Family of Seven ~ハズされ者の幸せ2~   作:鶉野千歳

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横須賀から帰り着いてすぐに七夕を迎えた。



七夕

 

秦と鳳翔が横須賀へ行ってからすぐ、七夕の日を翌日に迎える事になった。

秦がご近所さんの所有する竹藪から、高さ3メートルほどの竹を切り出してきた。 もちろん、許可済だ。

こいつを警備部の建物の庭に建てるのだ。

七夕飾りをするために。

 

 

七夕当日の朝。

 

「父さん、行ってくるね。」

 

「しれーかん、行ってくる!」

 

「気をつけてな。」

 

「あ、皆、お弁当持った? 忘れ物は無い?」

 

「大丈夫ぴょん! 忘れ物はないぴょん!」

 

「ちゃーんと、お弁当は持ってるよ。 じゃあ、行ってきまぁす!」

 

「卯月ちゃんは、宿題忘れてるけど、ね。」

 

「あああーん、弥生ちゃん、それ言わないで欲しいぴょん。」

 

「皆でやろうって言ってたのに、ソッコーで寝ちゃうんだもん。 しかも、揺すっても、叩いても、起きないし。 ね、皆?」

 

そう言うのは皐月。

 

「そうそう。 今回は卯月ちゃんが悪いんだよ?」

 

と追い打ちを掛ける睦。

 

「わああーん、みんながイジメるー!」

 

嘆く卯月。

そんなやりとりを玄関の前で見ていた秦と鳳翔だったが、大きなため息をついていた。

 

「大丈夫なのかい?」

 

「まぁ、卯月ちゃん以外は、しっかりしてますから、大丈夫かと・・」

 

やれやれ、と言った表情をする秦。

こども達を学校へ送り出したあと、午前中に執務を終わらせた秦と鳳翔。

庭に竹を、立てていく。

杭を打ち、竹をくくりつければ、笹竹のできあがり。

笹の張り具合の関係で50cmほど短く切ったが、それでも2メートルを超える笹竹が立った。

 

「ふぅ。 こんなもんかな?」

 

流れる汗を拭いながら一息つこうとした。

そこへ、

 

「あら、出来たんですね。 お疲れ様です、あなた。 お茶をどうぞ。」

 

と言って冷えたお茶をお盆の載せて鳳翔がやってきた。

 

「ああ。 ありがとう。」

 

汗をふきふき、食堂から持ちだした椅子に二人して座った。

 

「あー。 冷たくておいしいなぁ。」

 

ふふふ、と鳳翔に見られている秦の頬が赤くなっていく。

 

「そう見られると、恥ずかしいよ。」

 

「あら、ごめんなさい。 でも、いい男だなぁって、見てたんですよ。」

 

そういう鳳翔も顔を赤めていく。

七夕飾り用の短冊も用意し、みなの浴衣も用意した。

 

「七人分の浴衣を作るのは、骨が折れたろう?」

 

「そうでもありませんよ。 結構、楽しんで作ったんですから。」

 

浴衣は居間に用意してある。

寝間着ではない、柄物の浴衣だった。

足踏みミシンで七人分を仕上げた鳳翔。

帯も浴衣の柄に併せて作っていた。

 

 

夕方になって、授業を終えた睦たちが帰って来た。

 

「「たっだいま!」」

 

「あ! 竹がある!」

 

「お帰り。」「お帰りなさい。」

 

と秦と鳳翔が出迎える。

 

「さあ。 着替えておいで。」

 

「みんな、こっちよ。」

 

と鳳翔に促され、居間に入っていく。

 

「さ、各自の浴衣に着替えるわよ。 コレは皐月ちゃん、これは卯月ちゃん、これは弥生ちゃん、こっちは朝霜ちゃん。 最期は睦ちゃん。」

 

「わあー。 小袖とは違うね。 やっぱり、夏らしいね。」

 

わいわい言いながら着替えていく。

着替えが終わると、秦と鳳翔が観客のファッションショーが始まった。

と言っても、五人が二人に見せびらかすだけなんだが。

最初に皐月だ。

 

「じゃーーん! どう?」

 

と両手を小さく広げてくる。

 

「ねぇねぇ、うーちゃんは?」

 

次は卯月だった。

 

「私も、見て。」

 

と弥生。

 

「もう。 みんないっぺんに出ないでよ。」

 

と朝霜だ。

 

「はいはい、分かったから。」

 

と言って最後に来たのは睦だった。

五人が秦と鳳翔の前に並ぶ。

 

「文句いわないの。 へぇ~、みんな、良く似合ってるぞ。 朝霜は小袖の時の”お稚児さん”みたいじゃなかったんだな。」

 

「はい、ちゃんと背丈を測りましたから。」

 

「みんな、可愛いぞ。 良く似合ってるよ。」

 

やはり、可愛い、と思う秦だった。

 

「やっぱり、ウチの子は可愛いなぁ。 みんなを見てると親バカでもいいやって思うよ。」

 

へへへ~っと笑うこども達。

そして、秦も浴衣姿を披露した。

 

