問題児たちが異世界から来るそうですよ?~元人間曰く箱庭は面白いそうですよ?~ 作:croto
十六夜がいつの間にか髪をコバルトブルーに戻したクロウサギの隠し事に対し疑問を投げる。
それは翡翠も同じようで同じく疑問を投げる。
「そ、それは。
前にも言った通り、ギフトを持つ十六夜さん達に面白可笑しく過ごして頂こうと」
明らかに何かを隠しているがそれを隠そうと同じ文言を言おうとしたクロウサギに十六夜が本当かと割って言うとクロウサギが動揺したのが分かった。
「これは俺の勘だが、クロウサギのコミュニティは弱小のチームか若しくは訳あって衰退したチームじゃねぇのか?」
そう言ってクロウサギの隠し事を言い当てた十六夜に乗るように翡翠も自身の予測を述べる。
「わたしから言えば確定でクロウサギのコミュニティは衰退ないし弱体化しているんじゃないですか?
じゃないとクロウサギ程の権力を持った種族がいるコミュニティが水不足なんてあり得ない。
水不足になる程の何かがあってそれを解決させようとわたし達を呼んだ」
「そうだな。確かにクロウサギは箱庭の中枢と繋がっている位のギフトロールの作成を出来る程の奴だ。で、そこんとこどうなんだ?クロウサギ」
十六夜の勘と翡翠の推測で隠し事を看破されノーともイエスとも言えない状況に沈黙してしまう。
「沈黙は是なりだぜ、クロウサギ」
そう言われたクロウサギは観念するしかなかった。
「十六夜さん達の仰る通り私達のコミュニティは困窮に貧しています。
先程話したコミュニティとは大小在れど一つの国のような存在です。
故に活動する上で箱庭に名と旗印を申告しなければなりません」
クロウサギは何故十六夜達を呼んだのかその経緯をコミュニティの意味から説明し始める。
そして先程の説明ではされなかった"名と旗印"について十六夜が問う。
「名と旗印?
というと国旗のようなもんか」
「イエス。
その多くは領土の保持に使われます。
数年前まで私達の旗印は東区画の至るところで靡きその輝かしい栄光を誇っていました」
そう言うクロウサギの表情は昔を懐かしむようにまた昔のように戻りたいというような表情だった。
「ですがある日、私達は敵に回してはいけないものに目を付けられてしまいました。
そして。たった一夜にして壊滅させられたのです」
そのクロウサギの感情は怒りよりも悔やみのような感じだった。
かつて栄えていたコミュニティがたった一夜という極めて短い時間で壊滅など普通ではないと翡翠は感じる。
「魔王の力は強大でした。
ギフトゲームに敗れた私達のコミュニティは名と旗印を奪われノーネームとなったのです」
そのクロウサギの会話から奪われたのはそれ以外にも仲間や、土地の作物、更には水が供給出来ない状況であると簡単に推測出来てしまう。
「"名無し"ってことか」
自身のコミュニティが名の無いコミュニティとして機能していない事実を話し十六夜の問いに肯定する。
翡翠はその会話を静かに自身の存在を消すかのように静観する。
「現在、中核を成す仲間達は一人も残っていません。
ギフトゲームに参加出来るのは現リーダーであるジン坊っちゃんとクロウサギだけ。
後の120人余りは10歳以下の子供達ばかりなのですよ」
クロウサギは十六夜達が入ろうとしているコミュニティがどれだけ酷いコミュニティなのかを暗い気持ちになりながらも説明する。
と、十六夜がこの雰囲気を壊すかのようなとびきりの笑顔で崖っぷちであることを言及するとクロウサギも釣られたのかクロウサギも笑顔でそれを肯定しその事実に頭を垂れ項垂れる。
「それでも、皆必死で生きています。
子供達は毎日遠くの川まで水を汲みに行き、住むところ以外は作物すら育たない死んだ土地だといいのに」
「へえ?
そんなにヒデェ状況ならいっそ潰して、新しく作っちまえばいんじゃねぇか?」
そんな十六夜の何気ない一言に怒ったように、しかし困ったように
目的があるかのようにそれはダメだと否定する。
「なんで?」
「私達は!仲間達が帰ってくる場所を守りたいのです。
そしていつの日か、魔王から名と旗印を取り戻し、コミュニティの再建を果たしたいのです。
その為には!十六夜さん達のような強力な力を持つプレイヤーに頼る他ありません!
