首なしデュラハンとナザリック   作:首なしデュラハン

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※今回は、ちょっと短め。


第6話 話題に事欠かないデュラハン─その2

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◇同時刻◇

 

リ・エスティーゼ王国の北西にある、無数の山脈が走る場所に亜人達によって築かれた都市国家が存在する。

 

その国の名前は『アーグランド評議国』

 

二百年前の魔神と十三英雄の戦いの後にできた複数の亜人種たちの国家である。

国民のほとんどが亜人種であり、この国に存在する冒険者組合に所属する冒険者達のほとんども亜人種である。

 

この国は、五匹から七匹のドラゴンと、各亜人種族から選ばれた評議員たちで管理運営されている。

 

 

そして現在、その評議員達が集まり、会議が行われていた。

会議を取り仕切っているのは、アーグランド評議国永久評議員の白金の竜王(プラチナム・ドラゴンロード)と呼ばれる(ドラゴン)である。

 

その名は『ツァインドルクス=ヴァイシオン』

 

会議の議題は、リ・エスティーゼ王国に現れたデュラハンとドラゴンに関する事である。

 

デュラハンの情報がアーグランド評議国に伝わったのが今朝の事である。

情報提供者は、十三英雄の1人として名高い老人──リグリット・ベルスー・カウラウである。

 

ツァインドルクスとリグリットは、()()()()()で親しい友人となった関係である。

互いに信頼し合っており、思い出話を語り始めたら止まらなくなってしまう程の仲である。

 

その親友とも呼べる人物から伝えられた情報となれば、疑う余地はない。真実として受け入れるのは当然である。

 

では何故、会議を開くのか?

答えは1つ。デュラハンがドラゴンを連れているからである。

ただ、正確に言うのならば──デュラハンが連れているドラゴンが『問題のタネ』なのだ。

 

 

「──では、どうするか?最善案を言える者はいるかな?」

 

ツァインドルクスが、重苦しい雰囲気で周囲に意見を求める。

周囲の──ツァインドルクスを含む五体の──ドラゴン達が考え込む。

そんな光景を、各種族の亜人の評議員達が緊張した面持ちで静観している。

 

いつもなら、各評議員達が平等に議論し、意見を出し合うのが普通だ。

しかし、今回の会議に関してだけは、ドラゴン達が慌ただしく騒いでおり、亜人の評議員達は議論に交じれず蚊帳の外なのだ。

 

何より、亜人の評議員達は理解できていないのだ。何故ドラゴン達が慌てているのかを。

 

 

 

しばらく沈黙が続いた時、1人のドラゴンが口を開く。

 

「やはり、一度確かめてみた方が良いのではないか?そのデュラハンが本当に、かの偉大な竜王・ティアマト様を召喚できるのかを。」

 

最初に口を開いたのは、『青空の竜王(ブルースカイ・ドラゴンロード)』の異名を持つ(ドラゴン)──

『スヴェリアー=マイロンシルク』だ。

彼はクロマティック・ドラゴンの系統に属するドラゴン族である。その為、ティアマトを崇拝している。

 

「一理ある。もし本当なら、そのデュラハンはバハムート様も召喚できるのだろう?なら、盛大な持て成しでお迎えしなくてはならなくなる。」

 

スヴェリアーの提案に賛同したのは──

『オムナードセンス=イクルブルス 』だ。

金剛石の竜王(ダイヤモンド・ドラゴンロード)』の異名で呼ばれている彼は、バハムートを崇拝するメタリック・ドラゴンの系統に属するドラゴン族である。

 

「その通りだ。バハムート様を召喚できるだけでなく、他の偉大な竜王様達まで召喚できるのなら尚更だ。」

 

オムナードセンスの隣にいたドラゴン──

『ケッセンブルト=ユークリーリリス』 も賛同の意を示す。彼も、バハムートを崇拝しているドラゴン族である。

彼は『黒曜石の竜(オブシディアン・ドラゴン)』と呼ばれてはいるが竜王ではない。

 

「うむ……」

 

ツァインドルクスも、一度確かめてみたいという気持ちが強い。友であるリグリットが嘘を言う可能性は低いが、見ると聞くでは大いに違う。この目で見て、真実を見極める方が自分を納得させやすいのだ。

 

