Family of Seven ~ハズされ者の幸せ2~   作:鶉野千歳

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再び、再開させていただきます。

いよいよ秦たち七人が呉に着任します。
また、家族の歯車が回り出します。



ようやくの呉
呉着任!


7月の下旬、夏の遅い夕方になって、早瀬の瀬戸を抜けて呉港に到着した秦の艦隊。

水道を抜けるやいなや、

 

「こちらは・・」と入ってきた本部の通信を遮り、

 

「こちら、第一対潜駆逐艦隊所属一番艦、夕雲型駆逐艦・朝霜! 呉に着いたぜ!」

 

「続いて、同じく二番艦、睦月型駆逐艦・皐月! 到着だよ!」

 

「うーちゃんも到着ぅ!」

 

「四番艦、睦月型駆逐艦・弥生、帰って来たよ。」

 

そして、最後に、

 

「第一対潜駆逐艦隊旗艦、空母・鳳翔、ただいま呉に到着致しました! 以後、よろしくお願いいたしますね。」

 

と発信する。

 

「こ、こちら呉鎮守府本部。 貴艦隊の到着を歓迎す。」

 

「こちら第一対潜駆逐艦隊司令、楠木です。 大石大佐は居られますか?」

 

「あー、楠木提督ですか? しばしお待ちください。」

 

そのまましばらく待たされた秦だったが、早く連絡をくれないと、何処に投錨すんだよ、と思っていると、連絡が来た。

 

「こちら、提督代理の大石大佐です。 投錨は江田島小用沖にお願いします。 なお、投錨次第、そちらに伺いますので。」

 

「了解です。 では、後程。」

 

「みんな、小用沖よ。 いい?」

 

号令を掛けたのは鳳翔だった。

 

【了解だよ!】

 

ようやくの、呉に到着である。

秦にしてみれば、半年以上遅れての呉着任であった。

その後、江田島の小用沖に5隻の艦が寄せ合い、錨を降ろした。

 

「鳳翔、みんなに空母・鳳翔に集合するよう連絡を頼むよ。」

 

「はい。 伝えます。」

 

秦がデッキに出て、息を吐き、深呼吸をする。

 

「う、あああーっと。 ここは久しぶりだな。」

 

っと。

 

「ええ。 私も久しぶりです。 この艦では初めてですけど。 あれ? あなたは、呉は初めてでは?」

 

「ん? 呉かい? 提督としては、呉は初めてだけど、士官学校は江田島だったからね。 どちらかと言えば、懐かしい感じかな。」

 

「そうだったんですね。 ウフフ。」

 

笑う鳳翔。

その笑顔は、秦にとっては、眩しく思えた。

 

「父さん、これからどうするの? もうすぐ皆も来るよ?」

 

と睦が秦に問うた。

 

「あぁ。 大石大佐がこちらに来るらしいから、それまでは小休止だな。 それと、皐月たちには艦橋に来るようにね。」

 

「そうですね。  あ、・・あれではないでしょうか。 大石大佐の船は。」

 

鳳翔が呉港の方から近づく小型の連絡艇を指さした。

一隻の小さな連絡艇だ。 どうやら内火艇の様だ。

 

「イスズ?」

 

舷側に艦名が書いてあった。

 

「あー、確か、大石大佐の秘書艦が五十鈴だったかな。 巡洋艦だね、確か。」

 

暫くして内火艇が空母・鳳翔に接舷し、3人の人影を認めた秦。

 

(3人?)

 

一人は軍服姿だから、大石大佐だろう。

もう一人は、ツインテールの髪型をしている。たぶん、秘書艦の五十鈴だろう。

そうすると、あと一人は・・・誰?

3つの影がタラップを登って来た。

格納庫を経て艦橋へ案内されてきた。

 

「失礼します。 呉鎮守府提督代理の大石であります。 楠木提督でありますか? よろしくお願いいたします。」

 

「楠木です。 ・・よろしく。」

 

二人は向かい合って敬礼し、握手をする。

双方、唇を固く結んだ表情だったが、握手が思った以上にスムーズに手が出た二人であった。

そのため、二人の表情は一気にほぐれた。

 

「遂行は、私の秘書艦、五十鈴と、呉の艦娘を代表して長門であります。」

 

「五十鈴よ。 よろしく。」

 

