首なしデュラハンとナザリック   作:首なしデュラハン

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更新遅れてすみません。
年末が忙しくて書く時間があまりなかったのです。



第34話 報告会

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──ナザリック・玉座の間──

 

 

「では、これより近況報告会を行う。」

 

玉座に座ったアインズの──支配者に相応しい──声が玉座の間に響く。

 

「なお、ヘロヘロさんとセバス、ソリュシャンは、任務中で欠席の為、今いる我々だけで報告会を行なう。」

 

アインズの前には、片膝をついて忠義の意を示したNPC──階層守護者や領域守護者、その他高レベルの者──達が勢揃いしており、誰もが真剣な表情で玉座に座ったアインズを見ている。

 

そんな光景を、アインズの隣に設置された玉座──デミウルゴス手製の椅子──に座りながら、リュウノは恐る恐るといった感じで眺めている。

 

アインズの座る玉座の横には、アインズの左手側に2つ、右手側に3つの玉座──これもデミウルゴス手製の骨で作られた玉座──が設置されており、至高の御方ことギルドメンバー達が座っている。

私の席はアインズの左手側で、私のさらに隣はウルベルトさんが座っている。

反対側には、たっちさんとペロロンチーノさんが座っており、空席はヘロヘロさんの席だと言う事がわかる。

 

デミウルゴス手製の玉座は、様々な動物の骨で作られた椅子だったのだが、たっちさんだけが座るのを拒否した。その為、たっちさんだけがアインズの魔法で作られた、漆黒の大理石の椅子に座っている。

デミウルゴスの椅子に座るのを拒否した理由は大体察しがつく。たっちさんの趣味に合わなかったのだろう。

 

正直に言うと、私も遠慮したかった。デュラハンや竜王合体した時の肉体と精神状態なら平気だったかもしれない。が、ただの人間の状態だと、骨で作られた椅子に座るというのがなんとも快くない。オマケに骨が硬すぎてお尻が痛くなってしまうのだ。

 

──後でクッションを敷くか、椅子を変更しよう──

 

と、いつもの状態なら考えていたであろう。

だが今の私には、そんな事を考えている余裕がない。今は、自分の周りに人間じゃない者達がたくさんいるという状況に、慣れる事に必死だからだ。

 

それは何故か?答えは、今の私が人間だからだ。

 

ナザリック地下大墳墓のほとんどのNPCは、人間を見下す設定が多い。中には人間を食料にする者まで居る程だ。

 

今の私からしてみれば、ナザリック地下大墳墓にいるほとんどのNPCが恐怖の対象に見えている状態なのだ。わかりやすく言うなら、化け物が蔓延る魔王城に1人の人間が入りこんで取り囲まれた、という感じが1番しっくりくる状況だ。

 

安心できるのは、人間種であるアウラやマーレ、人の姿に近いプレアデスのメンバーの何人かであり、他のNPC達に関しては平気ではない。

 

特に恐怖公は見るだけでも気持ち悪い。ユグドラシル時代から苦手ではあったが、リアルに動くようになってさらに気持ち悪るさがアップしている。

先程、デミウルゴスを連れて挨拶に行った時、配下のチビゴキブリがワラワラと寄ってきたときは悲鳴を上げた程だ。うん。もう一生、恐怖公の部屋には行かない。行きたくない。

 

 

─────────────────────

 

 

恐怖公とは、ナザリックにいる直立する30センチのゴキブリである。

ナザリック地下大墳墓の第二階層にある、黒棺(ブラック・カプセル)の領域守護者という役職であり、同時に「五大最悪」の一人でもある。

第二階層なのでシャルティアの部下でもあるが、ナザリック女性陣からは外見的にかなり嫌われている。

 

 

─────────────────────

 

 

「(これが、人間視点から見たナザリックの恐ろしさか。でも、皆を恐れてるなんて、口が裂けても言えないしなぁ。それに、これは私側の心の問題であって、皆は悪くない訳だし。報告会が終わるまで耐えれば良いだけだ。報告会が終わるまでの辛抱だ。)」

 

そう思いながら、リュウノは必死に恐怖を抑え、ギルドメンバーに心配されないよう、恐怖を感じている事を隠す。

 

だが怖い。今まで平気だったのが嘘のように怖い。

──ユグドラシルの時には感じなかった。

──デュラハンの時でも感じなかった。

──竜王合体している時でも感じなかった。

 

見慣れたはずのナザリックの玉座の間に、見慣れているはずのNPC達が自分の前に勢揃いしている光景が、今は何故か──ただただ恐ろしい。

ぶっちゃけると、さっさとデュラハンの姿に戻って気持ちを楽にしたい。しかし、報告会が終わるまでは人間の──会話が可能な──状態で居て欲しいとアインズにお願いされたのだ。

 

「(あー……くそ…報告会が始まるまでは何ともなかったのに……何故だ?)」

 

リュウノはギルドメンバーを改めて一瞥する。

 

玉座に座り、最近の出来事に関する情報や報告を淡々とNPC達に伝えていくアインズ──何故か<スキル/絶望のオーラ>を発動させ、オーラを纏っている状態──と、それを聞いているギルドメンバー達が目の前に居る。

見慣れているはずのギルドメンバーの異形種の姿。それらも、身も心も人間に戻ってからはひと味違うものに見える。

 

たっちさんは鎧で全身を隠している為、さほど恐怖は感じない。というか、たっちさんが1番安心できる存在である。

 

ペロロンチーノさんはバードマンという種族のせいか、見た目が鳥っぽいので──自分が動物好きな性格が幸をそうしている補正もあってか──こちらも大丈夫。ただ、顔が鳥なので、素顔でも表情がわかりにくい。

 

ウルベルトさんも悪魔ではあるものの、バフォメット(山羊)という動物的要素が多いおかげか、こちらも何とか大丈夫である。しかし、その悪魔という種族である事が不安であって……あれ?ここは異世界に来てからずっと感じてたやつだから、変わらないか。

 

問題はアインズだ。アインズに関しては少しばかり恐怖を感じている。冒険者モモンの姿の時は平気だったが、いつもの死の支配者(オーバーロード)の姿は怖いと思ってしまう。元人間だと言うのは理解していてもだ。

 

「(絶望のオーラのせいで、そう見えてるのかな?)」

 

悪役ロールプレイの一環で、アインズが絶望のオーラを発動させて魔王みたいな演出をする事は、ユグドラシル時代でも何度か目撃している。

おそらく今回も、NPC達の前でわざとオーラを発動させて、支配者らしい振る舞いや雰囲気をだそうという見栄を張っているのだろう。

 

「(おかしいな…自分で召喚したアンデッド達は平気だったのに……何故アインズを怖いと思ってしまうんだろう?)」

 

アインズを見つめながら、王都の拠点で召喚した死の支配者の賢者(オーバーロード・ワイズマン)の事を思いだしていると、アインズが私の視線に気付いたのか、顔をこちらに向ける。

 

「どうかしましたか、リュウノさん?」

「──ッ!?」

 

ただ尋ねられただけだった。すぐ隣に居るアインズと視線が合っただけだった。でも、目の前にいるアンデッドと目が合った、それが怖いという感覚をさらに増幅させ、その感覚が体を走り抜ける。思わずビクリと体が跳ねる。

 

──なんで私はアインズを怖がっているんだ?いつもの見慣れた相手じゃないか──

 

「あ、いや……えっと──」

 

アインズの視線が──骸骨の頭の窪みに収まっている血のような赤い光を放つ目が──こちらを見つめて来る。それだけで、容易く相手を呪い殺せるのでは?と、思える程の恐怖を与えてくる。

 

──落ち着け、私!目の前にいるのはギルドメンバーだ。恐ろしいアンデッドじゃない──

 

「──なん…でも………ない。」

 

震える唇を動かし、ようやく絞り出した言葉。その歯切れの悪さを自分でも実感する。

 

「リュウノさん、どうしました!?顔色が悪いですよ?」

「ふぇっ!?」

 

