Clear Sky   作:K-Matsu

4 / 6
Episode2 卵……、割れてる

オレたちが入学した光南高校の入学式から早くも3日が経った。

 

新入生それぞれが入りたい部活に入部し、活動解禁になるには来週かららしくそれまでは自主練で繋いでいくしかないみたいだ。

 

クラスの方だが、雨宮と翔吾と一緒のクラスで同じ中学出身の奴も何人かいたからひとまず安心だ。

 

何故かコミュニケーション能力が高い翔吾もいるし、雨宮も近い内にクラスメイトたちと馴染めるだろう。

 

「またうろつきながら帰るのか?」

 

「まぁな。これから約3年間過ごすんだからどこに何の店があるのか把握しておかないとだろ?」

 

玄関で内履きから外履きに履き替えながら一緒に教室から出た雨宮と話す。

 

この辺の土地柄をまだよく分かっていないらしい雨宮はどこにどの店があるのか知りたいらしく、最近は歩いて帰っているらしい。

 

初めて会ったトレーニング施設や学校までの道のりは覚えたらしいが、まだそれ以外の場所の位置や経路はまだ一致していないらしい。

 

ちなみに翔吾は放課後になった瞬間、「バッティングセンターで打ち込みするぜ!!」って言って自転車に乗ってさっさとバッティングセンターへ行ってしまった。

 

その元気を少しは寝てばかりいるオリエンテーションとかに回せないものなのか……。

 

「道に迷うなよ」

 

「迷わねーよ」

 

カラカラと笑いながら片手を上げ、イヤホンをつけながら歩いて帰っていった。

 

スポーツ店に行った帰り道が分からなくて電話してきたのはどこのどいつだ、と言いたかったがファンクラブが結成されつつあるあいつの名誉のために黙っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

(さて、こんなもんか)

 

帰りに書店に立ち寄り、これから1年間使う教科書や気になっていた本を買ったりCDショップで好きなアーティストのアルバムCDを買ったりしている内に夕方になっていた。

 

晴れてても春になってても夕方は寒く、少し風も出始めてきているので実際の気温よりも肌寒く感じる。

 

(早く帰って鍋料理でも作ろうかな……)

 

そう思い、家に向かって歩き出した矢先……。

 

__ドンッ!

 

「うおっ!?」

 

「きゃっ……!?」

 

__ドサッ!

 

前から歩いてきた女の人がぶつかってしまい小さい悲鳴と共に、何かを落としてしまった音がした。

 

「大丈夫ですか!?」

 

咄嗟に左手を差し出し、ぶつかってしまった相手を見る。

 

確認してみるとセミロングの髪型で水色のセーターの上に同じ学校の制服を着ており、首元には青いヘッドホンを着けた女子生徒が地面に女の子座りをしていた。

 

その横にはこの女子生徒が持っていたレジ袋が置かれていた。

 

学校指定のネクタイの色を見るとオレが身に付けているネクタイと同じ色をしているということはオレと同い年なのだろう。

 

「……平気」

 

女子生徒はオレの左手を握りながらクールに答え、スカートについた汚れをパッパッと手で払う。

 

その間に足元のレジ袋を掴み、再び差し出した。

 

「ホントにすみませんでした。買い物袋の中身は大丈夫ですか?」

 

「見てみる」

 

女子生徒は袋を受け取るとそのまま中身を見始めた。

 

そしてほどなくして小さくあっ、と声を上げた。

 

「卵……、割れてる」

 

 

 

 

 

 

 

「本当にすまなかった」

 

「いい。わたしも前をよく見てなかったから」

 

割ってしまった卵を新品で買うことで弁償し、その卵はそのままオレが引き取るという形で話はまとまった。

 

そしてオレがぶつかってしまった女子生徒こと上杉 麻希(うえすぎ まき)さん。

 

やはりというかオレと同じ光南高校の1年生で、クラスはなんとオレと同じクラスだった。

 

何でも隣町から引っ越してきて上杉さんの両親曰く『社会勉強の一環として一人暮らししてもいいよ』との事で高校の入学式の1週間前辺りから一人暮らしを始めたらしい。

 

住んでる場所の住所を聞くとオレが住んでる場所から近い事から一緒に帰っているところだ。

 

「ねぇ」

 

「ん?」

 

「学校には慣れた?」

 

「オリエンテーションしかやってないからなんとも。けど、知り合いが何人かいるからクラスには馴染めそうだ。えっと……」

 

「麻希でいい」

 

何て呼ぼうか迷い、言葉を詰まらせていたら以外にも名前呼びでいいとの事だった。

 

相手がそういうのならそうさせてもらおうか。

 

「麻希はどうだ?」

 

「なんとも。あと知らない人たちばっかだから。えっと……」

 

「健太でも何でも呼びやすいように呼んでくれ」

 

「……健太とここで知り合えたから少しずつ馴染めたらいいな」

 

口元を押さえてフフッと控えめに笑い、クールな彼女とのギャップに少しドキッとした。

 

この娘こんな風に笑うんだ、と。

 

「……どうかした?」

 

「いや、何でもない」

 

出来るだけ冷静さを保ちつつ少しだけ歩幅を広め、麻希を追い越してから背中越しに彼女に誤魔化すように話し掛ける。

 

「暗くなる前に早く帰ろうぜ」

 

麻希(あんた)の笑顔に魅入ってました、なんて口が裂けても言えないだろう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぅ」

 

お風呂から上がり、パジャマに着替えてある程度髪を乾かしてから自分の寝室へ戻る。

 

鏡の前に座り、櫛で髪をとかしながら初めて話し掛けられた同じクラスの男の子……健太の事を思い出す。

 

背が高くて目付きが鋭くてどちらかというと女受けするよりも男の人が憧れるようなタイプの人。

 

ぶつかった時はどうしようかと思ったけど、自分の事よりも私の事を優先して心配してくれる思ってたよりも優しかった。

 

一緒に帰ってるときも普段あまり喋らない私でも普通に会話出来た。

 

髪をある程度とかし終えてから櫛を置き、部屋の電気を消してからベッドに潜り込む。

 

……また健太とお話ししたいな。

 

けど、わたしが笑ったとき少しだけ顔が赤かったのは何でなんだろう……?

 

 

 

その答えを知るのはまだ当分先のお話。

 

 




・セミロングの~
分かる人には分かるモデルとなったキャラの特徴。
私はこの子の推しだけども報われてほしいのは妹。


・クールな彼女とのギャップ
クーデレの女の子の笑顔の破壊力



主人公とメインヒロインとの出会いの話でした。

樹と翔吾にはまた別のタイミングで出会わせようと思ってますが、どんなタイプの娘がいいのやら……。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。