「よろしく。 こちらは、私の秘書艦兼妻の鳳翔と娘の睦だよ。」

 

「は? ”妻”ですか? それに、”娘”って・・」

 

怪訝そうな顔をする大石だった。

 

「鳳翔とは、結婚しているからね。 睦は・・ 元睦月型一番艦の睦月。 解体して改名したからね。」

 

「そ、そうなんですか。」

 

納得したような、していないような・・

 

「ええ。 この鳳翔型航空母艦の艦娘であり、楠木 鳳翔でもあります。 よろしくお願いしますね。」

 

ニコリと鳳翔が微笑む。

 

「楠木 睦だよ。 よろしくね、大佐さん。」

 

「こ、こちらこそ、よろしくお願いします。」

 

「それと・・ 長門、久しぶりだね。」

 

「はっ。 久しぶりだな、楠木提督。 やっと呉に来てくれた。 待っていたよ。」

 

「アハハハ・・。」

 

秦の乾いた笑い声が響いた。

 

「ま、いろいろあったからな。 すまない。」

 

と頭を下げた。

 

「楠木提督も、そうやって、すぐに頭を下げるのか?」

 

そう言うのは、長門だった。

 

「も?」

 

「この大石大佐も、すぐ頭を下げるのだ。 前任提督は・・」

 

待った!と秦がそれ以上言うな、と止める。

 

「過去の事は、過去の事だよ。 それに・・ 後でみんなにも言う事だけど、艦娘とは言え、一緒に戦う仲間であるし、指揮命令系統はあるにせよ、それぞれの個々人を敬うのは普通の事だと、俺は思うけどな。」

 

大石も秦の言葉を聞いて頷いていた。

 

「大石大佐もそうだと思うよ。 な?」

 

「はい。 同感です。」

 

「なら・・ ならば、我々は、一個人として扱ってくれるのだな。」

 

「もちろん。 その証明、といえるかどうかだけど、俺は鳳翔と結婚してるし、睦は元艦娘だし。」

 

「良かった。 大石大佐を信用していないわけでは無かったのだが、あくまでも臨時だったので、確証が持てなくてな。 大石大佐、すまなかった。」

 

長門が、頭を下げた。

 

「あらあら。 みんなで頭を下げあって。 その辺にしませんか?」

 

鳳翔の一声で皆が笑う。

呉での最初の、会合の雰囲気は良かった。

 

「で! 楠木提督。 こやつらはなんだ? この四人の”娘”は? それに、この五人とも同じセーラー服はなんだ?」

 

そう聞くのは長門だった。

 

「ああ。 紹介が遅れたけど、相生では、俺たちの娘として一緒に生活してた、朝霜、皐月、卯月、弥生だ。 この制服は前の中学校の制服だったんだよ。」

 

「あたいは朝霜だよ。」

 

「ボクは皐月。」

 

「うーちゃんだよ!」

 

「弥生。 長門さん、お久しぶり。」

 

「朝霜・・ってお前か! 本部からの通信の前に、先に名乗りおって。 問合せ手順を踏まんか!」

 

と少々お怒り気味の長門が朝霜に向かって言ったのだが、

 

「え~、だってさぁー、しれーかんが、派手にやっていいって言うからさぁ。 あれでも、大人しくしたんだよ?」

 

と、言い訳をする。

 

「提督!!」

 

長門が秦をジロリと見るが、秦は・・なんのことだ、と言わんばかりの、平然とした顔をしていた。

 

「それもそうですが、この子らも”娘”とは?」

 

「ああ。 そのままの意味だけど?」

 

「もう。 提督ったら。 ちゃんとお話ししませんと、大石大佐も長門さんも、困った顔をしていますよ?」

 

「ああ。 悪いね。 この子らは、相生では、私たちの娘として楠木姓を名乗って学校にも行ってたし、対潜訓練も一緒にしてたんだ。」

 

「そうなのか。」

 

「ああ。 対潜作戦では、強いぞ、この子らは。 まぁ、対潜能力の高い五十鈴ほどではないが、艦隊としてみれば、日本海軍一だと思うよ。」

 

「それは、期待させてもらおう。」

 

「「まっかせてよ!」」

 

そう胸を張る、朝霜と皐月だった。

 

「では、挨拶はこの辺で。 これからの事ですが、今晩は食堂で歓迎会をご用意していますので、後程みなさんでお越しください。 それと、今日は既に陽も落ちていますので、執務の方は、明日からでよろしいでしょうか。」

