Family of Seven ~ハズされ者の幸せ2~   作:鶉野千歳

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相生での最初で最後の夏に海水浴。
泊りがけでお出かけするが・・



海水浴だ!

七月に入って最初の休日。

秦たち七人は海水浴に来ていた。

相生における、最初で最後の海水浴だ。

そしてここは、春に潮干狩りをした海岸。

浜の近くにある民宿に一拍する予定だ。

警備部をお昼前に出て、お昼頃に民宿に到着していた。

荷物を預け、早速、水着に着替えていた。

やはり、というべきか、最初に着替えが終わったのは秦だった。

宿からパラソルとレジャーシートを借りて、宿の前で皆を待っていた。

ボクサーパンツスタイルの海パンに薄い青色のパーカーを着て、海を見ていた。

 

(いい天気だ・・。 今日は、焼けるぞ、こりゃ・・・)

 

そう思っていると、着替えが終わったらしく、賑やかな声がしてきた。

振り向くと、同時に飛び出してきたのは皐月だった。

 

「へへっ、ボクが一番だね!」

 

「私が2番!」

 

と2番手は睦だった。

皐月と睦の体格は、そう違わないが、やや睦の方が胸が、ある、ようだった。

二人はタンキニだった。

タンクトップの丈が、やや短いタイプだった。

ほぼ色違いの同じ様なデザインだった。

 

「お着替え、終わりぴょん!」

 

と出てきたのは卯月だ。

卯月もセパレートタイプの水着なのだが、くびれが・・・目立たない・・

 

(うーーん、お子ちゃまにしか、見えん・・・)

 

「終わったよ。」

 

と続いて出てきたのは弥生だ。

弥生も皐月と似たような体形だが、色遣いはやや大人しい感じだ。

なぜか同じようなタンキニ・・・。

更には短パンを穿いている。

 

「着替えたぜ!」

 

と元気よく出てきたのは朝霜だ。

ビキニ。

 

「どうでい!」

 

と胸を張る。

まあ、体格も一番大きいし、こども達のなかでは、胸とくびれがある方だから、そこそこ似合っていた。

 

「おお。 朝霜は良く似合ってるな。」

 

「へへん! そうだろ!」

 

「睦も皐月も、みんな良く似合ってるぞ。」

 

「へへへ、いいでしょ?」

 

と褒めるとにこやかに笑ってくれる。

あとは、鳳翔だが・・

 

「お待たせしました・・・」

 

と言って最後に着替えてきた。

ビキニなんだが、腰にはパレオをしていた。

おおぉぉ、と秦は内心、驚いていた。

秦は、鳳翔の事だから、もっとお淑やかなデザインを選ぶのかと思っていたのだった。

鳳翔も恥ずかしそうに、おずおずと出てきたのだが、睦らに捕まってしまった。

 

「ほら、お母さん、行くよ!」

 

「あ、そんなに引っ張らないで~。」

 

「父さんも、早く!」

 

「お、おう。」

 

「父さんも行くよ!」

 

「あんだよ? 鼻の下伸ばしてんじゃん、しれーかん。」

 

図星。

秦は、やっぱり、ビキニ姿の鳳翔に見とれていた。

その視線に気がついた鳳翔は、更に顔を赤めていた。

 

「ほ、ほら。 いきなり焼くと、後で痛いぞ!」

 

パラソルを浜辺にたてて、シートを敷いて座りながら、注意喚起。

 

「え~、早く入りたいよ~。」

 

「あなたたち、日焼け止めを塗らないと、後で痛いわよ?」

 

と鳳翔にも言われて、渋々言うことを聞く睦達。

日焼け止めのオイルを塗る睦たち。

手、足、首、胴体の前は自分で塗れるが、どうしても背中側は自分では塗れない。

睦は皐月に、卯月は弥生に塗られていた。

終わると交代して塗られた。

朝霜は秦に、

 

「ねぇねぇ、塗ってよ?」

 

とおねだり。

 

「ああ、いいよ。」

 

と言って、オイルを塗っていた。

へへへっと笑いながら塗られる朝霜。

 

