問題児たちが異世界から来るそうですよ?~元人間曰く箱庭は面白いそうですよ?~   作:croto

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6月7日、一部本文を改定いたしました。


異世界からもう一人来るそうですよ?

一人の少年が不良に小石を投げ、一人の少女が小鳥と話し、一人の少女が自室で手紙を見つけていた頃、一人の少女は湖のど真ん中で浮いていた。

 

しかし、それは水死体などではなく、その少女はゆっくりと水面に立つと数百m離れている陸に向かいゆっくりと歩き出す。

 

水中に沈むことなく水面を歩くように陸に戻るとタイミングを見計らったかのように空から一通の手紙が舞い落ちる。

 

手紙を受け取り中の紙を見てみるとこんなことが書かれていた。

 

 

『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる

その才能(ギフト)を試すことを望むなら

己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、

我らの"箱庭"に来られたし』

 

 

「うおっ!?」

 

「きゃっ!!」

 

「ニ"ャっ!?」

 

「へっ?」

 

その瞬間、少女は4000m上空に飛ばされていた。

 

落ちながらも焦らずに辺りを見ると明らかに普段とは違う光景だった。

 

しかし辺りを眺めていたのも束の間に少年少女四人は湖に入水した。

 

 

その姿を眺めている犯人であるコバルトブルーの兎耳の影は人類史最強のギフトを持った彼らを呼び出せたことに内心歓喜していた。

 

 

「し、信じられないわ。いきなり空に放り出すなんて。下手をすれば地面に激突して即死よ?」

 

「ああ、全くだ。

場合に寄っちゃあ、ゲームオーバーコースだぜこれ」

 

少年少女が湖から上がり各々濡れた服を乾かす中、水色の髪の少女は何もせずに辺りを見回していた。

 

理由は簡単だ。

 

先程までいた場所とは異なる世界に来たと認識しこの世界の情景を確認していたのだ。

 

「それで、先ほどから頻りに辺りを見回している貴女は?」

 

「え?」

 

いきなり声を掛けられたことによりすっとんきょうな声を上げる。

 

「貴女の名前は?」

 

「ああ」

 

ドレスを着た少女に聞かれ、自己紹介か。と気付き少女は自己紹介を始める。

 

「わたしは水面 翡翠(みなも ひすい)、何処にでもいないただの人外ですよ、と」

 

「あら、そう」

 

軽く自己紹介をした少女、翡翠はいかにもお嬢様な格好の自分よりも若干背の高い少女と見た感じ不良な金髪ヘッドフォンな少年を見通し、無関心そうなネコを抱えた少女に視線を移し質問する。

 

「で、貴方たちはだれで此処は何でしょう?」

 

「やっぱり聞いていなかったのね貴女。

一応もう一度言うけど私は久遠 飛鳥よ」

 

「俺は逆廻 十六夜だ」

 

「春日部 耀」

 

二回目の自己紹介だからか何か適当さを感じるがそれを放棄し現状を確かめる。

 

「で、呼び出されたのはいいけど何で誰も居ねぇんだ?」

 

「そうね。こういう時は説明役がいるのが普通だと思うのだけど」

 

「じゃあ探しましょうか?」

 

集まった四人は案内役、説明役がいないことに苛立ち何かが隠れていることを知りながらも(・・・・・・・・・・・・・・・・・)無視して話を進める。

 

が、十六夜が名案だといった感じに何かを思い付く。

 

「仕方がねぇ。そこに隠れているヤツにでも話を聞くか」

 

「あら、貴方も気付いていたの?」

 

「当然、かくれんぼじゃ負けなしだぜ。

そっちのオマエらも気付いてたんだろ?」

 

「風上に立たれたら嫌でも分かる」

 

「気配を隠しきれてないしバレバレです」

 

そんな反応に十六夜は面白いなオマエら。と三人に向かい話す。

 

そんな反応だったからか出るタイミングを無くして隠れている影は引っ込んでしまう。

 

「おら、分かってんだろ。大人しく出てこいよ」

 

十六夜の言葉に渋々と出てこようとした影に"出てこないなら"と飛び掛かるように跳躍し隠れていた場所に勢いよく着地し、辺りを抉る。

 

姿を見せた影は見た目コスプレのようなコバルトブルーの腰まである長髪に同じくコバルトブルーの兎耳をつけた若干エロティカルな服装の女だった。

 

女はクロウサギと名乗り格好はコスプレではないと否定しようとしたが途中で再度跳んできた十六夜に邪魔される。

 

が、持ち前の身体能力で後ろにかわし木の上に逃げる。

 

