野クル+2日誌   作:ある介

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お待たせいたしました、遅くなってすみません

今回は本栖湖キャンプ準備編です
キャンプ当日を目前に控えて、何やら問題発生?


第十六話「ん?んー、もふぉふふぉ」

 いよいよ本栖湖での釣りキャンプを二日後に控えたある日、千明・あおい・恵那の三人はいつものカリブーにやってきていた。

 

「イヌ子ー、消耗品で買わなきゃならんのはこんなもんかね」

 

「かな?恵那はなんかあるー?」

 

「特にないかな……そう言えばあきちゃん、今回燻製は作るの?」

 

「あー、そうだな。前回とは違うウッドに挑戦してみっか」

 

 そう言いながら自家製燻製用品のコーナーへと足を向ける千明と「なににしようかー」などと笑いながらそれについていこうとする恵那。

 

 そして、そんな二人とは対照的にあおいは足を止めてしばらく考え込むと、徐に口を開いた。

 

「なぁなぁ二人とも、今回の移動手段って自転車やんなぁ?そんな荷物の余裕あるんかな……っちゅうかそもそもうちら三人に『本栖みち』を登りきる体力はあるんやろか……荷物積んだ自転車で……」

 

 スクーターのリンや、浜名湖周回で体力もついていて、以前にも一度行った実績があるなでしこに比べて、若干(?)体力に不安がある三人……自分から話題に出したあおいだけではなく、それを聞いた他の二人も固まってしまっていた。

 

「それはどうなんだろうねー、ちょっと自信ないかも」

 

「確かに……てか、身延から本栖湖までどれくらいかかるもんなのかね?なでしこ……はなんか参考にならなそうだし、聞くならしまリンかな」

 

 苦笑い気味にあおいの言葉に反応する恵那を見て、同じく自信なさげな表情の千明がリンに所要時間を聞いてみようと提案した。

 

 

 

 

【恵那:リンー、今バイト中?ちょっと聞きたいことがあるんだけど大丈夫?】

 

【リン:んー?大丈夫きゅーけーちう】

 

【恵那:リンって免許取る前は自転車で本栖湖まで行ってたんだよね?身延からどれくらいかかった?】

 

【リン:あーそっか自転車で行くんだよな】

 

【リン:駅からだと大体3時間ちょいくらいかな】

 

【恵那:3時間……】

 

【リン:おうえんすることしかできないふがいないわたしをゆるしてくれ】

 

【恵那:リン……】

 

 

【恵那:……棒読みの応援ありがとう……】

 

【恵那:まぁがんばってみるかー……休憩中にありがとね、ちゃんとお仕事するんだよ】

 

【リン:うぃー】

 

 

 

 

「……だ、そうですよお二人さん」

 

「っかー!3時間たぁなかなかのもんじゃねぇか、腕が……いや、足が鳴るぜ!」

 

「あき、ほんまにそう思っとるん?」

 

「スミマセン……足が鳴るどころか膝が大爆笑してるのが目に浮かびます……」

 

 恵那とリンのやり取りを横から見ていた二人も、そのハードさに明らかにテンションが下がっていた。そんな重苦しい空気で口を開いたのは先ほどから元気を出していた千明だった。

 

「よし、落ち込んでても始まらない、荷物の軽量化でも考えようぜ!どっかでお茶でもしながらさ!」

 

「あ、それええなぁ。どこ行く?」

 

「そういう事なら近くに美味しいケーキが食べられる喫茶店があるよ」

 

 先ほどまでの悲壮な表情はどこへやら、美味しいケーキというワードに一気に沸き立つ三人の女子高校生がそこにいた。

 

 

 

 

 その頃、とある場所を走る一台の車の中では、各務原姉妹の会話が繰り広げられていた。

 

「そう言えばなでしこ、昨日釣り具の手入れしてたけど、またどっか行くの?」

 

「ん?んー。もふぉふふぉ」

 

「……いいわ、とりあえずそのおやき食べちゃいなさい」

 

 桜の買い物に付き合う形で一緒に出掛けていたなでしこだったが、途中で買ったおやきをもしゃもしゃしながら返事をして呆れられていた。

 

 ちなみになでしこが食べていたのは定番の野沢菜とベーコン・トマトソース・チーズが入ったピザ風のおやき。

 

