25人程の部下に指示を出しているのは、
陽光聖典の隊長、ニグン・グリッド・ルーイン。
スレイン法国神官長直轄特殊工作部隊
六色聖典の一つ『陽光聖典』
亜人の村落の殲滅などを基本任務としている部隊である。
陽光聖典に今回与えられた任務は、王国戦士長ガゼフ・ストロノーフの抹殺である。
都市エ・ランテルの周辺の村々を、バハルス帝国の鎧を着たスレイン法国の兵士達に襲わせて偽装工作を行い、王国の王都からガゼフ・ストロノーフの部隊を派遣させ、誘き出す作戦は成功した。
ガゼフ・ストロノーフの部隊は襲われた村々の生き残りの村人達を救助し、医療施設に輸送するための部隊の編成をするなどを行ったせいで少しずつ人数が減っている。
今では約20人程の数しかいない。
陽光聖典の兵士達は第3階位の魔術が扱える。
さらに、
しかも、味方の天使を強くする、
ガゼフ・ストロノーフを確実に抹殺できる戦力だと、ニグンは確信していた。
それに、ニグンには切り札もある。
神官長から直接頂いた、魔封じの水晶だ。
最高位の天使が封じ込めてあり、第7階位の魔法が使える、最高戦力だ。
負けるはずがない。
ニグンの心は自信に満ちていた。
だが、1つだけ問題がある。
村を襲わせていた囮部隊が襲撃されたそうだ。
生き残った部下達からの報告によると、
アインズ・ウール・ゴウンと名乗るマジックキャスターが現れ、怪物三体を使役して襲ってきたそうだ。
部隊はほぼ壊滅。
謎のマジックキャスターは警告を発し、『村を襲うな。従わぬなら貴様達の国に死をもたらす』、という。
自分達の狙いはあくまでガゼフ・ストロノーフだ。
ヤツが村の外に出た所を襲えば問題ない。
が、アインズ・ウール・ゴウンなるマジックキャスターの存在は無視できない。
念の為、自国に連絡用の兵士を送る。
今後の事を考え、自国の諜報機関にアインズ・ウール・ゴウンについて調べてもらうとしよう。
「ニグン隊長、村に動きがありました。ガゼフ・ストロノーフが村を出るみたいです。」
「きたか…」
ニグンが部下達の方を向く。
「では、作戦を開始する。」
ー時間は少し遡るー
「恐らく、村を囲んでいる部隊はスレイン法国の精鋭部隊、陽光聖典だろうな。あれだけの天使を召喚できる魔術師はスレイン法国ぐらいしかいない。」
外の様子を窺いながらガゼフは言う。
村の外には、村を等間隔で囲むように兵士達と召喚された天使が見張っている。
「では…村を襲撃していた部隊もおそらく…」
「スレイン法国の偽装だな。ゴウン殿が逃がした兵士達のタイミングからして、まず間違いないだろう。」
アインズと戦士長が状況確認をしている。
勝も外の様子を窺いつつ、ブラック達にヒソヒソ話しかける。
【あれは、、
「スレイン法国にはプレイヤーがいるのでしょうか?」
【んー…たぶん違うな。もし、スレイン法国にプレイヤーが居て、アインズ・ウール・ゴウンの名前を聞いて部隊を派遣したにしても、『割にあってない』。】
勝の言葉に、ブラック達が首を傾げる。
「割にあってない。とは、どういう意味でしょうか?」
【私達のギルドは有名なんだ。無論、その強さもな。我々を打倒するために寄越した部隊にしては、あの天使は『弱過ぎる』んだよ。あんな雑魚天使では、プレアデスでも余裕で倒せる。対プレイヤー用の部隊ではないって事さ。】
「な、なるほど。流石ご主人様。」
【敵が村に攻めて来ないのは、アインズの警告が効いてる証拠だ。が、敵が撤退しないと言う事は、何か別の目的があるからだろうな。】
「その、別の目的とは?」
【戦士長だよ。さっき村長から聞いたんだけど、あのガゼフって人、王国で最強の人物らしいよ。】
「あの人間がですか!?」
ブラックは驚いている。無理もない。
最強と呼ばれているガゼフ・ストロノーフは、どうみても弱いのだ。
少なくとも、ユグドラシルから来た我々からしてみればだが。
あの戦士長の強さで王国最強なら一般の兵士達は『さらに弱い』のだ。