「なんか、くすぐったーい。」

 

「お前さんのことだ。 散々、焼くんだろうから、念入りに塗ってやったぞ。」

 

と言って塗り終わった背中を叩いた。

 

「ほら、行って来い!」

 

「イッテェなあ、もう。」

 

そう言いながらも、海へと走って行った。

五人が遠浅の海に入っていく。

わーわー、キャーキャー、言いながら。

その姿を確認した鳳翔が

 

「あなたも、塗りましょうか?」

 

と言って、秦にもオイルを塗ってくれることに。

 

「うん、よろしく。」

 

背中を鳳翔に向けた。

オイルのヒンヤリした感触が背中を伝う。

すぐにその感覚が止んだ。

不思議に思うと、背中にこそばゆい感覚がしてきた。

首を傾げてみると、鳳翔が背中にもたれていた。 というより、抱き着いている方がいいかもしれない。

 

「鳳翔? どした?」

 

「・・はい・・もう少し、このままで・・」

 

こそばゆい感覚は、鳳翔の息だった。

パラソルの下で、秦の背中に抱き着いている鳳翔・・

その手を取って、握りしめる秦・・

海からの潮風が二人の周りを通り過ぎていく・・

充分に秦の背中を堪能した鳳翔が、オイル塗りを再開する。

 

「フフフ、大きな背中ですね。 頼りがいがあります。」

 

「そうかい? 俺自身は背中が見えないから、鳳翔に見てもらわないとね。」

 

「はい。 いつでも、見ていますから。」

 

「あぁ。 頼むよ。」

 

二人の頬が赤い。

塗り終えると、交代だ。

今度は秦が鳳翔の背中にオイルを塗る。

鳳翔も、オイルのヒンヤリした感触を背中に感じていた。

そして・・その感触がすぐに止んだ。

今度は秦が鳳翔を後ろから抱きしめていた。

 

「・・色の白い、きれいな肌だ。 それにしても小さな背中だ。」

 

「や・・ もう・・」

 

頬を赤くする鳳翔だ。

 

「もう少し、このままで・・ね?」

 

「・・はい・・」

 

しばし、後ろから鳳翔を抱きしめていた。

 

「鳳翔、鳳翔・・・ あぁ、鳳翔の背中だ・・」

 

そう言って頬を背中に寄せた。

 

「はい。 私はいつでもあなたの傍にいますよ。」

 

と鳳翔が答えていた。

そして、オイルを再び塗り出した。

 

「すまないが、髪を上げてくれる?」

 

「あ、はい。」

 

鳳翔が長い髪を上げた。

綺麗なうなじだった。

 

(う、この格好、そそるなぁ・・)

 

首の後ろも念入りにオイルを塗った。

 

「これでよし!」

 

「ありがとうございます、あなた。」

 

「いや、こっちこそ。」

 

そのうちに、皐月たちが肩で息をしながら帰って来た。

 

「あー、疲れたぁ。」

 

そう言ってパラソルの下で寝っ転がった。

 

「はしゃぎ過ぎだ。」

 

と秦が言ったが、

 

「じゃあ、今度は俺たちが海に入る番だな。 行こう、鳳翔。」

 

と言って鳳翔の手を取って、二人して海へと向かった。

波打ち際からそろりと海へと入って行った。

 

「あ、ちょっと冷たいですね。」

 

「そうだな。 でも、気持ちいいな。」

 

そう言いつつ、沖の方まで歩いていく。

ここの海岸は遠浅なので、浜辺から30m位までは水深が1m以下だ。

さらに、そこから今度は50m位までが浅くなる。ひざ下くらいまで。

底に足がつくが、ゆったりと泳ぐ二人。

つかず離れず、お互いを視界に入れたまま、ゆったりと。

沖合20mくらいまで泳いできて、秦が立った。

それに合わせて鳳翔も泳ぐのを止めて立とうとしたが、

 

「わっ」

 

足を着こうとした海底がそこだけ深かったらしく、沈みかけて、秦にしがみついた。

 

「大丈夫か?」

 

「ええ。 ちょっとここだけ深かったみたいです。」

 

