Love Sprouts! -ラブスプラウツ!-   作:アカツキ☆

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第1話 HEART

ツバメ「やべっ、あと5分で遅刻だ!今日が高校生活1日目だってのに」

 

ツバメ「信号に引っかかんないのを祈るしかねぇな…」

 

オレの名前は坂田ツバメ、高校1年生。

 

オレの爺ちゃん、坂田孔雀は”自称”発明家。オレは小さい頃からよく爺ちゃんが研究に没頭しているトコを見ていた。

 

研究すること自体はオレはすごく好きだ。でも爺ちゃんの研究はいつも変なものばかりで、賞もまともに取ったことがない。

 

でも、だからこそ…オレの将来の夢は発明家になることなんだ。

 

爺ちゃんみたいな”自称”じゃない、周りからも認めてもらえるような凄い発明家に!

 

ツバメ「あっくそ、信号赤かよ…ここからフルで走りゃワンチャン間に合うかな…」

 

トウカ「はぁ、はぁ……」

 

ツバメ「ん?」

 

トウカ「あ…」

 

息を切らしてやってきたコイツの名は、咲林トウカ。

 

トウカは幼稚園の頃からオレん家の隣に住んでいて…えぇと。

 

あまり認めたくないけど…いちおうオレの幼馴染だ。

 

髪は派手なツーサイドアップに、ややつり目気味の大きな瞳。腰に巻かれたピンクの上着は、コイツのギャルな印象を強めてる…気がする。

 

ツバメ「よぉ…お前も遅刻か、まさか高校でも腐れ縁が続くとはな」

 

トウカ「べーっだ!アンタと一緒にしないでよね」

 

ツバメ「いや一緒だろ!ホントお前どこまでオレを毛嫌いすれば気がすむんだよ」

 

トウカ「はぁ、分かんないの?アタシがどれだけ孔雀博士…あんたのお爺さんの研究で酷い目に遭ってきたか、忘れたとは言わせないわよ」

 

ツバメ「いやそれは…」

 

爺ちゃんは自分の研究でなにか実験をするとき、昔からオレやトウカを実験台にしていた。

 

研究内容が変なだけに、オレもトウカも変な事をやらされる事が多くて…。

 

ツバメ「まぁ確かにお前が”隠し事が出来なくなる薬”の実験台にされた時は同情したけどな…あれ中1の頃だっけ?あん時お前、自分のバストやら体重やら…」

 

トウカ「うわぁぁぁぁぁ!!思い出させんじゃないわよ!!///」

 

頭を抱えその場にしゃがみ込むトウカ。

 

トウカ「と・に・か・く!!アタシはそんなやっかいな発明家も、その孫のことも大っ嫌いなの!分かった?」

 

ツバメ「それ、オレは悪くないだろ…」

 

トウカ「アンタだってお爺さんの遺伝子は入ってるでしょ!将来は発明家になるとか言ってるけど、どーせおかしな研究で周りの人に迷惑かけるに決まってるわ」

 

ツバメ「そんな事ねぇよ!オレは爺ちゃんとは違う、誰の迷惑にもならないクリーンな研究をだな!」

 

トウカ「なーにがクリーンよ!そんなの信用できるわけ…

 

キーンコーンカーンコーン

 

ツバメ「……………」

 

トウカ「……………」

 

ツバメ「……そういや爺ちゃん”脚が速くなるギブス”の研究もしてたなぁ昔」

 

トウカ「欲しくなんかないわよ、遅刻したほうがマシよ……」

 

 

 

結局オレとトウカは全校朝礼に遅れて参加し(生活指導の先生にめっちゃ怒られた)、それが終わると次は教室で最初のHRが始まった。

 

トウカ( ………… )

 

ちなみにトウカはオレの隣の席で仏頂面で黒板を見つめている。

 

家だけじゃなくここでも隣かよ…。

 

ツバメ( ったくトウカめ、高校生になって少しは丸くなってるかな〜なんて期待したオレが馬鹿だった。コイツなんにも変わってねぇや )

 

