Family of Seven ~ハズされ者の幸せ2~   作:鶉野千歳

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作戦開始から72時間・・・
艦隊はこれと言った戦闘行為もなく、帰投することに・・




肩すかし

作戦開始から、72時間が経過した。

現在、秦の艦隊は、何事もなく、静かに海を切り裂いて航行していた。

それは、またもや突然にやってきた。

大本営から全軍に向けて、作戦終了が伝達されてきたのだ。

これを受けて、秦は各艦に集結命令を出した。

 

「各艦に告ぐ、全艦集結せよ。 集結地点は、牟岐町沖大島の東20km。」

 

声を荒げることもなく、であった。

さらに、

 

「鳳翔、各飛行隊に姫路の飛行場への帰投命令を出して。」

 

と命令を発していた。

そして・・・

 

「何か、変だよな?」

 

なに、とはっきり分からないまでも、何かおかしい、と思う秦。

 

「そうですねぇ。 勝ったとも、負けたとも、言わないなんて・・・」

 

それは鳳翔も同じだったようだ。

 

「いつもの大本営、ではないなぁ。」

 

「今は、それ以上の通信は、入ってないよ、父さん?」

 

そのうちに各艦から通信が入ってきた。

 

「ねぇねぇ、司令官? どっちが勝ったの? ボクたちが勝ったの?」

 

と皐月が聞いてくるが・・・

 

「みんな、聞いてくれ。 包み隠さず言うとだな・・・ 俺も、まったくわからん!!」

 

【はぁあ??】

 

「なによそれ?」

 

「どういうことぴょん?」

 

疑問に思うのは、当然だ。

秦も、ホントに、何も聞いていない。

だから・・・

 

「いや、俺も、さっぱり分からんのだよ・・・ 一応、問い合わせはしているんだけど、返事は、まだないんだ・・・」

 

秦の顔は、困った、の1色だ。

傍に居る鳳翔も同じく、困った、の顔だ。

睦が通信機器に張り付いているが、これと言った通信は入ってきていない。

集結地点に艦隊が集結し、帰投することに。

艦隊が大阪湾を帰投中に、暗号通信が入った。

 

「暗号通信を受信中!」

 

と通信機器のコンソールに向かっていた睦が報告してきた。

睦には、通信員らしく、暗号解読の方法も教えてあった。

そして解読が終わって、秦に報告するのだが・・・

 

「父さん、これ・・・」

 

「暗号電か?  ん? どうした、睦?」

 

「うん・・・ 内容が・・・」

 

とにかく、解読文を読むことにした秦。

 

「なになに・・」

 

そこには、今作戦の結果の概要だけが書いてあった。

 

(日米共同による、敵ハワイ方面根拠地への攻撃は、成功するも、敵破壊艦船数、甚だ少なく、引き続き、通常体制を継続されたし。)と。

 

「これは・・・ 攻撃成功だけど、完全勝利ってわけじゃぁ、なさそうだな。」

 

鳳翔にも電文を見せた。

 

「そうですね。 壊滅に至らなかった時点で、今作戦は失敗じゃぁないでしょうか?」

 

「確かにな。 失敗と言わずして、なんと言う、ところか。」

 

艦隊は大阪湾から明石海峡を通過していった。

この海峡を行きかう船は、戦闘とは無関係の様に、行き来している。

 

(ま、戦争が無く、平和に過ごせれば、問題ないんだが、なぁ。)

 

 

「あ、そうだ。 港に帰り次第、みんなを食堂に集まるように、伝えておくれ。 この電文の内容を伝えるからね。」

 

戦争は、まだ続くんだ、と思う秦であった。

 

 

相生港に、警備部に帰り着き、皆が食堂に集まった。

 

「みんな、お疲れ様。 結局、我々の戦闘は、一度も起こらなかった。 全員無事なのは、何よりもいいことだ。」

 

と皆の顔を見渡して、

 

「大本営からの、通信が来ていたので、みなに報告するよ。 電文は・・・・・・」

 

