Family of Seven ~ハズされ者の幸せ2~   作:鶉野千歳

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秦と鳳翔が短い休日を楽しんでいた間のこども達はというと・・・


林間学校(1)

学校にやってきた楠木家のこどもたち。

既にクラス全員が教室に集まっていた。

セーラー服ではなく、体操着だ。

 

「今日、明日の2日間、皆さんのお互いを知るために林間学校へ行きます。 心構えはいいですか?」

 

昨日までに、散々説明されてきたので、”耳にタコ”状態であった。

今日は、学校を出て、兵庫県は北部にある高原までバスで行くのだ。

出発は0830。

大型バス1台に生徒全員と付き添いの先生2人が乗り込んだ。

 

「いやぁ、こんなバスに乗ることないから、ちょっと嬉しいかも!」

 

とは朝霜だった。

 

「そうだよね、大体は海の上を走ってるからねって、あれ? 朝霜ちゃんは、横須賀でもバスには乗ったことないの?」

 

「あるよ。 でもこんな大きいバスじゃなかったよ。 もっと小さい奴だったけど?」

 

「それって、従業員移動用のマイクロバスじゃないの?」

 

「うん。」

 

そう言われて、ガクッと肩を落とす皐月と睦だった。

そう言いながらバスは出発した。

相生の街を抜けたら、山の中の盆地を東に向けて走っていた。

兵庫岡山県境に近いこの辺りは、山が多く、谷も多い。

盆地に人が集まり、集落としていた。

相生からひと山超えると、その地は西国街道が東西に走っている。

かつては”駅”が置かれたこともあり、それなりの街を形成していた。

その街を走り、やがて北へと向かう街道に入った。

街道は北から南へと流れる川に沿っていた。

街道に入って小一時間ほど走るともう山の中であった。

川岸ギリギリまで山が迫ってくる場所もあった。

見渡す限りの山々は、整然と木々が植わっている。

かつては林業が盛んだったこともあり、山は植林された木々だった。

少しでも平らな土地には、田畑が広がっていた。

4月なこともあり、稲作はまだ行われていなかった。

学校を出発してから2時間ほどたったころ、途中でトイレ休憩をすることになった。

街道沿いの道の駅の駐車場へとバスが入っていく。

そこそこの広さの駐車場だった。

バスは、建物の前まで進んで止まった。

止まった途端、

 

「いっちばぁん!」

 

と言って降りてきたのは朝霜だ。

 

「もう、朝霜ちゃんてばぁ。 ここは終着地じゃないよ?」

 

と呆れながらも注意するのは睦だ。

 

「ここで30分、トイレ休憩します。」

 

と先生。

結局のところ、全員がバスを降りていた。

 

「おぉぉ。 山ん中だねぇ。 空気がちょっと冷たいね。」

 

うぅぅぅーーんっと伸びをする生徒たちだ。

 

「あたりをウロウロするわけにもいかないね。 睦ちゃん、どうするの?」

 

「ん? 見るところも無いし、お土産を買うことも出来ないから、バスに戻るよ。 ほら、皆戻ってきたっしょ。」

 

そうだね、という顔をした皐月だった。

全員が降りたが、10分と経たないうちに、全員が戻っていた。

 

「なんだ、皆早かったんだね。」

 

と付き添いの先生が一番最後に戻ってきての一言だった。

 

「だってぇ、お金もないし、まだお腹も空いてないし。 それに、遊ぶところもないぴょん・・」

 

その言葉に、生徒たちはウンウンと頷くのであった。

じゃぁ、と言うことで、時間はまだあったが全員が揃っていたこともあって、出発することにした。

バスは再び街道を北へと向かっていく。

川沿いに北上していたが、徐々に山々が近づいてきた。

平地がほぼなくなり、川も細くなってきた。

それに伴うように、坂道になり、カーブが続くようになってきた。

 

「わぉ。 山が近いねぇ。」

 

「そだねー。」

 

休憩してからは、睦と皐月が隣り合って座っていた。

弥生と卯月も隣り合って座っていた。

朝霜は一人で2席を占領していた。

 

「カーブがきついぴょん。 船よりきついよね?」

 

「そうだね、時速50キロで半径300? 結構、振られるよね。」

 

カーブのたびに、「キャー」と言って隣にもたれていく。

逆の場合も、同じだ。

明らかに、運転手は、奇声が上がるのを楽しんでいるようだ。

そんな街道も、下りに入った。

どうやら峠を登り切って、下りていくようになった。

 