トウカ( …………… )

 

トウカ( はぁ…またやっちゃった。どうしてアタシってツバメに対してキツい言い方しかできないんだろ )

 

トウカ( アタシ、ホントはツバメの事… )

 

教師「はい、今日から皆さんの担任になりました○○です。これから1年、仲良くやりましょう!」

 

担任はどうやら新米教師らしかった。

 

教師「まずは1人ずつ、自己紹介でもしてもらおうかな?」

 

ツバメ( 自己紹介か…大事だよなぁ )

 

ここでヘマせずちゃんとした自己紹介が出来るかどうかで今後の高校生活が決まると言っても過言じゃない。

 

えーと坂田ツバメです、趣味は研究で、将来の夢は発明家……うん、シミュレーションは完璧だ。

 

教師「じゃあいちばん前の貴方から、立って自己紹介お願いね?」

 

???「あ、はい…!」

 

オレの前の席にいた女子が立ち上がった。てことは次はオレの番か。

 

ツバメ( まだ後ろ姿しか見てなかったけど、どんなヤツなんd…… )

 

ツバメ( ……………!!!!)

 

その女子の顔を見た瞬間、オレは衝撃のあまり思考が停止した。

 

たんぽぽ「えっと、風上たんぽぽ…です。趣味はお菓子作りです、それから…えっと…よ、よろしくお願いします!」

 

可愛い。

 

めちゃくちゃ可愛い。

 

茶髪でボブカット、名前の通りタンポポの髪飾りを付けた清楚系美少女。

 

風上たんぽぽに、オレは一目惚れしてしまった。

 

ツバメ( やべぇマジで可愛い…一目惚れってホントにあるんだな… )

 

たんぽぽ「………あの」

 

ツバメ( あー…風上がオレに話しかけてくる幻覚が見える…早くも末期かなオレ )

 

たんぽぽ「……次、貴方の番ですよ…?」

 

ツバメ「………へ?」

 

幻覚じゃなかった。

 

教師「キミはえぇと…坂田くん?1日目から遅刻といい、HR中にボーッとしたり…少したるんでるんじゃないですか?」

 

ツバメ「ぐっ…すいません」

 

ツバメ( この野郎、風上の前で遅刻の事までバラしやがって!チクショウとんだ恥さらしだ… )

 

トウカ( ………………バカ )

 

そして一目惚れによる衝撃で、完璧だったはずのシミュレーションも頭から吹っ飛んでしまいオレの自己紹介は失敗に終わった…。

 

 

 

教師「……ではHRはこれまで、来週から授業となります。忘れ物のないように!解散!」

 

HR終了。

 

学校も今日は始業式だけなので、オレは鞄にプリントやらを詰め帰宅の準備をしていた。

 

トウカはさっそく友達を作ったようで、いわゆる陽キャグループに溶け込んでキャッキャしている。

 

親睦会がどうの、なんて会話が聞こえてきた。

 

ツバメ( アイツ、オレ以外には普通に社交的なんだよなぁ… )

 

でも正直そんなことはどうでもいい、今のオレにはもっと落ち込むべきことがある。

 

ツバメ( はぁ…初日から大恥かいたぜ、風上にカッコ悪ィとこ見せちまったし )

 

ツバメ( でもこのままじゃ終われねーよな )

 

ツバメ「なんとか風上と仲良くなりたいけど、どうしたら…」

 

たんぽぽ「えっ?」

 

ツバメ「ん?」

 

たんぽぽ「えと、今のって……」

 

ツバメ( しまった!!声に出てたぁぁぁぁぁ!!)

 

ツバメ「いや、今のはその……」

 

たんぽぽ「……あはは、ありがとう」

 

ツバメ「え?」

 

たんぽぽ「私と仲良くなりたい、って言ってくれたんだよね?」

 

ツバメ「あ、ああ…」

 

たんぽぽ「私、昔から引っ込み思案でお友達作るの苦手だったから…坂田くんから話しかけてきてくれたのすごく嬉しいんだ、ありがとう♪」

 

坂田くん。

 

うぉぉぉぉ…風上がオレの名前を覚えてくれている!