と言いながら、見つめ、笑いあう二人。

そして・・ 鳳翔が目を閉じ、顔を上げる。

それに呼応するかのように、秦が顔を下げて、二人の唇が重なる。

海の上で、二人の口付け。

海水でしょっぱい味がしていた。

遮るものがない海の上だったが、結構、人は見ていなかったりする。

見られていても、イチャついている、バカップルが居る、と思われるだけだったが・・

その姿は、偶然にも睦たちに見られていた・・

 

「あちゃああ。」

 

「どうしたのさ?」

 

「・・・あれ・・・」

 

と言って指をさした。 その方向には・・

 

「またやってるよ。 あの二人。」

 

「ん、どれどれって、もう、アツアツぴょん。 こっちまで恥ずかしくなるぴょん。」

 

「暑いのが、余計に熱くなるわ。」

 

「でも、父さんとお母さん、仲がいい証拠だよ。」

 

「ま、確かにね~。」

 

「それは、否定しないなぁ。」

 

そんな事を言っているうちに、

 

「あ! 帰って来るよ。」

 

二人が海から上がって、パラソルのところまで帰って来た。

 

「ふう。 水が気持ちいいね。」

 

「ええ。」

 

にこやかにそう言う二人だったが、睦たち五人の眼は・・視線は冷たかった。

 

「ふううん、気持ちよかったのね、父さん、お母さん?」

 

「「ん?」」

 

「まったく、海の上でもイチャつくことは無いんじゃない?」

 

「え? ひょっとして・・ 見てた?」

 

五人が、大きく首を上下に、ウンウン、と言っていた。

途端に真っ赤になる、鳳翔と秦だ。

 

「やだ、恥ずかし!」

 

と秦の後ろに隠れてしまう鳳翔だが、今更そんな行動を取っても、見られていたのだから、意味はまったくなさない。

 

「ま、あたいらは見慣れたけどねぇ。」

 

「以後気をつけるように! いい? 父さん、お母さん。 分かった?」

 

五人に言われ、秦と鳳翔が小さくなる。

 

「「・・はい。 以後気をつけます・・。」」

 

と小声だった。

 

「分かればよろしい。」

 

と上から目線は皐月だ。

言われたものの、二人はお互いの視線を合わせて微笑んでいた。

 

 

その日は夕方まで海で、浜辺で、七人は大いに遊んだ。

遊び疲れて民宿へと帰ってきた。

 

「はあ、疲れたよ~。」

 

「でも、楽しかったね。」

 

「あたいは、背中イタイよ~。」

 

日焼け止めのオイルを塗ったにもかかわらず、皆、黒く焼けていた。

ただ、オイルのおかげで、痛みはなかった。 一人を除いて。

 

「ひぃぃぃぃ、痛いよ~。 しれーかん、なんとかなんないかい?」

 

朝霜の、特に肩から背中に掛けて、良く焼けて、赤くなっていた。

 

「こりゃ、痛いだろ? 良く焼けたなあ。」

 

「感心してないで、なんとかしてよ~。」

 

「はいはい、火傷に効く塗り薬なら持ってきてるけど、塗る?」

 

「何でもいいから、やって!」

 

「分かったけど、その前に、お風呂で潮を落としてこないと。」

 

痛そうだが、潮が抜けないと、いつまで経ってもヒリヒリする。

こども達だけでお風呂に入った。

お風呂に入ると、余計にヒリヒリして痛む。

だから、水で洗うんだが・・

それでも、水があたるだけでも痛かったらしい。

 

「ヒィイイィィィィ!」

 

朝霜の悲鳴が外にまで聞こえる。

 

「朝霜ちゃん、ちゃんと潮を落とさないと、ずっと痛いよ?」

 

「マジで、痛いんだってば!」

 

「だから言ったじゃん。 あんまり陽の下ばかりにいるからだよ?」

 

「こんなになるって思わないって!」

 

「朝霜ちゃん、我慢ね。 ここのボディソープは、滲みないみたいだから。」

 

弥生に背中を洗ってもらう朝霜だが、それでも痛いらしい・・・

 

「うぅぅぅぅ。」

 

