Family of Seven ~ハズされ者の幸せ2~   作:鶉野千歳

16 / 38
秦が鳳翔とこども達に、化粧道具を買ってきた。
鳳翔には・・



鏡、お化粧と・・

秦と鳳翔の寝室に、鏡台がある。

もともとは無かったのだが、秦が新たに買ってきたのだ。

 

「いつもは小さな鏡を使ってて、使いにくそうだったから、ちゃんとした鏡台を、っと思ってね。」

 

「まあ。 私はそんなに化粧道具を持っていませんのに。 宝の持ち腐れになってしまいますよ?」

 

と謙遜する鳳翔。

 

「道具が少なくても、お化粧はするんだし、必要でしょ?」

 

と秦が言うと、

 

「まあ、あればあったで、有り難いですけど・・・ こんな大きな鏡台でなくてもよろしかったのに・・・。」

 

と鳳翔が申し訳なさげに言う。

秦が買ってきたのは、椅子に座って使用する鏡台で、小物入れの引き出しが左右に2つずつ付いていた。

鏡は三枚あって、真ん中が正面用、それと左右に1枚ずつの三面鏡だ。

鳳翔は、濃い化粧では無く、どちらかと言えばすっぴんに近い、ナチュラルメイクだ。

普段は、潮風と日焼け対策と保湿、口紅くらい。

秦としては、元々美人の部類に入る鳳翔が、化粧をする必要もないのだろう、とは思ってはいた。

ただ、大人な女性として考えた時、化粧をしても綺麗と言える事は、秦としてもうれしい事なので、化粧をしやすい環境を整えてやりたかったのだ。

化粧道具も、それなりのものを手配した。

化粧筆は、広島は熊野の筆を買ってきた。

熊野の筆は、1本1本、全てが手作業で作られる、高級品だった。

試しで、手に取ったときの毛の感触は、羽毛に撫でられているかのような、毛ざわりだ。

思わず、おおぉぉぉっと声を上げるくらい、柔らかく、気持ちのいい感触だった。

秦はその化粧筆をセットで買ってきたのだった。

その化粧筆を見て、

 

「あ! この筆、いい化粧筆ですねぇ。 すごく化粧のりが良さそうな筆ですね。」

 

化粧筆を手に取り、感触を確かめていた。

化粧水、保湿クリームなどは、東京は銀座の化粧品店のモノを買ってきた。

 

「まあ、これも。 高かったでしょうに。 いいんですか?」

 

「ああ。 いいよ。 鳳翔が今より、ずっと綺麗になるならお金は惜しまないから。」

 

と言った秦も、

 

「もう。」

 

と言った鳳翔も、顔を赤めていた。

 

◇

 

鏡台と同時に、姿見としての全身鏡も買った。

姿見は執務室に一つだけだったのだが、寝室とこども達用に、2つ追加で購入した。

鏡台を買った時に、

 

「あたしも欲しい!」

 

「ボクも!」

 

と言われたが、

 

「もう少し、大きくなってからね?」

 

と我慢してもらった。

 

「「「え~~!!」」」

 

という大合唱にはなったが・・・。

その代り、と言ってはなんだが、姿見を買ったのだ。

やはり、女の子だ。

化粧やおしゃれには興味津々のようだった。

姿見の前で、ポーズをとったり、髪を鋤いて見たり、と。

 

「まあ、あの子たちは、まだまだ若いから化粧品は必要ないだろうけど、リップくらいは使うかな?」

 

「今どきの女の子なら、リップ以外にも結構、お化粧はしているみたいですよ。」

 

「え? そうなの?」

 

腕を組んだまま、驚く秦。

 

「若いのに、ケバケバしい化粧は要らないでしょ? 基礎化粧品くらいで良かない?」

 

そう思う秦だが、

 

「ふふふっ。 あなたも結構、考え方が古いですよ。 確かにケバケバしいのは要りませんけど、かわいく見えるお化粧はやってもいいと思いますよ。」

 

と鳳翔に言われて、

 

「そうなのかい・・・ま、反対は・・・しない、方がいいかな?」

 

と答えるのが精一杯だった。

 

「はい。 その方がいいかと思いますよ。」

 

そう言われると、また秦は考え込んでしまった。

 

「そうなると、鏡台がもっと要るなぁ。 部屋には人数分、入らないし・・やっぱり、我慢してもらおうか・・・。」

 

「はい。 今は無くてもいいと思います。 そのうち・・・ですね?」

 

「鏡台って、みんなで使えるものなのかい?」

 

秦本人が鏡台を使わないから、鳳翔に聞いてみた。 すると、鳳翔の答えは・・

 

「使えますけど、でも・・・ 使う時間帯は、重なりますから、やっぱり人数分は・・・」

 

暗に、1台では無理よ、と言われているようなものだ。

やはり、鏡台は諦めてもらおう、と思った秦だった。

その代り、と言ってはなんだが、こども達様に一人ずつ20cm四方の折り畳みの化粧用の鏡を買う事にした。

そして、それなりの化粧品のセットと化粧ポーチも買ったのだった。

それなら、部屋の机ででもお化粧が出来ると、考えたのだ。

持ち運びができれば、居間でも、お化粧は出来るだろうと思ったからだった。

後日、それらを買ってやると、喜んではくれたようだ。 それなりに・・・。

 

「悪いね。 お前さんたちのお化粧は、このセットで我慢しておくれ。」

 

「まあ、そんなに化粧することは無いから、これで我慢するよ。」

 

と皐月と睦。

そして朝霜が

 

「ホントは、全自動なんかができ・・・」

 

パカーン!