 

てかオレ、いま風上と会話している!それだけで既に幸せだ!!

 

よし行け!勇気を出すんだオレ!

 

ツバメ「そ、そっか!あああのさ、よかったらオレと…と、友達になってくれないかな?」

 

たんぽぽ「もちろん、これからよろしくね坂田くん!」

 

ツバメ「あぁ!よろしくな風上!」

 

ツバメ( マジか!やった!オイオイいいのかよこんな上手くいって!)

 

その後オレは「部活動の見学に行く」という風上と別れ(なんて名残惜しい!)、ひとり帰路を歩いていた。

 

ツバメ( さっきまで最悪の気分だったのが嘘みたいだな )

 

ツバメ( まさか憧れの風上と初日で友達になれるだなんて、なんか幸せすぎてバチでも当たるんじゃねぇか?)

 

この予感が間違いではない事がのちに判明するのだが、オレはまだ知る由もない。

 

 

 

 

ツバメ「ただいまー」

 

家のドアを開けると、奥からドタバタと足音が近づいてくる。

 

ヤツの足音だ。

 

そしてこの足音が聞こえてくる日は、オレに厄介ごとが降りかかるジンクスがある。

 

なぜなら…。

 

孔雀「おぉ帰ったかツバメ!ちょうどよかった、ちょっとワシの実験に付き合…

 

ツバメ「断る」

 

孔雀「酷い!いたいけな老人の頼みをノータイムで断るなんて!」

 

ツバメ「なーにがいたいけな老人だアホ、また面倒な実験にオレを巻き込む気だろ」

 

孔雀「いや、今回の実験は違う!ツバメ、お前にも必ず益があるはずじゃ」

 

ツバメ「んな言われても爺ちゃんは前科が多すぎて信用できん」

 

孔雀「頼むよ坂田くぅ〜ん、ワシももう長くないんだから余生に付き合ってちょーだいよ〜ん♪」

 

ツバメ「くっ付くな気持ち悪りぃ!あー分かったよ!話だけは聞いてやるから」

 

あと、坂田くんはアンタもだ。

 

孔雀「言ったな?言ったからな?じゃあ後でワシのラボに来てくれ!いいな?」

 

ツバメ「はいはい、分かったよ」

 

孔雀「あーそれと!トウカちゃんも一緒に呼んできてくれるか?」

 

ツバメ「トウカ?あいつも実験台にする気なのか」

 

孔雀「今回の実験台は2人いないとダメなんじゃよ」

 

ツバメ「じゃあトウカ呼ばなくても、オレと爺ちゃんが実験台になればいいんじゃ…」

 

孔雀「んぁ⁉︎何を言っとるんじゃこのバカ孫は、ワシにそっちの趣味はないぞ」

 

ツバメ「は?」

 

いや待てなんだそっちの趣味って!

 

オレにそんな疑いがかかるような要素が今の会話にあったか⁉︎

 

ツバメ「あとさ、もうトウカを実験台に使うのは無理なんじゃないか?」

 

孔雀「なぜじゃ?」

 

ツバメ「アイツ爺ちゃんのこと嫌いだし、頼んでも来てくれるとは思えないけど」

 

孔雀「大丈夫じゃツバメ、トウカちゃんにこう言って呼び出せ」

 

ツバメ「はぁ…」

 

 

 

 

数十分後。

 

オレは約束通り、爺ちゃんのラボに来ていた。

 

トウカを連れて。

 

孔雀「さぁさぁ2人とも、早くこっちへ来るんじゃ!」

 

ツバメ「ちょ、腕引っ張んなって!」

 

トウカ「実験が成功したら、約束通り”アレ”買ってきてくれるんでしょうね、ホントに!」

 

孔雀「あぁホントだとも、男に二言はないぞ」

 

トウカのいう”アレ”とは、駅前の人気スイーツ店で売ってるパフェのことだ。

 

ツバメ( トウカがスイーツ好きなのは知ってるけど、高校生にもなって食い物で釣られるかね… )

