Family of Seven ~ハズされ者の幸せ2~ 作:鶉野千歳
でも、普通じゃない・・
4月の中旬になって、空母・鳳翔の武装改造工事が完了したと、連絡が入った。
船体には、魚雷攻撃による被害を小さくするために、水密区画の増強が行われていた。
船体への改造では、エレベーターの増設をしていた。
今までは船体中央に2基だったものを、1基に減らし、右舷外側にはみ出る格好で前後1基ずつ計2基を増設した。
武装改造は、既存の武装の置き換えを行った。
対空機銃だったものを、対魚雷攻撃も出来る機関砲などに交換、改造されていた。
そこへ、秦と鳳翔、その他の五人がやってきた。
睦は、空母・鳳翔に乗るのは2度目だった。
他の四人は・・・初めてであった。
普段、他の艦娘の艦に乗ることは無いから、はしゃいでいる・・・
「わお! やっぱり飛行甲板は広いねえ!!」
「この飛行甲板だけで、ボクの2倍の長さかぁ。 幅は3倍?、4倍?」
「甲板だけで、う-ちゃんのマストより高いかも。」
遠足の子供のような、はしゃぎようであった。
「はしゃぎ過ぎて、怪我をしないでくれよ?」
と秦が注意するも、五人は聞いていない・・・。
「わあぁぁぁぁぁ」と走り回っている・・・。
「はい! あなたたち! 艦橋に上がるわよ!!」
と鳳翔が言って、やっと走り回るのをやめた。
「まったく・・・。 俺の言う事は聞かないくせに、鳳翔の言う事は聞くのかよぉ。」
膨れる秦だった。
7人が羅針艦橋に上がってきた。
「案外、広いんだね。」
と皐月がいう。
「外に出れるよ。」
と睦。
飛行甲板を上から見下ろす格好で、デッキがある。
「お-! 高い高い!!」
「やっぱ、アタイらより、感覚が違うね。 アタイ達は真ん中に配置されているけど、ここは艦の右側だし、高いし。」
通常の艦は、中心線上に砲や艦橋が配されるが、空母は違う。
航空機を扱う上で、中心線上では、邪魔だ。
だいたいは、艦の右側に艦橋が配されている。
ちなみに、赤城と飛龍は左側に艦橋が配されている。
「さあ、試験航海に出発するぞ! 鳳翔、始めてくれ。」
と司令官席の秦が鳳翔に命じた。
「はい。 では、行きます。 ・・・・ 機関始動。」
「全艦異常認められず。 提督、準備完了です。」
「よし! タラップ上げ! 舫解け!」
タラップが上げられ、格納される。
艦の前後の舫も解かれていく。
「錨、上げ! 抜錨!」
「抜錨します!」
「左舷スラスター始動。 機関、前進微速」
「左舷スラスター始動。 前進微速!」
岸壁から徐々に離れていく。
湾の出口まで微速で進む。
「ねぇ、前から聞きたかったんだけど、左にあるのは何?」
と皐月が聞いてきた。
「左? ああ、あの筏か。」
どれどれとみんながデッキから見ていた。
「あれは、牡蛎の養殖筏だよ。」
「牡蛎?」
「そうだよ。 ここ相生近辺は、瀬戸内では広島に次いで、牡蛎の養殖が盛んだからね。」
と秦が説明していた。
「じゃ、食べれるんだね?」
と食い意地を張るのは・・朝霜だった。
「冬までここに居れば、な。」
「そっかぁ、ちょっと残念かもぉ。」
そんな会話をしているうちに、湾の出口に差し掛かった。
「よし。 湾を出たら、針路を東へ。 家島から小豆島を廻って戻るコースだ。」
湾を出て、東に針路を摂りつつ、速度を上げる。
「第三戦速へ増速!」
鳳翔の艦首が海を裂いて進む。
「現在24ノット。」
家島群島と淡路島の中間あたりまで進んで、右急旋回をする。
遠心力で左に振られる。
旋回を終えると今後は
「減速、第一戦速へ。」
と指示する。
スクリューの回転が一旦止まった、かと思うと、後進いっぱい、が掛かって逆回転する。
艦は急減速する。
うわああああ、っと声が上がる!
