更新が遅くなりました。申し訳ないです。
エランテル編を書いてる途中なのに、先のストーリーばかり思いついて、アイデアノートに書き込む作業ばかりして続きが書けなくてイライラしてました。ああ……早く、ジルクニフ皇帝とのやり取りを書きたい。王国編も書かないといけないのに、帝国編ばかりアイデアが生まれてくるぅぅぅ!
闘技場に、ワーカーに、魔法学院での……!くっ!帝国はネタの宝庫かよ!まったく!
·
·
·
「危ねぇー!今の炎の攻撃は何だったんだよ!?」
「魔法だろうな……。動く炎の壁とか、防ぎようが無いだろ!」
「あの……翼の生えた人間みたいなヤツと隣のバケモノは何なんだ!?」
「知るかよそんなの!それより、ミスリルの冒険者チームが丸焼けにされて全滅した事が一番ヤバイだろ!」
先程起きた事を語り合っているのは、墓地の防護壁に隠れながら様子を伺っているミスリル以下の冒険者達である。彼らは、ヤルダバオトが放った魔法でミスリルの冒険者達が丸焼けにされた光景と迫り来る炎の壁に恐怖し、防護壁の裏に逃げ込んだのだ。
「エ・ランテルの最高クラスの冒険者チーム3つが……たった1つの魔法で……一瞬で全滅だなんて……いったい、あの人物は何者なんだ!?」
魔術師組合長のラケシルは恐怖と興味の入り交じった視線で、今の魔法を使った人物を見ていた。恐怖は実力の違いに対して、興味は魔法の方だ。
自分の知らない魔法や高位の魔法が存在し、それを扱う者が居る。なら、それに関わりたい、できる事なら学びたい、未知の魔法を手に取りたい、そう思ってしまうのだ。
「見ろ!あの竜騎士達は無事だぞ!」
「オマケに、リュウノとか言う黒騎士の姉ちゃんが、組合長と漆黒の剣を守ってるぞ!?」
「でもよ……あの姉ちゃんも、途中から姿変わったような?」
「ココからじゃ暗くてハッキリとは……おい、あれ!組合長と漆黒の剣の奴らがこっちに戻って来るぞ!」
漆黒の剣のメンバーが組合長を守りながら防護壁へと撤退してくる。防護壁の門を潜り、防護壁裏までやって来た彼等は、まるで死地から生還した兵士のような安堵の表情を浮かべていた。
防護壁裏に隠れていた冒険者達が組合長達に群がり、まずは無事だった事を喜び合う。次に、何があったのか詳細をラケシルが聞き始める。冒険者組合長のプルトンの話を聞いて、ラケシルは驚愕する。
「魔神の悪魔・魔王アレイン・オールドと、その部下ヤルダバオトだと!?」
「ああ……アレはヤバイ。リュウノ君が私達を守ってくれたおかげで助かったが、あれは人間が勝てる相手とは思えん!」
「ならどうする!?王都から応援を呼ぶか?」
「そんな時間はない!今は──」
組合長は防護壁の閉ざされた門を見つめる。門の向こうでは、リュウノ達が悪魔と睨み合っているに違いないだろうと予想しながら。
「──今は、アダマンタイト級冒険者であるリュウノ君と彼女の仲間に頼るしかない。現状、彼等が私達の唯一の希望だ。彼等が悪魔を倒してくれる事を祈るしか──」
誰もがそう思った時、漆黒の剣のメンバーの1人、ニニャがポツリと呟いた。
「モモンさん達が入ればなぁ……」
その呟きに、即座にプルトンが反応する。
「その…モモンというのは?」
「えっと……私達と依頼に同行してくれた冒険者チームの方々です。ランクはカッパーなんですけど、実力はかなり高い人達でした。最低でもミスリルの冒険者チームくらいはあると保証します。」
「それは本当かね!?で、彼等は今何処に?」
「ポーション職人のバレアレさんの護衛についています。予定では、そろそろコチラに来る予定だったかと──」
そこまで言ったとき、防護壁とは反対の方角から声が響いた。
「おーい、お主ら無事か?ポーションを持って来たぞーい!」
「怪我をしている方はいますか?支援物資を持って来たました!」
バレアレ親子がポーションを大量に乗せた荷馬車に乗って現れた。その周囲にはモモン達が護衛する形で付き添っている。
回復薬の登場に歓喜の声を上げる冒険者達をよそに、漆黒の剣の皆がモモン達との再開に喜び合う。
「良かった!モモンさん達が来てくれた!」
「組合長、あの人達です!」
「ふむ?彼等がそうかね?」