逆に考えると、ガゼフの強さは、外にいる天使より少し強い程度と言える。
陽光聖典なる部隊が王国最強の戦士長を誘き出し、抹殺しようと考えていたとすれば、外に展開されている天使達を総動員すれば、ガゼフを殺せる戦力になるだろう。
【つまり、外にいる部隊は戦士長を抹殺するための部隊って事さ。戦士長の強さをこの転移世界の基準にして換算すると、外の部隊が精鋭と呼ばれるのも納得できる。】
「なら、そこまで警戒する必要はないのでは?」
【それは短慮がすぎるぞ、ブラック。我々以外のユグドラシルプレイヤーがスレイン法国に居るかもしれないからな。プレイヤーからワールドアイテムや武器・武具などを友好の証として、スレイン法国の兵士達が借り受けてる可能性もありえる。常に警戒はして置くべきだぞ。】
「し、失礼しました、ご主人様!」
【それに、奴らは天使を召喚できる。外にいるのは雑魚だが、スレイン法国内部には最高位の天使を召喚できる魔術師が居ました、みたいな事もありえるからな。最高位の天使、
「ご主人様やアインズ様ですら本気を出さないといけない敵がいるかもしれないとは…」
【ユグドラシルでは、私より強いプレイヤーやモンスターは山ほどいたからな。ギルドメンバー41人で強さを競ったら、私なんてせいぜい真ん中ぐらいだよ。たぶん…。】
ワールドアイテムを所有している今の自分なら、もう少し上に行けるかもだが、アイテムの力に頼った時点で負けのようにも思える。
勝が考えこんでいた時、急にガゼフから声をかけられる。
「ゴウン殿、勝殿、私に雇われないか?」
【え?】
「ふむ…」
突然の誘いに、理解が追いついていない勝。
「つまり、協力してくれないか?という事ですか?」
「ああ。報酬は王国に帰ってからになるが、それなりの額を用意しよう。」
【なるほど。そう言う事か。うーむ…】
これはまたとないチャンスではないか?
王国に恩を売れば王国の後ろ盾を得られるし、王様から感謝されれば、我々が悪い集団ではないと認めて貰えるかも!
「どうだろうか?ゴウン殿。」
「お断りさせていただきます。」
「…そうか。それは仕方ないな。」
アインズは断るのか。まあ、他国同士のいざこざにあまり関わって、面倒事が増えるのも問題ではあるが…
「勝殿は?」
【雇ってもらおうかな。】
「戦士長に協力するそうです。」
「そ、それは本当か!?ありがたい!」
「ええ!?勝さん、どういうつもりですか?」
理由を尋ねるアインズに、少し考えてから自分の意見を伝える。
「えーと、ご主人様はこうおっしゃってます。」
①王国に恩を売れば、王国の後ろ盾を得られる可能性がある事。
②戦士長と行動をともにすれば、異形種である自分達が怖がられずに済む事。
③ドラゴンを連れて行動したら必ず目立ってしまうので、王国の協力を得て広報してもらう事で、自分達の信頼性と安全性を伝えてもらえる事。
「以上が、ご主人様の考えです。」
「うーむ…確かに勝さん達はどうしても目立ってしまいますから、怖がられるよりはマシかも知れませんが…」
悩むアインズをしりめに、勝が戦士長と取り引きを始める。
「戦士長、ご主人様から報酬の件でお願いがあるそうです。」
「何かな?勝殿。」
「国王公認の冒険者にしてもらいたい。との事です。」
「冒険者…ですか?」
「はい。冒険者として、王国で活動したいと言えば、王様も王国の国民も安心するのでは?と、ご主人様はお考えです。異形種である我々が冒険者になれるかどうかはわかりませんが、ドラゴンを連れた異形種が王国の領土内をフラフラするよりは、冒険者として活動させて監視する方が楽でしょう?」
「それは…そうだな。一理ある。」
「それに、王国は帝国と戦争をしているらしいですね。ご主人様が帝国側に雇われたら、王国にとってかなりの痛手になるかもしれませんよ?」
「!!…それも、そうか。わかった!王の決定次第だが、私もなるべく強く進言してみよう!」