骸骨のアンデッドが心配そうに伺ってくる。たったそれだけなのに、体が寒く感じるほど震えが止まらない。

 

──おかしい。軍服を着ているはずなのに、寒いし汗が止まらない。何でもないはずなんだ。ただ私の心が、精神性が人間に戻っただけだ。それ以外なんにも──

 

「リュウノさん?大丈夫ですか!?」

「リュウノさん、寒いっスか?体が震えてるっスよ?」

「………変ですねぇ……?」

 

ギルドメンバーが心配してくる。

 

「リュウノ様!?お身体に問題でも!?」

「ゾンビのように青ざめているでありんす!?」

「お姉ちゃん、リュウノ様どうしたのかな?」

「わからないけど、何だか怯えているようにも見えるけど……」

「リュウノ様。イカガナサイマシタ!?」

「尋常ではないご様子だね。もしや、毒の類いでも受けておられるのでは!?」

 

人間である私を、様々な異形種達が自分を心配してくる。

 

──やめてくれ。寄らないでくれ。私は大丈夫だから。ただ、皆が怖いだけだから。だから、だから!──

 

「あ──あ──」

「リュウノさん!?本当に大丈夫ですか?どこか具合でも──」

 

アインズの心配する手が私に向かって伸びてくる。骨の手だ。アンデッドの手だ。私を──私の首を絞め殺そうとするかのような──

 

──来るな、触るな、やめろよ、やめてくれよ…──

 

「やめろぉぉ!」

 

叫んでいた。そんなつもりはなかったのに。恐怖のあまり、叫んでしまった。身をよじり、アインズの手から逃れるような仕草までして。

 

ビクリと、アインズの手が止まり、静止する。私の叫び声に驚いたのだろう。周りに居た皆も動きを止め、こちらの様子を伺っている。

 

「リュウノ……さん…?」

「あ……」

 

──何をしてるんだ私は!謝るんだ、早く。皆を怖がる必要なんてないんだ!──

 

「──ごめん……そんなつもりじゃ……」

 

沈黙が流れる。私の荒い息づかいだけが、玉座の間に響く。歯がカチカチと鳴り、体の震えが止まらない。逃げたい。全力でこの場から、アインズから逃げたい。

 

──もう駄目だ、人間の身では耐えられない──

 

わからない。わからないが、私は椅子から立ち上がった。

わからない。わからないが、玉座の間の扉の方へ歩き出す。

わからない。わからないが、とにかく逃げたかった。

 

「リュウノさん!?どうしたんですか!?」

 

皆の不思議そうな、困惑したような視線が、私に集まるのがチクチクと感じる。でも逃げたい。そんなのどうでもいい。早く、アインズから距離を──

 

「リュウノさん、待って!」

 

玉座から立ち上がったアンデッドが──魔王が──死を具現化したような存在が、歩み寄って来る。その光景が、もはや心の最後の支えを壊した。

 

「いやあぁぁぁぁぁぁ!」

 

悲鳴を上げた。追いつかれたら死ぬ。殺される。そう思った。だから、走った。

 

──逃げないと!アレから逃げないと!──

 

一心不乱だった。NPC達──いや、化け物の群れを突っ切ってでも、あの死から逃れたい。もはやそれしか考えられなかった。

 

「あうっ!」

 

足がもつれた。コケてしまった。

 

──立て!早く!追いつかれる!死が、死神がやって来る!殺される前に!──

 

「リュウノさん!何故逃げるんです!?訳を話して──」

 

「嫌ぁぁぁ!」

 

死に追いつかれた。もうお終いだ。

 

──死にたくない!死にたくない!殺さないで!殺さないで!──

 

「死にたくない!死にたくない!」

 

叫びながら、もはや立ち上がる事もできず後ずさる。

 

「リュウノ……さん!?」

 

「殺さないで!殺さないで!」

 

涙を流し、失禁までしながら必死に懇願した。命乞いをせずにはいられなかった。

 

「落ち着いて下さい!何もしませんよ!?だから──」

 

──ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい──

 

「──ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい──」

 

もはや私の心が、精神が、まともでいられる訳がなかったのだ。

 

何故ならそれは───

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

「──ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい──」

 

必死に命乞いを懇願し謝り続けるリュウノに、アインズは困惑していた。

 

「一体 、何が──?」

 

何故リュウノがこのような状態になったのか、理解できない。ただ、自分を怖がっており、自分から逃げようとしている事は理解できる。

 

アインズは周囲を見る。この状況を理解できる者がいないか、確かめるつもりで。

しかし、リュウノの異常な行動に、周りにいる皆が困惑していた。どうすれば良いのか、誰もわかっていない。

 

「どうすれば──」

 

対処に困ったアインズが、再びリュウノに問いかける。

 

「リュウノさ──」

 

名前を呼んだだけで、リュウノはビクリと身体を震わせ、再びアインズから逃れようする。

 

「助けて!誰か!私を助けて!殺される!化け物に殺される!誰かぁぁ!」

 

遂に、アインズを化け物呼びしながら、リュウノが助けを求め出した。周りから──NPC達からのどよめきが更に増す。すると──

 

「ご主人様!」「主人よ!」

 

ブラック達と竜王達がリュウノに駆け寄り始めた。主人を守ろうと、竜王達がアインズの前に壁のように並び、ブラック達がリュウノを抱き寄せる。

 

「ご主人様!大丈夫ですか!?」

 

ブラック達に抱かれるやいなや、リュウノが泣き始める。子供のような泣き方ではなく、恐ろしいものから命からがら逃げてきたような、悲鳴に近い泣き方だった。

 

「レッド!ご主人様に精神異常を治す魔法を!」

 

ブラックに指示され、レッドが魔法を唱える。

 

《竜のごとき心/ドラゴンズ・ハート》

 

レッドが唱えた魔法は、恐怖を癒やし、完全な耐性を与える魔法《獅子のごとき心/ライオンズ・ハート》より更に効果の高い魔法だ。

魔法をかけられた者は、ドラゴンのような威厳と強い自信を得る事ができ、何者にも屈しない精神状態になる。

 

魔法の効果により、リュウノが次第に落ち着きを取り戻す。深呼吸を繰り返し、自分の状態を確認し終わると、ブラック達に支えられながら立ち上がる。

 

「リュウノさん、大丈夫ですか?」

 

「ああ。大丈夫だアインズ。取り乱してすまなかった。」

 

リュウノが正常に戻った事に安堵する。周囲から、皆の安堵する声が聞こえてくる。

 

「やべぇ…漏らしちまった。床とズボンが台無しだぜ…。」

 

自分の失禁した痕跡を見て、恥ずかしそうにしているリュウノを、少しだけ可愛いと思ってしまう。

 

──って、そんな事考えている場合じゃない!──

 

下僕に床の掃除を指示する。いち早く、シャルティアの配下の吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライト)達が動き出し、床の掃除を始め出す。

 

その間、リュウノに事情を聞く。

 

「リュウノさん、何故私から逃げようとしたんですか?」

 

リュウノの不可思議な言動の原因を知ろうと、本人に確認をとるが、リュウノ自身も首を傾げている。

 

「わからん。最初はなんともなかったのに、途中から段々アインズが怖くなって……次第に周りの皆も怖い感じがしてきてな……。最後はパニック状態だった。」

 

リュウノが、自分の身に起きた事を順序通り言っていく。その時、リュウノの説明を聞いたバハムートがある事に気付く。

 

「主人よ、まさかとは思いますが……アインズ殿の絶望のオーラが原因の可能性は?」

 

まさか!──という声が下僕達から聞こえてくる。至高の御方がその様なミスをするはずがない──という声まで上がる程だった。しかし──

 

「あー……わかった。これは私のミスだ。すまん、アインズ。」

 

リュウノが全てを理解したという雰囲気でアインズに頭を下げる。

 

「どう言う事です?リュウノさん。」

 

「今の私が人間だと言う事は理解しているよな?アインズ。」

 