プルトンはモモン達を一瞥する。フルプレートの高そうな鎧を来た男、不思議な格好をした二人組の男性、そして美女の二人組に恐ろしい魔獣。
明らかに異色な組み合わせの冒険者チームだが、連れている魔獣の強さを考慮するなら、カッパーの冒険者でおさまる人物達ではない事が見てとれた。
「はい!あ、ご紹介します。コチラがリーダーのモモンさんです。」
ペテルの紹介に合わせ、「どうも。」と言いながら軽くお辞儀をするモモン。
「モモンさん、コチラが冒険者組合のプルトン・アインザック組合長さんです。」
「どうも。君がモモン君かね?」
「はい。こんなところで冒険者組合長にお会いするとは思いませんでした。」
そんな形で互い挨拶を交わし、チームの紹介を手短に済ます。そして、組合長が現在の状況をモモン達に説明する。
「なるほど……悪魔ですか。とんでもない強敵が現れましたね。」
モモンはそう言いながら隣に立つウルベルに視線を向ける。
「ええ!まったくです!リュウノさ──っん!を妻にしようとは!その悪魔は許せません!このウルベル、リュウノさ──っん!の為に全身全霊をかけて戦いましょう!」
あまりにテンションの高いウルベルに漆黒の剣が不思議そうな目線を送っている事に気付いたモモンは、若干恥ずかしそうにしながら慌てて言葉を続ける。
「そ、そうですね。悪魔に彼女を差し出す訳には行きません。皆さん、私達もリュウノさん達に加勢しましょう!」
「リュウノさーーん!ご無事ですかぁー!?」
「お!ついに来たか!」
防護壁の上からコチラに声をかけている人物を確認したリュウノは、ヤルダバオトとアレイン・オールドに聞こえるように、わざとらしい演技に移る。
「悪いが悪魔達、コチラも援軍が来たので、そろそろ行動させてもらうが、
「ええ、構いませんよ。コチラも
ヤルダバオトの返事の意味を理解し、リュウノは残りのアンデッド軍団とヴァンパイア部隊に指示を送る。
「さて、第二フェイズ開始だ!」
◆◇◆
モモン達の登場と回復薬の存在により、若干ではあるが士気が上がった冒険者達。彼等は再び防護壁の上に登り、墓地の状況を確認しながら警戒を開始していた。
バレアレ親子の周囲には、ルプとナーベが警護についており、モモン、ウルベル、ペロロンの3人と漆黒の剣が防護壁の上に上がっていた。
防護壁の上から墓地の状況を見たモモンが、プルトンに問いかける。
「敵は二体だけですか?」
「墓地に居たアンデッド達は、リュウノ君達がほとんど片付けてくれたよ。」
「そうですか。しかし、肝心のズーラーノーンの組織の者達が確保できていないのですよね?それだと、かなりまずいですよ。」
「どうしてかね?リュウノ君達が入れば、大丈夫だと思うのだが?」
プルトンは敢えてモモンに質問を投げかけた。カッパーの冒険者であるモモン達の真の実力を測るためだ。
漆黒の剣のメンバー達の評価が正しいのであれば、エ・ランテルの次期主力候補になりうる存在として、冒険者としてのランクアップも検討しなくてはならない。
幸い、ここには冒険者組合長である自分と魔術師組合長のラケシル、その他大勢の冒険者達が居る。この墓地での出来事を評価材料にすれば、モモン達を即座にミスリル級の冒険者くらいにまで引き上げるのは容易である。次期主力として優遇し、彼等にエ・ランテルで冒険者活動を続けて貰えるよう頼む事もできるかもしれない。
何より、アダマンタイト級冒険者であるリュウノと知り合いだと言うのが1番デカい。彼等を通じて、彼女にもエ・ランテルで冒険者活動をやってもらえないか相談したいのだ。今回の件が終われば、リュウノは二度とエ・ランテルに来ないと宣言していた。来たとしても、冒険者として活動してくれる保証はない。
「モモン君の意見を聞きたいね。」
「では…まず、あの悪魔達ですが、かなりの強さであると予想します。アダマンタイト級冒険者であるリュウノさんが警戒を示す程の相手ですからね。」
「うむ。それは私達も先程実感したよ。我が冒険者組合の自慢のミスリル級冒険者達が一瞬で殺されたのだ。恐ろしい奴らであるのはわかりきっている。」