お願いします!私達に力を貸してください!」
クロウサギはこんなことを言ってしまえばコミュニティに入って貰えなくなる可能性が高いと考えてしまう。
そんなことになればクロウサギ達のコミュニティはこのまま衰退していずれ滅んでしまう。
そんな嫌な考えがまとわりつく。
しかし現実は違った。
「いいよ」
「へ?
今、なんと?」
すぐに帰ってきた返答はクロウサギの考えていた拒絶という反応ではないことに驚き、唖然とし、その発信源である翡翠の方を見つめる。
「だから、良いって言ったんですよ。
境遇は悲惨、戦える人物は二人、最悪な環境に絶望的な未来。
それでも諦めない目的がある。
それがたった一人入るだけで変わるなんて素敵でしょう?」
そう言ってクロウサギに歩み寄る。
「翡翠さん。
ありがとうございます!」
「おいおい、一人だなんて言うなよ。
俺も強力してやるよ。
魔王を相手に旗と誇りを取り戻す。
あぁ、そいつはロマンがある。
強力する理由としちゃあ上等な部類だ。
精々期待してろよクロウサギ」
「それに弱者が強者を倒すなんてすればコミュニティの宣伝には打ってつけじゃないですか」
「それもそうだな」
二人の異世界人は互いに魔王を倒すこのコミュニティに入ることになった。
その光景にクロウサギはコバルトブルーの髪を緋色に変え二人に笑顔で感謝する。
「ふぉ、フォレスガロとゲームをする!?」
ノーネームに入ることになった十六夜と翡翠は飛鳥、耀、ジンと合流し、最初に聞いたのがフォレスガロとギフトゲームをすることになったという話だった。
「何故そんな急展開な」
と顔を青くして絶望したような様相で理由を聞く。
「「腹が立ったから後先考えずに喧嘩を売った。反省はしていない」」
異口同音にそう言った瞬間クロウサギはおバカ様と二人の頭をハリセンですっぱたく。
「でもどうしてこんなことに?」
「ごめん。僕もどうしてもアイツが許せなくて」
「お、お気持ちは分かりますが」
何故こんなことにという疑問に素直に謝られ気持ちは分かるけどと煮えきらない感じだったが
「まあ、いいです。フォレスガロ相手なら十六夜と翡翠さんだけでも」
と既に仲間である十六夜と翡翠に任せようとするが
「俺は出ねぇぞ」
「わたしも出る幕ではありませんね」
「は?」
十六夜も翡翠も出ないという答えに呆気に取られてしまう
「は?じゃねぇよ。
この喧嘩はコイツらが売ったんだ。
俺達が手を出すのは無粋ってもんだろ」
「そもそもその場に居なかったわたし達は部外者では?」
何故他人の出した手を手伝わなくてはいけないのかと言った風な発言に分かってるじゃないと飛鳥が口を挟む。
「お好きにしてください・・・」
と、問題児の問題行動にまたも項垂れるクロウサギであった。
「で、何処に行くんだよ?」
そう言ったのは十六夜で先程からから向かっている場所を聞き出す。
「ゲームは明日ですからね。
サウザンドアイズに皆さんのギフト鑑定をお願いしようかと」
「サウザンドアイズ?」
「イエス。箱庭の東西南北上層下層の全てに精通する超巨大商業コミュニティです」
「ふぅん」
つまり、サウザンドアイズには手を出さない方がいいのとその超巨大商業コミュニティと関わりがあるクロウサギはこのコミュニティには必須であると分かる。
ならば、サウザンドアイズには従っておいた方が利口かな?と翡翠は話を聞きながら自身のポジションを確定しておく。
「ん?桜?」
と、上から落ちる花弁と桜のような木を見てこの世界は今春なのだと飛鳥が気付く。
「私の世界では真夏だったけど」
「私の所は秋だったよ?」
「「?」」
しかし飛鳥の世界では真夏、耀の世界では秋ついでに翡翠の世界では真冬だったと互いの来た世界の季節が食い違っていることに疑問を感じる。
そんな二人にクロウサギはクスリと笑うと召喚された世界が皆違い、季節や歴史も違う筈だと答える。
「パラレルワールドってやつか」
「正しくは立体交差平行世界論と言うものなのですけど」
「へぇ」
要約するとパラレルワールドであると十六夜が言い正確なものにクロウサギが訂正し、その答えに"この世界にもその理論があるのか"と翡翠は思う。
話に区切りがついた所で耀が目的地と思われる場所を指差すとクロウサギが肯定しかけた所に何かが店から飛び出し此方に向かってきた。
「イヤッホーーーーー!!!。
久しぶりだクロウサギィーーー!!!」
それは銀髪の子供のような姿でクロウサギの数メートル先で飛び上がると、そのままクロウサギに飛び付き転がりながら行く先の水路に飛び込んだ。
かと思いきやクロウサギのたわわな胸にしっかりと腰に手を回し顔を擦り合わせていた。
しかもその胸の感触の感想をさも何回も触っているかのように"やっぱり"と言っていた。
「し、白夜叉さま!?