「ええ。それが何か?」

 

「今の私にはアンデッドの基本特殊能力の『精神作用無効』がないんだよ、きっと。だからアインズの絶望のオーラの影響を受けてしまったんだと思う。」

 

リュウノの説明に誰もが納得する。種族変更による基本特殊能力の変化なんぞ、リュウノ本人以外に確認が取れる訳ないのだ。

実際、アインズ本人もそうだ。ナザリックが異世界に転移し、身体がアンデッドそのものになってから、『精神作用無効』の能力を強く実感している。感情が昂ったり、下がりすぎたり、羞恥心などが強くなると、勝手に『精神作用無効』が発動し、平常時の感情に強制的に戻されるのだ。

 

「ユグドラシル時代から、精神異常とか食らった事なかったから全然気にしてなかったぜ。中途半端にデュラハン時のスキルとかが使えるから、余計に油断してた。これは装備の見直しが必要だなぁ……。デュラハン時と人間時で耐性や対策関係の装備品の付け替えをやらないとな。」

 

指輪やネックレス、腕輪などの装備品を確認し始めるリュウノ。しかし、すぐに顔を上げる。

 

「というかアインズ、いい加減ソレ止めてよ。また精神異常になりたくないんだけどぉ?」

 

「あ、すみません…。」

 

リュウノに指摘されるまで、絶望のオーラを発動し続けていた事に気付かなかった。すぐさまOFFにする。

 

「とりあえず、服を着替えてくる。ブラック達、付いてきてくれ。アインズ、すまんが先に報告会を進めといてくれ。」

 

「あ、はい。」

 

アインズは項垂れながら答える。

リュウノは自分のミスだと言っていたが、本当は自分が悪いのだ。

カルネ村でリュウノは言っていた。

 

『今更カッコつけても無駄だぞ?NPC達は、ナザリックが異世界に転移する前の出来事も覚えてるみたいだしな。支配者モードじゃない、お前の姿も見ちゃってるだろ。』

 

その言葉通りなら、多くのNPC達の前で支配者らしくない言動を見せていたに違いない。なら、そんな人物が偉そうに支配者面をしているのを気に食わないと思うNPC達が居るかもしれない。

だからこそ、下僕達から少しでも支配者らしく思われるように、絶望のオーラを発動させて玉座に座っていたのだ。

しかし、まさか隣に座っていたリュウノの精神を絶望のオーラでガリガリ削っていたとは思いもしなかったのだ。

 

『今更カッコつけても無駄だぞ?』

 

リュウノの言葉が重くのしかかってくる。

 

「(リュウノさんの言う通りだったなぁ……)」

 

普段通りのまま報告会をすれば良かったと、自分の行ないを後悔していると、リュウノが何か思い出したかのような感じで振り向く。

 

「なあ、アインズ。ついでにデュラハンに戻ってもいいか?それなら、装備の付け替えの手間も省けるんだが……」

 

「えーと…すみません。報告会後にギルドメンバーだけで話たい事があるので、そのままでお願いします。」

 

「えーマジか。人間の身体は喋れる以外、色々不便だからデュラハンに戻りたかったんだけどなぁ……。」

 

そうリュウノが呟いた時、デミウルゴスがニヤリと笑った事に気付く者はいなかった。

 

「まぁ。仕方ないか。……わかった。んじゃ、着替えてくる。」

 

リュウノがブラック達を連れて玉座の間を出ていくのを見届けると、アインズは自分の玉座に戻り、ため息を漏らす。

 

ギルド長という立場の自分が、大切な仲間を──わざとではなかったにしても──傷付けてしまった。

自分が絶望のオーラを発動している間、彼女は必死に耐え続けていたはずだ。耐えに耐え続け、耐えきれなくなって、逃げようとした。最終的に命の危機を感じさせる程、彼女を追い詰めてしまった。

もはやギルド長として、ナザリックの支配者として、見栄を張るどころの問題ではない。

 

「なんという事だ……。私はリュウノさんになんて酷い事を……。」

 

「アインズさん……」

 

落ち込んでいる自分を、ギルドメンバーが何度か励まそうしてくれるが、気持ちが晴れない。

 

「(こういう時、『精神作用無効』の能力が発動してくれればありがたいのだがなぁ……。)」

 

肝心な時に発動しない能力に苛立ちを感じていると──

 

「アインズ様。アインズ様が落ち着かれるまでの間、私が話をしてもよろしいでしょうか?」

 

デミウルゴスが手を上げ、許可を求めてくる。

ナザリック内でも一二(いちに)を争う頭脳を持つデミウルゴスの話とは何なのか。少しばかり興味が湧く。

 

「……構わん。好きにせよ。」

 

「はっ!ありがとうございます。」

 

デミウルゴスがNPC達の前に立ち、話始める。

 

「まず始めに、これから話す事はとても重要な事なので、(みな)心して聞いてほしい。」

 

デミウルゴスの言葉に、ナザリックのNPC達の視線が真面目なものに切り替わる。

 

「今から私が話す内容は、人間になられたリュウノ様がいかにどれほど大切な存在なのか、という内容だ。リュウノ様次第で、この偉大なるナザリックの未来が変わる。そう言ってもいい程にね。」

 

リュウノの存在が、ナザリックの未来に関わる。そう言われては、NPC達もアインズ達も無視できない。皆が注目する中、不敵な笑みを浮かべたデミウルゴスが、メガネをクイッと上げ、ウルベルトの方を向く。

 

「ウルベルト様。例の話……ここで話ても構いませんでしょうか?」

 

ウルベルトは即座に『後継者』の話だと分かり、「好きにしなさい。」と、OKサインを出す。

 

「ありがとうございます!では、ここに集まりし諸君よ!しばらく私の話にお付き合い願いたい。このナザリックの!いずれ産まれでる新しき支配者に関する話を!」

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

──勝(リュウノ)のマイルーム──

 

 

「(はぁ……人生最大の黒歴史だ。皆の前で小便漏らすとか……)」

 

リュウノはシャワーを浴びながら、先程の出来事を振り返っていた。

アインズにビビって、逃走して、スっ転んで、命乞いして、混乱して、失禁して、謝罪して、泣きじゃくった。

 

恥ずかしさと情けない言動のオンパレードを、NPC達の前で盛大にやらかした。

 

「やべぇ…ますますデュラハンに戻りたい。穴があったら隠れたいレベルだぜ……。」

 

シャワー室から出て、タオルで体を雑に拭くと、タオルを首にかけた状態で自分の部屋へと戻る。無論、裸のまま。

部屋には、本日、私の担当の一般メイドのデクリメントとブラック達と竜王達が待機していた。男性竜王達が私の体を舐めるように眺めているのがハッキリ分かる。竜王達がどんな反応をするか分かりきっていた私は、それを見なかった事にする。

 

「デクリメントは下着を取ってくれ。ブラック達は私の髪を整えてくれる?」

 

指示を出すなり、デクリメントが棚から下着を取り出す。ブラック達が素早く髪を整えるための小道具の準備を始める。

デクリメントから下着──男女共通タイプの物──を受け取り、身につける。椅子に腰掛けると、ブラック達が慣れた手つきで髪を整えてくれる。

その間に、リュウノは目の前の机に、様々な指輪などのアクセサリー系の装備品を置いていく。どれもこれも、耐性や状態異常などの守りに関する物だ。

 

「炎の耐性は確定として、対毒、対阻害、対精神……ううむ……人間時用の装備品の調整は、かなり手間がかかるなぁ……。というか、人間という種族の基本特殊能力がわからん。てか、そもそも基本特殊能力なんてあるのか?」

 

口ではそう言ったが、頭の中ではアインズの事でいっぱいで、人間の基本特殊能力なんぞ考えていない。

装備品を見直しているのは、今後同じミスを犯さないように──アインズ達に迷惑をかけないようにする為だ。

 

「(アイツの事だ。今頃玉座に座ってウジウジ悩んでいるに違いない。あまり引きずらないように、元気づけてあげないとな。)」

 