 

ホントなんにも成長してねぇなコイツ…。

 

孔雀「さて、それでは今回の実験内容を説明しよう」

 

孔雀「2人は、”他人の気持ちを読み取るチカラ”があったら便利だとは思わないか?」

 

ツバメ「他人の気持ちを…」

 

トウカ「読み取るチカラ…?」

 

孔雀「そう!今回の実験のテーマがそれじゃ」

 

ツバメ「なんでまたそんな研究を?」

 

孔雀「ワシはずっと後悔していたんじゃ…学生時代、好きだった女子と付き合い、念願の初デートをした時…」

 

トウカ( なんか回想はじまった… )

 

『孔雀くんってば、自分の行きたいところばっかり!』

 

『デートで女の子を車屋さんに連れて行くって何なの⁉︎3時間も居座っちゃって…』

 

ツバメ( 何してんだよジジィ… )

 

『少しは私の気持ちも考えてよ、もう知らない!』

 

孔雀「ワシは思うんじゃ!あの時もし彼女の気持ちが分かっていたら、あんな風にフラれることはなかったんじゃないか、彼女をもっと楽しませてあげられたんじゃないかって…!」

 

ツバメ「そりゃかなり極端な例だろ…」

 

ていうか、何十年前の話を後悔してんだよ…。

 

孔雀「そこでワシが発明したのが………その名も”ハートリンク・リング”!」

 

ツバメ「ハートリンク・リング?」

 

トウカ「この設計図に書いてある腕輪のこと?」

 

孔雀「試作品が2つあるからお前たちに1つずつ付けてもらおう」

 

ツバメ「まさか、それ付けるだけでお互いの考えてる事が読み取れるってのか?」

 

孔雀「いや、付けるだけじゃダメじゃ」

 

孔雀「そのリングを付けた者同士が、ある事をしている時でないと読み取れんようになっておる」

 

トウカ「ある事ってなによ」

 

孔雀「手じゃ」

 

トウカ「え?」

 

孔雀「手を繋ぐんじゃ」

 

トウカ「………」

 

ツバメ「………」

 

ツバメ&トウカ「「はぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!?」」

 

孔雀「というワケで、今から2人には…」

 

このリングの効果を確かめるために。

 

今から、明日の朝まで。

 

オレとトウカが手を繋ぎ続けていること。

 

それが、今回の実験内容だった。

 

ツバメ「いやいや待てって!なんでコイツとそんな…!手ェェ⁉︎///」

 

トウカ「そうよ、しかもコイツに頭の中覗かれるワケでしょ⁉︎サイアク絶っっっっ対にイヤなんだけど!///」

 

孔雀「まぁまぁ安心しなさい、常に読み取れるワケじゃないから」

 

爺ちゃんが言うには気持ちを読み取れるタイミングは不定期で、狙ったタイミングで気持ちを読むにはさらに研究が必要らしい。

 

ただ、効果があるかどうかだけは確かめたいとのこと。

 

孔雀「なにも一生やれってワケじゃない、たった半日じゃ!楽勝じゃろ?」

 

トウカ「フンだ!アタシは嫌よ、よりによってコイツと…こんな恥ずかしいことやってられるもんですか!///」

 

トウカ( もしよ?もし仮にアタシの想いがツバメにバレちゃったらどーすんのよ!顔合わせらんないじゃない!)

 

ラボから出て行こうとするトウカ。

 

孔雀「パフェ」

 

トウカ「!!!」

 

孔雀「いらないのかな?」

 

トウカ「〜〜〜〜っ!!!」

 

悩むのかよ!