どうしてこんな下層に!?」
と、クロウサギが驚いている間も銀髪のロリは胸に頬を擦り合わせていた。
それに怒ったクロウサギは頭を鷲掴み十六夜らの方に投げ飛ばす。
よく分からない横回転をしながら十六夜の方に向かい十六夜にぶつかる直前で足蹴にし止める。
「おんし!
飛んで来た初対面の美少女を足で受け止めるとは何様じゃ!」
「十六夜様だぜ、和装ロリ。
以後よろしくな」
足蹴にされたことに対し何様だと銀髪ロリは怒ると十六夜様だと言ってのけた。
「うぅー。私まで濡れることになろうとは」
「クロウサギ、手を貸してください」
「はい?」
クロウサギが自分が濡れたことに嘆いていると翡翠が近寄り手を出すように言われ疑問を感じながらも手を出す。
すると、先程まで濡れていた髪や服、肌に付着した余分な水滴が消し飛ぶかのようになくなった。
「は?
今、何をしたんですか!?」
「クロウサギの濡れた分の水を消しました」
流石のクロウサギも濡れた服や髪が一瞬で乾いたことに驚きを隠せずにいた。
更には銀髪ロリが此方を見たような感覚を翡翠は感じる。
「さてと、改めて。
私はサウザンドアイズ幹部の白夜叉だ。
四桁の門、三三四五外門に本拠を構えておる。
そこのクロウサギとは少々縁があってなちょくちょく手を貸してやっている器の大きな美少女である」
と、この部屋に入れた張本人である銀髪ロリ、白夜叉である。
「外門って何?」
「箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ」
クロウサギの説明によると数字が小さい程都市に近くて強い種族が多いらしい。
更に白夜叉に加えられた説明は白夜叉のいる外門は上層と言われていて十六夜と翡翠の倒した白蛇、水神の神格も元は白夜叉のものらしい。
「へぇ?
じゃあ、お前はあの蛇より強いのか?」
「当然だ。
私は東側のフロアマスター。
この東側の四桁以下にあるコミュニティで並ぶものが居ない最強のホストだからのぅ」
これは翡翠だからこそ分かるが現時点でこの白夜叉に勝てる奴は居ないと悟る。
勿論、それは十六夜、飛鳥、耀のことであり翡翠自身も敗けはしないが勝つことは不可能だと経験則から判断した。
しかし、他の三人はそうではないらしく、白夜叉に対し挑みたいと申し出る。
当然、クロウサギは白夜叉の正体、強さ、実力を把握しているため三人を止めようとする。
「あら?翡翠さんは挑まないのかしら?」
「あ?なんだよ。怖じ気づいたのか?」
「実力が違いすぎる。
わたしは敗けはしないけど絶対に勝てないから無駄なことはしないだけですよ」
十六夜達から見れば怖じ気づいたかのように見えるが翡翠は気にしない。
「まあよい、クロウサギ。私も遊び相手に窮しておる故な」
「そいつは奇遇だな。俺も同じだ。少し遊んでくれよ。最強のホスト様」
そう言って十六夜は白夜叉を挑発する。
傍観者の翡翠は"あぁ、死んだな"と思いながらも何も言わない。
「よかろう。
じゃが一つ確認しておくことがある。
おんしらが望むのは挑戦か?