「あ! 川の流れが違うよ!」

 

そう気づいたのは皐月だった。

 

「ん、なになに?」

 

「別に、気にしないけど?」

 

とは朝霜だが、

 

「ホントだ。 流れが逆になってる!」

 

とそこへ先生が入ってきた。

 

「よく、気が付いたね、楠木さん。 さっきの峠越えで、中国山地の南側から北側へとやってきたからね。 今までは、北から南へと流れて太平洋へむかってたけど、今度は、南から北へと流れて、日本海へと向かうからね。」

 

この峠越えで地域も変わった。

相生の街があるのは、播磨地方だが、峠を超えると但馬地方になっていた。

バスはさらに北へと向かい、徐々に山が開けてくるのだった。

途中で街道から逸れて、山深い谷へと進んできた。

学校を出発して4時間余りで、目的地の高原に到着したのだった。

 

 

お昼前に今日の宿泊先となる民宿へとやってきた。

荷物を置き、まずは、と食堂へやってきた。

ここで民宿のおやじさんと女将さんのあいさつを受けた一行。

”怪我無く、楽しんでね”と言われ、

「はぁーい」と返す生徒たちであった。

挨拶が終わると、並べられたお弁当を食べるのだ。

 

【いっただきまぁっす】

 

お弁当は、山の幸をいっぱいに詰め込んだお弁当だった。

メインのおかずは・・ 山菜の天ぷら。

揚げたての天ぷらだ。

女将さんがアツアツを持ってきてくれていた。

女将さんからは”今の子には、ちょっと苦いかしらねぇ”って言っていたが、案の定、「ニガッ」っという子がいた。

しかしながら、なのだが、楠木家の面々はそんな事はなかった。

 

「うん? 苦くて、甘いよ。 ねぇ、弥生ちゃん。」

 

揚げたての天ぷらにちょっとの塩を付けて、サックと食べる睦に弥生。

 

「うん、この山菜、おいしいよ。」

 

とニコリと。

なんで? と言われたが、

 

「なんでって言われてもさぁ・・ どう言おうか?」

 

と皐月と睦に向いて、朝霜が聞いてきた。

 

「お母さんの料理に、山菜があったしね。 ワラビとか、土筆とか。」

 

「あら、そうなの?」

 

と聞いてくるのは女将さんだった。

 

「うん。 ウチのお母さん、料理は上手だし、美味しいんだ。」

 

へぇぇっと驚いたような声を出す女将さんと生徒たち。

女将さんはというと、

 

「今どきの若いお母さんで、山菜を料理できるなんて、珍しいわね。」

 

だってさ。

 

「ウチのお母さんの料理は、そこら辺のお店よりおいしいぴょん!」

 

そう言って胸を張る卯月だった。

皆の感想は、へぇぇーー、いいなぁーー、であった。

料理上手の鳳翔からすると、山菜なぞ簡単な部類だ。

灰汁抜きの必要はあるが、春の、しかも自然の恵みを頂くのは贅沢だ、といつも聞かされていたのだ。

 

【ごちそうさまでしたぁ】

 

お昼は腹八分目にもならない量であったが、それでも皆満足な顔をしていた。

食事後、今日の予定の説明を受けた。

午後からは、オリエンテーリング。

夕食はバーベキューなんだそうだ。

 

 

民宿の前に生徒全員が集まっていた。

これからオリエンテーリングを行うのだ。

だいたい5~6名で男女混合のチームを作って、前部で6チーム。

コースは、10キロ、10か所のチェックポイントを廻って、標準時間2時間30分だ。

チェックポイントは、民宿の前の広場をスタート、ゴールとするコースだった。

個々の指定された順番に廻ることになっていた。

皐月は卯月と弥生と一緒になった。

睦は朝霜と一緒のチームになった。

地図とコンパス、サインペンを持って、時間を5分ずつずらして、それぞれのチェックポイントへと出発していく。

睦たちのチームは、A→B→C→D→E→Z→Y→X→W→Vの順。

皐月たちのチームは、Z→Y→X→W→V→A→B→C→D→Eの順だった。

一ポイントあたり平均1キロは歩く計算になる。

 

「ねえ、朝霜さん? 入学式の時は驚いたけど、先輩からの申し込みは受けたの?」

 

そう聞いてきたのは朝霜と同じチームの男子だった。

しかも、ウラのおばあちゃんちのお孫さんだった。

 

「ん、なんで受けなきゃいけなんだよ。 叩かれたくらいで泣いちゃうなんて、みっともないったら、ありゃしないわ。」

 

「結構先輩ってモテルらしいけど・・」

 

「あたいはしれーかんだけだよ。 その他の男は目じゃないから。 だから殴ろう・・・」

 

ゴン!