 

お前どんだけパフェ好きなんだよ。

 

孔雀「というか、もう断ってもムダじゃよ?自分の腕を見なさい」

 

トウカ「へっ?」

 

ツバメ「ん?」

 

トウカ&ツバメ「「あぁーーー!!」」

 

なんとオレの左手首、トウカの右手首に、気づかないうちにリングが付けられていた。

 

トウカ「ちょ…何で!いつの間に付けたのよ⁉︎」

 

ツバメ「あっ…まさか」

 

オレは、ついさっきこのラボに入った時のことを思い出した。

 

……………………………………………

孔雀「さぁさぁ2人とも、早くこっちへ来るんじゃ!」

 

ツバメ「ちょ、腕引っ張んなって!」

………………………………………………

 

 

ツバメ「やられた…!あの腕引かれた時に、こっそり付けられてたんだ!」

 

トウカ「はぁぁ⁉︎博士、ちょっと姑息すぎない⁉︎」

 

くそ、あまり酷い実験だったら断ればいいや、なんて悠長に構えてる場合じゃなかった!

 

ラボに入った時点で、こうなることは確定してたのかよ!

 

てか腕に付けられたんならもっと早く気づけよなオレ…。

 

孔雀「さぁワシがこのスイッチを押せば、いよいよリングが作動する!」

 

トウカ「いやぁぁぁぁ!!やめなさーーーい!!!」

 

ツバメ「いや待てよ?冷静に考えたら手を繋がなきゃいい話じゃねぇか」

 

トウカ「あっ…そ、そうよ!リングが付いてたって、手さえ繋がなきゃ何の被害も…」

 

孔雀「あ、ちょっとでも手を離すとリングに電流が流れる仕様にしておいたからな♪」

 

トウカ&ツバメ「「鬼かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」

 

孔雀「さぁスイッチ入れるぞ!ほらさっさと手ぇ繋いだ繋いだ!」

 

トウカ「わわ、ヤバいって!このままじゃ電流が…!」

 

ツバメ( …こうなりゃ仕方ねぇ!)

 

ツバメ「許せ、トウカ!」

 

ぎゅっ

 

トウカ「あっ…」

 

孔雀「スイッチ、オーーーーーン!!!」

 

オレはとっさにトウカの手を握った。

 

払われるとマズイので、ちょっと強すぎるくらいに。

 

ツバメ「くっ…///」

 

トウカ「あ、あんた何すんのよ…離しなさいよ!///」

 

ツバメ「しょーがねぇだろ…離したらビリビリだぞ…///」

 

トウカ「そうだけど…こんな…いきなり……///」

 

孔雀「ほぅほぅ、青春じゃの〜」

 

トウカ&ツバメ「「何がだ!///」」

 

しかしこの状況、思った以上にやべぇな…

 

コイツの手なんか柔らかいし、スベスベして…

 

普段考えたことなかったけど、トウカもやっぱ女の子なんだな…

 

ツバメ( って何考えてんだオレ!これじゃ変態みたいじゃねーか!)

 

ツバメ( オレには風上という、心に決めた人が!)

 

トウカ「〜〜〜〜!!///」

 

あ、トウカが顔真っ赤にしてうつむいてる。

 

こんな辱めを受けて、怒りに震えてんだろなぁ…。

 

トウカ( コイツの手、結構大きい…意外と男っぽいってゆーか… )

 

トウカ( あったかいし、なんか安心すr………あっ!)

 

トウカ( うわぁぁぁ!///変なコト考えんなアタシ!読み取られたらどーすんのよ!)

 

孔雀「じゃ、明日の朝またココに来るんじゃぞ?お互いの気持ちを読めたタイミングや内容を、データとしてメモしておいてくれ!」

 

ツバメ「こらジジィ!このまま丸投げかよ」

 

孔雀「ばいびー♪」

 

あぁもう何でこんな事に!

 

トウカもさっきからうつむいたままで何もしゃべらねぇし!

 

仕方ねぇ、せめてオレがリードしてやるか…。

 

ツバメ「あー、あのさ?とりあえずココにいても仕方ねぇし、家に戻ろうぜ」

 

トウカ「家ってどっちの家よ…」

 

あ、そうか。

 

手を離せない以上、別々の家には行けないんだ。

 

ツバメ「今日はオレん家にこい、泊めてやるから。お前もこんなの親に見られたくないだろ?」

 

ツバメ「安心しろ、ウチ今日両親出かけてっから誰にも見られねーよ」

 

トウカ「………わかった」

 

意外と素直に聞いてくれた。

 

まぁ状況が状況だしな…。

 

ツバメ「さ、行くぞ?ひとまず気持ちを落ち着けて、それから飯食って、風呂入って………」

 

トウカ「ふふふふ、風呂ぉ⁉︎///」

 

ツバメ「え?……あっ!///」

 

しまった。

 

この状況で風呂に入るってことは…!