「では、交渉成立ですね。」
勝と戦士長が握手する。
【なら、私達の実力を戦士長の前で見せる必要があるか。】
「そうですね。スレイン法国の精鋭部隊をぶっ潰しましょう!」
「「ガウー!」」
勝達がヤル気満々になる。
「はぁー…仕方ありませんね。勝さん、気を付けて下さいね。」
アインズが諦め顔で言う。
勝がGoodポーズで返す。
「戦士長殿、私とアルベドはこの村に残り、村を守ろうと思います。それでいいですか?」
「構わない。ゴウン殿にも感謝する。この村を救って頂いて、本当に。」
「お気になさらずに。乗りかかった船というヤツですよ。せっかく助けた村が、また襲われるのは後味悪いですから。」
戦士長がアインズとも握手する。
「では勝殿、この後の作戦に関して、なにか妙案があるなら聞きたい。」
少し腕を組み、考える。
本来なら、戦争すらした事がない勝に戦略など無理なのだが、何故かいろいろな作戦が思いつく。
自分の職業の1つである『
とにかく、最も効果的な作戦を選ぶ。そして
「では、ご主人様の作戦を伝えます。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーそして現在ー
ガゼフ・ストロノーフの部隊がカルネ村を離れ、都市エ・ランテルへ続く道を馬に乗って走っていた。
カルネ村を包囲していた部隊は、ガゼフの部隊の出発を確認するやいなや何処かに消えた。
しばらく走っていると、前方にスレイン法国の精鋭部隊、陽光聖典が現れる。
先回りしてガゼフの部隊を待ち伏せしていたようだ。
「よし!ここまでは作戦通りだ!後は勝殿達が来るまで持ちこたえられるかどうかだ!全員、武器を持て!奴らをできる限り、俺たちに引きつけるんだ!」
「「「了解!」」」
勝の作戦は実にシンプルな内容だった。
戦士長もアインズも納得の作戦だった。
ガゼフ隊が天使の群れに突っ込む。
スレイン法国の部隊は、天使を前面に出し、後方から魔術で攻撃してガゼフ隊を迎撃する。
ガゼフ隊と天使達が乱戦状態になる。
ガゼフの隊員は防御で固め、ガゼフが懸命に天使を切り払って行く。
「武技・四光連斬!」
ガゼフが武技を発動させ、天使4体を横薙ぎで切る。
それを見た王国兵達が歓声を上げる。
「凄い!流石が戦士長だ!」
「我らが戦士長は無敵だ!」
ガゼフの戦いぶりを見た陽光聖典の魔術師達がガゼフに集中攻撃を浴びせる。
「ぐっ…!?流石に魔法の集中攻撃は避けきれん!くそ!」
ガゼフが怯んだ隙に、魔術師達が天使を再召喚させ、戦力を補充する。
敵の見事な連携に、ガゼフ隊がどんどん劣勢になる。
「フッ…哀れだな、ガゼフ・ストロノーフ。仲間を守るために無駄に体力を消耗し、自分を窮地に追い込むとはな。」
陽光聖典の指揮官らしい男がガゼフに語りかける。
「ハッ!それはどうかな?窮地に立たされてるのは、むしろお前達かも知れんぞ?」
「フン!強がりはよせ、ガゼフ・ストロノーフ。既にボロボロのお前達に何ができる!」
ガゼフ隊は負傷者だらけで、今にも全滅する寸前だった。
かく言うガゼフも、天使の攻撃や魔法で傷だらけだ。
「…スレイン法国の指揮官に問う!俺を殺した後はどうするのだ!?あの村も襲うのか!?」
ガゼフが敵の指揮官に質問をする。村が襲われる可能性を知りたかったからだ。
「この状況で村の心配か?本当に哀れだな、ガゼフ・ストロノーフ。安心しろ。お前を殺した後は、あの村も壊滅させる。」
すると、ガゼフがニヤリと笑う。
敵の指揮官、ニグンが不思議そうな顔をする。
「何がおかしい、ガゼフ・ストロノーフ。」
「…あの村には、私より強い御仁がいるぞ?」
「ほう?それは、アインズ・ウール・ゴウンとか言うマジックキャスターの事か?」
「それもあるが、それとはさらに別だ。」
「何!?」
王国最強のガゼフ・ストロノーフすら認める強者が他にもいる?