 

「ああ。 構わんよ。」

 

「で、宿舎ですが、提督用の官舎がありますので、そちらをお使いいただくことになります。 場所は、鎮守府本館の山手になります。」

 

「ありがとう。 とすると、君は?」

 

「私は、別に士官用の寮がありまして、そこに居ります。」

 

「ん? ・・すると、彼女、五十鈴とは、まだ?」

 

素直に思ったままを聞く秦。

 

「まだ、とは?」

 

首を傾げて聞き返す大石。

それに次の言葉で答える秦だった。

 

「ケッコンカッコカリ。」

 

秦のその言葉に顔を赤める大石と五十鈴。

一瞬、視線が重なったかと思うと、互いにプイと横を向いてしまった。

それを見た秦と鳳翔。

その二人に秦が声を掛けた。

 

「なんだ。 二人は、互いに思い人か。 なら、応援しないとな。 な、鳳翔。」

 

と微笑みながら鳳翔を見る秦。

 

「はい。 二人とも、応援するわよ。」

 

鳳翔も微笑んでいた。

そこまで言われて、更に赤くなる大石と五十鈴。

 

「い、いや、その・・ まだまだ練度が不足しておりますんで・・ はい。」

 

そして、大石がわざとらしく咳払いをして、

 

「そ、それで、これだけの人数は官舎には入りきらないかと・・」

 

「うーん、どうしようか? 四人はどうしたい? 今の状況なら、官舎には、俺と鳳翔と睦の三人だけど・・」

 

「えぇ~、今迄みたいに、五人部屋はダメかな?」

 

「あたいもそれがいいなぁ。」

 

皐月の意見に朝霜が追随する。

 

「官舎には、どれくらいの部屋があるんかな?」

 

「官舎には、書斎、居間、大広間、ダイニングルーム、キッチンなど水回りが1階に、寝室は2階ですが、全部で4部屋ほど有ります。 一部屋は12畳はあるかと思います。」

 

「それじゃぁ、明日にでも見てから決めようか。 それと、この時間から荷解きをするのはやめにして、今日はここ、艦に泊まるよ。」

 

「了解しました。」

 

「へへへっ。 一緒だといいねぇ。」

 

そう言うのは皐月だった。

 

「お前たちは、いつでも一緒だったからな。」

 

「でも、お母さんのご飯は食べたいぴょん!」

 

「私は、父さんの膝の上がいい。」

 

「おやおや。」「あらあら。」

 

「”お母さん”? ”父さん”?」

 

そう呟いたのは五十鈴だ。

 

「もしかして、提督が”お父さん”で、鳳翔さんが”お母さん”なの?」

 

「ええ。 そう呼ばれてるわ。」

 

はぁ、と答える五十鈴と大石だった。

 

「お父さんとお母さんか。 私がそう呼ぶのは、相応しくないな。 私らしくない。」

 

そう言うのは、長門。

 

「ははは。 長門、お前さんまで”父さん””お母さん”て呼ばなくてもいいだろう?」

 

「まぁ、そうさせてもらおうか。 そういえば、確か空母娘たちは、鳳翔を”母”と呼んでいたな。」

 

「ここには、誰がいるんだい?」

 

「ここ呉には、飛龍、蒼龍、雲竜、大鳳、信濃の大型空母がいる。 あと、軽空母が何隻か。」

 

「という事は、呉所属空母の総艦載機は、およそ600機から700機前後ってところか。」

 

空母の隻数から艦載機の総数を予想する秦。

 

「まぁ、そうなるな。 前任は、空母機動艦隊を否定していたから、航空戦力の整備は、まだまだ、と言ったところだ。」

 

そう返答するのは長門だった。

今度は、秦が溜息をつくことになった。

 

「まさか、機体は、九六式とか?」

 

「まだまだ現役ですよ。 九七も九九も現役です。」

 

そう返答したのは五十鈴だった。

 

「となると、鳳翔の搭載機が、一番の新型ってことか・・・ こりゃぁ、大変だなぁ。 早々に更新かぁ。」

 

と頭を大いに抱える秦だった。

 

 

そうこうしているうちに時間は1800になろうか、としていた。

 

「そろそろ、いい時間ですので、みなさん、行きましょうか。」

 