「男物だ。 どうだ。」

 

と。

 

「やっぱり、あたい達とは違うネェ。」

 

ふふふ、と笑う鳳翔が、顔を赤めて、

 

「七人で唯一の男ですからね。 やっぱり、かっこいいですよ。 ああ、惚れ惚れしますねぇ。 ウフフフ。」

 

と手を頬にあてて微笑んでいた。

 

「そういう鳳翔も、その白地に朝顔の浴衣、いい感じじゃないか。 似合ってるよ。 こども達とは違って、お淑やかさが、溢れてるようだよ。」

 

頬が赤い秦が、鳳翔を褒める。

 

「そう言ってもらえると、嬉しいです。」

 

秦と鳳翔が視線を合わせて、頬を赤めて微笑んでいる・・

そんな二人を、目を細めて見ているこども達・・

 

「またぁ、二人の世界に入ってるよ・・」

 

「もう、毎回言ってるよね、父さん、お母さん。 そういうイチャイチャは余所でやって、って。」

 

「ああ、もう。 こっちまで恥ずかしいわ。」

 

「「す、すみません・・」」

 

平謝りの二人であった。

 

 

陽も暮れた頃、楠木家では、ちょっと早い夕食となっていた。

 

「さあ。 夕ご飯にしますよ。」

 

浴衣の上から割烹着を着た鳳翔が声を掛けた。

わーい! と群がるこども達。

 

「今日は何かなぁ。」

 

「ねぇ。 気になるね。」

 

「さぁ。 出来たわよ。 今日は、五目ちらし寿司よ。」

 

わぁぁーーい。

テーブルの上に並べられたのは、五目ちらし寿司とにゅうめんだった。

ちらし寿司の具材は、イクラ、椎茸を煮た細切に、網で焼いたエビをサイコロ大に、高野豆腐を細かく刻み、錦糸卵に、サイコロ大のマグロの切り身、薄切りのきゅうり。

寿司の上に茹でたきぬさや、薄切りレンコンの酢漬けを載せていた。

ご飯は黒酢の酢飯。

五目ちらしは、大きな寿司桶に盛られていた。

ここから各人のお皿に取り分けていくのだ。

鳳翔が寿司桶からお皿にうつしていく。

なるべく、色とりどりになる様に、盛り付けに気をつけながら。

全員分の取り分けがおわると・・

手を合わせて、「頂きます!」と。

早速、朝霜ががっついて食べている。

 

「うん、うん。 おいしい!」

 

皐月も弥生も、勢いがいい。

 

「酢飯が甘酸っぱくていい感じじゃない!」

 

みな、お腹が空いていたのだろう。

お皿の上のちらし寿司が、あっという間に消えていく。

そして、

 

「「おかわり!」」

 

だと。

 

「あらあら。 そんなに急いで食べなくても、いっぱいあるわよ。」

 

そんな忠告も、耳に入っていない。

おかわりも、すごい勢いでお腹の中に消えていく。

秦もおかわりをした。

鳳翔も、自身の料理に納得の表情で食べていく。

そして、夕食後。

七人は庭にやってきた。

その手には・・ 願い事を書いた、五色の短冊があった。

緑、紅、黄、白、黒だが、各自好きな色を選んで、願い事を書いていた。

 

「へへっ、卯月ちゃんは、なんて書いたの?」

 

最初に聞いたのは皐月だった。

 

「うーちゃんはね、”みんなが楽しく暮らせますように”って言うのと、”勉強頑張ります”の2つだぴょん。」

 

次に秦が問う。

 

「睦はなんて書いたんだ?」

 

「およ? 私? えっとねぇ・・ やっぱ、ひ み つ だよ。」

 

そう答えた睦だが、次の視線が皐月に向かった。

 

「ボクもひみつ。」

 

そして弥生も皐月に続いた。

 

「私も。 ヒミツにする。」

 

だが、朝霜は・・

 

「あたいは、”しれーかんのお嫁さんになる”だぜ。」と。

 

ゴン!

 

「イッテェ」

 

頭を抱える朝霜。

 

「あんだよ! あ、また、睦ちゃんかい? 痛いじゃん!」

 

「願い事だからって、父さんのお嫁さん、じゃダメでしょ!」

 

「なんでだよ! いいじゃん! あたいの願い事なんだからさ。」

 

「だからって、大声で言わない! まったく、お母さんが居るんだよ?」

 

「まぁ、まぁ。 睦も落ち着いて。 その気持ちは嬉しいけど、俺の奥さんは鳳翔だけだから。 朝霜のお願いは、厳しいなぁ。」

 

「ええ~、ジュウコンカッコカリもあるじゃん?」

 

ウッ。

睦の目が、鋭く睨んでいた。

 

「あ・・ 冗談、冗談だよ。」

 

「ほんとかにゃああああ??」

 

「こ、怖いよ、睦ちゃん・・」

 

「はいはい。 そこまでよ。 願い事は、静かに祈りましょうね?」

 

そう鳳翔がおさめ、はあーーい、と。

 