「次に、ズーラーノーンが追加のアンデッドを召喚する可能性があります。おそらくですが、最初の軍勢より強力なヤツを。」
モモンの予想に、魔術師組合長のラケシルが反論する。
「まさか!あれだけ大量のアンデッドを召喚した後だぞ!魔力が持つ訳ない!その上、強力なアンデッドを召喚するなんて!もしそんな事が可能なら、ズーラーノーンには余程優秀な
モモンはヘルムの下でほくそ笑む。アンデッドを大量召喚した黒幕はリュウノであり、そのリュウノが自分の手でアンデッドを処理しているのだから。
「そうですね。だからこそ、リュウノさんは悪魔と睨み合っているのです。下手に敵陣に突っ込むと、分断され、防護壁の防衛ができなくなる事を警戒していると、私は予想します。」
「分断?まさか、我々と彼女達の間にアンデッドが割り込んで来ると?」
「その可能性は充分──」
そこまで言った時、弓を構えていたペロロンが大声を出す。
「気をつけるっス!何かコッチに飛んで来るっス!」
その言葉に、冒険者全員が上空を見つめる。
そして──
「嘘だろ……。アレは──」
上空から飛来した巨体──その数は20体。それが、リュウノ達の目の前に現れ、着地する。そして一斉に咆哮を上げる。
「スケリトル・ドラゴンだぁぁぁ!」
冒険者の誰かが大声で、現れた巨体の名前を叫ぶ。
「馬鹿な!魔法に絶対の耐性を持つスケリトル・ドラゴンが20体もいるぞ!?」
「ありえん……あれもズーラーノーンが召喚したアンデッドだと言うのか!?」
組合長達が驚きの声を上げる。無論、他の冒険者達も同じだった。
「無理だ!一体だけなら俺達が一斉にかかれば倒せるかもしれないが、20体なんて……」
「ミスリル級の冒険者チームが全滅したのに、もっとヤバイのが来るなんて……」
「勝てる訳ねぇよ……」
最早戦意喪失に近い状況に追い込まれた彼等に、さらに追い討ちがかかる。
「まだまだ来るっスよ!アレを見るっス!」
ペロロンがリュウノ達の右側を指さす。その方向から松明の明かりが等間隔に移動しながら並んでいるのが見えた。そして現れたのはアンデッドの軍勢、しかも今度はしっかりと武装をした
円形の盾とシミターを持つ骸骨の戦士の大軍、それらが全て立派な胸当て<ブレスト・プレート>を纏っている。
「おいおいマジかよ……あっちからも来たぞ!」
レンジャーのルクルットがリュウノ達の左側を指さす。そちらの方からも同じ数の軍勢がリュウノ達目がけて走って来ていた。
「くそ!リュウノさん達を挟み撃ちにするつもりか!ペロロンさん、数は分かりますか?」
「両方合わせて約300体っス!」
「これはいけません!すぐにリュウノさ──っん!達を助けにいきましょう!」
モモン達がリュウノ達に加勢しようとした時、背後からバレアレ家の悲鳴が上がった。
「ヴァ、ヴァンパイアじゃあぁぁぁ!」
「あわわわ!助けて下さいぃ!」
「二人とも下がるっす!」
ルプの指示に従い、ポーションの荷馬車から慌てて離れ、冒険者達の方へと逃げ出す2人。
荷馬車の背後にヴァンパイアの集団が出現していた。そして、その先頭には2人の人物が立っている。
「ふーむ……そう逃げ出さなくてもよいではないか、薬師の人間よ。」
「そうです。貴方達は遅かれ早かれ、この
1人は老人を思わせる雰囲気の男。髪の色は白の長髪、着ている服は色褪せボロボロだが、元は仕立ての良い服だったのだろう。その佇まいは王族を思わせる風格に満ちていた。手には3m程の長さの血錆だらけの槍を持っている。
もう1人は12歳くらいの年齢に見える少女。蝙蝠の形をした仮面上の金属の眼鏡、夜会巻きの真っ赤な髪に、血塗れた白いドレスという格好をしており、手には真っ赤に染まったレイピアを握っている。
ペロロンから見れば、シャルティアのプロトタイプ、もしくは劣化版という感じに見えた、という評価だ。
「余はヴァンパイアの王、ヴラドである。余に串刺しにされたい者は前に出よ。」
「私はヴァンパイアの姫、エリザベート。さあ、人間達よ、私に血を下さいな?」
たっちからの報告にあった要注意のヴァンパイア。その2人を確認した冒険者達は恐怖におののく。
「オリハルコンクラスの冒険者を圧倒するヴァンパイアに、魔法を使うヴァンパイアだ!気をつけろ!」