一瞬、焦りを見せたニグンだったが、すぐに冷静に戻す。
「それがどうした!どうせ貴様はここで死ぬ運命なのだ。その強者も、お前を殺してから処理してやる!天使達よ、ガゼフ・ストロノーフを取り囲め!」
天使達がガゼフを取り囲む。
ガゼフ隊と戦っていた天使達も混ざっている。
戦士長を助けようと、隊員達が動こうとするが、ケガのせいで走れない。
「さらばだ、ガゼフ・ストロノーフ。無駄な足掻きを止め、そこで大人しく横になれ。せめてのもの情けに苦痛なく殺してやる。」
天使達がガゼフにトドメを刺そうと、動き出す。
その瞬間、天使達に銃弾の雨が降り注いだ。
天使だけを綺麗に撃ち抜き、ガゼフにはかすりもしない。
ガゼフを取り囲んでいた天使達が全滅する。
その状況に、陽光聖典の魔術師達は動揺する。
「何だ!?今のは!?天使達が一瞬で…!」
「ようやく来てくれたか、勝殿!」
ガゼフが空を見上げるのを見て、戦場にいた全員が空を見る。
夕空には黒い点が4つ。その内の1つが急降下して来て、ガゼフ隊と陽光聖典の間に落下して着地する。
現れたのは、軽機関銃を持ったデュラハンだった。
「アンデッドだと…?こいつが天使達を撃ち抜いたのか!?」
「それだけではないぞ!見ろ!」
「なっ!?」
上空から突如聞こえた声に、再び全員が空を見る。
3体のドラゴンが空から急降下し、デュラハンの後ろに並んで着地する。
ズシン!と、その巨体に似合った音が響く。
「ドラゴン!?馬鹿な!?何故、ドラゴンが三体も…」
「なんて大きさだ…あんなの初めて見る。」
突然現れたドラゴン達に戸惑いを隠せない両軍。
「お待たせした、ガゼフ・ストロノーフ殿。」
「ブラックドラゴンに、ブルードラゴンとレッドドラゴン…まさか、ブラック殿達か!?」
「そうだ。この姿をお前達に見せるのは初めてだったな。」
「本当にドラゴンに変身できるとは…!」
「信じてなかったのか!?貴様ら!?」
ドラゴンと平然と会話するガゼフに、ニグンは驚く。
「どういう事だ!?ガゼフ・ストロノーフ!このドラゴン達は何故お前に従っている!?」
「黙れ!スレイン法国の愚かな人間ども!我々はガゼフ・ストロノーフに従っているわけではない!」
「ひっ!?」
ドラゴンに怒鳴られて、ニグンは怯む。
「聞け!スレイン法国の者達よ!我々は『アインズ・ウール・ゴウン』という組織に属する者だ。私の名前は、ブラックドラゴンのブラック、隣にいるのは妹のブルーとレッド。そして、貴様らの目の前にいるデュラハンこそ!我々のご主人様である、勝様だ。」
「あのデュラハンがドラゴン達の主人だと!?」
信じられないという顔をするニグン。
「スレイン法国の者達よ、お前達は愚かにも、ご主人様が助けた村をまた襲撃するつもりらしいな?なら、村を守るために、今ここで貴様達を殺してやろう。」
ドラゴン達から殺意のこもった視線をぶつけられる。
あまりの威圧感に、ニグンが耐えられずに部下に指示を出す。
「お、お前達!天使を再召喚するんだ!あのドラゴンを討て!」
ニグンの命令に、固まっていた兵士達がハッ!?として動き出す。
天使を再召喚しようと、するが…
【隙だらけだな。】
勝がスナイパーライフルに持ち替え、再召喚された天使達を一撃で撃ち抜き消し去って行く。
「そんな!馬鹿な!?天使達があっさり全滅だと!?」
「凄いな勝殿は…予想以上だ…。」
「あのデュラハン、強すぎだろ!?」
「おまけにドラゴンまで味方なんだ。もう負ける気がしねぇ!」
王国兵達からは歓声が上がり、もはや勝った気でいる。
スレイン法国の兵士達が焦り出す。
手当り次第に魔法を撃ち始める。
しかし、どれも第3位階の魔法でたいしたダメージにはならない。
勝もブラック達も、全く防御せずに立っている。
【ウハハw全然痛くねぇwウルベルトさんの
「我々ドラゴンに、そんなちっぽけな魔法が効くとでも?」
ブラックが煽り出す。
「くっ!?
ニグンの隣にいた権天使がメイスを取り出し、勝の方に近づいていく。
【さてさて、どれぐらいの威力かな?】
勝はゆうゆうと立っている。
権天使が勝にメイスを振り下ろす。
が、アッサリ片手で受け止められる。
「なっ!?素手でだと!?」
「片手で受けるか…あの一撃を…!」
【全然痛くない。こんなんじゃ、私は殺せないなー。】
勝が手に力を込め、メイスを離さない。
権天使が引き剥がそうとするが、ピクリともしない。
【ブラック、ブルー、レッド!ブレスをかましてやれ!】
「了解」
ブラック達が口を開ける。そこから、高密度のエネルギー球のような球体が生成される。
ブラックは黒、ブルーは青、レッドは赤の球体が出来上がる。
そして、ある程度まで大きくすると、その球体を権天使に向かって放つ。
「「「
勝がメイスから手を離す。
引き剥がそうとしていた権天使が後ろによろめく。
そこに、ブラック達のブレスが直撃した。
ズドォォォォン!!
