Family of Seven ~ハズされ者の幸せ2~ 作:鶉野千歳
入学式
4月に入って1週間。
7人家族の生活もだんだんと板についてきた感じだった。
今日の天気は快晴だ。
快晴の割に警備部では朝から慌ただしかった。
今日から睦たち五人の学校が始まる。
新学期の開始だ。
0630、秦と鳳翔は朝食を済ませ、鳳翔は五人のお弁当作りに取り掛かった。 秦は五人を叩き起こす役目だ。
秦が睦の部屋まで行くと、なんと! 睦が起きていたのだ。
「おお、珍しい事もあるもんだ。 睦が起きているなんて。」
「へへ。 いつも父さんや母さんに起こされてばかりじゃないもん! ていうか、いっつもくすぐらてばっかりじゃ、割に合わないんだもん!」
「おお。 いい心構えだ。 けど、いつまで続くんだ?」
「へへへっ、大丈夫!」
と笑っていた。
次に秦は四人部屋にやってきた。
入ると、既に皐月と弥生は起きて着替えていた。
秦は、二人に目配せしながら、そうっと入った。
「おはよう。 もうすぐ朝飯が出来るぞ。」
と小声で二人に言って・・・
(了解!)と敬礼で返してきた。
今日はベッドに居る卯月に、
(こちょこちょこちょ・・・・)と今日もくすぐり出した。
「!!! ひゃ、ひゃひゃひゃひゃ! なんだぴょ???」
と悲鳴を上げた。
釣られて朝霜も、
「!! な、なに、なに、なになぃ??」
と寝ぼけ顔で飛び起きてきた。
「二人とも起きろぉ!! 朝飯だぞ!」
「まだ、眠いさぁぁぁ。」
「何言ってんだ? 今日から学校だろ? ほら! さっさと起きる!!」
「そうだった! なんでもっと早く起こしてくんないんだよ!」
と秦に対して文句を言う朝霜だが、
パカーン!
「お前が、目覚まし掛けてても起きなかったんだろ? 人の所為にすな!」
「イテェ!!!」
と頭を抱えている朝霜。
「あ、あんだよ、もう! 起きてるじゃんか!」
「さっさとする! もう皐月と弥生は起きてるぞ。」
「え? あ! 二人とも、もう着替えてる?」
そそくさと着替えに掛かった朝霜と卯月だった。
五人そろって食堂で朝ご飯。
五人が同じ制服に身を包んでいる。
元睦月は、皐月らとは違う服だったから、秦にすると妙な感覚に捉われていた。
朝霜も、同じ制服っていうのも、妙な感覚だ。
でも、それを見ている秦と鳳翔の表情は穏やかだった。
五人とは行かないまでも、子供がいたら、こんな感じになるんだろうなぁ、と思っていた。
こんな賑やかな食事風景が、続けばいいのに、とも思っていた。
テーブルには、五人分のお弁当が作られていた。
鳳翔手作りのお弁当だ。
これから行く中学校は、給食ではなく、お弁当持参なのだ。
五人が朝食を済ませ、学生鞄とお弁当が入った手提げ鞄を持ち、靴を履いて、登校準備が整った。
警備部の玄関先で7人で記念写真だ。
警備部とは言うものの、秦たち7人の”家”なのだ。
だから、玄関先で写真撮影だ。
タイマーで数枚の写真を撮った。
学校は、”家”から徒歩10分ちょっとの距離にある。
だから、徒歩通学である。
通学時には、反射素材の黄色の襷をするのが、この学校のルールだった。
【いってきまぁす!】
「行ってらっしゃい。 あとから行くからね。」
「はあい!」
と五人は駄弁りながら学校へと向かっていった。
「さあ。 行ったな。」
「私たちも準備をしましょうか。」
今日は、入学式なのだ。
”親”として、秦と鳳翔は出席するつもりだ。
入学式は0930から。
秦は紺のスーツ。 この地域で軍服は、さすがに目立つし、いい印象はしないだろう、との判断だ。
鳳翔は桜色の訪問着に羽織。 それだけでも立派に母親に見えるだろう。 ちょっと若く見えるだろうけど・・・。
二人は0900少し前に警備部を出た。
寄り添って、学校までの道を歩いて行く。
「こうやって二人で歩くのって久しぶりですね。」
「そうだな。 しかも軍服以外で、となると、初めてか?」
「その意味では、初めてですね。」
と言って、ふふふっと笑っていた。
歩いて10分ほどの距離を、ゆっくりと歩いて行く。
手を取り合って、ゆっくりと。
学校の校門が目の前だが、それでもゆっくりと。