「どうすんだよ!ポーションの荷馬車が!」
「逃げ場がねぇよ!前はアンデッドの軍勢、後ろはヴァンパイア、俺達も挟まれてんじゃねーか!」
「そこのカッパーの嬢ちゃん達、アンタらも下がれ!死んじまうぞ!」
ルプとナーベがヴァンパイア達の正面に2人だけで立っている光景を、冒険者達が防護壁の上から見下ろしていると、モモンがナーベ達に指示を出す。
「ルプ、ナーベ!それに『ハムスケ』!ヴァンパイア達は任せるぞ。」
「ハッ!」「ハイっす!」「任せるでござる!」
ヴァンパイアの集団をあの2人と魔獣だけに任せるという判断を下したモモンに、周りの冒険者達は信じられないという顔をする。
そんな彼等の思いをよそに、ルプとナーベがヴァンパイア達に向かって走り出す。遅れてハムスケも走りだす。
「ふん。まずは小手調べと行こうか。お前達、あの人間の女を捕らえよ。なるべく
ヴラドの指示に従い、下僕のヴァンパイア達がルプとナーベを捕まえようと動き出す。
「あら、捕まえますの?」
「ハハハッ!美しい美女の生き血が欲しくてね。獣も手懐ければ、番犬変わりになるからな。」
ルプとナーベ達が、群がって来たヴァンパイア達を攻撃している光景を見ながら、プルトンはモモンに忠告する。
「モモン君!いくらなんでも、彼女達だけでは無理だ!」
「いや、そうせざるを得ない状況です。組合長、あれをご覧下さい。」
そう言ってモモンは墓地の方を指さす。
「なんだ!アレは!?」
組合長も他の冒険者達も、墓地の状況を見て目を疑う。
墓地では、竜騎士達がアンデッドの軍勢に突撃し、乱戦状態になっていた。リュウノはヤルダバオト、たっちはアレイン・オールドと対峙しており、周囲をスケリトル・ドラゴンに囲まれた状況で激しい戦いを繰り広げている。空にはいつ間に現れたのか、さらに20体のスケリトル・ドラゴンが羽ばたきながら滞空している。
普通に考えれば絶望的な状況である。仮にミスリル級の冒険者達が健在だったとしても、今の状況ではどの道全滅していただろうと誰もが予想できた。
まさに地獄のような戦況にもかかわらず、リュウノ達は果敢に戦っている。いや、むしろリュウノ達の方が勢いがあり、
この調子なら、リュウノ達だけで充分だと思うだろう。しかし、問題はそこではない。
「今はリュウノさん達が押していますが、その内疲れが溜まるでしょう。ズーラーノーンが再びアンデッドを召喚し長期戦になった場合、リュウノさん達が不利になる可能性があります。悪魔達はそれを狙っているのかもしれません。」
モモンの予想に、冒険者としての経験が豊富な冒険者組合長のプルトンも同意する。
アンデッドは疲労を感じないモンスターであり、どんな強敵に対しても恐怖を感じる事なく向かってくる習性がある。だからこそ、集団で現れるアンデッドの脅威は凄まじいのだ。
「つまり、ズーラーノーンをどうにかしなければ、この状況を打開できない、そう言う事だね?」
「おっしゃる通りです、組合長。現状、やって来るアンデッド達はリュウノさん達で防げています。なら、敵の本陣まで切り込める別働隊が必要になります。」
「それが君達だと言うのかね?」
「現状では。」
プルトンは背後の戦況を確認する。
ナーベとルプの戦闘能力は意外に高く、既に半分以上のヴァンパイアを倒している。
ヴァンパイア達の何人かが防護壁上の人間を狙っていたが、ペロロンの弓とウルベルの魔法であっさり妨害された事で諦めている。
余談だが、トブの大森林の森の賢王は、新しい名前『ハムスケ』という名前を与えられた。ハムスケは、ルプとナーベの攻撃で倒れたヴァンパイアにトドメ刺す役割をやっている。
女性2人と魔獣の活躍、ペロロンの弓捌き、ウルベルの熟練された魔法、これだけでモモンのチームの実力の高さが理解できた。なら、そのリーダーであるモモンの実力も相当なものであるだろう。
この状況で頼れる存在は、アダマンタイト級冒険者であるリュウノとその仲間達、実力未知数のモモン達だけである。
なら、どうするか。答えは1つしかない。自分達の持てる自慢のカードは全て
「わかった。君達に任せよう。」
「ありがとうございます。」