玉座の間に戻ったらどう振る舞おうか──そんな事を考えているうちに、ブラック達が作業を終える。

 

「ありがと。さて、衣装と防具もどうするか……。」

 

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

「結局、『黒竜の騎士鎧』を着てきてしまった……。」

 

灰色の軍服の上から騎士鎧を身に付け、ヘルム無しの首無し騎士スタイルで玉座の間の大扉の前にやってくる。

 

「(はぁ〜……玉座の間に入るのが、こんなに嫌だと思う日が来るとは……)」

 

盛大にお漏らした現場に──下僕やNPC達がまだいる状況で──戻るのだ。顔を隠すという些細な抵抗はしてみたものの、やはり恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。

 

「(何を怖気付く必要がある!私はナザリックのギルドメンバーの1人!至高の御方と崇められている存在だ!堂々としていればいいんだ!そう、堂々と!)」

 

自分で自分に喝を入れ、大扉の前に進み出る。

自動で開き始めた扉の隙間から、部屋の中にいる者達の──これはデミウルゴスだろうか?──声が聞こえてくる。それと同時に、扉の開いた音に反応した下僕達──身体が大きいせいで前の方に並べなかった者達──の視線が一気に自分に集まる。

 

「(やべぇー!どっからどう見ても魔物の巣だよ!人間が立ち入っていい場所じゃねぇって!)」

 

一度、『恐怖状態』にさせられたせいか、その時感じた恐ろしさがフラッシュバックのように記憶から蘇る。

だが、思い出すだけで怖さは差程感じない。

 

しかし、実力差があるという部分では多少の怖さと警戒心は持ってしまうものだ。

 

例えばだ。

竜王合体をしていない状態の自分のレベルは85Lvだ。それに対し、玉座の間にいる下僕達の中には90Lvや100Lvといった者がチラホラ居る。

その中に飛び込めと言われて、死を覚悟しない者がいるだろうか?

ユグドラシルでは、10Lvの差があるだけで一方的な勝負になる事が多かった。100Lvのプレイヤーからしてみれば、90Lvのモンスターですら雑魚扱いできる者が居たりする程だ。

無論、竜王達のようなボスモンスターは例外ではあるが。

 

「(味方だと分かっていても、安心できねぇ……)」

 

意を決して玉座の方へまっすぐ歩む。

私が歩んで来るのを確認した下僕達が、私の邪魔にならないよう脇に寄って道を開けるのを確認して少しだけ安堵する。人間になった私に対しても──(醜態まで晒した後にも関わらず)──上下関係はしっかり保持されているようだ。

 

ガシャ、ガシャ、と私の歩く鎧の音が玉座に響く。

通り過ぎる私を見つめてくるのは、シャルティアの配下のアンデッド達、コキュートスの配下の蟲達、アウラ&マーレの配下の魔獣達、デミウルゴスの配下の悪魔達、その他ナザリックの下僕達だ。

 

そんな下僕達(彼等)の横を通りすぎ、並んでいた階層守護者達の横まで来る。守護者達も皆、歩いて来た私に深々と忠義の姿勢を維持しながら道を開ける。

Lv100の守護者達までが忠誠の意を示している以上、私の立場に変化があった、という事はないらしい。

 

そのまま歩いて守護者達の横を通り過ぎる。その途中、背後にあったブラック達や竜王達の気配が動かなくなるのを感じる。おそらく、下僕達の列に加わったのだろう。

つまり、ここからは1人である。心から安心できる存在がそばを離れた事で、少しばかり不安な気持ちになるが、いつまでも甘えてばかりはいられない。

足を止めず、そのまま玉座に向かって歩く。

 

守護者達の列を抜ければ、玉座はもう目の前だ。

デミウルゴスが玉座の近くで跪いているが、理由はわかる。先程まで皆の前で何か発言していたからであろう。

そのデミウルゴスが何も言わず忠義の姿勢をとっているという事は、私が玉座に座るのを待っているか、私が何か発言するかもしれない事を察して待機しているのだろう。

ならば、言う事は1つだ。

 

「すまない、デミウルゴス。演説の邪魔をしてしまったかな?」

 

「いえ、問題ございません。それよりもリュウノ様がお戻りになられた事に我ら下僕一同、嬉しく思っております。」

 

デミウルゴスの言葉に合わせ、下僕達が微笑みを私に向けて来る。1部、顔の変化がわからない者がいるが、とりあえず皆が微笑んでいるという事にしておく。

 

「そ、そうか。皆には心配をかけてしまったな。私はもう大丈夫だから、皆安心してくれ。」

 

下僕達から安堵する声がざわざわと上がる。が、すぐにおさまる。

私はデミウルゴスから目を離し、玉座に座るアインズに目を向ける。

 

骨の顔、骨の手、骨の胴体。これらを見て、アインズが元人間だと誰が理解できるだろうか。アインズの事をよく知る私でさえ、目の前のアンデッドが私の知る『鈴木(すずき)(さとる)』と同一人物なのか疑いたくなる。

死の支配者(オーバーロード)というスケルトン系のアンデッドの最上位種、その姿を見て恐怖を感じるなというのは、人間という種族に変化した私にはあまりにも辛い要求だ。

しかし、そのアインズと私は親友であり、幼なじみであり、対等な仲間である。ゆえに私は信じるしかないのだ。目の前のアンデッドが、アインズ(鈴木悟)であると。

 

「待たせてしまったかな?アインズ。」

 

軽く片手を上げ、明るい感じでアインズに語りかける。

 

「いえ、そんな事は──」

 

アインズの返事がかなり暗い。いや、元気がないと言うべきか。やはり、先程の『絶望のオーラ』の件を気にしているのだろう。と、判断する。

というのも、骨の顔のアインズの表情は変化しないのだ。なので声の雰囲気でアインズの感情を読み取るしかない。

 

「──それよりリュウノさん。一応確認の為聞きますが、本当にもう大丈夫なんですか?」

 

「ああ。私のミスで迷惑をかけた。すまなかった。」

 

「何を言ってるんです!悪いのは私です!私が『絶望のオーラ』なんか発動したばっかりに、リュウノさんに酷い事を……」

 

『絶望のオーラ』の件をアインズはかなり負い目に感じているらしい。なら、こちらがいくら『自分のせいだ』と言っても、アインズは引き下がらないだろう。という事なら、この場を収める方法は1つしかない。

 

「なら、両方悪かった。という事にしようぜ。」

 

「ですが……」

 

アインズは納得できていないようだ。

これは話題を無理矢理変えた方が良さそうだ。

 

「私もアインズも、コッチの世界に来てから色々あったんだ。小さな事をウッカリ忘れる事もあるだろうさ。だから気にするな。それよりも、今は1番気にするべき事を確認するべきだろ。違うか?」

 

話題を変える方向に持っていく。

 

「気にするべき事?」

 

「ああ。他のプレイヤーが存在しているかも知れない情報が幾つか見つかったろ?それにどう対処するか、話し合おうぜ。」

 

「あ、ああ。そうですね。」

 

話題が切り替わった事で、アインズも気を取り直した様だ。

問題が1つ解決した事に私は安堵しつつ、アインズの隣にあるデミウルゴス製の玉座に座る。

スキル『がらんどう』のおかげで、身体の物理判定が消えている状態なので、玉座の硬さも鎧の硬さも気にならない。が、やはり骨で作られた玉座はあまり快くない。

 

ちょうど近くにデミウルゴスが居る状況なので、改善するように頼むか。

 

「デミウルゴス。」

 

「はっ!なんでございましょう、リュウノ様。」

 

名前を呼ばれた事が嬉しいのか、デミウルゴスが元気良く返事を返してくる。

 

「その…お前の作ってくれた玉座なんだが…人間の状態の私には硬すぎてな。長く座っているとお尻が痛くなってしまうんだ。」

 