と涙目で我慢する朝霜だった。

睦や皐月たちは、焼けてはいたが、朝霜の様に痛くはなかったようだった。

ようやくお風呂から上がってきた朝霜は、速攻で秦と鳳翔の前まで来て

 

「塗って!」

 

とやってきた。

 

「はいはい。 ちょっと滲みるわよ。 我慢してね。」

 

と優しく鳳翔が言うが、塗り薬を塗る指が触れるだけで、

 

「ヒィッ」

 

と声を上げていた。

 

「動かないでね?」

 

「うううぅっぅ・・」

 

今にも泣き出しそうな顔の朝霜だった。

 

「睦たちはいいのか?」

 

「あたし達は大丈夫だよ。 あとで痒くなるんだろうけどさ。」

 

「うーちゃんも大丈夫ぴょん。」

 

「はい。 これで塗れたわよ。 ちょっとはましでしょ?」

 

「うん・・ ちょっとヒンヤリして、気持ちいいかも。 でも・・ イタイ・・」

 

涙目の朝霜だが、それでもお腹は減る。

民宿の広間で夕食タイムとなった。

遊びまくったこともあり、皆よく食べた。

ただ一人、朝霜を除いて。

シャツを着ていたが、腕が動くたびにシャツが皮膚にあたって、

 

「ヒィッ」

 

と叫んでいた。 それも涙目だった。

食べるどころではなかったようで、秦や鳳翔から”かわいそうだが、替わってやれない”と言われていた。

夕食を食べ終わると、部屋に布団を敷いて横になった。

朝霜はうつ伏せで布団に転がった。

掛け布団を掛けると、背中が痛いから、と言って掛け布団は下半身だけだ。

可哀そうに、と思う秦だが、こればかりはどうしようもない。

卯月と皐月は布団に入ると、疲れからかすぐに寝入ってしまった。

秦と鳳翔は隣り合って座っていた。

 

「あらま。 お疲れの様だな。」

 

「かなり、はしゃいでましたから。」

 

胡坐を掻いてる秦の膝を枕に、睦が寝ていた。

最近、秦に甘えるようになった弥生もまた、秦にもたれて寝ていた。

 

「あらあら。 あなた、大人気ですね。」

 

「皆に好かれるのは、いいことだ、と思うよ。」

 

と二人顔を見やって微笑んでいた。

海からの風が部屋を抜けていく。

睦と弥生の頭を優しく撫でる秦だった。

良い風だ、と思っていると、隣の鳳翔が秦にもたれて寝ていた。

 

「お前さんも、だいぶはしゃいでいたもんな。」

 

スーー、スーーと三者三様ではあったが、小気味よい寝息だった。

睦と弥生をそれぞれの布団に寝かせた。

弥生は猫のように丸まっている。

睦と弥生の額にキスをして、(お休み。)と。

鳳翔も布団に寝かせて、同じ布団に秦も入った。

片腕で抱いて、(お休み。)と言って口づけをして、眠りに就いた。

 

 

翌朝。

波の音で目が覚めたのは秦だった。

上半身を起こして、窓の外を見た。

既に明るかったが、朝の空気は冷たかった。

こども達は、まだまだ夢の中の様だった。

隣の鳳翔も、まだまだ夢の中・・と思ったら、寝たまま目を開けて、こっちを見ていた。

 

「おはよう。」

 

そう小声で。

 

「おはようございます、あなた。 よく眠れましたか?」

 

「ああ。 ぐっすりとね。」

 

「鳳翔は?」

 

「はい。 よく眠れたと。」

 

そう言って上半身を起こして、二人並んで座った。

こども達が寝ているのをいいことに、二人の顔が近づく。

そして唇が合わさる。

ちゅ、むちゅ・・

と、音にならない音がしていた。

唇が離れると二人もたれ合っていた。

二人して朝の冷たい空気に身を置いていた。

 

「ちょっと冷えるか。」

 

「ええ。 少し。」

 

そう言って掛け布団をかぶる二人。

フフフと笑いあって寄り添っていた。

それを見ている目があった・・

 

