Family of Seven ~ハズされ者の幸せ2~ 作:鶉野千歳
この日の午後になって、進学する学校の制服を購入するために、採寸に来た一行。
駅前の指定洋服屋に入っていく。
「こんにちは。 予約してた楠木ですが。」
「ああ、いらっしゃいませ。 こちらへどうぞ。」
ここは洋服店だが、制服の販売指定業者になっており、多数の制服サンプルが置いてあった。
普通の洋服店というより、差し詰め、制服のコスプレ屋さんかと間違うほどだ。
「えっと、お前さんたちが通うのは、第一中学校だから・・・・」
秦が数ある制服の中から、第一中学校の札の付いた制服を探していた。
「あ、これですね?」
見つけたのは鳳翔だった。
「へぇ、セーラー服なんだぁ。」
皐月が呟く。
睦月型の三人は、元々セーラー服だから、イメージはあんまり変わらないだろうと思ったが・・・
紺色の生地に、三本の白のラインが入った、オーソドックスなデザインのセーラー服だった。
前被りタイプの、ほんとのオーソドックスなセーラー服だ。
「それと、スカーフは、これですね。」
と店員が白のスカーフを持って来た。
今は冬服なので、紺色の生地だが、夏服も展示してあった。
とはいえ、冬服で試着だ。
まず、卯月から。
試着室で、今来ているセーラー服を脱いで、制服に着替えた。
大きさはほぼ見本と同じくらいだったので、そのまま試着した。
着替えてみんなの前に出てきた。
「どうだ、卯月?」
「うん、サイズぴったりぴょん!」
「袖は、長いとか、短いとか無い?」
卯月は袖までぴったりだった。
丈もちょうどだった。
スカートは・・・
「ちょっと小さいかな?」
「卯月は幼児体型だからねぇ。」
とは皐月。
「これくらいなら、ファスナーで大丈夫だよ。」
と店員。
「サイズをあわせて、ずり落ちなければOKだから。」
と。
サイズを合せて、落ちない事を確認した。
「うん、これでいいぴょん。」
と卯月は納得したようだった。
「でも、この制服って、胸当てはないんだね?」
「そうですね。 昔からのデザインですからね。ま、いまじゃ、珍しいでしょうが。」
次は皐月だ。
「次はボクだね。」
「御嬢ちゃんは、さっきの子よりちょっと大きいから、こっちを着てみてくれるかな?」
試着室で、今のセーラー服を脱いでいく。
シュッ、シュッ、と布が擦れる音がする。
「ちょっと小さいかな?」
と言って出てきた。
首回り、胴回りは大丈夫そうだったが、袖がちょっと短いみたいだった。
両手を広げると、両手首がまるまる出てしまっていた。
おまけに丈がちょっと短く、そのままではおへそが見えていた。
「ちょっと、恥ずかしいんだけど・・・」
「あ~、ちょっと短いか。」
「それじゃ、こっちのワンランク大きめのに着替えてくれる?」
次のを渡されて着替えた。
「どう??」
と秦が聞く。
「うん、さっきよりは、ちょどいいみたい。」
といって試着室から出てきた。
「ほら。」
と言って、両手を広げて見せた。
「ほんとね。 丈も袖もちょうどいいみたいね。 スカートもいいみたいだし。」
「でも、もうちょっと短い方が・・・」
「学校指定では、この長さですね。 短くは出来ますけど、どうします?」
「あんまり短いのもなぁ。 鳳翔、どうしようか?」
「そうですね、買ってから後で長さは変えましょう。」
と鳳翔の提案をのむことにした。
だから、スカート丈は既製品のままとした。
次は弥生。
弥生は皐月とほぼ同じ体格だから、皐月と同じサイズでぴったりだった。
「ほう。 弥生は皐月と同じサイズか。」
「そうだね。 弥生の方がちょっと細いかなって言うくらいだよ。」
次は睦だ。
体格は、睦も皐月とほぼ同じくらいだ。
だから、皐月と同じサイズで試着をした。
着替えて出てくると、
「ちょっと胸が苦しいよ。 それに袖がちょっと短いかなぁ。」と。
「胸ね。 じゃぁ、同じサイズの標準体型のを、着てくれるかな。」