もしくは決闘か?」
そう言って白夜叉はカードのようなものを取り出し何かを発動させる。
その瞬間、部屋は崩壊し宇宙空間のような風景となり目を焼くような光に包まれ次に目を開けた時には広大な大地と山、更には月が浮かぶ別の世界にいた。
しかしそれが只のゲーム盤であると言ってのけた。
そして白夜叉は改めて自身の名を名乗る。
「私は白き夜の魔王。
太陽と白夜の精霊、白夜叉。
箱庭に蔓延る魔王の一人よ」
「ま、魔王!?」
白夜叉は魔王であり精霊であると言った。
翡翠はその発言で漸く白夜叉に感じていた親近感のようなものについて分かった。と同時に自分の着ている巫女服がこのゲーム盤に合っていないと風景と服装を客観的に見て考える。
「今一度問う。
おんしらが望むのは試練への挑戦か?
それとも対等な決闘か?」
そうして漸く十六夜達は自身が何に、誰に喧嘩を売ったのか気付く。
「参った。
やられたよ白夜叉」
「ん?」
「これだけのもんを見せてくれたんだ。今回は黙って試されてやるよ」
「よかろう。
それではゲームに移ろうか」
ここまでのやりとりを見ていたクロウサギとジンは一安心と息を付く。
「おんし達には、あれの相手をしてもらおう」
そして白夜叉が指した山の向こうから聞いたことのないような声を聞く。
山の向こうからやって来たのは
「グリフォン!?」
その正体に耀が驚きを隠せないでいた。
「いかにも。
あやつこそ鳥の王にして獣の王、ギフトゲームを代表する幻獣だ」
そのグリフォンの説明と同時にグリフォンは地に降り立つ。
「このグリフォンでおんしらの力、知恵、勇気を試させて貰おうかの」
ギフトゲーム名
"鷲獅子の手綱"
・プレイヤー一覧
逆廻 十六夜
久遠 飛鳥
春日部 耀
・クリア条件
グリフォンの背に跨り、湖畔を舞う
・クリア方法
力、知恵、勇気の何れかでグリフォンに認められる。
・敗北条件
降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
“サウザンドアイズ“
「ねえ、白夜叉。
ここにわたしの名前が無いんですけど?」
「あぁ、それなんだがおんしには特別、私から直々に試させて貰う」
「それはわたしがアレだから?」
「そうじゃ。
おんし以外の三人とは全く違うからのぅ」
「分かった」
白夜叉はやはり気付いていたようで翡翠は白夜叉自身が試すと言った。
ここで普段の三人ならなら自分達もと言うところだが白夜叉の魔王としての力の未知数、翡翠が明かしていない特異性、更に十六夜の感じた水神への殺気から、それぞれ未だに力の本質を見せていない翡翠への興味心で納得する。
「誰がやる?」
「私、やる」
白夜叉が代表者を決めようと聞くと、いの一番に手を上げた耀がやることとなった。
結果から言うと少々危険な場面は有ったが無事に挑戦は勝利という形で終わった。
「さて、次はおんしの番なんだがこれでどうかのぅ?」
そう言って出したギアスロールにはこう書かれていた。
ギフトゲーム名
"魔王への挑戦"
プレイヤー一覧
水面 翡翠
・クリア条件
白夜叉に一撃と思わせる攻撃を1度与える。
・クリア方法
白夜叉にダメージを与える。
・敗北条件
降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗と、ホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
“サウザンドアイズ“
「では、合図はクロウサギに頼むかのぅ」
ルールを確認し終えると白夜叉はクロウサギに開始の合図を頼む。
「それでは、開始!」
クロウサギがそう言った瞬間、目の前には白夜叉がいた。
翡翠の予想よりも白夜叉は速く、翡翠はその攻撃をもろに受ける。
「「翡翠さん!?」」
クロウサギと飛鳥が叫び、十六夜と耀はその白夜叉の速さに目を見開いた。
しかし何よりも全員が驚いたのはその白夜叉の攻撃の位置である。
それは白夜叉ですら驚いた程だ。確かに白夜叉の攻撃は直撃し翡翠にダメージを与えている筈。
だったが、実際はそうではない。
その拳は翡翠の鳩尾を貫通し、まるで水面のようにその周りがユラユラと揺れている。
その異変に一早く気付き白夜叉は二、三歩距離を取る。
「おんし、やはり只の人ではないな?