「まったく、朝から、何やってんだか。」

 

ビクッとする秦と鳳翔。

声を出したのは睦だった。

 

「お、起きてたのか?」

 

一気に顔が赤くなる二人。

 

「もう、わたし達のいないところでやってよね。」

 

あちゃー、と思う二人だった。

その声で皆が起き出した。

 

「ん・・ うん? あ、おはよう。」

 

ふわああああ!っと伸びをする皐月と弥生。

 

「あにがあったの? 父さんとお母さん、顔が赤いよ?」

 

「おはよう。 皐月ちゃん。 まただよ、この二人。 朝からさぁ・・」

 

「また? どこでもイチャつくんだから、まったく。」

 

「こら! 話を広げるんじゃない!」

 

「えぇ? だって、事実でしょ?」

 

「事実でも、拡げないで。」

 

ハイハイ、と頷く睦と皐月。

まったく頭が上がらない”親”であった。

皆起きだしてきたが、一人、朝霜はまだ寝ていた。

 

「ああ、まだ寝てるよ?」

 

「もう少し寝かせてやりな。 昨日は、時々痛がって起きてたみたいだし。」

 

「え、そうなの?」

 

「ああ。 可哀そうなくらいだったよ。 涙目で”イタィよー”ってね。 だから無理に起こさないでおこう。 寝れるだけでもマシだからさ。」

 

「「「そうだね。」」」

 

起きていたみんなで朝霜の寝顔を覗き込んでいた。

しばらくの間、静かに見ていたが、それに気づいたのか、朝霜が起きたようだった。

うっうぅぅっぅん・・

と言ったかと思うと、俯せに寝たままで目を開けた。

 

「「おはよう!」」

 

「お、おう、おはよ・・」

 

と言って体を起こそうとして・・

 

「ヒィッッッ!」

 

と悲鳴を上げたのだった。

まだ痛いようだ・・

 

「だ、大丈夫?」

 

「だ、ダイジョーブじゃない・・ イッタイよー・・」

 

ぐすんっと涙ぐむ朝霜だった。

 

「ありゃあ、まだ痛かったのかい?」

 

「うん・・ 昨日よりかはマシだけどさ、なんか痛いし、熱い・・」

 

「じゃあ、朝ごはんの後にもう一度、薬を塗りましょうね。」

 

「うん、よろしく、お母さん・・・」

 

なんか弱弱しい朝霜だったのだが、

 

「このか弱い朝霜もいいな。」

 

とは秦だったがみんなは、???、だった。

 

「普段の元気いっぱいな朝霜と、か弱い朝霜のギャップが大きすぎて、可愛らしいなぁと思ってさ。」

 

「うう、しれーかんのヘンタイ・・ そんなんいいから、何とかしてよー。」

 

はははっと笑う秦だった。

痛がる朝霜を何とか連れ出して朝食を済ませた七人。

再び部屋で、休んでいた。

 

「帰るまでまだ時間があるから、海へ行ってきてもいいぞ。」

 

そう秦が言うと、

 

「じゃぁ、行ってくるね!」

 

と言って出かけていったのは、皐月と卯月だった。

 

「ん? 睦と弥生はいいのか?」

 

「うん。 あたしはいいよ。 だって、こうやって出来るんだもん。」

 

そう言って睦と弥生は秦にもたれてきた。

 

「「へへへへ。」」

 

と笑っていた。

 

「あらあら。 大人気ですね、あなた。」

 

「あーん、あたいもーー。」

 

朝霜がそう言いながら、這って秦の膝に取り付いてきた。

 

「まったくお前たちは。」

 

秦が呆れていたが、

 

「フフフ。 それじゃぁ、私も。」

 

と鳳翔も秦にもたれてきた。

 

「「「え?」」」

 

睦と弥生、朝霜までもが驚いていた。

 

(お母さんも、甘えたいんだ・・)

 

そう思ったのだった。

 

「ははは。 お前たち、しょうがないなあ。」

 

と言ってそれぞれの頭を優しく撫でる秦。

五人の顔は笑顔であった。

こうして、楽しかった海水浴が終わっていくのだった。

 

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