大きな爆発と激しい爆風が両軍を巻き込む。
が、王国兵士達はブラック達の巨体のおかげで、ほとんど被害がなかった。
逆に、スレイン法国側は、激しい爆風のせいで、砂ぼこりを浴びながら倒れていた。
よろよろと体を起こし、咳き込みながら状況を確認している。
勝は、ブラックが尻尾で庇ったおかげで何ともない。
「ニグン隊長!我々はどうしたら!?」
陽光聖典の隊員達は、隊長であるニグンに助けを求める。
「落ち着けお前達!これを見よ!最高神官長から頂いた『魔封じの水晶』だ!これには、最高位の天使が封じられている!これを召喚し、奴らを一掃する!」
「最高位天使…!それだ、それなら勝てる!」
「おお!勝てるぞ!最高位天使なら、ドラゴンだって怖くない!」
スレイン法国の兵士達から歓声が上がる。
王国兵達が不安な気持ちになる。
「最高位の天使って、相当やばいんじゃないか?」
「わかんねぇよ。でも、スレイン法国の奴らの態度を見ると、相当強いのかも…。」
「勝殿…どうなさるのだ…。」
一方、勝は超焦っていた。
【ヤベーって!最高位天使を召喚とかやばいって!魔封じの水晶持ってるとか反則だろ!?アレ、ユグドラシルのアイテムだぞ!?なんでアイツが持ってるんだよ!】
「ど、どうするんですか!?ご主人様!?」
【奴らが本当に最高位天使を召喚した時は、ブルーは全力で防御系スキルを発動させて皆を守れ!レッドも防御系魔法と闇魔法の準備だ!ブラック、逃走用の忍術を考えとけ!場合によっては竜王達も召喚する!それでも駄目なら、撤退も視野に入れる!】
ワタワタしだしたデュラハンとドラゴン達の様子を見たニグンは自信を取り戻す。
「さあ!最高位天使のその尊き姿をみるがいい!」
【くっ来るか!?
ニグンの手にある魔封じの水晶が光だす!
夕日が沈み、暗くなり始めていた戦場に光がほとばしる。
「いでよ!最高位天使!
スレイン法国の兵士達の上空に、それは現れた。
光り輝く翼の集合体。
両の手で笏を持っているが、それ以外の足や頭などは一切ない。
外見的には異様とは言え、周囲の空気を清浄になものへと変化させてしまう。
聖なるものだと誰もが感じる至高善の存在。
スレイン法国の兵士達の上空だけが、光り輝く。
スレイン法国の兵士達から、「おおお!」歓声が一気に上がる。
王国の兵士達も、ガゼフさえも、その天使の姿に見とれる。
「あれが…最高位天使…」
「やべぇよ!絶対やばいってアレ!」
「勝てるわけねぇ…」
「勝殿…アレをどう倒すのだ…」
最高位天使を召喚し、意気揚々なニグン。
ニグンはデュラハンの方を見る。
すると、デュラハンが膝をついて、地面に手を当てている。
ブラックドラゴンが膝をついたデュラハンの様子に戸惑っている!
「フハハハハハッ!流石のアンデッドも、あれにはかなわないか!フハハハハッ!」
ニグンは心から思った。
勝った!私達の勝利だ!醜いアンデッドが調子にのるからだ!
「さあ、最高位天使よ!あのアンデッドに、
そして…
デュラハンのいる地点に、光の柱が降り注いだ。
デュラハンが光の柱に包まれる。
「ご主人様ーー!!」
「勝殿!」
ブラック達と王国兵士達が、光に包まれる勝を見て、驚愕する。
普通のアンデッドなら間違いなく浄化される究極の一撃だった。
そう…普通のアンデッドなら。
ニグンは勝ち誇りながら言う。
「哀れなアンデッドめ!我ら陽光聖典に歯向かうからそうなるのだ!フハハハハ──────」
【フザケるなァァァァァァァァ!!】
デュラハンが光の中で起き上がっていた。
それどころか、デュラハンから衝撃波のようなものが発生し、光の柱が吹き飛び掻き消える。
「なっ!?馬鹿な!ありえん!何故生きている!?」
「ご主人様!?」
「あれで無傷なのか!?」
デュラハンが仁王立ちしている。
何故か、体から赤と黒のオーラが湧きだっている。
禍々しいそのオーラに、その場にいる全員が恐怖する。
ブラック達ですら、見たことない自分達の主人の恐ろしい姿に恐怖している。
怒りのオーラ。ユグドラシルの課金アイテムの1つで、赤と黒の禍々しいオーラが出せるようになるエフェクトアイテムである。
エフェクトの設定欄には、
『周囲無差別に圧倒的な殺意を感じさせ、恐怖を与える。』
と、書いてあった。
勝が怒っている時に、みんなに伝わりやすいようにと思って購入していたのだが、転移後の世界だと本当に設定が反映されてしまっている。
【最高位天使を召喚するって言うから!セラフ級を警戒したのに!こけ脅しを食らっちまった!なんだよ!