 例によって車内に匂いが充満する前に、桜によって窓は全開だ。ただ、だいぶ暖かくなってきたこの時期は、爽やかな風が頬に気持ちいい……

 

「あー、おいしかった。あのね、今度は本栖湖行くんだー」

 

「ふーん。前にリンちゃんと会った所?」

 

「そだよー。初めて湖で釣りするんだー、だから慣れてる方が良いかなってみんなで決めたの」

 

「それもそうだな」

 

 という会話をしながら、なでしこはいつの間に取り出したのか、お気に入りのグミをもにゅもにゅしている。これでいて夕飯もしっかりと食べるのだから侮れない。そして桜はというと、そんな妹を一瞬横目で見た後、何を言う訳でもなく黙り込んで何かを考えているようだった。

 

(本栖湖ねぇ……確か本栖みちの途中に美味しいそばが食べられる道の駅があったような……。それかちょっと足を延ばして河口湖畔のカフェでケーキも良いわね。そう言えばチーズケーキで有名なお店があったような……)

 

「ねぇなでしこ、本栖湖は自転車で行くの?」

 

「うん、昨日試しに積んでみたら、何とか釣り具も一緒に積めそうだったし。ちょっと重くなっちゃうけど、あのくらいなら平気平気」

 

 桜の質問に「フンス!」と鼻息荒く気合を入れて返事をするなでしこ。そんな妹の様子にわずかに口元を緩めると、桜は言葉を続けた。

 

「車出すけど」

 

「ほんと!?ありがとうお姉ちゃん!……そうだ!あきちゃん達にも声かけていい?」

 

「いいけど、5人乗りだからな」

 

 桜の言葉を聞いてなでしこは、さっそくいつものメッセージアプリを立ち上げ。

 

 

 

 

 そんな姉妹の会話が繰り広げられているとはつゆ知らず、女子高生三人組は恵那おすすめの喫茶店でケーキに舌鼓を打っていた。

 

「うあー、なんやこのシフォンケーキ、ふわっふわや!」

 

「やばいなこのふわっふわ加減」

 

「ねー、ふわっふわでしょー」

 

 恵那一押しのシフォンケーキを頼んだ三人は、そのふわふわの食感にテンションが上がる。

 

 そして食感だけではなく、味の方もまた格別のようで……

 

「そのままでもうまいけど、ケーキ自体が甘さ控えめなせいか、添えられた苺のコンポートが良く合うな」

 

「せやなー、生クリームもくちどけなめらか、これは家やったら真似できひんで」

 

 自分の進めた店がハマって嬉しい様で、あおいと千明の様子に恵那もまたにこにこしながら、ケーキと紅茶を楽しんでいた……のだが……。

 

「さて、ふたりとも、そろそろ本題に入ろうか」

 

「あー、私らの自転車問題やね」

 

「うぅ、もう少しこのふわっふわの幸せに包まれていたかったズラ」

 

 三人はそれからしばらくうつむいたままひとしきりテンションを下げた後、気を取り直して計画を練り始めた。

 

「とりあえず私は荷物そんなにないから、二人の分も持つよ」

 

「そっか、恵那は着替えくらいだもんな。なら食材とか持ってもらうか?」

 

「今回のご飯係は私とあきやんなぁ?食材あんまり重くないようなメニュー考えてみる?」

 

 あおいがそう言いながらスマホで検索し始めたのを見て、恵那も自分のスマホを取り出す。そんな中千明が「そうだ!」と手を打った。なにか思いついたらしい。

 

「インスタントラーメンってどうよ?カップだとかさばるけど、袋麺なら軽いしそんなにかさばらなくないか?具材を工夫すれば見栄えもするだろうし」

 

「いいかも。それに何かインスタント麺ってキャンプの定番って感じ」

 

「なるほどなー。そしたら、それも一つの案ってことで、乾麺系で他にええのないか調べてみよか」

 

 千明の一言で、どうやら方向性が決まったらしく、それぞれ乾麺を使ったメニューを考え始めると、インスタントラーメンのほかにもうどんやそば、パスタ等のレシピが色々と案としてあげられていく。

 

「へー、ほうとうって乾麺でも作れるんだ……あー、でもあのトロっと感は少なそう」

 

「なでしこちゃんに作ってあげたんだっけ?あきちゃん」

 

「具材も鍋の時みたいに、切れてる豚汁セットが使えそうやなぁ」

 