と、報告した。

 

「はい?」

 

「どういうことだい、しれーかん。」

 

「いまいち、要領を得ない通信文だけど、さぁ。」

 

「ま、はっきり言うと、攻撃は成功したけど、敵の壊滅には失敗した、という事らしい。 なので、警戒態勢は、今まで通り、という事だ。」

 

「なんで、失敗になったのか、わかるの?」

 

「ここは詳しくないが、根拠地と思われた場所は、根拠地ではなかったらしい。 で、新たな根拠地を探したようだが、見つからなかった、ようだ。」

 

ふーーん、という雰囲気だ。

 

「24時間、探したようだが、見つけられず、作戦を終了した、という事らしいが。」

 

ほうほう、と、納得したのか、しないのか・・・

 

「という事なので、明日から、みんな学校ね。  で! 出撃前に約束してた、ケーキだが・・・」

 

「今度の休日に、みんなで作りましょ。 いいわね?」

 

【やったああ!!】

 

げんきんな奴らであった。

 

「しれーかん、忘れてなかったんだね!」

 

「ああ。 忘れるもんか。 ちゃんと覚えてるぞ!」

 

と胸を張って見せる。

 

「うーちゃん、苺のショートケーキ!」

 

「ああ、もう! 何を作るかは、みんなで決めるんだよ? いい? 卯月?」

 

「ええぇぇ・・・  分かったぴょん・・・」

 

と皐月に怒られ、しょげる卯月だ。

ふふふっと笑う鳳翔が

 

「じゃぁ、苺のケーキと・・、そうねぇ、フォンダンショコラにしましょうか。」

 

と2つを作ろう、と提案してきた。

 

「やったああ!」

 

と喜ぶ卯月。

 

「フォンダンショコラ?」

 

「ええ。 チョコレートのケーキよ。 温めれば、中のチョコがとろぉ-りって。」

 

「アタイはそっちがいいかも!」

 

「ボクは両方!」

 

「あ! 贅沢!!」

 

「はいはい。 フォンダンショコラは、カップで作るから、みんな食べられるわよ?」

 

【やたっ!】

 

次の休日は、ケーキを作ることとなった。

 

 

翌日になって、横須賀の秋吉から連絡が来た。

 

「はい、楠木です。」

 

「おお。 ワシじゃ。」

 

「秋吉中将ですか? お元気そうですね。」

 

「はははっ。 元気いっぱいじゃぞ。 ま、挨拶はそれぐらいにして・・・・ 今作戦の結果は聞いているか?」

 

「はい。 ある程度、ですが。」

 

「まぁ、そうだろうな。 最前線にいた、ワシですらすっきりせんのだからな。」

 

「結果として、ハワイ方面は、敵の本拠地ではなかった、と・・・」

 

「そう言う事だ。 ハワイ方面の各島は、米軍が解放して、駐留している。 我が軍の各艦は、損失艦は無かったが、半数が被弾した程度で、全艦が帰投した。」

 

「損失がなかったのは、幸いですね。」

 

「ああ。 確かにな。」

 

「貴様には、以前と同じ任務に就いてもらうから、そのつもりでな。」

 

「分かりました。 微力を尽くさせてもらいます。」

 

「ああ。 よろしく頼む。 で、各艦の改造は、その後はどうなんだ?」

 

「これから工事の再開を指示するところです。 船体の工事は完了していますので、後は、短期日で終わるかと。」

 

「そうか。 それが終わって、訓練をして・・・だな?」

 

「はい。 新編成での艦隊運用を検証の後、次の命令を待つことになります。」

 

「そうすると、あとは・・ 長くて2,3ヶ月と言ったところか、な?」

 

「そうですね。 それくらいでしょうか。 詳細な見積りが出れば、ご連絡いたします。」

 

「わかった。 それではな。」

 

「はい。 では。」

 

と通信を終えた。

ふう、と溜息をついて、椅子にもたれた秦。

 

「どうしましたか? 秋吉提督はなんと?」

 