「組合長として君達にお願いしよう。ズーラーノーンを打倒し、この都市を救ってくれ!」
組合長は真っ直ぐモモン達を見据える。新たな英雄になるかもしれない勇敢な者達を目に焼き付けるために。
「ええ。もとよりそのつもりです。」
そう言うと、モモンは墓地の方を向く。
「では、行きましょう!二人とも!」
そう言って墓地の方へと飛び降りたモモンに合わせて──
「はいっス!」
「Wenn es meines Gottes Wille!(我が神のお望みとあらば!)」
──ペロロンとウルベルも飛び降りた。
「ドイツ語はやめろ!」
「あ、ハイ。」
「真空の刃よ!全てを切り裂け!」
無駄に凝った前唱の後に、魔王がたっちに向かって魔法を放つ。
<現断/リアリティ・スラッシュ>
魔法的防御のほぼ全てを完全無効化して放たれる第十位階の中でもトップクラスの破壊力を持つ攻撃魔法。ただしMP消費の燃費が悪い。
「うおぉ!?危ねぇ!」
当たったら確実に致命傷になりうる魔法を、アンデッド達を華麗に捌きながら躱すたっち。
いや、アレだけは食らう訳にはいかないという必死さとプライドも感じられるが、どの道1番危険な攻撃であるのは間違いない。
ユグドラシル最強のワールドチャンピオンにしてナザリック最強の男が、低レベルのアンデッド達の攻撃で傷付く訳がないのだ。なら、魔王の攻撃にだけ注意していれば良い状況なのだが──
「ちょ!?待て、魔王!たまに<現断/リアリティ・スラッシュ>を混ぜてくるのやめろ!危ないだろ!」
「臨場感を出すためですよ。それに、撃つ時にわかりやすい詠唱を唱えてますから、避けるのは簡単でしょう?」
「ふざけるな!殺す気か!?」
「では、演技はやめて、
「違う!演技だ、演技!演技の方をやってくれ!」
「では、
「ああ、もう!そう言う意味じゃないですよ!」
相変わらず口論が絶えない2人が戦いあっている横で、ヤルダバオトと戦闘しているリュウノは笑っていた。
「クハハハハ!懐かしいなぁ!あの2人は相変わらずで何よりだ!」
ウルベルトとたっちの喧嘩は昔からである。では、仲が悪いのかというとそうでもない。ギルドメンバー全員で目的を達成したときには、あの仲が悪い2人が、肩を叩きあいながら互いの武勲を祝った事もある。
単に『相性が悪い』のでそりが合わない。というのがしっくりくる答えだ。
善を良しとするたっちと、悪を良しとするウルベルト。
戦士職最高クラスのたっちと、魔法職最高クラスのウルベルト。
対極に位置する存在同士であるが故に意見が合わずに言い合いなるのは、作戦会議やギルド会議ではもはや恒例行事とも言っていい程であった。
だからこそ、リュウノには懐かしい。
ギルド長であるアインズと一緒に2人の喧嘩を止めに入る事も何度かあった程に。
「さてぇ?ヤルダバオト。ここから先、我達が押し切って良いのか?それともまだ何かあるのか──ナァ!」
ヤルダバオトに向かって
ヤルダバオトの攻撃も、致命傷になるような攻撃はほとんどない。控え目な──嫌がらせに近いような妨害攻撃ばかりしかしてこない。
「もう少しお待ちを。せめて、
「別に構わんが、あっちの2人が大人しくしてくれるかはわからんぞ?」
こっちは完全に遊びだが、魔王とたっちの方はいつガチの殺し合いなってもおかしくない。あの2人が本気で殺し合いになれば、エ・ランテルが崩壊する可能性が凄まじく高くなるのだ。
「そうですね。
「クハハハハ!流石は悪魔だ!人間に容赦ないな!」
ヤルダバオトの発言と同じ指示をアンデッド達に送る。無論、最低限残っていて欲しい人材だけは殺すなという指示も混ぜて。
目的の為なら何人もの人間を犠牲にできる。いや、躊躇いがなくなったと思うべきか。
悪竜ウロボロスと合体しているせいか、人間達に対する忌避感が薄くなっているのかもしれない。
イグヴァルジ達が燃やされた時もそうだ。あれだけ関わり合いがあった人物が殺されたのに、彼等の為にかたきをとろうという気持ちなど一切無い。助けてあげられるなら助けたかったが、死んだのなら
そんな今の自分の人間に対する思いを一言で表すなら
──人間は所詮道具という存在にすぎない──
という考えだ。