 

トウカ「バッ…アンタなに言って…!!いやらしい事考えてんじゃないわよサイッテー!///」

 

ツバメ「いやちげーからな⁉︎///風呂入んのが日課だから、なんとなく言っちまっただけだって!」

 

トウカ「どうだか!あの色ボケしたお爺さんの孫だし!」

 

ツバメ「うっ……」

 

言い返せなかった。

 

ツバメ「辞めよう!言い合ってても仕方ない、今日は風呂はナシだ!」

 

ツバメ「飯を食おう、そして余計な事しないでさっさと寝るぞ!」

 

トウカ「寝るぅ⁉︎この状態で⁉︎」

 

トウカ「バカっ!変態っ!やっぱりいやらしいこと考えてんじゃないのよ!!///」

 

ツバメ「あぁもう!」

 

寝る時の対策は後で考えるとして。

 

オレとトウカにとって、間違いなく人生最大に苦しい夜が始まった…。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

トウカを家にあげたオレは、夕食を用意するためキッチンに向かった。

 

ツバメ「ほら、冷めないウチに食え」

 

トウカ「作り置きのおでん…」

 

ツバメ「文句あるなら食うな、片手塞がってるし料理なんて作れねぇよ」

 

不満気にしつつも、なんだかんだ食べ始めるトウカ。

 

ツバメ( はぁ…コイツと手を繋いだまま半日とか、ホントに大丈夫なのか?これ )

 

意識した瞬間、ずっと繋いでいた手がどんどん汗ばんでくる。

 

ツバメ( け、決して緊張してるわけじゃねぇぞ!これは熱いおでんを食べているせいだ!うん )

 

ふと横を見ると、トウカの箸を持つ手がぎこちなかった。

 

トウカ「あーもう左手だと食べにくい!アンタはいいわよね右手使えて!」

 

繋いでいるのはトウカの右手とオレの左手。

 

そしてオレたちは2人とも右利きだ。

 

つまりトウカだけ、利き手が使えないのだ。

 

ツバメ「食いにくいのは分かるけど、こればっかりはどうしようもないしな…」

 

トウカ「スプーンとかならまだしも、左手で箸はキツすぎるわよ!」

 

まぁ確かに。

 

トウカ「う〜〜…」

 

利き手でも若干つかみにくい、サトイモと格闘するトウカ。

 

ツバメ( このままトウカをほっといてオレだけ利き手で食うのも、なんだか後ろめたいよなぁ… )

 

それなら。

 

ツバメ「おいトウカ、箸貸せ」

 

トウカ「ちょっと、何する気よ…」

 

オレは自由の利く右手を使い、箸でサトイモをつかんだ。

 

ツバメ「ほら、口開けろ」

 

トウカ「え………」

 

トウカ「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!//////」

 

ツバメ「急に大声出すな!近所迷惑だろ!」

 

トウカ「だ、だってアンタそれって……!///」

 

ツバメ「わかってるよ!でも我慢しろって、このまま何も食えないよりはマシだろ」

 

トウカ「うぅぅ…///だってそんな、心の準備が……」

 

なかなか口を開けないトウカ。

 

トウカ( ツバメにあーんしてもらえるなんて何コレ夢⁉︎いや嬉しいけど急展開すぎるよ!)

