野クル+2日誌   作:ある介

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お待たせしました
タイトル通り、次の釣りキャン計画が動き出すようです


第十五話「おっ?さっそく次の計画立てるんやね?」

 前回の釣りキャンプから数日たったある日、アルバイトを終えたあおいはまっすぐ帰らずに、店の裏側にあるちょっとした休憩スペースに立ち寄り、そこで待ち人に声をかけた。

 

「おまたせ、ごめん待った?」

 

 ちょっとはにかみながら声をかけてきたあおいに、待ち人の方も読んでいた雑誌から顔を上げて、少し照れくさそうに返事をして立ち上がる。

 

「いや、こっちも今来たところだから」

 

「それなら良かった。じゃぁ……行こか」

 

「おう……って、ちょっと待て。なんだこの初々しいカップルみたいな会話は!普段なら『おまたー』『うぃー』で済むだろうが!」

 

 あおいが声をかけた人物……それは先にバイトを終えて出てきていた千明だった。いつもと違うあおいの雰囲気に、思わず自分も流れに乗ってしまったのが恥ずかしかったのか、少し早口でまくし立てた。

 

「いやー、何となくなー。ていうか、あきもノリノリやったやないの。で、どうする?どっかでお茶して帰る?」

 

「はぁ……そうだな。って言ってもいつもんとこくらいしかないんだけど」

 

 と、そんな話をしながら二人は歩き出す。千明が言っているのは、行きつけの喫茶店のことだ。残念ながら近くにコーヒーチェーンやファストフード店が無いこの辺りで、女子高校生でも気軽に入れるという数少ない、軽い感じの喫茶店である。

 

 今日のバイトであったことなど、他愛もない話をしながら歩くことしばし。件の店に着いて席に座り、さっそく好みの飲み物を注文すると、話題は先ほど千明が読んでいた雑誌のことに移った。

 

「そう言えばあき、さっき何読んどったん?」

 

 あおいのそんな質問に、千明はニヤニヤしながら「これよ、これ」とカバンから先ほどの雑誌を取り出した。

 

「『山梨釣り場ガイド』?へぇ、こんなんあるんや」

 

「あぁ、昨日本屋で見つけてさ、思わず買っちまった。管理釣り場から自然の中の釣り場までいろいろ紹介されてて、周辺施設なんかも結構詳しく載ってるからこれで次の計画立てようぜ!」

 

「おっ、さっそく次の計画立てるんやね?まぁ、学校始まったらなかなか行けへんようになるしなぁ。春休みの今のうちにいろいろ行っときたいなぁ」

 

 千明から手渡された雑誌をペラペラとめくりながらそんな風につぶやくあおい。それを見た千明も同じ考えだったのか、腕組みをしながらうんうんと大きく頷いていた。

 

 しばらく雑誌をめくりながらあれやこれやと話していた二人だったが、あおいがその雑誌に掲載されているとある釣り場の記事を目にとめて「あっ」と声を上げた。

 

「さすがイヌ子さんお目が高い。そこはわたしもちょっと目を付けててさ、ほら、ここに書いてあるキャンプ場って……」

 

 あおいが見つけた釣り場情報は千明も気にしていたらしく、周辺情報が乗った地図を指さしながら説明を始めた。それをあおいは「ほうほう」と相槌を打ちながら聞いていたが、ふと目を瞑って何かを考えるような仕草をした後で、ゆっくり目を開けしたり顔で口を開いた。

 

「あき、これは……決まりやな」

 

 

 

 

 そんな小芝居が繰り広げられている頃、別の場所でも同じ雑誌を開いている人物がいた。

 

(今までキャンプしてた時は気にしたことが無かったから気が付かなかったけど、こうしてみるとキャンプ場に併設された釣り場ってもの多いんだな)

 

 平日の昼間ということもあってお客さんがいないことをいいことに、リンは店番もそこそこにカウンターで雑誌に目を向けていた。そして、そのリンが見ている雑誌もまた、偶然にも千明たちが見ていたものと同じだった。

 

「……ません」

 

(へぇ、あのキャンプ場の近くでも釣りができるんだ……っていうか湖の近くにはキャンプ場も大概あるしな……当然っちゃ当然か……さすが山梨)

 

「すいませーん、てんいんさーん」

 