デミウルゴスがわざわざ手間暇をかけて製作した物なのに、骨でできた玉座が『気にいらない』から、なんて言える訳がない。あくまで『お尻が痛くなるから』を理由にした。

 

のだが──

 

そこまで言った時、デミウルゴスの表情が変わる。慌てている、あるいは焦っている様な感じの表情だ。

 

「申し訳ありません!リュウノ様のお体の状態に合わせて作るべきでした。そこまで頭が回らなかった、この私をお許しください!」

 

かなり真剣に謝罪してきた事にビックリする。そこまで慌てる様な事だろうか?とりあえず、落ち着かせるか。

 

「あ、いや…コホン。わざわざ玉座を作ってくれた事は感謝しているぞ、デミウルゴス。デュラハンの時の私であれば、文句のない逸品と思っていたかもしれない程だ。ただ、人間になった私には少しばかり相性が悪かったというだけさ。」

 

「左様でございますか…。では、別の物を用意致しましょう。」

 

「そうしてくれると助かる。できれば、ソファの様な柔らかい素材の物に変えてもらえると嬉しいのだが。後、背もたれのところに穴を開けてもらえるとさらに助かる。」

 

「穴…ですか?」

 

デミウルゴスが不思議そうな表情をする。アインズ達や他の守護者達も小首をかしげているあたり、穴の意味を理解できていないのだろう。

 

「ああ。背もたれに穴があれば、竜人の姿の時に尻尾が邪魔にならなくて座りやすいからな。」

 

私の説明を聞いて大半の者が『理解した』という頷きを見せる。1部、守護者達の方から「竜人?」という呟きが聞こえた気がするが、私が竜人に変身できる事を知らない者が居たのかもしれない。

 

「なるほど!畏まりました。今すぐ新しい玉座の用意を──」

 

デミウルゴスが立ち上がり、どこかに行こうとする。今すぐ玉座を交換してほしい訳でもないので慌てて止める。

 

「ま、待て、デミウルゴス!今すぐ変える必要はない!それに、お前は演説の途中だったろ?先にそちらを済ませた方が良いのではないか?」

 

「ですが、至高の御方であらせられるリュウノ様に不快な思いのまま報告会を進める訳には──」

 

「アインズ達をこれ以上待たせる訳にもいかないだろ?それに、手短に済ませればお尻が痛くなる前に終わるかもしれないからな。」

 

「か、畏まりました…。では、演説を続けさせていただきます。」

 

デミウルゴスが下僕達の前に立ち、姿勢を正した状態で喋り出す。

 

「──諸君、先程話した通り、至高の御方の皆様は謎の弱体化により以前の強さを発揮できない状況が続いている事は理解してもらえたと思う。それに加え、リュウノ様は人間という脆弱な種族に変化なさっているので更に弱体化が激しくなっている状態だ。」

「現に、スレイン法国が寄越した暗殺部隊により、リュウノ様は心臓を刺され、生死の境をさまようほどの重症を負う事態にまで追い詰められた程だ。」

 

下僕達からザワつく声が上がる。至高の御方が殺されそうになった、死にかけたという事実に、怒りをあらわにする者や、死なずに済んだ事に安堵する者など、様々な反応を示している。

 

「諸君の、至高の御方の命を狙った愚か者達に対する怒りは大変理解できる。しかし、安心したまえ。至高の御方の命を狙った愚か者達は12人居たが、逃げて生き延びたのはたったの3人なのだ。残り9人の内、1人は生け捕り、後は至高の御方々によって始末されたよ。」

 

「おおー!」という事が玉座の間に響く。「流石、至高の御方々だ!」という賞賛するような言葉を言う者達も居る。

 

「しかも驚く事に、殺された8人の内、2人はウルベルト様が。同じく2人をペロロンチーノ様が。そしてなんと!残り4人は、心臓を刺され瀕死の状態であったリュウノ様が始末なさったのだ!しかも、戦闘が始まった時はリュウノ様が敵に囲まれた状態だったという絶体絶命な状況からの逆転劇なのだよ。これ程の事を弱体化した状態でもやり遂げられるのが、至高の御方の皆様なのだよ。」

 

デミウルゴスの演説を聞いて、下僕達が拍手喝采する。

 

「だが!凄いのはここからだよ、諸君。」

 

デミウルゴスが不敵な笑みをより一層強くしながら語る。

 

「人間の脆弱さを理解したリュウノ様は、なんと!それを克服する為に新たなお姿に変化なさったのだ!そう!先程リュウノ様自身がおっしゃっていた、竜人の姿に!」

 

下僕達から、リュウノが竜人に変身できる事に対しての驚きや困惑の声が上がる。

 

「リュウノ様。もしよろしければ、下僕達にウロボロス様と合体したお姿を見せていただけないでしょうか?」

 

「あ、ああ。別に構わんが……」

 

いきなりのお願いに少々戸惑いを隠せないが、この機会に皆に竜王合体の事を説明しておくのはアリだと判断する。

ウロボロスを手招きで呼び、例のごとく竜王合体を行う。

 

「では、諸君!刮目して見たまえ!これが、リュウノ様の新しきお姿だ!」

 

デミウルゴスの言葉に合わせるように立ち上がり、鎧を全て脱ぐ。

灰色の軍服を着ているせいで頭と手と生えた尻尾ぐらいしか変化した部分が見えない。なので、袖をめくって変化した腕をよく見えるようにする。

すると、ウロボロスと合体した姿を見せた途端、守護者達から驚きと賞賛の声が怒涛のように押し寄せる。

 

「はぁ〜♡なんと素敵なお姿でありましょうか!」

「あの翼、私の翼より立派でありんす!それに、あの目……はぁ♡あの目で睨まれたら漏らすのを我慢できる自信がないでありんす!」

「リュウノ様の手がブラックと同じドラゴンみたいになってるー!?」

「はわわぁ〜…とても、かっこいい、ですぅ〜。」

「何ト禍々シイオーラ!マサニ王者ノゴトキ風格…!」

 

下僕達からもまったく同じ反応がやってくる。特に、デミウルゴスの配下の悪魔達の反応が凄い。サキュバス達や女性悪魔は頬を赤らめ、うっとりしている。逆に、男性悪魔達は大興奮であり、鼻血を出しながらガッツポーズまでしている。

 

「(喜び過ぎだろ、アイツら!)」

 

竜王達とまったく同じ反応をしている悪魔達を見て、何時ぞやの竜王達のように、悪魔達が自分に交尾を求めてくるのではないかと不安になる。

 

「諸君、気持ちはわかるが落ち着きたまえ。至高の御方々に失礼ですよ?」

 

デミウルゴスの注意でようやく静かになる。

 

「ご覧の通り、リュウノ様は竜王様達と合体する事が可能なのだ。このような事を、その辺に居る脆弱な人間達ができるだろうか!無論、できないだろう。同じ人間という種族でも、その辺の人間とリュウノ様では圧倒的な差があるという事を理解してもらえたかな?」

 

下僕達がウンウンと頷く。中には、『自分達が仕える至高の御方なのだから普通の人間と違うのは当然の事だ。』と言いきる者達までいる。

 

「(なんか、さっきから我の事ばかり話すなぁ…)」

 

デミウルゴスの演説を聞きながら、リュウノは演説の内容にやたら自分の事を褒めたたえる内容が多い事に疑問に思う。

1つの可能性としては、先程の『絶望のオーラ』での件で、下僕達の前で醜態を晒した我の面目を取り戻そうとデミウルゴスが気を使ってくれている、という可能性だ。

となれば、もう充分な結果を得ているはずだ。これ以上褒めたたえられると、かえって恥ずかしい気持ちでいっぱいになってしまう。という訳で──

 

「デミウルゴス、もういいんじゃないか?みな、我のこの姿の良さを充分理解していると思うのだが…。」

 

──ブレーキをかける。私の素晴らしさを下僕達に伝えてくれるのはありがたいが、今優先してやる事ではない。というか、さっさと報告会を終わらせてデュラハンに戻りたい、というのが本音だ。