ドラゴンという最強種の中には人間を言葉巧みに騙し、使い魔のように利用する者もいる。そうやって宝石や宝等の高価な物を自分の巣穴へと配達させるのだ。無論、自分の方が得するように仕向けておいてだ。
「んー……役に立たない者も燃やすか。モモン達の希少性を上げるなら──いや、減らし過ぎも問題か?低ランクの冒険者しか居ないからなー、エ・ランテルは。」
リュウノは考える。どうすればモモンチームの価値が上がるかを。今、集まっている冒険者達の戦力を『自分の軍勢』と仮定した場合の戦略分析を行う。
特に、今のリュウノの頭脳はウロボロスとの融合のせいか性能が格段に上がった状態である。
ウロボロスが保有する特殊スキルは3つ。
──死と再生・永劫回帰・全知全能Lv2──
死と再生は、即死魔法の使用と耐性の獲得、肉体の高速治癒の能力を得るスキル。
永劫回帰は、回数制限があるアイテムやスキルを無限に使用可能にできるスキル。
(※例えるなら、使用すると無くなってしまう1回限りのスクロールを何度も使用可能になる、など。)
そして、全知全能Lv2──本来なら全知全能とは、『知らないことは一つもなく、できないことは何もないということ。すべてのことを知り尽くし、行える完全無欠の能力のこと。』という意味だ。
もし、この全知全能がLv5だったなら、リュウノはこの異世界の全てを理解できたであろう。
全知全能Lv2は、『他人ができる事は自分もできる。他人が理解できている事は自分も理解できる。』という能力になっている。
例えば、この異世界の住民の能力を参考にすれば、リュウノは異世界の文字を読む事が可能になる。料理人の能力を参考にすれば、リュウノは料理ができる。
ならデミウルゴスという──ナザリック地下大墳墓 第七階層の階層守護者であり、防衛時のNPC指揮官という設定を与えられた悪魔──悪魔的叡智の持ち主であり、軍略、内政、外政などの国家作用すべてに極限の才能を持つ者を参考にしたらどうなるか。
すぐさま最適な案が浮かぶが、リュウノは舌打ちをして取り消す。
「人質でも居れば、もう少し楽な展開にできたんだがなぁ……」
戦えない大勢の市民を人質にとり、戦場へと連行。市民達の前で激しい戦いを行えば、悪魔への恐怖と冒険者への期待を同時に体感させられただろう。そうすれば、ズーラーノーンの連中を撃破したモモンチームも多少は評価を得る事ができるだろう。
そんな事を考えていると、モモン、ペロロン、ウルベルがアンデッド達の攻撃をくぐり抜けながらやって来る。
「リュウノさん、大丈夫ですか!?」
「当たり前だろ!我が召喚したアンデッドだぞ。」
「あ……いや、それはそうですけど、なんかリュウノさんが悪魔っぽい姿になってたので……」
「あーそっか。皆、我のこの姿を見るのは初めてか。」
リュウノが竜王合体というスキルを所持している事をモモンは知ってはいたが、そのモモンにも見せた事がないウロボロスとの合体の姿だ。モモンが心配するのも無理はない。
「リュウノさ──っん!なんと美しきお姿で!この私も見惚れてうっとりしそうでぇす!」
「リュウノさんがサキュバスみたいになってるっス!めちゃくちゃエロいっス!」
「あーはいはい、わかったから、舐め回すような視線を送るなー2人とも。」
興奮気味の2人を適当にあしらいながら、リュウノはモモンに指示を出す。
「モモン、
「分かりました。しかし、あの悪魔達はどうするんですか?」
「ちょっと不利な状況にもっていけば、転移の魔法で逃げるだろ。今回は、魔王登場の宣伝みたいなもんだろうしな。」
「なるほど。では、最奥にいるであろうズーラーノーンをとめてきますね。2人とも、行きましょう!」
「はいっス!」「YES!」
近づいて来るアンデッド達を蹴散らしながら最奥へと目指すモモン達を見送ったリュウノは、ヤルダバオトの方を向く。
そのリュウノの表情に、ヤルダバオトは仮面越しに笑う。
「さて……たっちさんには本気で悪いが──」
そう呟くリュウノの表情は、まさに──
「──人間達には地獄を見てもらおうじゃないか。」
悪魔のごとく、人間を苦しめる事を楽しむ表情であると、ヤルダバオトにも思えた。