しかし今度はいつの間にかクロウサギと同じように木の上にいた耀がまるで木の上を移動する動物かのように軽々と枝から枝に飛び掛かる。

 

それをも身軽にかわし今度は空へと逃げた所を飛鳥の命令により鳥が行く手を阻みついには地面に落ちる。

 

最後は止めとばかりにいつの間にかクロウサギの着地点にいた翡翠の手からポンプのように水が吹き出し休む間もなくクロウサギを一時的に木に縛り付ける。

 

いきなりのことで混乱するがふと影が出来、見上げてみると四人が見下ろしていた。

 

「なんだこいつ」

 

「兎人間?」

 

「兎にしては白くはありませんけど?」

 

見下ろされていたからか焦った感じで落ち着くようにと促す。

 

「えい」

 

が、近づいた耀がクロウサギの耳を引き抜く勢いで引っ張る。

 

「ふぎゃあ!!

ち、ちょっとお待ちを。まさか初対面で遠慮無縁にクロウサギの素敵耳を引き抜きにかかるとは一体どういう了見ですか!?」

 

「好奇心の成せる業」

 

「好奇心にも程があります!」

 

本当に好奇心だけといった表情で返答する耀からクロウサギは抜け出し文句を言う。

 

「へえ、このウサミミって本物なのか?」

 

「じゃあ私も」

 

そう言って他二人もウサミミを握り引っ張り合う。

 

「ちょ、ちょっと!?クロウサギのウサミミは、ぎゃああああああああああああ!!」

 

そうしてクロウサギの叫び声が箱庭に響いた。

 

因みに翡翠はそれをただただ眺めているだけだった。

 

 

 

「あ、あり得ないのですよ。学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに違いないのです」

 

「学級ですらないと思いますが」

 

「確かにな」

 

落ち着いたクロウサギは息を荒げながら例えを言うが翡翠と十六夜に突っ込まれる。

 

だが今のクロウサギにはそれに対して怒るような気力はなかった。

 

「いいからさっさと話せ」

 

更に追い討ちをかけるように十六夜が説明を急かす。

 

「はい」

 

ここでクロウサギは諦めるように項垂れた。

 

 

 

数秒後、見事に復活したクロウサギはスクと立ち上がり咳払いを一つするといかにもチュートリアルのようなハイテンションで説明する。

 

「ようこそ皆さま!箱庭の世界へ!!」

 

「箱庭?」

 

「イエス!

我々は御四方にギフトゲームへの参加資格をプレゼントさせて頂こうかと思いまして、この世界へとご招待いたしました!」

 

「ギフトゲーム?」

 

「既にお気付きかも知れませんが御四方は皆、普通の人間ではありません。

みなさんの持つ特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられたギフト。つまり、恩恵なのでございます。

ギフトゲームとはその恩恵を駆使して、或いは賭けて、競い合うゲームのこと。

この箱庭世界はその為のステージとして作られたものなのですよ?」

 

と、一々手振り身振りで、割りとウザいテンションで、質問されながらもクロウサギは説明する。

 

一段落ついた所で飛鳥が手を挙げながら質問する。

 

「自分の力を、賭けなければいけないの?」

 

「そうとは限りません。

ゲームのチップは様々、ギフト、金品、土地、利権、名誉、人間、賭けるチップが高ければ高いほど得られる商品の価値も高くなるというものです。

ですが当然、商品を手に入れる為にはホストの提示する条件をクリアしゲームに勝利しなければなりません」

 

「はい」

 

と、次は耀が手を挙げて質問する。

 

「どうぞ?」

 

「ホストってなに?」

 

「ギフトゲームを主催し管理する人のことですね」

 

「誰でもなれるの?」

 

「商品を用意することさえ出来れば、それこそ修羅神仏から商店街のご主人まで、ゲームのレベルも凶悪かつ難解かつ命懸けのものから、福引き的なものまで、多種多様に揃っておるのでございますよ。

ですが、話を聞いただけでは分からないことも多いでしょう。なので、ここで簡単なゲームをしませんか?」

 

「何?」

 

と、ギフトゲームをする提案をした所で漸く長い説明が終わった。

 

そして早速、説明されたギフトゲームが始まった。

 

そのクロウサギの発言にそれは楽しみだと翡翠は思う。

 

「この世界にはコミュニティというものが存在します。

コミュニティ、共同体、社会集団、この世界の住人は必ず何処かのコミュニティに所属しなければなりません。

いえ、所属しなければ生きていくことさえ困難と言っても過言でもないのです」

 

更に説明が続きコミュニティ、つまりどこかしらの組織に居なければならないらしい。

 