 

「イッテェェ!」

 

頭を押さえて、蹲る朝霜。

 

「まったくもう。 そう言う暴力な言葉はダメにゃし!」

 

朝霜の頭を殴ったのは睦だった。

 

「あ、あんだよ、睦ちゃん。 いったいじゃんか。」

 

涙目で、殴った睦を見た。

殴った睦は、呆れていた。

その姿を見たチームのメンバーは、(睦ちゃんって、可愛い顔に似合わず、暴力的ぃ・・・)と感じていた。

見るからに頭一つ小さい睦が、体の大きい朝霜を叱りつけている構図は一興ではあったが・・。

言うところの、”どっちがお姉ちゃんで、どっちが妹?”てな感じだった。

地図を見ながら、あっちだ、コンパスを使ってこっちだ、とチェックポイントをクリアしていく睦たち。

 

「さぁ、次行くよ!」

 

元気に先頭を行くのは朝霜だった。

海図とコンパスで船を走らせる艦娘だけあって、地上での地図読みは問題なかった。 むしろ簡単だったようだ。

睦も朝霜と同じくらいに地図とコンパスを使えるが、ここは朝霜に先頭を任せ、残りのメンバーのサポートに廻っていた。

朝霜も「次は、どこだい?」とメンバーに問うて、自身が完全に引っ張っていくことはしなかった。

半分のチェックポイントをクリアしたところで、近くの公園に入って休憩をした。

 

「ここで休憩しよっか。 10分くらいならいいよね。」

 

「あぁ、しんどいねぇ。 やっと半分かぁ。」

 

座り込んで、スタート時に貰ったお茶を飲んでいた。

そこへ、別のチームがやってきた。

 

「なんだ、先客がいたんだ。」

 

「あ、皐月ちゃん!」

 

「あれ、睦ちゃん?」

 

「うん、今、半分だからって休憩してたの。 皐月ちゃんも?」

 

「そうだよ。 同じだね。」

 

お互い、ヘヘヘっと笑っていた。

しばらく駄弁っていたが、睦のチームが10分の休憩時間が過ぎたので出発することになった。

 

「皐月ちゃんたち、先に行ね。 ゴールで待ってるね!」

 

「えーーっ、先に就くのはボクたちだよ! じゃぁ、あとでね!」

 

残りチェックポイントのクリアを目指す睦たち。

途中で、ちょっとしたアクシデントが。

 

「次は? ここからどう行くのさ?」

 

「ここからだと、右手の道を進んで・・・・」

 

「じゃぁ、行こう!」

 

しばらく歩いていると、睦が先に見つけたようだ。

 

「あ! あった! あれだよ、朝霜ちゃん!」

 

「よし、あたいが行ってくるよ。」

 

そう言ってチェックポイントへ駆け出していく朝霜だったが・・

その場所まで行った、と思ったら、なにか、しょげて帰ってきた。

 

「だめじゃん。 X(バツ)ってなってるじゃん。 ここじゃないよ。」

 

え? そうなの? とメンバーが顔を見合わせるが、睦がそこで気が付いた。

 

「朝霜ちゃん・・ それ、X(バツ)じゃないよ。 X(エックス)だよ? 違うかにゃ?」

 

「へ? X(エックス)?」

 

「うん。」

 

「・・・あ!」

 

気が付いたようだ。

 

「もういっぺん行ってくる!」

 

と言って走っていった。

そしてチェックしてきた。

 

「これでどう?」

 

皆がウンウンと言っていた。

ホッとした朝霜だった。

 

「じゃぁ、次だ! 次はどこだ!」

 

-----

 

スタートから2時間余りが経過したころ、ゴール地点に、朝霜のチームが帰ってきた。

 

「とうちゃああああく! どう? あたいらが一番かい?」

 

「お帰り。 チェックシートを見せて。」

 

先生にチェックシートを見せた。

 

「うん、各ポイントをクリアだね。 お疲れ様。 順位は・・ 2番だよ。」

 