大石大佐がみんなに声を掛けて、歓迎会に出掛ける事になった。

五十鈴の内火艇に加え、鳳翔の内火艇に七人が載って行く。

小用沖の空母・鳳翔から呉鎮守府の眼前の桟橋まで、やや早めの速度で走った。

15分ほどで到着し、鎮守府本館へとまっすぐに向かう。

本館の建物は、横須賀よりも少々古めかしかったが、大きさは、呉の方が大きかった。

玄関から入り、食堂へと向かう。

食堂では、在籍の艦娘が全員、揃っていた。

ガラっと入口を長門が開け、大石、五十鈴、秦、鳳翔、睦らの順で入った。

食堂は広く、50人はゆうに入れる大きさだ。

 

「みんな、提督らが到着したぞ!」

 

と長門の声で、全員の目が一斉に入口へと向く。

歓迎者席につく秦たち。

席につくと早速、歓迎会が始まった。

進行役は、五十鈴だ。

 

「え~、本日、ここ、呉鎮守府に提督が着任されましたので、歓迎会を行います。 では、まず、提督からご挨拶をお願いします!」

 

紹介され、壇上に秦が立つ。

全員の視線が秦に集中する。

 

「本日付けをもって、ここ、呉鎮守府に着任する、楠木 秦です。 え~、こんなに大勢の仲間を率いるのは、嬉しくもあり、責任の重大さを感じている。 みんな、よろしくね。 で、私と一緒に着任する仲間を紹介するよ。 まず、私の秘書艦であり、私の妻でもある鳳翔だ。 第一対潜駆逐艦隊の旗艦をやってもらっている。」

 

「鳳翔です。 不束者ですが、よろしくお願いします。」

 

「次は、同じく第一対潜駆逐艦隊の、朝霜、皐月、卯月、弥生だ。」

 

【よろしくね。】

 

「最後に、私たちの娘の睦だ。」

 

「よろしくお願いしますにゃ。」

 

にゃ?

みんなの顔に?が浮かんでいるように見えた。

 

「じゃぁ、みんな、グラスを持ったかな?」

 

五十鈴の合図でみんながグラスを持つ。

未成年と思しき艦娘は、ジュース。

それ以上の年齢の艦娘は・・ ビールだ。

 

「それでは、提督に乾杯の発声を。」

 

「じゃ、お言葉に甘えて。 いいかい? では、乾杯!」

 

【乾杯!】

 

歓迎会の始まりである。

秦は大石大佐から、3人の女性の紹介を受けた。

 

「この食堂の調理師さんです。 今は3名ですが、当番制で、計五名おられます。 みなさん、地元呉のご婦人です。 桜井さん、松本さん、二宮さん、猪原さん、岡田さんです。」

 

「楠木です。 よろしくお願いします。」

 

「あら、いい男じゃない。 ここでの食事は任せてちょうだいな。」

 

そう言うのは、桜井さんだった。

 

「朝0700から1900まで、朝食、昼食、夕食の3食対応します。 ここでは、普段アルコールは出ませんので。」

 

「それじゃぁ、俺も、ここへ来れば、食べられるんかい?」

 

「はい。 実は、私も三食、ここです。」

 

と頭を掻く大石だった。

 

「じゃぁ、私がやらなくてもいいんですか?」

 

そう聞くのは鳳翔だった。

 

「ん? 鳳翔は、やりたい?」

 

「そうですね。 できれば・・ですが。」

 

「んー、鳳翔には、別にやってもらいたい事があるから、食堂はやらなくてもいいと思うけどな。」

 

「そうなんですか・・」

 

ちょっとしょげる鳳翔だった。

三人が厨房に戻った頃合いで、鳳翔が捕まった。

 

「「お母様!」」

 

「あら。 蒼龍ちゃん、飛龍ちゃん。 元気だった?」

 

「「はい!」」

 

そう言って、鳳翔の手を引いて、空母娘が集まるテーブルに連れて行った。

睦は皐月らに手を引かれ、駆逐艦がたむろするテーブルに連れて行かれていた。

 

「提督。 こっちで呑まないか?」

 

と言ってきたのは長門だった。

見ると、一テーブルに、長門、陸奥、大和、武蔵、金剛、榛名が居た。

 

「ああ。 いいよ。」

 