皐月よりも睦の方が、胸が若干、若干だが、大きかったようだ。
「え? ボクより睦ちゃんの方が胸があるの・・・・」
と陰でショックを受けている皐月だった。
着替えて再び試着室から出てきた。
「胸はゆったりなんだけど・・・ ちょっと服が大きいよぉ。 これじゃ、屈んだら中が見えちゃうよ?」
「ん?? どれどれ?」
と秦。
「! あ、あなた!!」
はっとして鳳翔が秦を止めた。
「もう! 変なコトしないでください。 恥ずかしいですから!」
顔を赤めた鳳翔だったが、秦を睨んでいた。
「あ、いや、そんなつもりはないよ、 ホント、マジ。」
と言い訳をする秦だったが、
睦は両手で胸を押さえて、顔を赤めていた。
「父さんのエッチ・・・」
鳳翔の目が、冷たく秦を見ていた。
「あ、ごめん。 悪気はないんだ。 ホントだよぉ。」
「やあああい、怒られたぁ。」
ケケケと笑っているのは朝霜だった。
「ス、スカートはちょっとキツイよ。」
「じ、じゃあ、こっちのスカートを穿いてくれるかな?」
再び着替えてきた。
「うん、こっちだと、ぴったりだよ。」
丈もちょうど良かったみたいだ。
最後は朝霜だ。
「次はあたいだね。」
こいつはみんなより頭半分大きかったので、皐月よりひと回り大きなサイズで試着することになった。
試着室で着替えて、出てきた。
「じゃああん。 どうでい!」
「ちょっと短いか。」
丈も袖も短かった。
「御嬢ちゃん、次はこれを着てくれるかな?」
「おっけー!」
また試着室で着替えて、出てきた。
「ほい! どう?」
上衣はぴったりだった。
「袖も丈もぴったりですね。」
ただ・・・
「スカートは短いです・・ね? あれ?」
と店員が気付いた。
「おい、朝霜? そのスカート、巻いてるだろ?」
「あ、バレた?」
「バレた? じゃない! 元に戻せ。」
「え~っ」
「朝霜ちゃん、試着なんだから、普通に着てちょうだい。」と鳳翔に怒られていた。
「・・はあい・・」
渋々従った。
巻いているのを元に戻して、「これでどう?」と。
立った状態で膝が見えるくらいのスカート丈だった。
「まあ、これくらいだろう。」
「そうですね。 これでいいんじゃないですか。」
これで試着、採寸が終わった。
店員が「同じサイズで、白の長そでも用意しておきますね。」と言った。
4月は紺色生地の冬服だが、早ければ5月には、白色の長そでセーラー服に切り替わるのだ。スカーフも白から紺に変る。
そして、6月には白色の半袖セーラー服、いわゆる夏服に切り替わる。
一応、2か月くらいここに居ると思ってはいるが、必ずしもそこで終わるとは言えなかったので、秦は結局、フルセットで買う事にした。
上衣にスカート、替えのスカート、スカーフ、紺の靴下・・・・と。 結構な物入りだ。
5人分となると結構な金額になる。
秦が将官クラスだったおかげで、費用的には問題なかったが、将官や佐官クラスじゃなかったらと思うと、ぞっとする秦だった。
(一式で、これだけの費用だと、リサイクルが流行るのも判るわ。 すっげー大変だ。)
支払を終え、お店を出るとき、夏服はあとで送ってくれるとのことだった。
だから持って帰るのは冬服一式だった。
あと、学生鞄など必要な物を購入した。
(うわあ、制服だけでも結構な金額なのに、その他諸々も入れると、相当な額になるなぁ。)
何しろ、五人分である。
購入した物を持って警備部の建物に戻った。
ここの学校は、靴はスニーカーではなく、ローファーだったので、今のをそのまま使う事にした。
あ、朝霜はブーツだったから、新しく買った。
◇
居間で5人のファッションショーが始まった。
とは言え、みんな同じデザインの制服だから、見て面白い、と言う感じはしないが、五人が同じセーラー服に身を包んでいる。
「ねぇねぇ、母さん、このスカート丈、短くならない?」
と聞くのは朝霜だ。
「どれくらい短くするの?」
「30センチ!」
「へ?」「は?」
パカーン!