そしてクロウサギが指を鳴らすと空中に黒い卓が現れ、それがカジノで使われるようなトランプゲームの卓だと分かる。

 

「皆さんは、クロウサギの所属するコミュニティに入れて差し上げても構わないのですが、ギフトゲームに勝てないような人材では困るのです。

ええ、全く本当に困るのです。

寧ろお荷物邪魔者、足手まといなんです」

 

そういってクロウサギは誰でも分かるような挑発をかます。

 

「俺たちを試そうってのか」

 

「ちょっと待ちなさいよ!私たちは一言も」

 

そして一人はやる気で一人は困惑の中、更にクロウサギは挑発をする。

 

「自信がないのであれば断ってくださっても結構ですよ?」

 

そんな煽りに翡翠の脳内には"やってやろうじゃねぇか!"という返しの言葉が頭をよぎった。

 

「随分と楽しい挑発してくれるじゃねえか」

 

「お、お気に召してくださって何よりです」

 

十六夜の言葉に若干焦っているのか翡翠から見ると明らかに失言したような感じだった。

 

「ゲームのルールは?」

 

「このトランプを使います。

この52枚カードの中から絵札を選んでください。

ただし、チャンスは一回、一人につき一枚まで」

 

成る程、と翡翠は考える。

 

一見単純だが運があるかどうかも試せるわけだ。

 

「方法はどんなことをしてもいいの?」

 

「ルールに抵触しなければ、因みにクロウサギはジャッジマスターという特権を持っていますのでルール違反は無理ですよ。

ウサギの目と、耳は、箱庭の中枢と繋がっているのです」

 

繋がっているの一言で翡翠は"閃いた"と考えた瞬間"通報した"と電波を感じる。

 

「チップは?

オマエの言うギフトを賭けるのか?」

 

「今回みなさんは箱庭へ来たばかりですのでチップは免除します。

強いて言えばあなた方のプライドを賭けるといった所でしょうか」

 

クロウサギは露骨にプライドという言葉を使いゲームに誘い込む。

 

「へえ」

 

「私たちが勝った場合は?」

 

そう耀が問うと意外な報酬があった。

 

「そうですねぇ。

その場合は神仏の権属であるこのクロウサギがなんでも一つだけあなた方の言うことを聞きましょう」

 

「ほう。なんでもか」

 

"ん?いまなんでもって"と考える翡翠だがすぐに放棄する。

 

そして十六夜の視線に気付いたクロウサギは自身の胸を隠しながら一部を訂正する。

 

「で、でも性的なことは駄目ですよ?」

 

「冗談だよ」

 

翡翠以外の二人の視線から十六夜は冗談だと言う。

 

「で、どうする?」

 

「どうもこうも」

 

「やろっか」

 

「ですね」

 

「うお!?びっくりした」

 

「あら、居たのね」

 

「酷くないですか?みなさん」

 

「く、クロウサギはちゃんと気付いていましたよ」

 

翡翠の突然の発言にびっくりした十六夜達をよそに、その気になれば消えることが出来る翡翠にとっては日常茶飯事なことなのであまり気にしない。

 

「では、ゲーム成立です」

 

そう言うと空中に古めかしい紙が現れる。

 

「それは?」

 

「ギアスロールです。

いわば、ゲームに関する契約書、ゲームのルールやクリア条件が書かれています」

 

そのギアスロールにはこう書かれていた。

 

 

ギフトゲーム名

"スカウティング"

 

プレイヤー一覧

逆廻 十六夜

久遠 飛鳥

春日部 耀

水面 翡翠

 

・クリア条件

テーブルに並べられたカードの中から絵札のカードを選ぶ。

 

・クリア方法

選べるカードはプレイヤーにつき一枚のみ。

 

・敗北条件

降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗と、ホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

 

                         “サウザンドアイズ”

 

 

「オーケー。分かった。

だが、始める前にそのカードを調べさせて貰おうか」

 

「構いませんよ」

 

そして其々各々でカードを調べる。

翡翠は僅かに濡らした指でカードに水を染み込ませイカサマの準備をする。

 

他の三人は傷を付けたりネコの唾液を付けたりしていたようが十六夜は目線からカードの順番を覚えているようだった。

 

そして全員が調べ終わり卓中央に横に並べられたカードから気配を探る。置いてあるのは左から18枚目でありカードの位置は既に分かっている。

 

「誰から行く?」

 

「どうせ結果は変わらないからわたしは最後でいいですよ」

 

「じゃあ、俺から行かせて貰うぜ」

 

そう言って十六夜は卓の前に立ち、暫く眺めるとカードが決まったようだった。

 

「さっきは素敵な挑発をありがとよ。

これは、お礼だ!」

 

