悪を砕く自慢の拳   作:ag260

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カズマの名字は中の人から適当に取りました。


カズマ

正月気分も抜け去ったある日、夜の九時を過ぎたころ。

太陽が沈んでいても街は人口の光で明るく照らされ、多くの人々が道を行き来している。

そんな街の中にあるビルの屋上に一人の男がいた。

 

濃い青色と白色を基調としたコートと、後ろに撫で付けつつ一房だけ前に垂れる栗色の髪、そして派手な紫色のサングラスをした男だ。

男は屋上の縁に立ち街並みを見下ろしながら、口を開く。

 

「ん~~~、俺はこう思ってるんです。光は偉大だと!人が元来恐れるはずの闇夜を照らして人々に安心を与える。さらには昼間の作業を夜間も変わらず続けていられる。それは作業時間の延長、期限の短縮、つまり短い期間で新しい商品や作品が次から次に生まれるということ。すなわち光とは速さであり、文化である!そうは思いませんか、オールナイト?」

 

男は口を開いたかと思えば矢継ぎ早に言葉を発し、いつの間にか背後に立っていた筋骨隆々な男性に問いかけた。

 

「何度も言っているがクーガー君、私の名前はオールマイトだよ!…で、こんなところで何をしているんだい?この街は君の活動範囲外のはずだろう?」

「あなたに会いに来たんですよオールナイト。最近、(ヴィラン)に少しきな臭い動きがあるもんでね。それを伝えておこうかと」

「きな臭い動き?」

「まぁ、(ヴィラン)と言うよりかはチンピラみたいな奴らですがね。ここ数週間でそう言う奴らが軒並み路地裏から姿を消してるんですよ」

 

そう言って男、『ストレイト・クーガー』はサングラスを指で持ち上げながら、先ほどとは打って変わって真面目な表情を筋骨隆々の男、『オールマイト』に向ける。

 

「姿を消しているだって?」

「調査で得られた情報だと別の場所に拠点や活動場所を移したとかではなく、文字通り一晩のうちに消え去ったみたいですよ」

「…何者かによる拉致。あるいは組織による(ヴィラン)のスカウトか」

「俺もそう睨んでいます。チンピラたちが居た路地裏に戦闘痕が無かったのでスカウトの線が濃厚かと」

 

クーガーがそう意見を述べると、オールマイトは顎に手をやり眉間にしわを寄せる。

 

「umm。クーガー君、君が直接会いに来て話すほどだ。これが何か大きな事件の前兆だと考えているのだね?」

「ええ。モラルの低いチンピラを多数従えられるカリスマを持つ人物。このヒーロー飽和社会の今だからこそ、抑圧されて燻っている悪意。これらが噛み合ってしまえば…」

「…悪のカリスマか」

 

眉間にしわを寄せるオールマイトの脳裏に数年前に対峙したある一人の人物がよぎる。

 

「今が仲間集めの期間だとすれば、本格的に動くのはもう少し後。つまり四月以降の可能性が高いと考えられます」

「…分かった。私の方からも色々と調査してみよう。他のヒーローたちにもこの話を?」

「いえ、事件としての確証もまだ無いので信頼できる相手にしか話していません」

「そうだね。私も信頼できる人たちにのみ話しておこう」

 

クーガーはそこで話を区切ると、先ほどと同じようにおちゃらけた笑みを浮かべてオールマイトに話しかけた。

 

「ああ、そうだ。四月と言えば、聞きましたよ。来年度から雄英で教鞭をふるうらしいじゃないですか」

「耳が早いね、そうなんだよ。前々から打診されてはいてね。未来のヒーローを導くのも先達の役目だと思って受けたんだよ」

「それは良かった。ちょうど俺の知り合いも来年度に雄英に入るみたいで」

「知り合い?」

「ええ、ジグマール隊長が目をかけてるやつでして。前に引き合わされて以来、ちょくちょく手合わせとかをしてやっているんですよ」

「ほぉ!あのジグマールさんが!」

「まぁ、そこそこ優秀なやつなんで授業を受け持つことがあればビシバシしごいてやってください。それでは!また会いましょうオールナイト!」

 