 と、そこでようやく呼ばれていることに気が付いたリンが、慌てて顔を上げて対応を始めた。

 

「わっ、ごめんなさい。いらっしゃい……ませ……って、斉藤か」

 

「まったくリンってば、ちゃんとお仕事しなきゃだめだよー」

 

 さぼっているのを見られたのが幸か不幸か恵那だったことでちょっと安心したリンは、少しぶっきらぼうに恵那に言葉を返す。

 

「何しに来たんでぃ?冷やかしなら帰ぇんな」

 

「むぅ、冷たいなぁ。謎の江戸っ子だし……実は、ちくわの散歩ついでにちょっと寄ってみたんだよね」

 

 そう言って恵那が指を差す先には、街灯に繋がれたちくわがドヤ顔で伏せていた。

 

「相変わらず無防備な奴だ、飼いならされたイヌめ……」

 

「まぁその通りなんだけどね……久しぶりに遠出したから疲れちゃったのかな。チワワに遠出させるのもあんまりよくないって言うけど、ま、これくらいの距離ならね」

 

「あー、それであのやり切った表情なのか」

 

「ねー、かわいいよね……そうだ、リンもそろそろバイト終わるでしょ?そこの公園で休んでるから、一緒に帰らない?」

 

 と、ここで他のお客さんも来たためおしゃべりはおしまい。手を振って店を出ていく恵那を、リンも軽く手を振り見送った。

 

 そして数十分後、恵那が待つ公園へとリンがやって来た。

 

「おつかれー、リン。はい、お茶飲む?」

 

「ん、ありがとう。ちくわは……暇してる感じはないな」

 

「ここへ来たとたん御覧の有り様ですよ。よっこいせ……っと。んじゃ帰りますか」

 

 リンの目の前にはベンチの陰で気持ちよさそうに昼寝をしているちくわの姿。恵那はそんなちくわを抱え上げてリンの隣に並ぶと、二人並んで帰り道を歩き始めた。

 

「そう言えばリン、さっきは店番さぼって何を読んでたの?」

 

「ん?県内の釣り場紹介の雑誌だよ。周辺施設も細かく載ってたからどっかキャンプのついでに行けるところないかなって」

 

 と、そこで恵那の胸元から「わふっ」と鳴き声が聞こえた。どうやらちくわがお目覚めのようで、それに気が付いた恵那も「起きたなら自分で歩きな」とちくわを地面へ降ろしたのだが……。

 

「その態度はもしやおぬし、歩きたくないと申すか」

 

 ……当のちくわはと言えば、地面に座り込んだまま何かを期待するような表情で恵那を見上げていた。

 

「ふはは、がんばりたまえ」

 

「んもう、しょうがないなぁ……っしょっと……で、その雑誌でいいところあったの?」

 

「まあね、いくつかあったよ。とりあえず今考えてるのはここなんだけど……」

 

 そう言ってリンは、スマホに目を付けているというキャンプ場のサイトを表示させて恵那に見せた。

 

「あれ、ここって……」

 

「うん、前にも行った事あるところ。キャンプ場の方は慣れてるし、良いかなって」

 

「そっか、いいんじゃない?ソロじゃないんでしょ?」

 

「まぁこの前なでしこには釘を刺されちまったんで、声をかけるつもりだったけど、どうせなら他の皆にも声かけてみるか」

 

「うんうん、それが良いよ」

 

 やはり前回のキャンプの時に感じたように、恵那にもリンの思惑は見透かされていたようで、確認されてしまった。

 

 もっともリンも、今の恵那にしろ先日のなでしこにしろ、自分のことを心配して言ってくれているのは分かっているので素直にその言葉を受け入れるし、そもそも最近は前以上にグルキャンに対する苦手意識も減ってきていた。

 

 とはいえ、ソロキャン欲求も高まり続けているので、近いうちにいつものソロキャンに行こうとは思っているのだが……。

 

「それじゃぁリン、さっそくグルチャ送ろう」

 

「え、今?後でよくない?」

 

「いやいや、後でとか言ってるとやらないでしょ、リンの場合」

 

 そんなつもりは無かったので図星とまではいかなくても、痛いところを突かれてしまい思わず言葉に詰まってしまうリン。「わかったわかった」とスマホを取り出してアプリを立ち上げたところで、ちょうどメッセージが届いた。

