Family of Seven ~ハズされ者の幸せ2~ 作:鶉野千歳
初日の午後のお話・・
【たっだいま!】
お昼すぎになって、五人が帰って来た。
そのまま五人が執務室に入ってきた。
「帰って来たよ! 父さん、お母さん!」
と言って扉を開けて。
「お帰り。」「お帰りなさい。」
と秦と鳳翔が出迎えた。
「初日は、どうだった? 友達は・・出来そうか?」
「大丈夫さあね! まっかせなさいってさ!」
と朝霜が胸を張りながら言う、 言うが・・・
「良く言うよ・・・ まったく。」
と皐月。
「あら? どうしたの?」
「聞いてよ、お母さん! 朝霜ちゃんったら、早速、上級生の男の子に告白されたんだよ。 それなのに”誰? あたいはあんたに興味ないから!”ってその子の頭をひっぱたいたんだよ。」
と説明する皐月に、
「そしたら・・・その子、泣いちゃってさぁ・・・ もう、初日から先生に注意されるわ、みんなに白い目で見られるわ、で、散々だったんだから。」
とその後を説明した睦だった。
皐月も睦も溜息をしていた。
(普通、男が女を泣かすもんだと思っていたが・・・ 朝霜に限っては、逆だったか・・・)
「あれくらいで、泣くんなら、告白なんてしなきゃいいんだよ。 メンド臭いったらありゃしない! あたいにはしれーかん、父さんしかいないんだからさ。」
そう言って秦にすり寄って、ゴロゴロ言ってる朝霜だ。
その頭をポンポン叩きながら、
「まったく、初日から何やってんだよ?」
「もう、ホントに気をつけてよ、みんな。」
呆れる秦と鳳翔だった。
「で、卯月と弥生はどうだったんだ?」
「私は・・問題ない・・・」
「うーちゃんも、大丈夫ぴょん!」
それを聞いて、改めて秦は五人の頭を撫でていく。
五人は、満更でもなさそうだった。
「じゃあ、着替えてくるね。」
そういって部屋に行った。
しばらくして、ゴトゴトと2階から音が聞こえてきた。
「何の音だ?」
「さあ・・ なんでしょう。」
2階は主に寝室なのに・・・。
気になって二人で2階に上がってみた。
すると、睦が布団を持って、四人部屋に入ろうとしていた。
「睦、何やってんだ?」
「あ、父さん。 うん、あたし、今日からこっちで寝ようかと思って。」
「え? そっちで? て言う事は、五人部屋ってこと?」
「うん。 だって、その方がいいでしょ? ね?」
「いや、構わないけど・・・」
四人部屋には、ベッドが四人分しかないんだけど・・・どうすんだろうか。
「あたしが、畳に布団を敷いて寝るんだけど?」
「まあ、部屋はそこそこ広いから、大丈夫だけど、いいの? なんだったら、隣のもう一つの四人部屋を使ってもいいんだけど・・・」
「五人で寝るからいいんじゃない。 それじゃぁ、だめだよ、父さん。」
「そうか・・・ じゃぁ、2段ベッドを3段ベッドにするかい?」
「いいのかい?」
と皐月。
「お前たちが良ければ、だけど・・・ 都合、六人部屋になるんだけど・・・」
「!!」
「じゃぁ、そうしようよ。」
「そうだね。 そうしよう。」
「じゃぁ、父さん、お願い!」
「ああ、了解だ。 妖精さんにやってもらうから。」
【やったあ!!】
ベッドだけではなく、クローゼットも、もう2つ要るよな・・・
そう思う秦だった。
「で、勉強はどこでするんだ?」
「うん、1階の居間でしようかって、思ってるんだけど。」
「居間? 確かに、充分な広さはあるなぁ。 食堂の隣の部屋だけど、畳敷きだし・・」
「あそこなら、広いし。 何しろ、食堂の隣で、すぐご飯が食べられるしね!」
「「うん、うん」」
「もう。 食べる事ばっかり! そこは逆でしょ? 勉強、でしょ?」
と鳳翔に叱られる五人だった。
(食べる事は、わかる。 分かるぞ。 なにしろ、鳳翔のご飯は、美味しいからなぁ。)
そうしているうちに、日が陰ってきていた。
ここ相生湾は東西に山があるので、日が陰るとあっという間に夜の雰囲気だ。
外の家々に灯りが灯りだした。
今日の業務を終えて、夕食までの時間、食堂でお茶を啜っていた秦が、今日、学校でもらってきた予定表を見ていた。
「何見てるの? 」
「ん? お前さんたちの4月の予定表だよ。 今日、学校でもらったんだよ。」