鳳翔が二人分のお茶を煎れた湯呑みを机まで持ってきていた。

 

「うん? 今まで通りにしてくれだとさ。」

 

と言ってお茶を啜る。

 

「じゃぁ・・」

 

「ああ。 各艦の改造を再開だ。 ま、船体の工事は終了しているのが、救いだがね。」

 

そう言って、はははっっと、笑って見せた。

ドックの作業員達に、各艦の改造の再開を指示した。

その返答として、1ヶ月もあれば完了するだろう、との報告を受けた。

秦は、その上で艦隊運用を鳳翔と研究することにした。

今までは、偵察機で敵を発見し、攻撃隊を編成して攻撃、という流れだったが、今後は、対潜哨戒機での哨戒行動が加わる。

水中では、レーダー、電探は効かないから、聴音に頼るしかない。

艦の聴音では、聞き取れる範囲が限られるから、哨戒機による、遠距離海域の聴音が必要となる。

その方法と、敵潜を見つけた場合の対処の方法を策定しておくのだ。

ただ対潜哨戒機を飛ばせば万事うまくいく、というものではないのだ。

もっとも、哨戒行動だけではなく、対潜水艦攻撃もやらなければならない。

だから、対潜哨戒機には、投下用の魚雷と対潜爆弾を積むことになる。

その訓練も必要だ。

搭載する対潜哨戒機は、哨戒と攻撃の2つが課せられる機体なのだ。

 

「先日は、訓練も運用確認も無しに飛ばしましたが、あの機体は、ちょっと重そうですし、運用は難しそうですね。」

 

鳳翔の言うとおり、彗星や流星改より若干大きめの機体をしている。

各種聴音機器の他、投下用魚雷を2本、対潜爆弾を4発を搭載することができる。

投下用魚雷は、艦船に積んでいる航空魚雷ほど大きくない。

自走用の燃料と機構が小さく済むので、その分、小さいのだった。

おおよそ半分強の大きさだった。

それでも80番を抱える彗星や、航空魚雷を抱える流星改よりも、エンジンの馬力は上だし、機体も大きい。

この機体は、翼にプロペラを備える、双発機だ。

搭乗員は3名だった。

その機体を12機以上、搭載するのだから、生半可な考えでは、いい働きをさせる事は出来ない。

折角の新型機を有効に使わなければ、と思う秦と鳳翔だった。

 

 

「ところで・・・ よろしかったのですか?」

 

「ん? なにがだい?」

 

話題を変えて、鳳翔が秦に問うてきた。

 

「皆とケーキを作ろう、なんて言って。」

 

「ああ。 いいよ。 もっとも、戦果のなかった作戦のおかげで、”調理実習”と言う、こども達の楽しみを奪ってしまったからね。 その埋め合わせだと思えば、安いもんだよ。」

 

「あなたがそう思っているのなら、私としては、特に異論はありません。 楽しくケーキを作るだけですから。」

 

「悪いね。 俺も手伝うから、何でも言って。」

 

「はい。 それはもう、頼りにしています。 なにしろ、あなたは料理上手ですから。」

 

そう言って微笑む鳳翔。

その笑顔を見てこっちも微笑む秦。

 

「そうだ。 ケーキの材料を買っておかないといけないな。 ね? 鳳翔?」

 

秦のその言葉を聞いて「ふふふ。」と笑う鳳翔。

 

「なにかな? 何かおかしなこと言った?」

 

不意に笑われたことに首をかしげた秦だったが・・

 

「実は・・・  既に材料は手配済みなんです。」

 

「え? そうなの?」

 

「はい。」

 

「お前さん、いったい、いつの間に・・」

 

「あなたが秋吉提督に連絡している間に、お店に連絡して取り置きしてもらっています。 ですので、いつでも取りに行けばいい状態ですよ。」

 

まったく、と呆れた秦だが、さすが、我が妻だ、と感心する秦。

そして、やはり、俺の判断は間違ってないな、と心の中で思う秦だった。

 

 

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