クーガーはそう言うと、一瞬でその姿を消した。

 

「だから私の名前はオールマイトだよ!って、まったくせっかちなのは変わりないなぁ。その子の名前くらい教えてくれても良いじゃないか」

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「おぉ~い、カッズッマ~いるか~?」

 

夕暮れ時、自動車に乗った17~18歳くらいの少年が古びた一軒家に向かって声を張り上げていた。

 

「あ、君島さん。こんばんわ」

「こんばんわ、かなみちゃん。カズマのやつはいるかい?」

 

青年、『君島邦彦(きみしまくにひこ)』の呼びかけに対して、家から出てきたのは幼い少女、『由詑(ゆた)かなみ』だ。

 

「おっす君島、もう来たのか」

「ようカズマ、今日の仕事は少し早めに行くって前もって言っといたろ?」

「そうだったか?」

「お前ねぇ…」

 

かなみの後ろからあくびを噛み殺しながら出てきたのは、君島と同じ年頃の少年、『保志(ほし)カズマ』。

 

「まあ今更か。ほら、早く乗れよ。さっさと行こうぜ」

「おう。じゃあかなみ、行ってくるぜ!」

「うん。お仕事頑張ってね!」

 

カズマが飛び乗ると君島はエンジンをかけて自動車を走らせた。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

君島が自動車を走らせてからしばらく経ち、辺りも日が完全に落ちて夜中と言える時間になった頃にカズマが今日の仕事について君島に尋ねる。

 

「そういや、今回の仕事って何だよ?」

「カズマ、お前西の地区で活動してるラーダスってチーム知ってるか?」

「ラーダスってヒデキのとこのだろ?ガキばっかが集まったチームだよな?」

「ああ。まあ、チームといても身寄りのない子供が集まって食い扶持を稼いでるって感じなんだがな。そこに他のチームが荒らしをかけて来たんだ。そのチームの頭が結構な『個性』の持ち主らしくてな」

「なるほど、俺は助っ人って訳か」

「そーゆー事」

 

カズマは己の役割を理解してバシッと拳を打ちならす。

 

「まぁ、ヒデキとは知らねぇ仲じゃねぇからな。特別に10で受け持ってやるよ」

「いや、3だ」

 

君島の提示した額にカズマが目を見開いて驚く。

 

「3!?おいおい、値段に開きがありすぎるだろ!?」

「お前が最初からぼり過ぎなんだよ!」

「俺には金がねぇんだ!」

「はぁ!?この前に紹介した仕事の報酬はどうしたんだよ!結構な額だったろ!?」

 

カズマの金欠宣言に君島が驚きの声を上げる。

 

「な、ないものはないんだよ!」

「…お前、またやったのか」

 

カズマの金欠理由に心当たりがあるのか、君島は大きくため息をついた。

 

「う、うるせぇ!それよりもさっさと仕事だ!」

「はいはい。じゃあ、しっかり掴まってろよ!」

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「そぉおら!」

「ぐぁっ!?」

 

深夜、ある廃工場の一角で太った大柄な男が一人の青年を殴りつけていた。

その周りには複数の子供が倒れており、大柄な男の取り巻きがそれを見て笑っている。

 

「く、クソ!」

「おいおい、ま~だやる気かよ」

 

大柄な男はそういうと、足元に転がっていたコンクリートブロックを一息に握りつぶした。

その様子を見て男の取り巻きがワッと沸き立つ。

 

「さっすがビフ君だ!」

「あのパワーの前にはヒーローも怖気づくぜ!」

「これで分かったろ?なに、命まで取りはしねぇよ。お前らは俺に上納金として毎月10万渡すだけで安全にこれからも暮らせるんだ。悪い話じゃないだろ?」

 

ビフと呼ばれた大柄な男は下卑た表情を浮かべながら、殴りつけた青年を見下ろす。

 