目的の速度に近づくと再び、回転が止まる。そして前進いっぱいが掛かって進みはじめる。
「現在速度14ノット。」
一気に10ノット分も減速したのだった。
「このままの速度で、目的地、小豆島の坂手港へ。」
と秦が指示した。
「了解。 進路、坂手港へ。」
と鳳翔が復唱する。
しばしの間、艦橋には静かな時間が流れていた。
「ねぇ、父さん?」
「なんだい。」
「坂手港で何するの?」
「チョイと休憩をしようと思ってね。」
「は?」
「休憩って?」
「だからぁ、立寄りだよ。 2時間くらいかな。 その間に昼食を、とね。」
「ほぉーん って、なによ、その立寄り!」
「父さん、それ、私物化してない?」
「してない、してない。 ちゃんと目的はあるよ。 坂手港の港湾設備の確認だよ。 ね?」
「まあ、それなら・・・。」
「しれーかんがそう言うんなら、いいじゃん?」
「はいはい、あなたたち、そろそろ落ち着いて。 もう少しで着くわよ?」
右前方に見えていた小豆島が右手いっぱいに見えていた。
風ノ子島を過ぎ、大角ノ鼻灯台を廻りこみ、すぐ減速する。
もうそこは、坂手港だ。
そこには、神戸-高松を結ぶフェリーの為の岸壁が整備してある。
今日はそこに接岸するのだ。
「機関停止、惰性で進む!」
接岸に向けて既に機関は止まっており、惰性で進んでいる。
右舷のスラスターを使って、無事、接岸した。
「投錨!」
「投錨、よし。 接岸完了しました。」
「鳳翔、特に問題はあるかい?」
「いいえ。 問題はありません。 水深も十分なようですし。」
坂手港の岸壁は、さすがに大型フェリーが接岸するだけあって、十分な大きさだった。
一通りの確認を終え、
「じゃぁ、休憩といこうか。」
「ええ。 お弁当、広げましょうか。」
そう言って飛行甲板の上で、皆でレジャーシートを広げ、おっきめのパラソルを立てた。
そして、お弁当ならぬ、重箱とバスケットを並べた。
「さぁ、座って。」
「お母さん、その量・・・」
「ん? これ? バスケットは、サンドウィッチで、こっちの重箱は、おかずよ。」
そう言って蓋を開けて、みなで覗き込んだ。
「「「おお~」」」
っと歓声が上がる。
サンドウィッチは2種類。
1つは、トーストして、具材の、レタス、ハムなどを挟んだヤツと、
もう一つは、トーストしないで生パンのままで具材を挟んだヤツだった。
それと、パンだけのが、バスケットにはあった。
「ん? 鳳翔? この、パンだけのやつは、なに?」
「あ、それは、 こっちの具材を、好きに挟んでもらおうかと、思って・・・」
”こっち”とは、重箱の事だが、4段の、鳳翔手作りの4段重。
そのうちの1段には、鶏肉のフライが入っていた。
「このパンに、鶏肉を載せて、ソースを掛けて、野菜にドレッシング、と・・・ 最後にパンで挟んで、っと。」
「はい! 即席サンドウィッチの完成!」
とニコリと秦に手渡してきた。
「おぅ、そう言う事か!」
「はい。 どうぞ、あなた。」
「ん、貰おう。」
サンドウィッチというより、バーガーに近いかも。
一口かぶりついた。
ん! ん!!
「うん、うまい!! 鶏肉のジューシーさ、ソースのちょいとピリッとする辛さ、野菜のしゃっきり感、いいねぇ!!」
「フフフ。 そうですか? よかったぁ。」
秦も鳳翔も満面の笑みだ。
それを見ていた睦らが「あたしも!」と即席サンドウィッチを作り、頬張っていく。
「うん、美味しい!」
「うん、いけるいける。 これいけるよ!」
そう言って、次々とサンドウィッチを平らげていく。
「そんなに、急いで食べなくてもいいわよ? ホラ、こっちにはフルーツ、こっちはたこさんウインナーと唐揚げよ。」
わあ-い、と卯月がたこさんウインナーのサンドウィッチを作っては、頬張る。
そして、7人は、バスケットのサンドウィッチ、パン、お重の中の揚げ物やフルーツを見事なくらい綺麗に食べきっていた。
「「「美味しかったぁ。」」」
「そうさね、美味しかったね。」
「お母さんの料理は、なんでもおいしいよねー。」
「やっぱり、鳳翔の料理に勝る食べ物はないよなぁ。」
「あら? そう言ってもらえると、嬉しいです。 綺麗に食べてもらって、こちらも助かります。」
食後、紅茶を飲みながら、7人がマッタリとシートにゴロンとしている。
飛行甲板だから、風が吹けば、そのまま通り抜けていく。
それは涼しくていいんだが。
陽の光を遮るものはパラソルだけなので、日当たりは最高!なんだが、日光を浴びて、なんとも思っていないのは、秦と朝霜くらいだった。
あとの4人は鳳翔に引っ付いて日陰に居た。
時刻が1400になって、
「さあてと、お楽しみはここまで、だな。」
「そろそろ、終わりですか? 楽しい時間は経つのは早いですね。」
「ああそうだな。 残念だけど時間だ。 みんな、片付けを手伝って。 出航用意だ!」
【はぁぁ-い!】
パラソル、レジャーシートを片付け終え、全員が羅針艦橋に入った。
「錨上げ、抜錨!」
「錨上げます! 抜錨!」
ガラガラと錨が巻き上がる。
ガコン、っと巻き上げが終わると、
「左舷スラスター始動、機関、前進微速。」
「了解。 左舷スラスター始動、機関出力、前進微速へ。」
艦体が徐々に岸壁から離れていく。
50mほど離れただろうか。
「前進原速へ。」
徐々に速度が速まっていく。
「針路は、南西に向かい、土庄港沖を廻って北上、相生湾に帰る!」
「了解です! 進路変更!」
太陽の陽が傾きつつある中を、相生港に向けて進む。
土庄沖まで来ると、船の数が増えてきた。
四国・高松と土庄を結ぶ航路が複数設定され、行き交う船もフェリーや高速船などと種類も増えてきた。
それらの船に注意しながら進む、空母・鳳翔。
軽空母と言う種別であっても、200mを超える船体は、ここ瀬戸内では、大型船の部類に入る。
鳳翔が起こす波は大きい。
小さな漁船などにとっては、凶器だろう、と思っていた。
この海域は、レジャー用のモーターボートもやってくる。
速度はゆっくりだ。
小豆島の北側に廻りこむと、船の数はぐっと減った。
小豆島を1周した格好になった。
空母・鳳翔は、日生港を左舷に見て、相生湾に戻って行った。
そして、空母・鳳翔は最初にいた岸壁に戻って、接岸した。
「とうちゃああああっく!!」
一番に上陸したのは朝霜だった。
これで無事、試験航海が終了した。
「さて、結果報告は明日でいいかな?」
「そうですね。 それでいいと思いますが、書類は作成しておきますね。」
「よろしくね。 では、これにて本日の試験は終了だな。 んじゃぁ、帰るか。」
「うん、早く帰ろう!」
と秦の手を引く睦、皐月。
鳳翔は卯月と弥生に手を引かれながら、帰って行く。
7人は警備部の、自宅へと戻って行った。