「「「え~~」」」

 

一番だと思っていた朝霜らはショックのあまり大声を出した。

 

「じゃぁああん! お疲れだね。 一番はボクたちだよ!」

 

そう言って建物の陰から出てきたのは皐月たちのチームだった。

 

「あ、皐月ちゃん! そうなの? しかも、隠れてたのかい? ひどいよ、みんな!」

 

「へへへっ。 皆を驚かそうと思ってさ。 でも、3分と経ってないからね。」

 

「弥生ちゃんも卯月ちゃんも早かったんだね。」

 

「うん。 弥生ちゃんが案外早くて簡単にクリアしちゃってさあ。 へへへ。」

 

到着した2つのチームは、残りの4チームの帰りを待つことにした。

その間、休憩だ。

はあぁ、疲れたよーーっと言いながら、座り込んでしまった。

まあ、ここの広場は芝生だから、寝っ転がっても気持ちよかったんだけど。

朝霜たちがゴールしてから30分ほどたったころ、残り4チームが団子状態でゴールしてきた。

皆、結構疲労していたから、芝生に倒れこんでいた。

 

 

皆が帰ってきて休憩となった。

時間は1545だった。

今日の予定は、夕食とお風呂(?)が残っていた。

夕食は、民宿のテラスでバーベキューだったので、1800に席に着けば良かったから、朝霜と睦は、夕食までの時間、二人で民宿の裏山に上ることにした。

裏山と言っても、標高はさらに100mはある。

冬にはスキー場になるくらいに、傾斜がある山だ。

 

「ハァハァ、結構きついよ~。」

 

「朝霜ちゃん、ハァハァ、なんで登ろうと思ったのさ?」

 

「だって、普段の生活じゃ、低くても山のてっぺんになんて登ることないしさ。 それに片道1時間で行けるっていうからさ。」

 

二人はほぼ駆け足状態で登っていく。

登り始めて45分ほど。

予定より早く頂上に到達した。

 

「「着いたぁあああ!!」」

 

ハァハァと、二人は肩で息をしていた。

振り返ると、民宿が下の方に見えていた。

 

「おう、高いねぇ。」

 

「うん、それに結構、風が強いね。」

 

そう言って、山の反対側を見た。

すると、遠くの眼下に海が見えていた。

 

「あ、海だ。 海が見えるよ。」

 

「おぉ、ほんとだ。 海だ。」

 

見えていたのは日本海だった。

 

「ん? あれって・・ 艦隊だよね、ね、睦ちゃん?」

 

「そうだねぇ・ ちょっと遠いかにゃ?」

 

沖合に確かに、東へと向かう艦隊が認められた。

二人は目を凝らして沖を行く艦隊を見つめた。

 

「・・あれって、空母だよね? あとは駆逐艦かな?」

 

「・・そうだね、空母だね。 甲板上に出っ張りが見えないから、軽空母だよね。 ん? ・・ってことは・・」

 

「「舞鶴の艦隊だ!」」

 

顔を見合わせて二人が声を揃えた。

 

「じゃぁ、あれは祥鳳さんか瑞鳳さんだね。 皆元気にやってるかにゃあ。」

 

「そういや、睦ちゃんは、舞鶴にいたんだっけ?」

 

「うん。 父さんとはそこで出会ったんだよ。」

 

へぇー。

 

「おおおーーーい!!」

 

と睦が艦隊に向けて両手を大きく振りだした。

 

「睦ちゃん、向こうまで届かないよ?」

 

「へへっ。 いいの。 私がやりたいんだから。」

 

じゃあ、と言って二人して

 

「「おおおーーーい!!!」」と。

 

その時だった。

太陽の反射の光なのか、はたまた発光信号なのか、判らないが、空母から光が見えた。 それも数回の点滅で。

 

「「嘘??」」

 

二人は驚いて顔を見合わせた。

正直、驚いた。

しばらく艦隊を見ていた二人だが、徐々に風が冷たくなってきたようだった。

ブルっと朝霜と睦が震えた。

 

「ちょっと寒くなってきたね。」

 

「うん。」

 

「帰ろっか。」

 

「そうしよ。 あたいお腹空いてきたしさ。」

 

時計を見ると1700になろうとしていた。

二人は、沖の艦隊に向けてバイバイと手を振った。

そして、急ぎ、民宿へ向けて山を降りて行ったのだった。

 

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