勝の周りに、超位魔法の立体的魔法陣が現れる。
しかも、わざと詠唱時間を短縮せずに、見せつけるかのように。
「なんだ!?あの魔法陣は!あんな大きな魔法陣、見たことがないぞ!?」
「勝殿!?どうしたのだ!?」
スレイン法国の兵士達が、ありえないとばかりに狼狽えている。
王国兵士達も、突然の勝の変化に動揺が隠せない。
「王国兵達よ!今すぐ我らの後ろに隠れよ!ご主人様が
ブラックに言われ、慌てて隠れる兵士達。
スレイン法国の兵士達は恐怖で怯え、考えることすらやめている。
勝の超位魔法の魔法陣が消え、勝の真上、はるか上空に巨大な魔法陣がクルクル回りながら現れる。
バリバリと激しい音を出し空間に、空にヒビが入る。
スレイン法国の兵士達は、この世の終わりを感じるかのような出来事に絶望感すら感じ始めていた。
王国兵士達も同じだった。
が、次に現れたものをみて、本当に絶望に落とされた。
闇の竜王、ウロボロスが完全な姿で召喚され、ブラック達を跨ぐように現れた。
そのあまりの大きさに、全ての者達が息を呑む。
ウロボロスから湧き出る禍々しいオーラは、まるで上から押しつぶすかのようなプレッシャーをミシミシと与えてくる。
「闇の竜王!ウロボロス!我が主人の命により参上した。貴様らが、我が主人にたてつく愚かなスレイン法国の人間達か?」
スレイン法国の兵士達は、もはや答える気力すらなかった。隊長のニグンすら、その圧倒的竜王の存在感に、言葉が出なかった。
【ウロボロス、命令だ。目の前の天使を消し飛ばせ。】
「御意。」
それは一瞬だった。
ウロボロスが天使を尻尾で真上に弾き飛ばし、真上に巨大な闇のブレスを放った。
巨大な闇のブレスは、
はるか彼方の上空で、闇のブレスが爆発し、巨大な紫の球体を作り出した。
その大きさは間違いなく国すら崩壊させる威力と範囲だった。
爆発が静まり、静寂が訪れる。
誰も言葉を発しない。
静かな時間が永遠に続くかのように。
だが…
ウロボロスがゆっくりと、勝の近くまで顔を下ろし、スレイン法国の兵士達を睨む。
「それで、我が主人よ。次は、スレイン法国の人間を殺せばよいのか?」
竜王の発言に、スレイン法国の兵士達が恐慌状態になる。
神に祈りを捧げ、必死に助けを求め始めた。
「神よ!お助け下さい!我らをお救い下さい!」
「神様ァァァ!死にたくない!助けて下ぁぁぁさい!」
「命だけは!どうか!神よぉぉぉ!神様ァァァ!」
「嫌だァァァ!助けてぇぇ!我らが神よぉぉ!」
ニグンは必死に土下座しながら勝に助けを請う。
「デュラハンよ!いや!デュラハン様!我らが悪うございました!どうか命だけは!どうかァァァ!」
助けを請い始めたスレイン法国の兵士達を見た王国兵士達が同情する。
無理もない、あんなの見せられたら自分達ですら命乞いをするだろうと。
「どうするのだ?我が主人よ。」
ウロボロスが勝の判断を待つ。
勝は考えた。
そして少し冷静さを取り戻す。
怒りに任せ、ウロボロスを召喚したが、少しやり過ぎたと反省する。
何より、スレイン法国の兵士達が可哀想に見えてきたからだ。
それに、王国兵士達に怖がられるのも後味が悪い。
今後の自分の印象に悪いイメージがつくかも知れない。
そう思い始めた勝から、オーラが消える。
【ウロボロス、ちょっといいかな?貴方の登場でブラック達も怯えてるから、代弁役頼むわ。】
ウロボロスが頷く。
「スレイン法国の人間達よ、貴様らに問う。素直に答えよ。」
ウロボロスに尋ねられ、スレイン法国の兵士達に緊張が走る。
ニグンも冷や汗をかいている。
「お前達は神を信仰しているようだが、神そのものを見たことはあるか?」
ウロボロスの質問にスレイン法国の兵士達全員が首をふる。
「では、我が主人が神を召喚できると言ったらどうする?」
スレイン法国の兵士達の思考が止まる。
神を召喚する?無理だ!ありえない!