「貴方はどうです?ザラジルカリア。」

 

ツァインドルクスが、ずっと黙っているドラゴン──

評議国で1番若いワーム・ドラゴンの『ザラジルカリア=ナーヘイウント 』に尋ねる。

 

「……俺は信じられません。デュラハンが、かの偉大な竜王様達を召喚できるなんて。」

 

他と違って否定的な意見を言うザラジルカリアに、ツァインドルクスの目つきが変わる。

 

「私の友人の情報が信用できぬと?」

 

先程まで優しげだったツァインドルクスの口調が、やや高圧的なものへと変化する。

ツァインドルクスからしてみれば、友人であるリグリットの情報を疑われた事に、少しだけ腹が立ったのだ。

 

ツァインドルクスはアーグランド評議国のドラゴン達の中で1番強いドラゴンである。そのドラゴンから睨まれるのだ。ツァインドルクスの実力を知っている者なら、同じドラゴンでも怯んでしまうものだ。

 

「い、いえ……そうは言ってません。ただ、デュラハンがかの偉大な竜王様達を召喚できる事が不思議だと、そう思っただけ…です…。」

 

案の定、気圧されたザラジルカリアが釈明するが、ツァインドルクスの機嫌は変化しない。

 

「己の見識だけで物事を考えるのはやめた方が良いぞ、ザラジルカリア。世界は広い。ひ弱な人間が、最強の英雄になる事だってあるのだからな。」

 

600年以上生きているツァインドルクスの言葉には重みがあった。まるでそれを経験し、実際に見てきたと言うような。

 

何も言い返せなくなったザラジルカリアが押し黙まる。それを見たツァインドルクスは、再び優しい口調に戻る。

 

「──しかし、ザラジルカリアの言い分も認めなくてはならない部分があるのは確かだ。」

 

ザラジルカリアが伏せていた顔を上げる。

 

「この目で直接確認しないと分からぬ事もあるだろうからな。なので……ザラジルカリア、貴方に頼みがある。」

 

「な、なんでしょう?」

 

「私と共に、アーグランド評議国の使者として、王都に向かってほしい。」

 

「なに!俺が行くんですか!?」

 

「そうだよ。ドラゴンが一緒なら、アーグランド評議国の使者だと理解してもらいやすくなるからね。」

 

アーグランド評議国にドラゴンが居るという情報は、既に様々な国に知られている。使者がドラゴンなら、偽者かどうか疑われる心配もない。

 

「それに、貴方も真実が知りたいのであろう?なら、その目で直接見て確かめるべきではないか?」

 

これは一本取られたと、ザラジルカリアはため息をつきながら、情報を疑った自分を後悔する。

 

「わかりました……貴方は例の鎧で行くのですか?」

 

「無論だよ。私の本体は国から出る訳にはいかないのでね。」

 

 

 

 

 

 

会議が終わった後、ツァインドルクスはいつもの自分が守護する建物へ戻る。

そこには、昔とある理由で入手した、八欲王の武器が保管されている。

ツァインドルクスは、それを守護しており、頑なに離れようとはしない。離れる際は、特殊な力で操った鎧で守らせる程に。

 

「ユグドラシルから来た存在か……再び現れるとは思っていたが、やはりか。」

 

そう呟きながらツァインドルクスは、部屋の隅に飾ってある鎧に目を向ける。

 

 

200年程前、あの鎧を操作し旅をした事があった。

その過程で、様々な出会いをした。

特に思い出せるのが、十三英雄として一緒に冒険をした仲間達である。

その十三英雄のメンバーの内、リグリットとイビルアイは当時から生き残っている数少ないメンバーでもある。

 

ユグドラシルという異世界の存在を知ったのは、当時の十三英雄のリーダーがきっかけだった。

リーダーは、最初は弱い凡人だったが、傷つきながらも剣を振るい続けて誰よりも強くなった英雄として、語り継がれている。

 

リーダーは、自分がユグドラシルという異世界から来た存在であることを教えてくれた。

その世界には、第八位階を超える魔法を使う者達が当たり前のように存在しているという。そして、リーダーと互角──さらには、リーダーより強い戦士が山程存在していたとも言っていた。

 

しかも、ユグドラシルには様々なマジックアイテムが存在し、中には圧倒的な力を持つアイテムも存在するという。

 