 

 

 

 

【なでしこ:バイト終わったー!疲れたよぅ( ̄▽ ̄;)】

 

【千明:おつー】

 

【あおい:おつかれー】

 

 アプリを開いた瞬間のあまりにタイミングが良い着信に、リンと恵那は思わず顔を見合わせて笑い合いながら、それぞれコメントを入力し始める。

 

【リン:おつかれさま、なでしこ】

 

【恵那:なでしこちゃんもバイトだったんだね、おつかれさま】

 

【なでしこ:おぉぅ、皆の返信が早くてなんだか嬉しい】

 

【なでしこ:実は今日から春の新商品が始まったせいか、忙しかったんだぁ】

 

【なでしこ:(写真)春野菜天ざると(写真)春野菜天丼でございます。いかがですか?お客様】

 

【あおい:うわぁ、おいしそうやなぁ。これは食べたなるわ】

 

【千明:でも、お高いんでしょう?】

 

【なでしこ:天ざるが1280円で天丼が980円だったかな?】

 

【千明:Oh……(◎н◎ )】

 

 なでしこのバイト先の話題でひと盛り上がりしたところで、切りの良いところを見計らってリンがコメントを入力する。

 

【リン:あのさ】

 

【リン:今日雑誌読んでて、次のキャンプに良さそうな所が載ってたんだけど】

 

【千明:さっすがしまリン!というかわたしらも実は考えてた候補地が一か所あるんだよね】

 

【リン:そうなの?じゃぁそっちで】

 

【あおい:いやいや、せっかくやしお互いに出し合おうや】

 

【なでしこ:いいねー、じゃあ『せーの』で見せ合いっこね、私がちょっと時間をおいて『せーの』って言うから書き込んでください!】

 

【リン:メッセでせーのって……まぁいいか。わかった】

 

 そしてメッセージの流れが止まった。千明も今頃入力の準備でもしてるんだろうと思いながら、リンもキャンプ場のサイトURLをコピーして、貼り付ける。

 

【なでしこ:二人ともそろそろ準備は良い?それじゃあいくよー】

 

【なでしこ:せーの!】

 

【千明:(写真)】

 

【リン:http://www.――――――】

 

【恵那:あきちゃんは写真?雑誌の?】

 

【あおい:リンちゃんはキャンプ場のHPかな?】

 

【なでしこ:あー!】

 

【リン:ん?】

 

【千明:ズラァ?】

 

【なでしこ:二人とも同じ所だー、それにここってリンちゃんと初めて会った所じゃない?】

 

【リン:あ、ほんとだ】

 

【千明:だな。ここならしまリンも何度か行ってるって聞いてたし、調べてみたら本栖湖でも釣り出来るみたいだしな。それにここのキャンプ場の事務所で遊漁券も買えるらしいぞ】

 

【リン:理由としては似たような感じだな。慣れた場所だし、落ち着いてできるかなって】

 

【リン:今思い出すと、結構釣りしてる人も多かったような気がする……気にしたことなかったけど】

 

【なでしこ:リンちゃん……でもでも、これで次のキャンプは決まりだね!】

 

【恵那:だね、まさか同じところを考えているとは思わなかったけど】

 

【あおい:せやねー、日時とかの詳細はあとで決めるとして……】

 

【千明:場所は決まり!】

 

【リン:うん、今度のキャンプは……】

 

【なでしこ:本栖湖キャンプ!】

 

 なでしこのそのコメントから楽しそうな彼女の表情を思い浮かべて、それぞれの場所で頬を緩める一同。それと同時に、キャンプ自体は慣れたものだが釣りとなると初めての自然湖ということで、口には出さないが心の中では皆気合を入れているようだった。

 

 すると、そんな風に気持ちを新たにする一同の元に、新たなメッセージが届いた。

 

【なでしこ:本栖湖かー、ふじさん綺麗にみれるといいなー】

 

【千明:……ふじ子……】

 

【なでしこ:(*ノωノ)】

 




一か月も開けてしまって申し訳ありませんでした
次はもう少し早めに更新できるように頑張ります……頑張ります……


というわけで、次回のキャンプは初の自然湖での釣りキャン
とはいえ、場所は本栖湖の『あの』キャンプ場なので手慣れたもんでしょう


お読みいただきありがとうございます
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