「で、できるのですか?神の召喚を…?」
「貴様らが崇める神とは違うかもしれんが、できるぞ。少なくとも、先程の天使より凄い存在ではあると、言いきれる。」
ウロボロスの言葉に嘘があるようには思えなかった。
「我が主人はこうおっしゃっている。神に助けを求めるなら、神の判断を聞こうじゃないかと。」
勝が再び超位魔法を発動する。
ウロボロスのはるか彼方の上空に、巨大な魔法陣が現れる。
バリバリと空に亀裂が入り、そこから優しい光がさし始める。
まるで、絶望の中に降り注ぐ希望の光のように。
ゆっくりと、それは舞い降りた。
天から眩しい光を浴びながら、何枚もの白く美しい大きな羽を広げながら。
光の竜王、
その姿を真下から見上げる形になっている両軍の兵士達は、空から降り注ぐ光の逆光で神竜の黒いシルエットしか確認できない。
唯一、羽だけが綺麗に見えている。
下から見上げて見る神竜の姿は、まるで羽の生えた人型にしか見えない。
スレイン法国の兵士達は、本当に神が舞い降りたと本気で誤解した。
現れた神竜を本物の神として崇め始める。
「神よ!我らをお助け下さい!」
「神の慈悲を我らに!」
「神よ、我らの罪をお許しください!」
「命をお護り下さい!」
スレイン法国の兵士達が神竜に助けを乞う。
「神よ!我らは神を信仰し、神にお使いする信者です!どうか、我ら信者に神の御加護をぉぉ!」
ニグンすら、狂乱状態に陥るほど、神竜を神と思ってしまっている。
「スレイン法国の信者達よ。面をあげ、我が姿をよく見るのだ。」
神竜が優しい声でスレイン法国の兵士達に語りかける。
「私は神ではあるが、お前達の信仰する神とは別の存在だ。それでも、我に助けを乞うか?」
スレイン法国の兵士達が藁にもすがる思いで神竜に助けを乞い続ける。
「よかろう。だがその前に、お前達に理解して欲しい事がある。我は神ではあるが、我より偉い存在がこの場にいるのだ。」
スレイン法国の兵士達がどよめき出す。
神より偉い存在がいる!?
そんな事が有り得るのだろうか?
「それは、貴方達信者の前にいるデュラハンだ。さあ、我が主人よ、貴方の尊き姿をお見せしましょう。そうすれば、信者達も納得するでしょう。」
デュラハンがスレイン法国の兵士達の前に出る。
スレイン法国の兵士達が息を呑む。
このデュラハンの本当の姿!?
先程のオーラを放つ姿ではないのか!?
あのアンデッドに何か秘密が?
神竜がさり気なく、優しい円状の光をデュラハンに当てる。
すると、デュラハンの背中から天使のような羽が8翼生え、ゆっくりと羽ばたきながら、舞い上がる。
グレーの軍服が、光のせいか白く見え、まさに神の使いのような服に様変わりして見える。
神竜の魔法、
対象者に天使の翼を生やし、飛行できるようになる魔法で、神聖領域すら普通に入れるようになる。
対神聖属性も上がり、神竜が近くにいればいるほど神聖属性攻撃がアップするオマケ付き。
本来なら、対アンデッドなどと戦うときに使う魔法である。
「我が主人こそ、本物の神なのだ。我が主人は、人間達の苦しみや悲しみ、嬉しさや楽しさを己の体で体験するために人間となり、その生涯をまっとうした。その後、デュラハンとして再び蘇り、今に至るのだ!生と死、その両方を体験した我が主人こそ、全てのものを平等に見る事ができるのだ!」
神竜の力説を、スレイン法国の兵士達は疑わなかった。
デュラハンに向かって手を合わせ、祈りを捧げだす。
「では、スレイン法国の信者達よ。我が主人のお言葉を聞かせよう。」
スレイン法国の兵士達が、デュラハンを見る。
「喜べ信者達よ。我が主人は、お前達を見逃してくれるそうだ。」
スレイン法国の兵士達が歓喜する。
あまりの嬉しさに、泣き出す兵士までいる。
ニグンすら、涙を流しながら感謝している。
「おお!我らが新しき神よ!貴方の慈悲に感謝します!」
スレイン法国の兵士達に戦意などなかった。
自分達が生き残れた事に奇跡すら感じているからだ。
「ただし!今から言う約束を守って欲しいと、我が主人は言っている。」
「や、約束とは?」
デュラハンが掲げた約束は以下の内容だった。
①罪もない村や村人を襲撃したり、殺したりしない事。
たとえ、敵国の領土だったとしても。
②デュラハンの事やドラゴンについて調べたり、監視したりしない事。
③アインズ・ウール・ゴウンの組織活動の邪魔をしない事。
「これらの約束を、お前達の自国であるスレイン法国が破った場合…そこの闇の竜王が、お前達の国に死と破滅をもたらすだろう。」
神竜の言葉を心に刻みつつ、
スレイン法国の兵士達は、とある噂を思いだす。
スレイン法国にとって、もはや伝説のように語られている話だ。
スレイン法国には、神人と呼ばれる神の血を引いた者達がいるのだが、
神人と呼ばれる存在の情報が外に漏れた場合、『真なる竜王』との決戦が始まり、スレイン法国は巻き添えを食らって消滅する。
という噂話が流れている。
さらに上層部が、
という情報もあった。
この闇の竜王は、そのどちらかなのでは?