 

私は驚いた。自分の住む世界が、ユグドラシルという世界に比べて、どれだけ劣った世界なのかを理解したがゆえに。

 

私は恐れた。ユグドラシルから来る存在が、どれだけ強い存在なのかを知ったがゆえに。

過去に世界を荒らし暴れた八欲王も、ユグドラシルから来た存在の可能性が高いと、リーダーは言っていた。

数多くのドラゴン──竜王達が八欲王に戦いを挑み、死んでいった。

今の時代に残るドラゴン達は、八欲王に戦いを挑まなかった者達である。

だが──過去に存在した竜王達の強さに比べれば、今の時代に残るドラゴンの強さは赤子レベルである。

ユグドラシルから来た存在と戦うには、あまりにも貧弱だ。

 

 

そして再び──ユグドラシルからやって来た者が現れた。

 

ドラゴンを従えさせたアンデッド、首無し騎士デュラハン。

村を救い、冒険者になり、人間達と共に歩もうする存在。

圧倒的な強さを持っていながら、八欲王とは異なり、世界を荒らすような真似をしない存在。

 

ツァインドルクスはほっとする。デュラハンが凶暴な存在ではなかった事に。

もしこのデュラハンが、その圧倒的な強さで暴れまわっていたら、今度こそこの世界は蹂躙されていただろう。

 

だが、このデュラハンはそれをしなかった。偉大な竜王達を従えさせておきながら、破壊をよしとしない心優しき人物だった事に、ツァインドルクスは胸を撫で下ろす。

 

ユグドラシルから来たデュラハンが危険な存在ではない事がわかった。なら、次はどうするか?

 

「リーダーと同じように、親しい関係になれれば良いのだが……」

 

リグリットがデュラハンと会った時、デュラハンは人間の姿だったという。

そして、自分が()()()()()()()()()()調()()()()()()()()事を知った途端、態度が一変したという。

その後、ユグドラシルから来た存在だとバレた途端、その場から逃げた、という事らしい。

 

「何故逃げたのか……それが解せないな……。」

 

リグリットの調べで、デュラハンが100年以上前から存在していたという事と、過去の記憶を失っていたという情報も入手している。

 

ツァインドルクスは思考の末、ある可能性を思いつく。

『記憶を失っていた事と頭が無いデュラハンという形状には、何か関係があるのでは?』と。

 

「(まさか──何者かに呪いの類いをかけられていたのか?それで、『ユグドラシル』という言葉を聞いて記憶が戻ったのか?)」

 

何らかの理由で頭と記憶を失い、『ユグドラシル』という言葉をきっかけに記憶を思い出すようになっていた。

そう考えれば、デュラハンが慌てて逃げたのも道理がいく。

 

(「復活した記憶からユグドラシルの事を思い出し、同時にユグドラシルに関する知識を持った者が気になった。が、ユグドラシルから来た存在だとリグリット達に知られた事で、おもわず逃げた……という感じか?」)

 

完全ではないにしろ、デュラハンが過去の記憶を思い出した可能性は高い。そして、より明確に記憶を思い出す為に、ユグドラシルの情報を欲しがっているという可能性を考える。

 

それならば、『ツアーとは誰だ!』『何故ソイツはユグドラシルを知っている!?』と、こちらの情報を欲しがったのも理解できる。

 

「ならば……ユグドラシルについて知っている人物を探している可能性は高いな…。」

 

なら、まだ交渉の余地はある。

 

『こちらが知りうるユグドラシルの情報を与えるので、私達と友好的な関係になりませんか?』

 

という形に持っていく事が可能かもしれない。

向こうが欲しがっている物をこちらが所持している以上、こちらが多少有利な状況に持っていく事ができる。

だが、向こうの実力が高い場合、情報入手の為に実力行使を行ってくる可能性も考えなくてはならない。

 

「殺し合いにならないように、重々気を付けねばな。」

 

ツァインドルクスは目を閉じ、神経を研ぎ澄まし、精神を集中させる。

目の前の鎧に意識を集中させ、目を開ける。

 

目の前には、目を閉じたドラゴンの自分がいる。

 

「さて、鎧を操るのは成功した。後はザラジルカリアの出立準備が終わるのを待つか…。」

 