おんしのその霊格から精霊の類いであると感じてはおったがまさか水神とはのぅ」
「す、水神!?」
「なに?」
白夜叉の水神と言う発言にクロウサギと十六夜は驚く。
クロウサギはまさか呼び出した人類史最強の中に水神がいて自身が見抜けなかったこと。
十六夜は翡翠の正体が水神であの蛇と同じだったということ。
「そう言えばおんし、水樹はあの小僧が持っていたが勝ちを譲られたと言っておったが」
「確かに最終的にはわたしが倒しましたけど最初に倒したのは十六夜でしたから譲ったんですよ」
「ふむ、しかしこれではおんしに傷付けることは難しいかのぅ?」
「うそつき、簡単なのにわざとらしいですよ。
それよりもなんでこの攻撃当たらないんですか?」
白夜叉と翡翠、二人は先程から喋りながらお互いに攻撃と防御を繰り返している。
更に白夜叉は翡翠による水神を倒した程の水圧での攻撃をも軽く受け流し決定打とならない。
しかしそれは白夜叉も同様でいくら挑戦だからといっても只の人間、それこそ十六夜位なら山まで吹き飛ばす勢いの力で撃ち抜いても翡翠の腹に一時的に穴を開けるくらいで一向に倒れる気配がない。
「なるほどのぅ。
先程おんしが言っていた敗けないけど勝てないとはこういうことか」
「挑戦なら勝てる気がしましたが、全くですね。有効打が入りそうにないですよ」
「因みにおんし、これは全力か?」
「そうですね。
今の全力がこれです。
と言っても水神を吹っ飛ばしたときに大分使ったので七割といったところですね」
「ふむ、ではどうするかのぅ?」
「これなら時間制限付けた方が良かったですかねぇ?」
「じゃのぅ」
普通に会話をしているように見えるがその攻防は激しく未だに打ち合い、有効打を共に与えられずにいる。
しかしギアスロール上、白夜叉に有効打を与えるか翡翠を戦闘不能にしなければ決着は着かない。
かといってわざと負けるのはお互いに誇りが傷つくためしない。
となれば例え勝負が拮抗しようが時間が掛かろうが関係ない。
白夜叉と翡翠は打ち合い、防ぎ、受け、避け、打ち合う。
しかし決着は着かない。
どれくらい経ったかは分からないがあまりにも長い時間打ち合いをした結果、先に集中力の切れた白夜叉が有効打を受けたが、力の落ちた防御を抜いた白夜叉の拳が誤差一秒未満の差で翡翠に当り。
翡翠は霧散した。
「な!?」
「ちょ!?」
「翡翠さん!?」
「ウソ!?」
「は!?」
霧散した翡翠にその場にいた全員が驚愕し、その霧散した場所には縦30㎝程のセルリアンブルーの結晶がカランと音をたてて転がるだけだった。
しかしすぐにそれは人の形に戻り元の翡翠に戻った。
「いやぁ、ごめんなさいね?まさか自分の水を全部使うとは思わなかったから」
「それにしてもびっくりしたわよ。
いきなり消えたから死んじゃったかと思ったじゃない」
「心配した」
「白夜叉様も翡翠さんも無茶しないでくださいよ!
特に!翡翠さんは結晶体になった時は何事かと思いましたよ!」
「おんしのギフトはあの結晶体なのか?」
翡翠が人間に戻り落ち着くと翡翠は質問攻めにあった。
「あの結晶体はわたしの本体。
わたしは白夜叉とクロウサギが知るように精霊の類いで元いた世界では水神と呼ばれていました。」
「で、ですが精霊であるなら神格を持っていると分かる筈です。
何故私には感知出来なかったのでしょうか?」
「それについては分かりませんが、白夜叉」
「ん?なんじゃ?」
「このゲームの勝者ってどっちですか?」
「僅かな差であったがおんしの勝ちじゃ。
いやぁ、久々に楽しいゲームじゃったぞ」
「わたしも数十年振りの闘いで楽しかったですよ」
白夜叉、翡翠共に久しぶりに楽しい闘いが出来たと満足げだった。
その様子と先程の闘い振りに十六夜達は自分達が相手にするものの片鱗と自分達の考えの甘さを実感した。
「では、白夜叉様。
実は今回の以来はギフト鑑定なのですが」
「なに!?鑑定だと!?