 それ以外にも……。

 

「あ、これこれ、前にリンが作ったって言ってたやつ」

 

「スープパスタかぁ、ええなぁ」

 

「パスタも荷物的には軽いからな、アリだぜ!」

 

 といった感じで、色々とアイデアが出てくる中で、あおいがとあるレシピを見つけて二人に勧めた。

 

「なぁなぁ、コレってどう?いつもとはちょっと違う感じでええと思うんやけど」

 

「おっ、いいじゃんか。アタシは賛成だな。恵那は?」

 

「んー、パクチー抜きなら」

 

「そう言えば前に言うてたね。ほんなら、こっちはどう?」

 

「あ、これ美味しそう。これにしようよ」

 

 どうやらメニューが決まったらしく、日持ちのするものはこの後買いに行くことになった。

 

 決めることも決まり、なんとかなりそうだということで紅茶のお替りでまったりしていると、三人のスマホが一斉にメッセージの着信を知らせた。

 

 

 

 

【なでしこ:やっほー、三人とも今日は買い物に行ってるんだっけ?】

 

【千明:んだ】

 

【あおい:せやでー】

 

【恵那:うん、なでしこちゃんは今日何してたの?】

 

【なでしこ:今日はお姉ちゃんとドライブしながら甲府までお買い物ー】

 

【なでしこ:おやきうまー(写真)】

 

【千明:出たな、腹ペコなでしこ】

 

【なでしこ:そうだ、こんどの本栖湖キャンプ、お姉ちゃんが車出してくれるってー】

 

【あおい:ほんまに!?】

 

【なでしこ:ほんまほんま。自転車だと大変だろうからってお姉ちゃんが……なでしこならともかく……って、失礼しちゃうよね】

 

【千明:ありがとうございます!ありがとうございます!】

 

【恵那:ありがとー!当日も直接言うけど、お姉さんに『ありがとうございます』って伝えておいて】

 

【なでしこ:今となりにいるけど『いつもなでしこと遊んでくれるお礼だから、気にしないで』ってさ】

 

【千明:ほんとなでしこのお姉さんは優しいし美人だし……羨ましいな】

 

 

 

 

 そんなやり取りをしながら、三人はちょっとした相談事を始めた。

 

「なぁ、あき。なでしこちゃんのお姉さんにいつもお世話になりっぱなしやし、なんかお礼できひんかなぁ?」

 

「そうだねー。お礼の品とか?食べ物とかかなぁ?」

 

「それはワタシもちょっと思ってたんだよね。なでしこに何が好きか聞いてみるか」

 

 

 

 

【千明:そうだなでしこ、お姉さんって食べ物とか何か好きなものある?】

 

【なでしこ:ん?んー、なんだろう。食べ物は好き嫌いなくなんでも食べるしなぁ……】

 

【なでしこ:あ、最近お酒飲んでるよ。この前も甲州ワインがどうとかって言ってたし】

 

【千明:なるほど、お酒……ワインかー】

 

 

 

 

「お酒かぁ……あき!」

 

「おうよ!うちの店長に甲州ワインのおすすめ聞いとくぜ!」

 

 その後しばらくメッセージのやり取りをしてから、買い物に行くことにした三人。結局荷物の心配はなくなったもののせっかく決めたということで、先ほどのメニューをメインにしつつ、ほかのメニューも考えることにした。

 

 ひとまず喫茶店を出て、近くのスーパーマーケット――あおいのバイト先なのだが――に向かう三人。

 

 そんな彼女たちは、今回のキャンプ最大の懸念事項が解決したことで、どことなくテンションが上がり気味で、道中でもいろんなキャンプ飯の話で盛り上がっていた。

 

 とは言え、前回は燻製を成功させて、以前の山中湖雪中キャンプではきりたんぽを手作りし、揚げ物まで作った彼女たちのこと、どうせならと今回もなにやら凝ったものを考えているようだ……。

 




お姉ちゃんが車を出してくれることになりました。よかったね

なでしこ姉がお酒好きというのは
原作の四尾連湖キャンプの時に、管理棟のテラスで紅葉を見ながら
酒が飲みたくなるとつぶやいていたので、好きなんだろうなーと思いまして……

紅葉をみて酒が飲みたくなるなんて、酒好きの思考だと思うのです



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