と、スレイン法国の兵士達は考え始めた。
となれば、この闇の竜王が自分達の国にやってくるのはまずいと。
確実にスレイン法国が消滅すると。
ニグンとスレイン法国の兵士達は、
『約束を絶対破らないようにしなくては!』
と、心から誓った。
「そうか。約束を守るか。なら、この場から早く去れ!そして、お前達の国にも伝えるがよい。」
「は、はい!神の慈悲に感謝致します!」
ニグンとスレイン法国の兵士達が感謝の言葉を述べ、祈りのポーズをしだすが…
「サッサと行かぬか!踏み潰されたいのかァァァ!」
ウロボロスに怒鳴られ、スレイン法国の兵士達は慌てて逃げていった。
スレイン法国の兵士達が見えなくなるまで待つ。
そして、姿が消えたのを確認すると、デュラハンの羽がなくなり、着地する。
「我が主人よ、言われた通りに『演技』したが、これで良かったでしょうか?」
ウロボロスの言葉に、勝がGoodポーズをする。
「神の演技は疲れる…我はもっと粗暴な性格なのだがなぁ。しかし、あんなに崇められたのは久しぶりじゃった。」
「スレイン法国の兵士達が涙を流しながら崇めておったの。」
「半分はお主のせいじゃろ、ウロボロス。お主の禍々しいオーラに、あやつら押しつぶされそうな雰囲気じゃったぞ?」
「何を言う!私なんて、召喚されたときの我が主人の怒りのオーラが怖すぎて、逃げたくなったほどだぞ!何事かと思ったわ!」
2匹の竜王が仲良く会話している。
勝はブラック達の元に駆け寄る。
【ブラック達、すまなかった。怖かった?】
「当たり前ですよ!ご主人様!めちゃくちゃ怖かったですよ!ご主人様が怒りのオーラを発した辺りから、震えが止まりませんでしたよ!」
「ガウ…ガウ…(怖かった…ご主人様、めっちゃ怖かった。)」
「ガウウウ…(あとちょっとで漏らすところだった…)」
ブラックが勝に文句を言う。
流石にブラックも怒っちゃうか…
やはりやり過ぎたかな。
と、後悔する。
【自分でもやり過ぎたと、反省してる。いや、割とマジで。】
「どうするんですかー!王国兵士達もビビってますよ?」
ブラックの言葉を聞いて王国兵士達の方を見る。
「戦士長…我々は生きて帰れるのでしょうか?」
「やべぇよ…俺、小便チビっちゃったよ…」
「あんなの見せられたら、もう友達感覚であのデュラハンに話かけれねぇよ…」
「私も、勝殿との会話するのが、少々怖くなってしまった…」
完全にまいってるーー!?
勝がガゼフの前に行き、土下座する。
【すみませんでした…だから怖がらないでー!】
土下座する勝に、ガゼフも土下座する。
それを見た兵士達も土下座する。
「勝殿!いや、勝様!顔を上げて下さい。私達は貴方に逆らいませんから、どうか!」
「勝様!我々の無礼をお許しを!」
【やめてー!私、そんな偉くないし、怖くないからー!】
この後、ブラックを通じて、勝が謝罪している事を必死に説明し、誤解はとけたが…
王国兵士達からの勝への視線や態度が少し変わったのは言うまでもなかった。
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一方そのころ、アインズ達は、上空から不可視化の魔法をかけた状態で勝達を見守っていた。
「勝さんが怒るところ、久しぶりに見た気がする。あんなに怖くなるとは…。空からみていたが、勝さんの殺気がここまで届くとはな…。勝さんを怒らせないよう、用心しなくてはな。」
「流石、至高の御方。私達では想像もできないような事ばかり…。勝様を怒らせないように、下僕達にも通達しておかなくてはなりませんね。」
コッチもこっちで、評価が変わっていた。
いよいよ、主人公がハッチャけ始めました(笑)
普段は温厚。
キレると怖い。
でも、根は優しい。
という、カルマ値0の主人公らしさ?が出せていたような気がします。
…たぶんね。(笑)
ニグン達が生きたまま生還するストーリーもアリだよね?ね?
*ようやくルビの使い方がわかったぞー(笑)