 

「……そのようですね。つい、熱が入り過ぎていたようです。申し訳ありませんでした。」

 

「謝る必要はないさ。お前の言う通り、人間という種族は脆弱だ。その弱さを実際に体験してみて、その脆弱さを理解し思い知ったからな。腹は減る、疲労をかんじる、眠くなる、頭が痛くなるなど、デュラハンの時には感じなかったものが、今の我にはかなり辛い。」

 

そこまで言うと、リュウノは玉座に座りため息をつく。

 

「思えば…人間になってから、暗殺されそうになるわ、王都で授与式に出るわ、エ・ランテルでアンデッド騒動を解決するわ等で、身体を休める時間があまりなかった。今の我は、初めて味わう過労に倒れてしまいそうだ。」

 

わざとらしく目元に指をあて、疲れてますアピールをする。これで、皆にも私が疲れている事が伝わるはずだ。現に、自分の演説で時間をとらせたデミウルゴスが申し訳なさそうな顔をし始めている。

 

「アインズ、早く報告会を終わらせようぜ。時間的にも、我の眠気が増す時間帯だ。寝ぼけながら報告を聞く訳にもいかないからな。」

 

「そ、そうですね。わかりました。」

 

 

そこからは割とあっさり話が進んだ。

 

まず、ユグドラシルについて調べまわって居るという『ツアー』という人物に関しては──正体が不明の為、ツアーやリグリットと知り合いと思われる『蒼の薔薇』と良好な関係を築いて、友好的な立ち位置での接触を試す方針になった。

 

 

次に、リュウノが置いてきた邪剣だが、組合長達と相談した上で、アインズが預かるという流れになった、という事らしい。アインズが暗黒騎士に間違われないか心配だ。それに、あの邪剣の能力も不明のままだが、アインズの事だ。自分で鑑定でもするだろう。

 

 

次に、スレイン法国に関しては──現状では滅ぼす方針がリュウノの口から発せられた。その為、捕らえた暗殺部隊の隊員とクレマンティーヌから情報を聞き出す事が最優先となった。情報を吐かせるだけはかせた後、攻める時期や投入する戦力などの戦略を練るという。

 

国を滅ぼす事に、たっちが反対意見を呟いたが、それに対してリュウノがさらに反論する。

 

「我は忠告まで出していた。にも関わらず、スレイン法国は暗殺部隊を差し向けてきた。つまり、ドラゴンを従えさせている我に国を滅ぼされる覚悟をしていたと言う事になる。そして奴らは愚かにも、我を仕留め損ねた。なら、ドラゴンを従えた我に報復されても文句は言えないだろ?自業自得さ。」

 

「しかし、市民まで襲うのは──」

 

食い下がろうとしたたっちに対してリュウノは──

 

「黙れ!」

 

たっちを睨みつけながら怒鳴り返した。リュウノの身体からは、リュウノの怒りに反応し発動した赤と黒の怒りのオーラがユラユラとにじみ出ている。それが、元から出ていた紫のオーラと混じり、さらにリュウノを怖くしている。

 

守護者達や下僕達が、リュウノの放つ殺気に恐れを抱く。怒鳴り声にビクついたり、オーラに包まれたリュウノを見て震えたりしている。

無論、彼等にも精神異常に対抗する耐性は備わっている。では、何故彼等が恐れを抱くか?理由は明白だ。至高の御方が怒りをあらわにしている。それが彼等にとっての恐怖だからだ。

 

「───ッ─」

 

リュウノの圧に、たっちがたじろぐ。他のギルドメンバーもリュウノの放つ気迫に何も言えないでいる。

 

「襲われたは我だぞ!」

 

玉座の間にリュウノの怒鳴り声が響く。

 

「後ろから槍で心臓をブスりと刺されて死にかけたんだぞ!?」

 

リュウノの言葉を聞いて、守護者達が唇を噛む。

 

至高の御方が襲われる、ましてや怪我をするなど、あってはならない事だ。

もし──自分達守護者が側に仕えて居たのならば、自分自身を盾にしてでも至高の御方をお護りしていただろう。

 

「しかもその後、追い討ちまでされて、トドメを刺されそうになって、人質にまでされたんだぞ!ここまでされて殺り返すなと言うつもりか!?」

 

リュウノの言葉を聞いていた下僕達の心には、静かな怒りが燻り始めていた。

至高の御方の命を狙った愚か者共に与えるべきは、死──あるいは滅びしかない、という怒りだ。

至高の御方に対して無礼を働いた者達がいる。しかも、その者達は国に属しており、国の命令で動いてた。ならば、その国──スレイン法国は明確な敵である。生かしておく道理はない。

 

「我には奴等に殺り返す権利がある!違うか?!」

 

リュウノの言った言葉に「そうだそうだ!」「おっしゃる通りだ!」と声を上げ、全ての下僕達が立ち上がり賛同の言葉を言い始める。

 

「至高の御方に手を出した人間達には死を与えるべきだ!」

「我々の至高の御方に手を出した愚かさを教えて上げるべきだ!」

「人間達を皆殺しに!」

「人間達に地獄を見せてやるんだ!」

 

下僕達から次々に声が上がる。全てが人間達に対する憎悪の言葉だ。

 

リュウノが片手を上げる。それだけで下僕達が騒ぎを止め、元の姿勢に戻る。

 

「アインズ──いや、ギルド長。」

 

「な、何でしょうか?リュウノさん。」

 

「下僕達も我の意見に賛同してくれている。ゆえに、もう一度問う。スレイン法国は我の好きにして良いのだよな?」

 

アインズは思案する。このまま『好きにして良い』と言った場合、スレイン法国の結末がどうなるかなど決まったも同然だ。

しかし、止める事などできない。リュウノがスレイン法国と争うきっかけになったのは、カルネ村という弱い存在に味方したからだ。『困っている人がいたら助けるのは当たり前!』という、弱者救済に近い行為を善とするたっちですらも、こればかりは止められないだろう。

 

「え、ええ。そういう約束ですから。」

 

「よし。ギルド長の許しも得た。」

 

リュウノは立ち上がると、守護者達の前に移動する。

 

「聞け!我が下僕達よ!」

 

リュウノの演説に、全ての守護者及び下僕達が視線を向ける。

 

「これより、スレイン法国を敵と見なす。本来なら、我自身が滅ぼしに行きたいが、今の我は冒険者という立場だ。我や我のドラゴン達が国を滅ぼしたという噂が出回るのは避けたい。敵が増えてしまうからな。それに、ドラゴン達に命じれば、スレイン法国が跡形も無くあっさり消し飛んでしまう。それは些かつまらんからな。ゆえに……お前達下僕にスレイン法国を滅ぼす機会を与えてやろう。」

 

下僕達の顔が一気ににやける。この時を待っていたと言わんばかりに。

 

「だが!ナザリックの警備もまた重要だ。だからだ……スレイン法国を攻めるメンバーを今から決める。選ばれなかった者は、すまないが諦めてくれ。」

 

選ばれた者だけが、人間の国を陵辱できる。下僕達の顔に緊張が走る。

 

「まず、デミウルゴス!」

「はっ!」

「スレイン法国を攻める軍勢の全指揮をお前に任せる。」

「ありがとうございます!」

「お前を選んだのはウルベルトさんの魔王軍の宣伝も兼ねている。魔王アレイン・オールドを総大将とし、魔王アレイン・オールドの忠実な部下、ヤルダバオトとして活動しろ。スレイン法国に地獄を見せてやれ!」

「ははっ!このヤルダバオトにお任せ下さい!」

 

 

「次に、シャルティア。」

「はい!」

「お前はエ・ランテルで人間に姿を見られるという失態を犯した。そのせいで、我とたっちさんが尻拭いをするハメになったのは理解しているな?」

 

シャルティアの顔が一気に暗くなる。彼女にとっては、失態を犯した事よりも、至高の御方に迷惑をかけた事の方が重大であった。

 