「ちなみに、あなたはなんて書いたんですか?」

 

「俺? 俺はね、”この平和な時間がいつまでも続きますように”と”七人家族がいつまでも仲良く居れますように”と・・」

 

「と?」

 

「あと一つは、ひ み つ だよ。」

 

ほーほー。

 

「じゃぁ、鳳翔は?」

 

「わ、私は、”いつまでもこの幸せが続きますように”と・・」

 

「と?」

 

「私も、ひ み つ です。」

 

ふーーん。

しかし、鳳翔だけはちょっと違っていた。

秦に寄りかかって小声で・・

 

「でも、あなたの書いた内容、知りたいです・・ だめ、ですか?」

 

聞いた秦も小声で答えていた。

 

「え? 俺の? それは、ちょっと・・・」

 

「じゃぁ、こっそり教えてもらっても?」

 

「こっそり?」

 

「はい。 こども達には聞こえない範囲で。」

 

ちょっと悩んだ秦だったが、

 

「じゃぁ、鳳翔の書いたのも教えてくれるなら。」

 

「え? 私のもですか?」

 

「うん。」

 

ちょっと悩んだ鳳翔だが、

 

「分かりました。 じゃ、こっそり・・。」

 

秦と鳳翔はこども達に見えないように、こっそりと短冊を見せあうことにした。

 

「じゃあ、俺のから。 最後の一つは・・ はい、これ。」

 

そう言って見せる秦の顔は赤かった。

それを見た鳳翔の頬は赤くなった。

 

「え? これって・・ そういう事、ですよね?」

 

「それ以外に何があるんだよ。 じゃぁ、鳳翔のも見せて。」

 

「は、はい。 私のはこれです・・。」

 

そう言って見せた短冊を呼んだ秦は・・ さらに顔を赤くした。

 

「えっ、これって・・ 」

 

「はい・・ は、恥ずかしい・です。」

 

秦も鳳翔も茹でだこのように赤くなっていた。

それをこども達に見られていた。

 

「父さん、お母さん、なに赤くなってるの?」

 

「あ、いや・・ 大したことじゃないから・・」

 

「なんか、ヤラシイ・・」

 

「「そ、そんなことないから! ね!」」

 

と強めに否定する二人だった。

寄り添い、こども達に見えないように恋人繋ぎの手をさらに強めに握り合っていた。

二人が秘密にした内容は、奇しくもほぼ同じ内容だった。

それは・・

秦の短冊には”二人の新しい家族が出来ますように”と書いてあった。

鳳翔の短冊には”私たちにコウノトリさんが幸せを運んできますように”だった。

書いた短冊を笹にくくりつけていく。

短冊以外に、笹飾りとして折り紙の鶴や紙風船みたいなのがたくさんぶら下がっていた。

 

「やぁ、綺麗に飾り付いたね。」

 

そう言って、改めて笹竹を見る。

 

「たくさん笹飾りが付きましたね。」

 

「年に一度の七夕だからね。 多少、派手でもいいかなとは思ったけど。 でも、織姫と彦星みたいにはなりたくないなぁ。」

 

とは秦だった。

 

「え? なんで?」

 

そう聞くのは皐月だった。

 

「年に一度、二人は出会うんでしょ? そういうお話だよね?」

 

とは弥生だったが、

 

「まぁ、お話しとしては、年に一度、この時期だけ二人が出会うお話だけど、年に一度だけだぞ? そんなん短すぎるだろ。」

 

「そういわれりゃ、そうだけど・・」

 

とは皐月。

 

「好き同士なのに年に一度だけしか会えないなんてなんて寂しすぎるよ。 俺だったら・・そんなお話しの内容よりも、ずっと傍に居てくれるほうがいいな。 お互い愛し合ってるんだったら、なおの事、離ればなれになる方が、俺は嫌だね。」

 

秦はそう言って自分の相手となる鳳翔を見つめていた。

 

「私も、お話しよりも、ずっと傍に居てもらいたいですね。」

 

と鳳翔も答えていた。

秦と鳳翔が隣り合って座り、腕を絡めて、秦にもたれかかる鳳翔、だったが・・

 

「またぁ・・ 」

 

ビクッとする二人を呆れた視線が刺していた。

 

「昼間も言ったよね? ね? 父さん、お母さん。」

 

「またかい? 夫婦なのに、イチャイチャしすぎだよ?」

 

「イチャイチャした罰!」

 

と言いながら、睦が二人の間に無理やり割り込んできた。

 

「私はここが良い。」

 

と言って。

じゃぁ、とあとの四人が引っ付いてきた。

あたいはここ! と秦の反対の腕をとる朝霜、

ボクはこっち! と鳳翔の反対の腕に抱き着く皐月、

うーちゃんはここぴょん! と鳳翔の膝の上に座る卯月、

私はここがいい、と弥生が秦の膝の上に。

 

「おいおい・・」「あらあら・・」

 

結局、五人に絡め取られた二人であった。

それでも二人見あって、微笑んでいた。

そんな七人の笑顔がそこにはあった。

 

 

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