諸に専門外なのだが。
あ、いや?
良かろう!私にギフトゲームで勝った褒美と復興の前祝いだ、受けとるが良い。」
そう言って白夜叉が手を叩くと四人其々の手元に十六夜はコバルトブルー、飛鳥はワインレッド、耀はパールエメラルド、翡翠はショックイエローのカードが降りてきてそれぞれカードを手に取る。
「まさか、ギフトカード!?」
ジンがそのカードに驚く。
「なにそれ、お中元?」
「お歳暮?」
「お年玉?」
「おこめ券?」
「違いますよ!」
ジンの発したギフトカードと言う言葉に十六夜達はそれぞれ思い付く身近なもので例える。が、そうではないとクロウサギが否定する。
「顕現しているギフトを収納出来る上に、各々のギフトネームが分かるといった超高価な恩恵です!」
「ふぅん。
じゃあ、俺のはレアケースな訳だ」
ギフトネームが分かると言うクロウサギの言葉に十六夜はレアケースだと呟く。
それに反応した白夜叉は十六夜のギフトカードを横から見るとそこには"正体不明"と書かれていた。
「(アンノウンだと!?
ギフトカード、ラプラスの紙片でも判別出来んとは。
面白いのぅ)」
因みに、飛鳥のカードには威光。耀のカードには生命の目録、ノーフォーマーと書かれていた。
「ところでおんしのギフトも見せてはくれんかのぅ?」
「そうだな、白夜叉とアレだけやったんだからそれはそれは凄いギフトなんだろうな」
「まあ、私達だけが教えるなんていうのは割りに合いませんわね」
「気になる」
どうやら白夜叉との闘いで興味を持たれた翡翠は白夜叉達にカードを見せるように晒す。
そこには白夜叉の言った通り"水神"のギフトが書かれているが他にも"ガウリィル"というギフトを持っていることが分かった。
そこで翡翠はクロウサギが神格を看破出来なかった理由に予想がついた。
「水神は分かるがこのガウリィルってのは何だ?
ガウリィルって言うとガブリエル、ジブリールの別名だろ?」
「天使、という訳では無かろう。仮に天使だったならばその神格で分かる筈だからのぅ」
十六夜と白夜叉の質問に翡翠は素直に答える。
「それについては予想ですが、クロウサギが神格に気付かなかったことも加えて説明します。
まず、水神はそのまま水神。ですが、本来の水神とは違いわたしは人工的な水神であるから恐らくクロウサギには気付かれず白夜叉は気付いた。
と言ったところでしょう。
次にガウリィルはわたしの体内の結晶体。
十六夜が言ったように別名はガブリエル、つまり四大元素の"水"に対応する天使のこと。
もっと言えばあの結晶体自体がわたしの本体のようなものです」
「成る程のぅ。
だからいくらダメージを受けようと本体は無事であったのか」
「まあ、あの結果から知っての通り限度はありますけどね?」
そこまで説明終えると白夜叉はゲーム盤から元の部屋に戻し、十六夜達はクロウサギとジンのコミュニティに行くことにする。
その背中を見ながら白夜叉は魔王の爪痕を見た彼らが何処まで余裕でいられるかと思考する。
クロウサギ一行はコミュニティに着くと十六夜達はその滅ぼされたコミュニティの現状に驚愕する。
飛鳥が木の柵に触るとそれは崩れ、耀は土を触り土が死んでいることに驚く。
十六夜もそこらに落ちている瓦礫の欠片を確かめて何百年前に滅んだのかとクロウサギに問う。
そして驚いたのは三人だけでなく翡翠も驚いていた。
翡翠はかつて、ある事件から数十年掛けてある都市を復旧した。
しかしこの状況はそれを遥かに凌駕しており、まるで何百年も昔に滅んだかのような光景だった。
「魔王とのギフトゲームが行われたのは、僅か三年前のことです」
「そりゃ怪奇的だ。
軽く見積もっても二百年は経過してるんだがな」
「しかし、魔王の力ならば不思議ではありません」
「魔王、か。
ハッ!いいぜいいぜ、いいなおい!
想像以上に面白そうじゃねぇか」
そうして十六夜は打倒魔王を改めて決意する。