それでも開始前まで十分に着いてしまった。
会場は、体育館兼講堂だ。
案内の教師に導かれ、保護者席についた。
既にほかの保護者は席についていた。
秦たちは、一番後ろの席だった。
「あら? 警備部の楠木さんじゃない?」
不意に声を掛けられた。掛けてきたのは・・・
「ウラのおばあちゃん?」
警備部の建物のウラ側に建つ家のおばあちゃんだった。
「おばあちゃんは、お孫さんが?」
「そうよ。 やんちゃ坊主がやっと中学よ。 楠木さんとこは、例の五人?」
「ええ。 そうです。」
「五人とは大変よねぇ。 賑やかだとは思うけど。」
そう言っているうちに、入学式が始まった。
在校生は揃っていたが、司会の挨拶に続いて、新入生が入場してきた。
この学校は、小さく、1学年1クラスしかなく、新入生は30数名とのことだ。
講堂の後ろから2列で入ってくる。
「あの娘たちは、どこかしら?」
と鳳翔が五人を探す。
が、すぐ見つかった。
何しろ、(青白い)銀髪に金髪に長いお下げだったり・・・・。
まあ、”帰国子女”扱いだから、文句も出ないだろうけど・・・。
保護者席からは、変わった髪型ね、金髪じゃない?、という声がしていた。
偶然にも、鳳翔と秦の横を通っていく。
鳳翔が手を振ると、五人も笑って振り返してきた。
やはり、朝霜は女子の中では背が高い方だった。
新入生全員が着席すると、校歌と国家の斉唱だ。
続いて校長先生の挨拶。
往々にして、話が長い。
訓示を述べてくれているのだが、こども達にとっては、年寄が長々と説教しているように感じるかもしれない。
後ろから見ていても判るが・・・ 朝霜は落ち着いていなかった。 頭が・・きょろきょろしていた。
「朝霜のヤツ・・・」
と呆れていると、
「まあまあ、そんなに目くじら立てなくても。」と
鳳翔になだめられていた。
式は進み、新入生の担任が紹介され、入学式は滞りなく終了した。
およそ30分で終了だ。
新入生たちは揃って教室に戻って行った。
在校生が退場する頃になって、教頭先生から保護者に向けて、学校の説明が行われた。
こども達の今日の予定、今後の予定とが簡単に説明された。
学校行事については、予定表が渡された。
4月に、早速泊りがけの林間学校が組まれていた。
明らかに、コミュニケーションをとるための行事だ。
説明が終わって、秦と鳳翔は二人して講堂を後にした。
「これで睦も中学生か・・・」
「どうしたんですか?」
「いや、大したことじゃないんだが・・・ 舞鶴から睦と二人で生活してきて2年だけど、もう中学生とは、ね。 月日が経つのが早いよなぁ。」
感慨深そうに話した。
「ふふふ、そんな年寄みたいなこと言って。 あの子たちは、まだまだ子供ですよ。 あ、でも、一人前としてみなければ、反抗期になっちゃいますよ?」
「え? 反抗期? い、いや、”父さん、キライ”って言われないだろうなぁ。 言われるとショックだなぁ。」
鳳翔はふふふっと笑っていた。
「鳳翔? お前さん、なんか、楽しんでない?」
「そんなことありませんよ。 でも、私も反抗期があったなあって。 母親には何でも話しましたけど、父親には・・・父には無視をしたりしてましたね。」
「う・・。 やめてくれ。 あの娘たちに無視されるのは、キツイから。 マジでやめてくれ。 そう思うと、今からでも心が折れそうだよ・・・」
「大丈夫ですよ、あなた。 その時は、私が居ますから。」
そう言って、頬を赤めながら秦の腕に抱き着く鳳翔だった。
帰り道も、二人より添って帰っていく。
帰りの道中、他の保護者らと一緒になる場面もあった。
まあ、仲のよろしい事で、と言われながら。
雑談をしながら帰って行った。
帰り着いた秦と鳳翔は、いつもの、軍服と着物・袴姿に着替えた。
秦と鳳翔は、書類仕事をこなしていく。
仕事の量は・・・もの凄く少ない。
何しろ、空母1、駆逐艦4しかいない警備部だから、処理する書類も少ない。
横須賀や呉の様に、出撃もないし、訓練も今は無い。
だいたい1時間もあれば十分すぎる量だった。
書類仕事を終えると、港へと向かった。
改造中の空母・鳳翔へと向かうのだった。