 

 

 

 

 

ツァインドルクスとザラジルカリアが会議場を去った後、スヴェリアーとオムナードセンスが講義を開いていた。

正確には、亜人種の評議員の1人が発した質問に、2人が解説しているという状況である。

 

質問の内容は、会議中にサラリと出ていた、ティアマトとバハムートという名前の事である。

 

「よいか、お前達。ティアマト様とバハムート様は、我ら竜種の始祖として語り継がれている、神にも等しい御方達なのだ。このお二人のおかげで、我らドラゴン族が繁栄したとも言えるのだ。」

「この御二方は対をなす存在でな。バハムート様が善竜、ティアマト様が悪竜として君臨なさっていたと、言われている。」

 

スヴェリアーとオムナードセンスの話は続く。

 

 

 

ティアマトは、現在、富、強欲、嫉妬を司る悪の神として君臨していた、悪竜である。

水を操る事ができ、海すら作れる程の圧倒的な水量で全てを水底に沈める事ができる。伝説では、大陸を水で沈めて、そこを住処にしていたと、言われている。

 

ティアマトほど、遠慮会釈なく徹底して略奪と戦勝を望む者は他にない。歯向かう者や立ち向かって来る者に対して容赦はなく、その者達を殺した後──その者達の仲間や家族ですら皆殺しにする程であった。

ティアマトは、自分を崇拝する配下のドラゴンをそそのかして(中には人型生物の教団もある)、征服できる限りのものを征服させ、戦利品を山と積み上げさせる事もしていたという。

 

そんな悪逆非道なティアマトを崇拝する者達は、そんな彼女を──不遜、傲慢、強欲を体現した──強欲と嫉妬の神として崇めるようになったのだった。

 

 

 

バハムートは、未来、正義、名誉、守護を司る善の神として君臨していた、善竜である。

炎を操る事ができ、その火力は凄まじく、岩すら溶かす程。伝説では、周囲を灼熱地獄に変え、全てを灰にできると言われている。

 

バハムートは擁護精神を良しとしており、ティアマト勢力の脅威に怯える者達を、その危険から守っていた。

バハムートを崇拝する配下のドラゴン達(主にメタリック・ドラゴン等の善竜)も、自分達の縄張り内に人型生物の生活圏を治め、それを荒らす者達を許しはしなかったという。

 

そんな彼等に守られていた者達は、バハムートを崇拝し──公正さ、気高さ、強さを体現した──正義と秩序の神として崇めたのだった。

 

※ちなみに人型生物達は──善竜達に守ってもらうかわりに、定期的に彼等に貢ぎ物を捧げていた。

 

この考えには、ちゃんとした理由がある。

これは、ティアマト配下の悪竜達に襲われた場合、宝を全て奪われるだけでなく、街や国すら破壊されてしまう危険があったからだ。

それに比べれば、定期的に一定額の金品を支払う事で、安全を得られるのならば安いと、判断したからである。

 

 

 

他の竜王に関しても、スヴェリアーとオムナードセンスは簡単に語る。

 

①ファフニール〔属性:悪〕

どこかの国を滅ぼし、財宝を奪った竜王。伝説では、後に人間の英雄に、激闘のすえ倒された。と、伝わっている。

 

②リヴァイアサン〔属性:悪〕

アンデッドすら毒状態にする強力な〈屍毒ブレス〉を持つ竜王。周囲に毒ガスをばら撒き、ありとあらゆる生物を死滅させる。伝説では、一国を毒ガスだけで死地に変えたとも。

 

③青龍&黄龍〔属性:悪〕

雷の力を操る双子の竜王。光速の速さで動き、豪雨と雷を降らせ、相手を焼き焦がす。伝説では、一時期空を支配していたとも言われている。

 

④ウロボロス〔属性:悪〕

闇の力を操る竜王。強力な範囲即死魔法を有し、生物の命を容易く奪う。絶対的な悪性で、その残虐ぶりはティアマトに匹敵すると言われている。

また、神竜と対をなす存在とも言われている。

 

⑤ナーガ〔属性:善〕

土を操る竜王。自然と大地を豊かにし、豊穣をもたらす。善竜だが、その力は絶大。伝説では、大地を割って全てを奈落に落としたとも。

 