「そ、それは…もちろんでごさいます…。」

「ゆえにチャンスをやる。ヤルダバオトの指揮下の元、スレイン法国の戦力を叩き潰せ。あそこにはプレイヤーがいる可能性があるのでな。ナザリックの守護者のなかでも高スペックなお前は必要不可欠だ。期待しているぞ?」

「ははっ!お任せ下さいでありんす!このシャルティア、失敗をより大きな成功で打ち消してみせます!」

 

 

「次に、コキュートス。」

「ハッ!」

「未だ活躍の場が少ないお前にも、戦う機会をやろう。ヤルダバオトの指揮下の元、シャルティアと共にスレイン法国の戦力を叩き潰せ。」

「ハハッ!ナザリック初ノ進軍!必ズヤ成功サセテミセマス!」

「うむ。だが、あまり突撃し過ぎないようにな。お前達守護者は、本来なら自陣の拠点を守る立場の存在だ。自分達から敵陣に攻め込むのは初めてであろう?」

「ハイ。」

「敵はあらゆる策を講じてくるだろう。ヤルダバオトがいる以上、大丈夫だと思いたいが、我とて死にかけるような目にあったのだ。くれぐれも気をつけよ!」

「ハッ!肝ニ銘ジテオキマス!」

 

 

「残りの守護者達は、申し訳ないが留守番だ。許せ。次に下僕達だが──ヤルダバオトが出る以上、ヤルダバオト配下の悪魔達には出撃してもらう。期待しているぞ?お前達。」

「「「ははっ!」」」

「残りの下僕達の選抜はヤルダバオトに任せる。ただし、ドラゴン系の下僕は避けろよ?」

「承知致しました。」

 

ここまで指示した後、リュウノは一度、たっちの方を見る。たっちと視線が合うと、リュウノが「フッ…」と笑う。

 

「それと、スレイン法国を滅ぼせと言ったが、人間を全て殺す必要はない。」

 

今までとはうって変わり、優しい口調になったリュウノに、その場にいる全員が不思議な思いにかられる。

 

「それは何故でしょうか?」

「退屈しのぎの玩具が欲しいからだ。この意味、悪魔であるお前なら理解できるだろ?」

 

真面目な顔をしていたデミウルゴスの顔に不敵な笑みができあがる。無論、ウルベルトも同じ表情に変わる。

 

「はい。もちろんでございます。」

「クハハ!なるべく壊さずな。我が調教し、アインズ・ウール・ゴウンを神と崇める家畜……いや、奴隷にするのでな。」

「おお!なんという……素晴らしいお考えでございます!」

「うむ。後、お前が担当していた巻物(スクロール)の件だが、我の宝物庫にドラゴンハイド──竜の皮が大量に保管してある。しばらくは代用できるし、いざとなれば補充も可能だ。安心するが良い。」

「はっ!ご配慮感謝致します!」

 

 

「行軍の日時は、捕まえた捕虜からの情報を聞き出してから決める。ヤルダバオトよ、我が捕まえた女、クレマンティーヌから情報を聞き出せ!無論、ありとあらゆる拷問を行って構わんが、死なせないようにな?」

「畏まりました。」

「あの女には、まだ利用価値がある。試してみたい事がいくつかあるのでな。で、他に何かあるものは居るか?……無いようだな。では、報告会を終わりにする。アルベド。」

「はっ!」

「ヤルダバオトと一緒に選抜の手伝いをしてやれ、残った下僕達でナザリックの警備体制を整えよ。良いな?」

「畏まりました、リュウノ様。」

「ギルド長、何か問題はあるか?」

「いえ、問題ありません。」

「よし。では下僕達よ、行動を開始せよ!」

「「「ハッ!」」」

 

 

 

──下僕達が去った後──

 

 

 

「はぁ……言っちゃった。スレイン法国にムカついていたとはいえ、我は取り返しのつかない指令を出してしまった。」

 

リュウノが玉座に力なく寄りかかりながら呟く。先程まで見せていたカリスマが嘘のように消えている。やはり、軍勢の前だと『将軍(ジェネラル)』のクラスの能力が発揮できるが、そうでない場合は素の自分がでてしまうようだ。

 

「ペロロンチーノさん、先に謝っておきます。シャルティアを選抜してすみません。」

 

ウロボロスと合体しているリュウノが、やけに優しい口調でペロロンチーノに話しかける。

対するペロロンチーノは、動揺しつつも、リュウノの謝罪の意味がよく分からないでいた。

 

「どういう事っス?」

「シャルティアを魔王軍に入れたのは、対プレイヤー用です。コキュートスもそうですが……。ギルドのNPC達が万が一敗北しても、金貨で復活できるので、敵プレイヤーの実力を測るには丁度良いかと思ったんです。ただ……NPC達が復活できるかどうか試してないので、復活できなかったら……」

「そういう事っスか……。」

 

異世界に来てから最も気になる問題──蘇生に関連する問題は保留のままだ。。NPCの復活、もといプレイヤーの復活もできるかどうか確認できていない。ここは今後の課題になるだろうが、調べるには犠牲が必要となる。しかし、蘇生の実験をしたいから死んでくれなど、例え相手が命を捧げる気が満々のNPCだったとしても言いたくない。

 

「問題ないっス。」

「えっ?」

 

リュウノとしては、ペロロンチーノの反応は意外だった。てっきり、シャルティアの出撃をやめて欲しい、と言ってくるか、怒るものだと思っていたからだ。

 

「本当に…良いの…か?」

「大丈夫っス。ユグドラシルでも、シャルティアやコキュートスを倒して第六階層まで上がってくるプレイヤーはたくさん居たっスから。だから……」

 

それだけシャルティアが倒されてきたのを見てきたと言う事だ。無論、復活させるところもだ。しかし──

 

「ペロロンチーノさん、我が言うのもなんだが、ユグドラシルでは蘇生できても、コッチ(異世界)で蘇生できるかはわからない状況なんですよ?」

「そうっスね。」

「万が一蘇生できなかったら、永遠の別れになるかも知れないんですよ?」

「そうかも知れないっスね。」

「……シャルティアは、ペロロンチーノさんの理想の嫁ではなかったのですか?死んだら嫌なのでは?」

「嫌っスね。」

「なら──」

 

リュウノは理解している。自分とペロロンチーノのNPC作成の理由がほぼ同じだと言う事を。自分の手元にない理想の物をユグドラシルで再現した者同士だと。なら、それを失うのは嫌なハズだ。

 

「言いたい事はわかるっス。でも……あんな真剣に──嬉しそうにしてるシャルティアを見ちゃったら、止められないっスよ。」

「えっ?」

「リュウノさんから指令をもらった後、玉座の間を去る時のシャルティアが、とても真面目な雰囲気を出しつつ嬉しそうな顔をしていたのを見たっス。自分の理想の嫁が、あんな嬉しそうにしてるのに、今更中止なんて言えないっス。」

「ペロロンチーノさん……」

 

リュウノは思わず脱帽したい気持ちになった。

自分の気持ちよりも、シャルティアの気持ちを優先するペロロンチーノに、リュウノは尊敬の念を抱いたからだ。

命令すれば何でもやってくれるハズであろうNPC達。それを自分の都合で縛ろうとしないペロロンチーノの行為は、それだけシャルティアを大切に思っているという意味でもある。

 

「だから、俺はもう決めてるっス。リュウノさん。」

「何を?」

「スレイン法国との戦いにシャルティアが行く前に、()()()()()()()()()()()?」

「えっと…何を?」

()()()()()()()()()()()()?」

「だから何を!?」

「エロい事っス!!」

 

「──( 'ω')ファッ!?」

 

ギルドメンバー全員が呆れたような、けれども逆に安心したような表情になり、笑顔が零れる。つまり、いつものペロロンチーノさんだったという事だ。

 

「シャルティアと、できればブライト(花嫁)達とサキュバス達も交えてハーレムしてもいいっスか!?」

「いやwww我に聞くなwwギルド長にwwwクハハハハハハハ!」

 