と言って、秦はグラスを持ってその輪に加わった。

 

「長門たち四人は一年ぶり? かな。」

 

「そうだな。 もう、そんなに経つのか。」

 

「金剛と榛名は、初めてだね。 よろしくね。」

 

ニコリと微笑む秦。

 

「Oh! 金剛デース! よっろしくお願いしマース!」

 

元気いっぱいの金剛。

 

「榛名です。 よろしくお願いします。」

 

なぜか、頬が赤い榛名。

 

「早速だが、少しいいか?」

 

そう聞いてくるのは武蔵だった。

 

「提督は、空母を主に率いてきたそうだが、戦艦を率いてきたことはあるのか?」

 

「横須賀時代に、高速戦艦・霧島を率いたことはあるけど、どちらかと言うと、航空戦隊が主だったね。 あとは水雷とか。」

 

「だが、以前の戦闘の、あの時の指示は、的確だったぞ。 できないわけでは無いんだろ?」

 

「まあ、出来ない事はないと、思ってるよ。」

 

そう言ってグラスの酒を飲み干す。

 

「今の時代は、戦艦だけで勝ちきることは難しくなった、と思ってる。 敵も空母を揃えてきているし。 だから、適正且つ効率的で強力な配置を考えないといけない。 そう思ってるよ。 ま、考えるのと、実行するのとでは雲泥の差はあるんだけどね。」

 

「提督がそう言う考えならば、我々も期待させてもらおう。」

 

「あらあら。 武蔵ちゃんがそう言うのも珍しいはね。 大本営も、もっと早く楠木提督を派遣すれば良かったんじゃないのかしら。」

 

「確かにな。」

 

「そう言えば・・ 提督は、大本営と仲が悪かったのでは? そのような噂を聞いたことがありますけど・・」

 

とは大和だった。

 

「あ~、それね・・ 仲が悪いってもんじゃないよ。 めっちゃ嫌われていたね。」

 

ふーん、という空気が流れる。

 

「榛名には、提督が、そんなに悪い人の様には見えませんけど・・」

 

「ハハハ。 理由は、大本営のもと元帥に聞いてほしいね。 俺も知らないからさ。」

 

それを聞いて呆れる面々だった。

 

 

賑やかな歓迎会、もとい、宴会は終わりを迎える。

時間は2100。

秦、鳳翔とこども達が今日の寝床となる船に戻るのだ。

 

「では、大石大佐。 明日0830には出仕するから、よろしく。」

 

「了解しました。 では、おやすみなさい。」

 

「お休み。」

 

そう言って内火艇は沖合の空母・鳳翔に向かっていく。

今晩は、全員で空母・鳳翔に泊まることにしたのだ。

今どきの艦船とはいえ、小さいながらもお風呂が備えられている。

こども達には一人ひとりに部屋が与えられていた。

秦も司令官室があり、鳳翔も秘書艦室があったのだが、二人は、司令官室にいた。

 

「ふぅ。 お疲れ様、鳳翔。 そっちはだいぶ盛り上がっていたみたいだけど?」

 

「はい。 昔話に花が咲いちゃいまして。 えへへ。」

 

とニコリと微笑んでいた。

既に入浴を終え、寝間着姿の二人。

机の上には宴会場から持って来た日本酒の小瓶が一本とグラスが二つ。

 

「あなたがお酒を召し上がるのは珍しいですね。 いつもはお茶なのに。」

 

「今日ぐらいはね。 そういう鳳翔も、さっきはかなり飲んでいたようだけど?」

 

「少し、ですよ。 そんなに飲めませんから。」

 

と頬に手を当てながら遠慮がちに答えていた。

 

「その割には、結構、杯が進んでいたように見えたけど?」

 

「あら、見られていました?」

 

ははは、フフフと笑う二人だった。

そして少しばかりの酒を飲み、二人してベッドに入った。

 

「良かったのかい? このベッドは小さいだろうに。」

 

「いいえ。 小さいからいいんです。 こうして、密着できますから・・」

 

そう言って、ふふふと秦にしがみつく鳳翔。

その華奢な身体を抱きしめる秦。

 

「明日からは、大変だぞ。」

 

「あなたと一緒なら、どんなことだって、乗り越えて見せますから。」

 

そう言いながら、顔を寄せる二人。

満足のいくまで、唇を合わせたのだった。

 

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