⑥ヤマタノオロチ〔属性:善〕

風を操る竜王。頭が八つあり、ヒュドラ系のドラゴンの究極体。八つの頭がそれぞれ思考し、ブレスを吐く。操る風は、全てを吹き飛ばす台風クラスから、物を切断する刃物クラスまでと自由自在。伝説では、国を吹き飛ばした、山を切った、とも言われている。

 

⑦白竜〔属性:善〕

極寒の地に住む雪のように白い竜王。氷のブレスを吐き、全てを凍てつく氷に変える。伝説では、山の一角に難攻不落の巣を作った事で、その山の周辺が常に吹雪に苛まれ、生物達が住めなくなったとか。

 

⑧神竜〔属性:善〕

光を操る竜王。その光は、太陽の如き輝きと光熱を発し、地表を焼き尽く程。

バハムートに匹敵する擁護精神の持ち主であり、あらゆる生物を受け入れ守護した存在。その善性故に、一部では宗教的な活動をしていた人型生物がいたとか。

伝説では、十三英雄が最後に戦った竜王として有名だが、その勝敗は不明。噂では、十三英雄が敗北、または引き分けたとも。

 

 

「以上が、そのデュラハンが召喚できる竜王様達の特徴だ。」

 

話を真剣に聞いていた亜人種の評議員達は、改めてデュラハンの凄さと異常さを認識する。

 

本来なら、生者を憎み、殺すアンデッドであるデュラハン。

それが、国を容易く滅ぼす竜王や天変地異を操る竜王を従えさせ、冒険者をやっているという。

 

そして、目の前のドラゴン──スヴェリアーとオムナードセンスは、そのデュラハンを国に迎え入れるつもりでいるという。

 

「あの!我々はどうすればよろしいのでしょう!?」

 

亜人種の評議員達の最大の問題がこれだ。

その恐ろしい竜王達を引き連れたデュラハンが国に来訪した時、自分達が取るべき行動はなんなのか。それを確認しなくてはならなかった。

 

スヴェリアーとオムナードセンスはしばらく考え──

 

「貢ぎ物だ。できる限りの、高品質で価値の高い貢ぎ物を用意しておくのだ。」

 

と、助言する。

 

「それは、かの偉大な竜王様達への捧げ物ですか?」

 

という、亜人種の評議員の質問に、スヴェリアーが「そうだ。」と答える。すると、別の評議員が質問する。

 

「では、デュラハンは?デュラハンの方には、何を捧げればよいのです?」

 

という質問を投げた。

 

が、スヴェリアーとオムナードセンスは困惑する。アンデッドのデュラハンに捧げるべき物を何にすれば良いか、全く分からなかったからだ。

 

思い切って評議員達全員に相談する。様々な議論が飛び交う中、ある1人の評議員が出した案に、全員が固まった。

 

「やはり、首を捧げるべき……なのでしょうか?」

 

相手はデュラハン(首無し騎士)である。ならば、捧げられて喜ぶのは、生者の首。そういう考えが、全員の中で共通する。

だが問題は、誰の首を捧げるかだ。

 

もちろん、全員が拒否する。首を捧げるのは、即ち死を意味するからだ。

 

「では仕方ない。評議員を除く各種族の中で、1番活きの良い者達の首を捧げる事にしよう。」

 

スヴェリアーが妥協案を出す。

 

「選別は各種族の評議員がするように。無論、選ばれた者達には内緒だ。デュラハンが来訪した当日に、デュラハンの前に選別された者達を立たせ、デュラハン本人に斬らせるという形する。これでどうかな?他に案がある者はいるか?」

 

スヴェリアーの妥協案に、全ての評議員が「異議なし。」と妥協案を認可する。

 

「スヴェリアー、我々はどうするのだ?デュラハンがドラゴンの首を欲したらどうする?」

 

オムナードセンスの意見に、スヴェリアーはしばらく悩む。そして──

 

「私達は年長者だ。活きの良い者を選ぶなら──」

 

スヴェリアーの視線の先──その場所は、ザラジルカリアがいつもいる場所である。

 

「──年寄りでは駄目であろう?」

 

オムナードセンスは、スヴェリアーが悪竜ティアマトを崇拝しているだけはあるな、と心の中で思ったのだった。

 

 


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