 

「要らんこと、言わない!」

 

と秦が、朝霜の頭を、はたいた。

 

「イッ、イテェ! なんだよ! 言ってみただけじゃん!!」

 

「お前の言わんとする事は分かるわ。 ったく。」

 

まあまあ、と鳳翔になだめられる二人だった。

 

◇

 

秦も良く知らなかったが、毎朝、鳳翔は長い髪をブラッシングしている。

その時間は・・・秦は眠っているから。

ブラシの後は、薄く髪に椿油を付けて、長い髪を括る。

化粧水、保湿クリームを念入りに付けて、薄く口紅を塗る。

そこまでするなら、鏡台は必要だ。

それとは違い、こども達は髪をセットするくらいだから、鏡台は要らなかったが。

また、夜のお風呂上がりにも鳳翔は髪のブラッシングをしていた。

そして、スキンケアも。

これは、秦も起きているからよく目にする光景だった。

いつだったか、居間で朝霜が一人で、折り畳みの鏡を前に、風呂上りで化粧水を使っていたのを秦が見つけた。

 

「おう。 どうした?」

 

「あ、しれーかん。 見てのとおり、湯上りのスキンケアだよ。」

 

「お前がねぇ・・・」

 

と感心なのか、呆れなのか・・・。

 

「なに? あたいがしておかしいかい?」

 

「いや、やっぱり、女の子なんだなあ、って思ってな。」

 

「あったりまえじゃん!」

 

そのうち、スキンケアを終えて、髪をブラッシングし始めた。

朝霜の髪は長い。

 

「手伝ってやろうか?」

 

「え? いいのかい?」

 

「たまには、手伝わせろよ。」

 

「変なコト、しない?」

 

「しないわい!!」

 

「じゃあ、よろしく~。」

 

と、朝霜からブラシを受け取って、髪を鋤いた。

根元から毛先まで。

 

「なかなか、綺麗な髪じゃないか、朝霜?」

 

「へへへ、当然ジャン!」

 

鏡に映る朝霜の顔は、やや赤かった。

時々、鏡を通して視線が合う。

そのたびに、ニコリとする秦。ニッと笑う朝霜。

 

「長いなあ。 毎日大変だろう?」

 

「そんなこたぁ、ないさ。 大抵は、みんなで交互にやりあいっこするからさ。」

 

「そうか。 それならいいな。」

 

そんなこと言いながら髪を鋤いていると、鳳翔がやってきた。

こちらも風呂上りだ。

 

「あら、朝霜ちゃん、提督に髪を鋤いてもらってるの? 良かったわね。」

 

「へへへっ。 いいでしょ?」

 

「よし! こんなもんでどうだ?」

 

「おう。 ありがと、しれーかん!! またやってよね! じゃあ!」

 

と言って自室へと戻って行った。

残された秦と鳳翔。

 

「フフフ。 どうでしたか? ”娘”の髪を鋤くのは。」

 

「案外、いいものだな。 これでコミュニケーションが図れるなら、お安い御用さ。 それはそうと、鳳翔もしようか?」

 

「あ、じゃあ、お願いします。 ここでは道具もないので部屋でお願いしますね。」

 

「ああ。 いいよ。」

 

そう言って二人より添って自室へと入って行った。

鏡台に向って鳳翔が座り、秦が後ろに立って、髪を鋤いていく。

スーーッ、スーーッと。

 

「鳳翔も髪は綺麗だね。 毎日、手入れは大変だろう。」

 

「そうでもありませんよ。 もう、慣れていますから。」

 

「俺からすると、大変だ、としか思わないけどさ。 それにしても・・ 朝霜もそうだったけど、うちの”娘”達は髪は長い方だね。」

 

「フフ。 そうですね。 短いのは睦ちゃんだけですか。」

 

「そうなんだよね・・ まあ、みんな綺麗な髪をしてると思うよ。 最近は手入れをしているみたいだけど、これって鳳翔譲りかな?」

 

「そうです、分かります? みんな、私に聞いてきますよ? どうしたらいいのって。」

 

「そうなんだ。 ははは。 震源地はやっぱり、鳳翔だったか。」

 

と秦が言ったが、鳳翔はすぐには分からなかった。

?? と。

 

「いや、みんな同じような時期から、肌や髪を気にしだしたから、おかしいなあ・・・とは思ってたんだ。」

 

「そうなんですね。」

 

そう言って、「はははは」「ふふふふ」と、二人して笑っていた。

髪を鋤き終えた秦は・・・

鳳翔の後ろからそっと手を廻して、抱きしめた。

 

「え? あ・・・」

 

顔を頭に近づけ、匂いを嗅いだ。

お風呂上りの髪からいい匂いがする。

 

「いい匂い・・・」

 

「や・・ もう・・・」

 

そして、鳳翔が首を後ろに回そうとする。

秦もそれに合わせて、顔を前に倒そうとすると・・ 二人の唇が・・ゆっくりと合さる。

最初は、軽く優しく、

次第に、強く、激しく。

唇が離れると頬を赤めて、

 

「もう、あなたったらぁ・・・」と。

 

そう言うと、秦に身体を預けるのだった。

そして・・・

秦は鳳翔を抱きかかえ、ベッドへと・・・。

・・・

翌朝、目覚めた二人は抱き合ったまま、とにかく満足そうな笑みを浮かべているのだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。