「ふうん、そう言えば、あたいたちももらったよ。 その予定表。」
「なにかあるぴょん?」
「4月の中旬にある、林間学校だよ。」
「そう言えば、そんな予定、あったね。」
「泊りがけで、1泊2日の予定だね。」
それまでに、用意しなければならないモノがいくつかあったので、(今度の休みにでも、調達するか・・・)と考えていた。
そして・・
「さあ、夕ご飯よ!」
と鳳翔の声が掛かった。
「今日は、鶏すきよ。」
と言って、テーブルに、2つのコンロと鉄なべを用意して、具材の大皿を持って来た。
今回は、割り下を使うらしく、醤油ベースの出汁が用意されていた。
コンロに鉄なべをセットし、割り下を入れる。
火をつけ、ひと煮立ちした頃合いから、白菜、ネギ、白滝、焼き豆腐、エノキ茸を入れ、鶏肉を入れた。
もう一方も同じ要領で具材を投入する。
「今日は、朝引きの地鶏が手に入ったのよ。」
取り皿に卵を割り入れていく。
鍋がグツグツ言い始めると、いい匂いが、醤油ベースのいい匂いが漂ってきた。
「う~、空きっ腹に堪える匂いだ~」
「まだかな、まだかな」
睦や朝霜は待ちきれないようだ。
具材が良く煮えた頃、「はい、どうぞ!」と鳳翔が合図すると、
【いただきまぁす!!】
とみんなが一斉に箸を伸ばした。
鶏肉を、卵にくぐらせ、口に運んでいく。
ハフハフ言いながら。
「うん、美味しい!」
野菜も卵にくぐらせ、口へと運ぶ。
「いい感じで出汁がしみてるぅ!」
「このエノキ、歯ごたえがいい!」
5人の食べっぷりを、見ていた秦が
「ねぇ、鳳翔、この割り下、市販のじゃないね?」
「分かりますか? フフフ。 私特製ですよ。 濃い口醤油に味醂、お砂糖を入れて、煮立たせて・・って。隠し味で赤ワインを少々入れてますよ。」
「え? そうなの? 赤ワインまでは分からなかったぞ。」
「はい。 そう簡単に分かられては、料理をするものとしては、立つ瀬がありません。」
そう言ってニコリと微笑んでいた。
この5人に掛かれば、大皿に用意した具材はあっという間に消えていく。
「あ、あなたたち、ご飯もあるわよ?」
「ご飯ほしいにゃし!」
と睦がご飯をよそってもらって、そのまま食べるかと思いきや、鍋の、肉と野菜の出汁が入り込んだ割り下をご飯にかけて・・・いっきに掻き込んだ。
頬が膨れている。ご飯でいっぱいになっている。
「ウグング・・ あー、味が滲みて美味しぃ~。」
「まったく、女の子なんだから、お淑やかに食べれないか?」
「え~、この方が、美味しいんだもん。」
「美味しい点に関しては、否定しないけど、やっぱり、慎みは持ってほしいぞ?」
「ハイハイ、気を付けるよ、父さん。」
(軽くあしらわれた感じが・・・・)
「あたいも!」
そう言って、五人とも、出汁掛けご飯にして食べた。
秦と鳳翔は、その姿を、呆れながらに見て、箸を進めた。
【ごちそうさまでしたぁ】
と7人の食事が終わった。
大皿の具材は既に無く、鍋の中も、だし汁の1滴も残っていなかった。
睦ら五人は、お腹を苦しそうに抑えている。
「う、うう、 く、くるしぃ」
「あなたたち、食べ過ぎよ?」
「ほら、居間までいって、寝っころがれ!」
「う、ん」
五人がヨタヨタと居間までいって、ゴロリと倒れ込んだ。
「あ-、お腹いっぱいで、くるしぃ-!」
「お前ら、腹八分目ってこと、知らんのか? 女の子としては、みっともない格好だぞ?」
そうこうしているうちに、後片付けを終えた鳳翔が居間に入ってきた。
その時には、胡坐をかいて座っている秦を膝枕にして、睦と朝霜が寝っころがっていた。
「へへへ。 父さん・・」「しれーかん・・ へへへっ」
と右ひざに睦が、左ひざに朝霜が頭を載せていた。
卯月は秦の背中合わせにしてもたれている。
「背中、おっきいぴょん。」
鳳翔が秦の隣に座ると、皐月と弥生がそうっと寄ってきて鳳翔に抱きついてきた。
「「お母さん・・へへへへ・・・」」
秦も鳳翔も、みなの頭を撫でている。
「ったく。」
女の子としては、確かに、みっともない食べっぷりではあったが、今、ココでは7人家族らしい、まったりとした時間が流れる光景だった。