そう言って卓を勢いよく叩くと並べられたカードが舞い数枚の絵札のカードが表向きになる。

 

そして表向きになった絵札を飛鳥と耀が取り十六夜は手にしていた裏のカードを返し絵札を当てる。

 

そこで四人はまだ翡翠が選んでいないことに気づく。

 

「翡翠さんも選んでください」

 

「オマエのことだし何かあんだろ?」

 

「では、これでしょうか?」

 

そう言ってさも当たっているか不安そうに翡翠が選んだのは未だに裏向きのカードだった。

 

それを返し確認するとその通り絵札だった。

 

勿論これは偶然ではなく翡翠が印を付けたカードが偶々裏だっただけである。

 

「これで文句はないですよね?」

 

「は、はい。翡翠さんと十六夜さんは問題ありませんが他の皆さまは」

 

と、飛鳥、耀の二人に文句を言おうとするが途中で言葉が途切れ耳が動くと肩をガックリと下げる。

 

「箱庭の中枢から有効であるとの判定が下されました。飛鳥さんと耀さんもクリアです」

 

どうやらルールの穴を突いたことをしても違反にはならないようで耀と飛鳥は互いに手を合わせ喜び十六夜は当然といったような態度だった。

 

「し、しかしどうやって」

 

「覚えた」

 

クロウサギは何故当てられたのか不思議なようで十六夜に聞くとさらりと言った。

 

更に卓の未だ裏向きのカードの数字を言いながら捲り表にすると言った通りのカードだった。

 

翡翠は素直に感心しながら別の、何故クロウサギが自身のコミュニティに所属させたがるのかを考える。

 

そして最終的に自身のコミュニティに何かしらの事情があり翡翠含めた最強のギフトを持つであろう人材を欲したからという考えに辿り着く。

 

 

クロウサギがギフトゲームの卓を片付けると自身のコミュニティに寄る前に仲間の"ジン"という人物とサウザンドアイズの"白夜叉"という人物に会いに行くことになったがその向かう途中で十六夜が"世界の果てに行ってくる"と言い出したので着いていくことにした。

 

因みにこの発言で"世界の果てまで行って〇"と思考が反れたが直ぐに放棄し人間とは思えない速度を出す十六夜の横を後ろ向きに着いていく。

 

「オマエ何で後ろ向きに走って俺に付いてこれるんだ?」

 

「別にいいじゃないですか。普通に走ったって詰まらないんですし」

 

「ワケわからなさすぎだろ」

 

方や異常な速度で走りながら軽いお喋りをし、方やその異常な速度に後ろ向きに走り並走し更に余裕といった表情で軽く喋る。

 

そして遂に森を抜けるとそこには湖があり、その先には何もなく滝のように水が流れている何とも幻想的な光景だった。

 

「これはまた、凄いですね」

 

「確かにな。

此方に来てから一番の絶景かもな」

 

「絶景でいうなら呼び出された時の上空からの景色じゃないですかね?」

 

その絶景に素直に感動する二人にエコーの掛かったような声が聞こえる。

 

『貴様ら、人間か?

このような場所に来るとは珍しいな。貴様ら二人で力、知恵、勇気の中から試練を選べ!』

 

「ああ?試練を選べ?

じゃあ、オマエが俺を試せるか試させて貰おうじゃねぇか!」

 

「じゃあ、わたしは其処で休んでいるので適当にやっててください」

 

エコーの掛かったような声の正体は白い蛇で簡単な挑発をしてきたのを十六夜が逆に受ける。

 

そして翡翠は疲れたからと面倒くさそうに適当な木に腰掛ける。

 

瞬間的に水柱が二本建ち、そちらを見ると蛇が消えていた。

 

「やっと見付けたのですよお馬鹿様方!!」

 

「あ、クロウサギ。

遅かったですね、気付くの」

 

「十六夜さん!それに翡翠さんまでも!!

一体何処まで来てるんですか!」

 

「何処までって、世界の果てまで来てるんですよっと。

て、まあそんなに怒るなよ」

 

「絶景ですからねぇ」

 

漸く見付けたような雰囲気で怒るクロウサギの髪と耳は緋くなっていた。

 

それに対し十六夜は突っ込んだが翡翠にとっては日常的なことでもあるので無視する。

 

「十六夜さんと翡翠さんが神仏にギフトゲームを挑んだんじゃないかと思ってヒヤヒヤしてたんですよ!?