「お前の言う額を毎月渡せば俺たちは飯を食うこともできない!俺たちに死ねって言うのか!?」

「そんな事、俺たちが知るかよ!」

 

ビフは大声でそう喚くと青年の肩に拳を振り下ろす。

 

「ぎぁぅ!?」

「金を払わないなら今ここでガキどもと一緒に死ぬだけだぜ?賢い選択がどっちかなんて分かり切ってるだろ?」

 

青年がおそらく折れたであろう肩を押さえながらせめてもの抵抗に険しい視線をビフに向けたその時、何やら遠くの方からこちらに近づいてくる音に気づいた。

 

「な、なんだ?」

「いったい何の音だ?」

「これは…エンジン音?」

 

ビフたちもその音に気づいたのか、きょろきょろと視線を辺りにさまよわせる。

そして、暗かった廃工場の一角がライトで明るく照らされると同時に、それは姿を現した。

 

「ハイハイ、どいたどいた!引かれても知らねぇぞお!」

「う、うわああああぁぁああ!?」

 

近づいてきていたのは、猛スピードを出した自動車だ。

自動車は速度をほとんど落とすことなく廃工場にいた集団に突っ込み、ビフの行為を眺めていた取り巻きたちは悲鳴を上げて逃げ惑った。

 

取り巻きを追い払った自動車は地面にタイヤ痕を着けながらビフと青年の前で停車し、中から二人の少年が下りてきた。

 

「君島ァ!てめぇ運転が荒いんだよ!」

「お前がもっと飛ばせって言ったからだろ!」

「おい!テメェら何者だ!」

「第一、車がボロいんだよ!乗せるんだったらもっといい車用意しろや!」

「乗せてもらってる立場でよく言えるな!?」

「俺を無視するんじゃ――「うるせぇ!」ハグッ!?」

 

言い合いを始めるカズマと君島にビフが詰め寄るが、カズマに振り向きざまの肘鉄を腹部に受け、苦悶の声を上げながら倒れた。

 

「か、カズマ!」

「ようヒデキ」

「遅れちまったみてぇだな。悪かった」

「で、どいつが親玉だ?」

 

カズマは己の獲物を見定めようと、拳を鳴らしながら周りにいる不良たちを見渡す。

すると不良たちは恐る恐ると言った風にカズマの足元を指さした。

 

「…もしかして親玉ってこいつか?」

「あ、ああ」

 

倒れているビフが敵の親玉だと確認すると、カズマは肩を落とし期待外れだという風に溜息をついた。

そんな行為に額に青筋を浮かべたビフが、打たれた腹を押さえながらゆっくりと立ち上がる。

 

「まいった、見事な不意打ちだ。フハハハハハ!」

「ハハハハハハハ!」

「き、貴様が笑うなぁ!」

 

激昂したビフが右腕を振りかぶりカズマ目掛けて振り下ろすが、カズマはその攻撃を身をひねり簡単に回避した。

目標が居なくなりアスファルトの地面に激突した拳は、大きな音を立ててそこに小さなクレーターを作る。

 

「おいあんた。さっさと個性を使いなよ。このまま負けたら後悔するぜ?」

 

カズマの挑発に周りにいた取り巻きたちが騒ぎ出す。

 

「テメェ!ビフ君に向かって!」

「終わりだよお前は!」

「はーい、皆さん!動かない!タイマン勝負ね!」

 

鉄パイプを持った男や個性なのか鋭利な爪を伸ばした男がカズマを囲むために動こうとしたが、君島に袖から出した銃を向けられその動きを止める。

 

「カズマ君。あとで仕返しされないよう徹底的によろしく!」

「分かってるって!」

 

己が戦う場面が整ったことを理解したカズマが獰猛な笑みを浮かべる。

 

「貴様ぁ!今、この俺に個性を使えと言ったな!」

「おう。御託はいいからさっさと使いな。それともそのデカイ腹が異形系の個性か?」

 

ビフはにやりと笑うと、その巨体に見合わない軽快な動きで後ろに跳んだ。

 