リュウノは大爆笑である。

 

「アインズさん、どうなんっスか!」

「シャルティアとブライトは構いませんよwwサキュバスはアルベド以外のタイプならOKですww」

「マジっスか!イヤッホォォォォイイ‼︎」

 

走って行こうとするペロロンチーノの首根っこをリュウノが掴む。

 

「グゥエッ!?」

「待て待て待て待てwww気持ちはわかるが、まだやる事あるからな!」

 

 

 

 

「そう言えばリュウノさん。何故デミウルゴス達を選んだんです?」

「んー?わからないのか?アインズ。ウルベルトさんのせいだよ。」

「おや、私のせいですか?」

「神を信仰する国が悪魔の軍勢によって滅ぶのだ。世界に魔王の存在を知らしめるにはよい結果になるだろ。なぁ?魔王・アレイン・オールド?」

「フッ…そういう事ですか。リュウノさん、貴方も中々の悪なのでは?」

「……ふん、()()()()()()。エ・ランテルであんな事したんだ。我なれに魔王軍の一員としてやらせてもらうぞ?私を魔王の妻として拉致した事、後悔させてやりますから。」

「どういう事です?」

「クハハ!決まっている!魔王が現れた以上、それを倒す勇者も必要だろう。RPGゲームにはお決まりの世界設定だからな!そうは思わないですか?たっちさん。」

「そうですけど……え!?まさか、私が勇者役ですか?」

「他に誰が居るんだよ!魔王の妻に無理やりさせられた我を助けにくる役目、嫌でもやってもらいますからね?」

「そ、それはまぁ、やりますけど……」

「おやおや…それは大変です。私も、相手がたっちさんだと手抜きができませんねぇ……フフフッ!」

「程々にして下さいよ、ウルベルトさん!」

 

 

 

その後、ギルドメンバー達はメンバー専用の会議室に移動し、スレイン法国の暗殺部隊が所持していた装備品の確認を、談話しながら行っていた。

 

「これがワールドアイテム・『傾城傾国』ですか……見事に真っ二つですね。」

「リュウノさんが着用者ごとたたっ斬りましたからねぇ……。」

「スマン…。けど、使用されるよりは良いだろ。それに、こんな危ないアイテムは壊れていた方が安心だろ?使用した人物に絶対服従してしまうアイテムなんて、誰かに使われたら危険だしな。」

「そうですね。壊れていた方が安心です。」

「これをヨボヨボの婆さんが来てたと思うと、想像しただけで吐き気がするっス。」

 

結果的に、暗殺部隊が所持していた装備品やアイテムのほとんどが高ランクの物ばかりだった事が判明した。

と、ここでたっちが疑問に思う。

 

「しかし、ワールドアイテムまで持ち出していた割には、着用者の人間達が弱いというのはどういう事でしょうか?」

「可能性はいくつかあるが、聞くか?」

「わかるんですか?リュウノさん。」

「ああ。」

 

たっちを含むギルドメンバーがリュウノの意見を求める。ウロボロスと合体し、なおかつ『将軍(ジェネラル)』のクラスを持つリュウノの頭脳の性能はデミウルゴスに匹敵する事がわかっているからだ。

 

「1つは、スレイン法国に居るプレイヤーから譲り受けた、もしくは奪った可能性だな。」

「そんな事ありえるのですか?」

「ないとは言えんだろ。例えば、この世界の住人と仲良くしようとしたプレイヤーと仲良くなった異世界の住人が居たとする。親睦の証としてユグドラシルの武器を譲り受けたソイツが、仲良くなって油断していたプレイヤーを騙し討ち、その後アイテムを根こそぎ奪ったというパターンもあるかもしれん。」

「な、なるほど…。」

「親しくなった相手には気が緩むからな。国に属する者なら、上司の命令で騙し討ちをする可能性もあるかもしれん。」

「親しくなったのに……殺すのですか?」

「国に、家族や友人を人質にとられ、『プレイヤーを殺せ』と命じられた……という線もある。プレイヤーのような、強大な力の持ち主を恐れる人間はどこにでもいるからな。今後、我も王国や帝国から恐れられ、命を狙われる可能性があるかもしれん。」

 

リュウノの予想は間違いではない。人間達が協力してリュウノを倒そうとする可能性は十分にあるからだ。

 

「2つめは、暗殺部隊の人間が、スレイン法国に居るプレイヤーが所有するNPCだったという可能性だ。」

「NPC!?…にしては弱すぎません?」

「ウチにもいるだろ、恐怖公みたいにLv30前後のNPCが。自分の作ったNPCに強い武装を付けたがるプレイヤーも結構居るからな。」

「なるほど…確かにありえそうです。」

「今思いつくのは、このぐらいだな。」

 

 

 

「あ!アインズ、これ渡すの忘れてたわ。」

 

リュウノが所持品から2つのアイテムを取り出し、机に置く。

 

「それは!?」

 

見た事が無いアイテムに、アインズの目が輝く。

 

「ズーラーノーンの奴等が持ってたアイテムだよ。コッチの丸いのが『死の宝珠』。」

「死の宝珠!?」

 

ウルベルトがもの凄く興味を持つ。

 

「コッチが『叡者の額冠』という名前だったかな。我が知る限り、このアイテムはどっちもユグドラシルになかったハズだ。」

「どのようなアイテムなんですか?」

 

アインズがアイテムの効果を聞いてくるが、鑑定の魔法を所持していないリュウノにわかる訳がなく──

 

「スマン、我もよく知らん。『死の宝珠』が知性ある(インテリジェンス)アイテムだと言う事はわかるんだが、コッチの『叡者の額冠』はよくわかってない。鑑定してくれアインズ。」

「任せて下さい!未知のアイテムを鑑定する時ほど、ウキウキする瞬間はありませんから!」

 

アインズが調べた結果、『死の宝珠』は負のエネルギーを貯める事ができるアイテムらしい。しかも会話が可能らしい。

『叡者の額冠』は装備者の自我を無くし〈魔法上昇/オーバーマジック〉を発動する媒介へと変えるアイテムだと言う事が判明した。ただし、女性しか装備できないアイテムだと言う事も判明した。

 

「『叡者の額冠』の〈魔法上昇/オーバーマジック〉が気になるが、使用時のデメリットがヤバイな。使い捨てが可能な人材でテストする必要があるな。」

「そうですね。で、ウルベルトさん。『死の宝珠』が欲しいとか言ってましたが、大丈夫ですか?」

 

アインズが、死の宝珠を片手に持ち、死の宝珠と念話で会話しているであろうウルベルトに質問する。

 

「はい、大丈夫です。今、死の宝珠が服従を誓いました。コレ、私が貰っても良いですか?魔王活動に役立てたいので。」

「我は構わんぞ。アインズも別に構わんだろ?」

「たいしたアイテムではなさそうですし、私も構いませんよ。」

 

 

 

「さて…リュウノさん。長く付き合わせて申し訳ありません。もう夜も遅いですし、部屋でゆっくり休んで下さい。」

「ああ。じゃ、明日の朝、我はデュラハンに戻る。会話ができなくなるのが残念だが、まぁ……いつもの日常に戻るだけだし……」

「あ……そうですよね。リュウノさん、喋れなくなるんでしたね。」

「大丈夫だ、アインズ。我は喋れなくなるが、ブラックが我の声で喋るから差程変わらんさ。」

「そうですね。では、リュウノさん。また明日。」

「ああ。また明日。」

 

 

次の日の朝、リュウノは再びデュラハンの姿の『勝』に戻った。そして王都にて、アダマンタイト級冒険者チーム『竜の宝』として冒険者活動を続ける事になる。

 

しかし──勝はまだ知らない。

 

『竜の宝』の噂が広まり始めた数日後に、噂を聞きつけた周辺国家が動き出し始めた事に。

 




あけましておめでとうございます。
これからもよろしくお願いします!
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