さ、ご無事でしたら早く帰りましょ」

 

「挑んだぞ」

 

「へ?」

 

「うん。クロウサギ、それもう遅いですね」

 

「へ?」

 

「神仏にギフトゲーム」

 

「は?」

 

挑むなと言われてももう挑んでしまったし多分勝ったと思う。正直雑魚だった。

 

そう翡翠は考えていた。

 

次の瞬間、地鳴りと共に蛇が水中から出てきた。

 

『まだ、まだ試練は終わってないぞ!小僧ぉ!!』

 

「す、水神!?どうやったらこんなに怒らせられるんですか!?」

 

「っ!今なんと言いましたか?」

 

蛇が水中から出てきて明らかに怒り狂っていた。

 

その様子にクロウサギは驚いたが翡翠の驚きはそこではなかった。

 

「どうやったらこんなに怒らせることになるんですかと」

 

「違う。その前」

 

 

「え?す、水神と言いましたが」

 

「水神?あれが?」

 

「は、はい。そうでございますが」

 

クロウサギは今明らかに怒っている雰囲気の翡翠に困惑しながらもそうだと答える。

 

「ごめん。予定変更、ちょっと行ってくる」

 

「え?あ、あの。

翡翠さん?一体どうして、というか危ないですよ!?」

 

あの蛇が水神だと知った翡翠の豹変ぶりに動揺を隠しきれないクロウサギを置いて水神に向かう翡翠。

 

「十六夜、代わって」

 

「ああ?今良いところなんだよ邪魔するのか?」

 

「いいから代われ」

 

いきなり交代しろと言われた十六夜はこれからだと邪魔するなといった風に、この喧嘩はアイツが売り俺が買った喧嘩だと返すが翡翠の威圧に勝てないと一瞬でも感じ仕方なしに譲る。

 

「やあ、水神。プレイヤー交代だ。

十六夜の代わりにわたしと殺ろっか。まあ、水神が二人でって言ったから問題はないでしょう?」

 

『なんだ?次は小娘か、まあいい。小僧の代わりに次は小娘がやるのなら掛かってこい!』

 

「いいよ。遊んであげる。ただし、一瞬だけどね?」

 

『嘗めるなよ。小娘がぁ!!』

 

翡翠が軽く挑発しただけで乗ってきた水神が水で出来た竜巻を幾つも発生させる。

 

「翡翠さん!」

 

「はぁ・・・・・。邪魔」

 

それを見たクロウサギは逃げてと叫ぶが翡翠が呆れるように溜め息を吐き軽く腕を横に一閃、手刀のように竜巻を斬るような動作で振るうと竜巻は霧散し雨となる。

 

『バカな!?』

 

「ウソ!?」

 

「へぇ?」

 

それを見ていた三者は各々に反応を見せた。

 

まさか自身の力がかき消されるとは思わなかった水神。

 

水神の力が消されたことに驚くクロウサギ。

 

素直に強いと感じた十六夜。

 

「水神を名乗るならまだまだ力不足だね!」

 

そう言ってその場で拳を水神に突き出すとクロウサギが受けた水の量とは比にならない量の水が水神に当り水圧で吹き飛ぶ。

 

「つまらん」

 

そう言って水神のいた方に背中を向け歩き出す。

 

「あ、報酬は先に倒した十六夜が貰っていいですよ」

 

「あ?いいのか?」

 

「ええ、わたしはあれを倒したかっただけですし先に倒したのは十六夜ですから」

 

「じゃ、遠慮なく」

 

「すごいですよ!翡翠さん!」

 

ただの人間が(・・・・・・)神格を倒すなんて。

いえ、だからこそ、この力があれば私たちのコミュニティは。

 

そうしてクロウサギは勘違いをする。

 

翡翠が竜巻を斬るような動作をしたのも、水を噴き出したようにみせたのも、初めてクロウサギに会ったときから“水を操るような力“があり、それが神格を倒せるほどだと魅せるためにしていたもの。いや、そうやって誤認識させているのだ。

 

 

「見てください!」

 

そう言って駆け寄ってきたクロウサギは何かの苗を持ってきていた。

 

「こんなに大きな水樹の苗を貰えましたよ。

これがあればもう他所のコミュニティから水を買う必要もなくなります」

 

「え!?クロウサギのコミュニティって水無いの?」

 

「え、えぇとそれは」

 

水樹の苗を手に入れてコミュニティが助かるのはクロウサギの立場からしておかしい。

 

いや、初めから崖っぷちなのだろうとは予測がついていたが水が無いと私的に死活問題である。

 

その事を翡翠は言おうとしたが翡翠の一言にクロウサギが明らかな動揺を見せる。

 

「なあ、クロウサギ。

オマエ、何か隠し事してるだろ」

 

「っ!」

 

そこを割って突いた十六夜は核心的な質問をする。

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