「いいだろう!見せてやる!」

「ま、まずい!ビフ君が個性をを使うぞ!?」

「後悔しろ!ウララララアアァァ!!」

 

ビフが雄叫びをあげるとその姿に変化が生じた。

元から大きな身体がさらに膨れ上がって肌も金属のようなものに変質していき、その姿をまるで巨大なロボットのようなものに変えた。

 

変身したビフの姿で何より目を引くのがその右腕だ。

巨大になった身体よりも右腕だけの方が大きいのだ。

右腕は大きさだけでなく見た目も変化しており、指の代わりに鉄の突起がついたそれは巨大なメイスかハンマーのようにも見える。

 

己の個性に絶対の自信を持っているのか、変身が終わったビフは大きな笑い声をあげた。

 

「見ろ!これが俺の個性だ!フハハハハハ!ハンマァァアアァ!!」

「やばい、巻き込まれるぞ!」

「じょ、冗談じゃねぇ!?」

「に、逃げろおおお!」

 

個性を発動したビフを見て周りの取り巻きたちが一斉に逃げ出す。

 

「カズマ、あとはよろしく!ヒデキ、子供たちを連れて離れるぞ!」

「わ、分かった。すまないカズマ」

「おう、任せときな」

 

不良たちに遅れて君島たちも倒れていた子供を連れて避難していく。

 

「さあ!今度はお前の番だ!個性を使ってみろ!」

「焦んなくても見せてやるよ」

 

カズマが右腕を突き出し、拳を固く握りしめると体全体が薄く発光し始めた。

 

「そんでしっかり刻み込みな。俺の自慢の拳を!!」

 

カズマが一喝すると、背中の右肩のあたりに赤い三つの羽のような物ができ、右腕の肩の付け根まで金と赤の装甲を纏う。

 

「ブ、ブハハハハハ!なんだその チンケな個性は!」

「良いからさっさと来いよ。ウスノロ」

「ウ、ウスノロだとぉ!?ぶっ潰してやるぅあああ!」

 

カズマの個性を嘲笑したビフはその返しに激昂し、巨大な右腕をカズマに振り下ろす。

だが、カズマはその攻撃を上に跳んでかわし、振り下ろされたビフの右腕に着地した。

 

「な、なに!?」

 

自身の攻撃を軽々とかわされ目を見開くビフに対し、カズマはニヤリとした笑みを向けた。

 

「こんなもんかよ?もっと楽しませろよ。退屈しちまうだろ、君ぃ」

「馴れ馴れしいんだよっ!」

 

ビフは腕に乗っているカズマを振り払うように大きく腕を振るが、カズマはそれよりも早く腕から飛び降りて難なく着地していた。

 

「ちょこまかとうっとおしいんだよ!」

「おっと!」

「クソッ!!」

 

そのカズマ目掛けて再び腕を振り下ろし、カズマがまたそれをかわす。

そんな行動が巻き戻されたビデオ映像のごとく繰り返される。

 

「おいカズマ!遊んでないでさっさと終わらせろ!」

 

自らは攻撃を仕掛けずにただ攻撃を回避するのみだったカズマに対し、物陰に隠れていた君島が苦言を呈した。

 

「あいよ。まぁ、これ以上待ってても何もなさそうだし頃合いだな」

 

そう言うとカズマはビフが振り下ろした右腕の衝撃で舞っていた煙の中を、右腕を前に突き出した奇妙な格好で走り出した。

 

「チョロチョロとどこに行きやがった!」

「ここだよウスノロ!」

「見つけたっ!」

 

逃げ回っていたカズマが自ら向かってきたのを確認したビフは歓喜の笑みを浮かべて右腕を振りかぶる。

奥の手の一撃なのか、今までとは違い右腕の先端から四つの突起が出現し、それぞれが高速回転を始めた。

 

「行くぜ、衝撃のファーストブリット」

 

カズマがそう呟くと、右腕の前腕の部分が展開して二本の赤い棘のような物が生える。

そして、背中にあった三つの赤い羽の一つが崩壊すると同時に強力な推進力が生まれ、カズマを弾丸のような勢いで押し出した。

 