「イテ、イテェ!!!」
秦に頭をはたかれて、頭を抱えて痛がる朝霜だが・・・
「あ、あにすんだよ!! イテェじゃんか!」
「制服をそこまでミニにするやつがあるか!」
「もう、朝霜ちゃん、私が言ったこと、覚えてる?」
と鳳翔が呆れ顔で朝霜に聞く。
「あ! ・・・・」
「思い出した? まったくもう。 少しは恥じらいを持ちなさい。 いいわね?」
「うぅぅぅ・・ 分かったよぉ・・・」
「仕方がないわね。 最初だから5センチだけ詰めてあげるから。 ね。」
「は・い・・」
朝霜も鳳翔に掛かれば、従わざるをえなかった。
「5センチくらいなら、ボクも!」と言うのは皐月。
「あ、私も!」
と後を追う睦。
「じゃぁ、卯月ちゃんと弥生ちゃんは、どうする?」
「うーちゃんもお願い!」
「わたしも。」
「それじゃあ、みんな5センチ、詰めるわね。」
と相成った。
「あ、うーちゃんは、スカートにフリフリ欲しい!」
「それは、付けられないわよ、卯月ちゃん。」
「え~、そうなの・・」
としょげる卯月であった。
「そういや、鳳翔も中学校時代は、制服だったんだろ?」
「え? 私ですか?」
「うん。 どんな制服だったの?」
「そうですねぇ。 中学は・・セーラー服でしたよ。」
「セーラー服?」
「ええ。 デザインはこの子たちと似たような、白三本のラインの入ったヤツで、衿は冬服は紺で、夏服は水色でしたね。」
「え? 水色? そんな色があるんだ。」
と皐月が割って入ってきた。
「そうよ。 夏服の時だけね? フフフ。 水色ですから、ちょっと可愛い感じですね。 スカートは紺色でしたね。」
「ええ? それだと、なんかコスプレみたいだね?」
と朝霜も割って入ってきた。
「そうね。 今から思うと、そんな感じがするわね。 でも、水色は可愛く見えるから、それはそれで良かったんだけど。」
そこまで聞いていた秦が唸っていた。
うーーーん、と。
「どうしたんですか?」
「ん? い、いや、水色セーラーの鳳翔を、想像してしまって・・・ いや、可愛いだろうなって。」
「あ! 父さん、赤くなってる!」
「なんか、やらしい!」
「ち、違う! ほら、鳳翔が、水色の・・セーラー・・服を・・・着てたって・・・」
(見てみたかったなぁ・・ 可愛いだろうなぁ・・)
と思ってしまった秦だった。
「父さん、やらしいよ?」
「違うから! そんなんじゃないから!」
と否定して、
「そ、そういや、スカートを詰めるんだろ?」
「そうだった!」
と言って・・・
五人はそそくさとスカートを脱いだ。
秦が居るのに・・・
「こ、こらあ! なんでいきなり脱ぐんだよ!」
「へ? いいじゃん、別に。 パンツ穿いてるしさ。」
「そうじゃ・・・ まったく!」
まったく、目のやり場に困った秦は、顔を赤め、ひとり部屋を出て行こうとする。
「ほ、鳳翔、 あ、あと頼むわ。」
「はい。 お任せください。」
とにこやかに応えるが、内心は、五人に呆れていた。
五人とも上衣はセーラー服だが、下は・・・パンツ一丁なのだ。
「もう! みんななんて格好してるの! 早く着替えなさい!」
と少々お怒りモードだ。
「はあああい。」
返事は良かったが、着替えの動作は遅かった。
鳳翔は五人分のスカートの裾上げに取り掛かった。
一旦、縫い糸を解き、5センチ分短めに折り印をつける。
曲がっていないか確認しながら次の工程へ。
アイロンをあてて、折り目を付けていく。
プリーツが着いているので、注意しながらアイロンをあてる。
折り目が付いたら、布を接着させるテープ糊を貼り付けて、当て布をして再びアイロンをあてる。
テープ糊のおかげで、いちいち縫わなくてもよくなったが、念のために鳳翔は縫って生地を留める。
ここまでで、一応、完成なのだが、五人分あるので、見分けが付かない。
そこで、ベルト位置に名前を刺繍することにした。
漢字で、朝霜、睦、卯月、皐月、弥生、と。
五人分のスカートの裾上げが出来上がった。
次は上衣だ。
これもどれが誰のだか、良くわからないので、裾の裏側に名前を刺繍した。
スカートと同じく、漢字で名前を。
ようやく、五人分が終わった。
気が付くと、もう夕方だった。
「さあ。 夕飯の支度をしましょうか。」
と腰を上げる鳳翔だった。