。
「はい?なんです?」
「さっきから聞いてりゃ、訳の分からねぇ事ぬかしやがって!てめー見たいなヤギだがヒツジみたいな顔をしたヤツなんざ怖くねーんだよ!行くぞぉ、お前ら!」
「(*゚ロ゚)(*゚ロ゚)(*゚ロ゚)ォォォオオ!!!!!!!!」
イグヴァルジの言葉を合図に、ミスリル冒険者の3チームが一斉に魔王とヤルダバオトに向かって走り出した。
「ちょっ!?お前らじゃ無理だ!戻って来い!」
リュウノが止めるが、もはや彼らにはリュウノの声は届かない。
「仕方ありませんね……ヤルダバオト。」
「はい。何でしょうか、魔王様?」
魔王に名前を呼ばれたヤルダバオトがスッと立ち上がる。そして──
「殺ってしまいなさい。」
「かしこまりました。では、馬鹿な人間の皆様方、さようなら。」
そう言いながら、ヤルダバオトは魔法を唱えだす。ヤルダバオトの背後に、黒炎でできた長くて巨大な壁が現れる。
「やばい!」
いち早く察知したリュウノが、漆黒の剣と組合長の近くに素早く移動する。
「お前ら固まれ!早く!」
リュウノが漆黒の剣と組合長に向かって指示を出した直後、ヤルダバオトの魔法が発動する。
<ヘルファイヤーウォール/地獄の壁>
ヤルダバオトの背後に出現した黒炎の壁が凄まじい速さで移動を始め、イグヴァルジ達を黒炎に包み込んだ。イグヴァルジ達は叫び声すら上げる間もなかった。何故なら一瞬で灰になったからだ。
「イグヴァ──くそっ!」
イグヴァルジ達も助けようかと思ったが、位置的無理だと判断したリュウノは即座に諦める。いくら竜王と合体したとしても、できる事には限界がある。なら、できる範囲で最善を尽くすしかない。
イグヴァルジ達を一瞬で灰にした脅威の黒炎はなおも移動を続ける。そのまま黒炎の壁はリュウノ達に迫る。黒炎がリュウノの目の前に来た瞬間、リュウノが魔法を発動させる。
<ダークプロテクション・ウォール/闇の加護障壁>
ドーム状の黒い半透明の障壁が現れ、リュウノ達を黒炎から守る。リュウノと漆黒の剣、組合長は黒炎の被害にあわずに済んだ。
皆の無事を確認し、安堵したリュウノは通り過ぎた黒炎を目で追う。
黒炎はなおも移動し続け、竜王達に迫るが、竜王達は各々のやり方で黒炎を凌ぐ。
ファフニールは黒炎の壁に向かって大剣を振り下ろし、その衝撃で裂け目を作ってくぐり抜ける。
バハムートは元から炎に対して完全耐性を有しているため仁王立ち。
ナーガ、ティアマト、白竜は、それぞれ土、水、雪でできた球体状の殻を作って守りの姿勢に。
リヴァイアサンは火炎耐性の高い酸膜を張る。
青龍・黄龍は黒炎が通り過ぎるのに合わせて一瞬姿が消え、再び同じ位置に現れる。
神竜は魔法である
<ホーリープロテクション・ウォール/光の加護障壁>
を唱えて自身を守る。
ヤマタノオロチは得意の風魔法で自分の目の前の黒炎を吹き飛ばした。
シャドウナイトは自身の影に潜り込み、黒炎をやり過ごした。
そうして竜王達を通り過ぎた黒炎は墓地の防護壁にぶつかり、強烈な火花を散らせながらようやく消える。
黒炎が消えたのを確認したリュウノは、灰になったイグヴァルジ達の遺体を再び見る。最早動かない彼等を見つめながら、リュウノは漆黒の剣と組合長に向かって言う。
「お前達、お前達もあんなふうになりたくなかったら、防護壁の向こうまでにげるんだな。」
漆黒の剣と組合長は、イグヴァルジ達のあられもない姿を見て恐怖する。そして、リュウノの言う通り、悪魔に最大限警戒しながら後退していった。
それを確認したリュウノは、たっちの方を見る。防御系のスキルを使用して乗り切った様子のたっちが、悪魔に向かって怒鳴る。
「悪魔!お前、罪のない人達を平然と殺すなんて……何を考えている!?」
「罪のない?冗談は止めてください。今死んだ彼等は冒険者ですよ?彼等が冒険者である以上、モンスターに殺されても仕方ない職業のハズですが?」
「ぐっ……!それはっ…!」
「それに人間達を殺されたくないのであれば、貴方が頑張って守ってあげるべきだったのでは?そちらの美しい竜人の女性は、見事に人間達を守ってあげてましたよ?なのに貴方は自分自身を守る事しか考えてなかった。貴方の正義なんて所詮、その程度ものだったのですね!」
「───ッ!悪魔、貴様ぁぁぁ!」
魔王に馬鹿にされたたっちさんが、怒りをあらわにする。
「魔王アレイン・オールド!貴様はこの私が倒す!」
「やれるものならどうぞ。貴方の正義、私が真正面から踏み砕いて差し上げます。」
リュウノは焦る。ウルベルトとたっちが本気で争った場合、この墓地そのものが無くなる程の被害になりうるからだ。リュウノは、近くに人間達が居ない事を確認すると、ヤルダバオトに尋ねる。
「ヤルダバオト、1つ質問していいか?」
「何でしょうか?」
「あの2人、止めなくていいのか?」
「はい。大丈夫かと。」
「本当の本当に?」
「………さあ?私にも分かりません。」
「やっぱりかー!」