「ハンマアアァァァアアアア!!」

「オラアアアアアアァァアア!!」

 

雄叫びと同時に互いの右拳が衝突する。

ビフはぐちゃぐちゃに潰れるのは相手の方だと確信した笑みを浮かべるが、直後に自身を襲った激痛にその笑みを歪めた。

ビブが痛みの発生源に目を向けると、そこには血が吹き出して可笑しな方向に折れ曲がった自身の右腕が目に入る。

 

「お、俺の腕があああぁぁ!?」

 

ビフは絶叫とともに痛みで地面に倒れこむ。

ダメージを負ったせいか、個性も解けて姿も元に戻っていた。

 

「ビ、ビフ君が負けた!?」

「そんな馬鹿な!?」

「マジかよ…」

 

自分たちのリーダーであるビフが一撃で倒されたのが信じられないのか、取り巻きの不良たちは呆然としている。

 

「テメェらもこいつみたいにぶっ飛ばされたくなかったら、さっさと消えな。そんで二度とここに手を出すんじゃねぇぞ!」

「ひ、ヒイイイイィィ!?」

 

そんな彼らにカズマがにらみを利かせると、不良たちはビフを連れて一目散に逃げていった。

 

「た、助かったよカズマ…」

「おう、ガキどもは大丈夫か?」

「ああ、幸い大怪我した奴は居ないみたいだ」

「そりゃよかった」

 

不良たちが居なくなり、自身と子供たちの応急処置を終えたヒデキがカズマに話しかけた。

 

「そ、その…報酬の金なんだが。すまない、今はこれだけしか用意できなくて…」

 

申し訳なさそうに言うヒデキの手には数枚の紙幣が握られている。

それはカズマが要求する額よりも明らかに少ないことが一目でわかった。

 

「あぁ?しょうがねぇな。まぁ、今回は特別に―――」

 

そう言うとカズマはヒデキの手から紙幣を一枚だけ取る。

 

「これだけで良いぜ。残りはガキどもの治療費にでも使いな」

「カ、カズマ!」

「もし同じようなやつらに絡まれたらまた呼べよ。まぁ、今度はキッチリ報酬を頂くけどな」

「ああ!ありがとう!」

「良いってことよ」

 

深く頭を下げるヒデキに対し、カズマは背を向けながら片手をあげてニッと笑う。

 

「おーい、カズマ。そろそろ引き上げるぞ」

「あいよ。んじゃ、またなヒデキ!」

「この恩は忘れねぇ!本当にありがとう!」

 

君島のまわしてきた自動車に乗り込み、車内ではカズマが機嫌良さそうな表情で背もたれに体重を預けた。

 

「まったくお前って奴は、金が欲しいとか言ってるのにお人好しなんだから…」

「うっせぇ君島。過ぎたことをグチグチ言うんじゃねえよ」

「ま~たかなみちゃんに怒られても知らねえぞ?」

「ぐっ…」

 

家に帰った後にかなみから文句を言われるのを想像したのか、カズマが苦々しい表情をする。

 

「まぁ、そんなお前だから俺も仕事を持っていけるんだけどな」

「だったら次は割のいい仕事持ってきてくれよ」

「はいはい。カズマはともかく、かなみちゃんにひもじい思いさせるわけにはいかないからな」

「おい!俺はともかくってどういう意味だよ!」

「どういう意味も何も、そのまんまの意味だ―――ってやめろ!運転中に掴みかかるな!?」

 

二人の乗った自動車はふらふら蛇行しつつも、騒がしく静かな夜の道を駆けていく。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「…へぇ。目的の奴とは別だけど中々の掘り出し物だったな」

「彼らもスカウトしますか?」

「ああ。戦力は多いに越したことはない」

「では、そのように」

「待っていろオールマイト。お前を必ず殺してやるぞ…」

 

そんな彼らを見つめる悪意のまなざしに、彼らはまだ気づいていない。

 

 

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