 

ツバメ( まぁ、嫌いなヤツの手を借りなきゃ飯も食えないなんて状況は確かに屈辱か… )

 

ツバメ「でもちゃんと食え、食事抜くのは体に悪いぞ?」

 

トウカ「い、1食くらい平気よ!アタシいまダイエットしてるし…」

 

ぐぅぅーー。

 

トウカ「はっ!///」

 

ツバメ「腹減ってんじゃねーか。恥ずかしいのは分かるけど、ちゃんと食え」

 

ツバメ「無理に食事抜いて倒れられたりしても困るしな、ほら」

 

トウカ「わかったわよ…食べるから」

 

トウカ「あ、あーん…///」

 

顔を赤くして口を開けるトウカ。

 

恥ずかしさからか、目をぎゅっとつぶっている。

 

ツバメ( ぐっ…///なんかここに来てオレも恥ずかしくなってきた… )

 

えぇいままよ!

 

トウカ「はむっ…」

 

ひとまず、サトイモをトウカの口に入れることができた。

 

トウカ( なんなのよこの辱めはッ……!/// )

 

ちなみにまだ具材はたくさんある。

 

ツバメ( オレが言い出した事だけどこれ、あと何回やればいいんだろうな… )

 

 

 

 

数十分後、苦労のすえ夕食は食べきった。

 

いま、トウカはオレの家に泊まっていく旨を両親に電話している。

 

トウカ「うん、それで勉強合宿的な感じでツバメの家に泊まる事になったから…」

 

トウカ「え?ちょ、違うわよ!そんなんじゃないって!///」

 

ツバメ( なんの話だ?)

 

しかし…オレとトウカが繋がれる元凶になったこのリング。

 

気持ちを読み取れる、とか言ってたけどまだ一度もトウカの考えてることなんか伝わってこねーぞ?

 

爺ちゃんの発明、また失敗作かな?

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

手を繋いだままのオレたち。

 

風呂には当然入れず、何もする事がないのでさっさと寝る事にした。

 

ツバメ「でもさすがに同じ布団で寝るわけにもいかないし…」

 

そこでオレは、和室にトウカの布団、廊下にオレの布団を敷いてふすまを手だけが通る幅に開けた仕切りを作った。

 

あと、手は離れないようにヒモで縛ってある。

 

ツバメ「これなら手を繋いだまま、プライバシーも確保できるだろ」

 

ツバメ「明日の朝までの辛抱だ。頑張ろうぜ、な?」

 

トウカ「う、うん…」

 

トウカは相変わらず赤い顔でそわそわしていた。

 

ツバメ「じゃあ電気消すぞ」

 

トウカ「………」

 

ツバメ「…おやすみ」

 

トウカ「…………」

 

返事なしか。

 

まぁいいや、このまま寝ちゃえば後は朝まで何も問題はねぇよな…。

 

ツバメ「…………」

 

トウカ「…………」

 

ツバメ「…………」

 

トウカ「…………」

 

寝られない!!

 

ダメだ、目ェ閉じるとトウカの手の感触がより鮮明に感じちまう…!!

 

こりゃ最悪オールも覚悟した方が良さそうだな…。

 

((( ………あーもう、こんなの寝られるわけないじゃない!)))

 

へ…?

 

今、トウカの声がした気が…。

 

まるでエコーがかかったような感じの…。

 

((( ご飯も自分で食べられないし、ママには電話で冷やかされるし…とんだ厄日だわ )))

 

間違いなくトウカの声だ!

 

まさかこれって、リングの効果か?

 

ということは今聞こえてるのは、トウカの気持ち…。

 

((( でもねツバメ、悪いことばかりじゃなかったわ )))

 

((( うろたえてたアタシの事、ずっとリードしてくれてたわよね… )))

 

((( ありがとね、ツバメ…… )))

 

トウカ「……………///」

 

ツバメ「………………」

 

意外だった。

 

なんだかんだ文句言いつつも。

 

コイツ、本当はオレに感謝してくれてたんだな。

 

((( あっやば!今はあんまりツバメのこと考えないようにしなきゃ )))

 

ツバメ( え、何でだ?)

 

((( これ以上先のキモチが、万が一あいつにバレちゃったらマズいもん )))

 

ツバメ( これ以上先のキモチ…?何の事だよ )

 

この後、それ以上トウカの気持ちを読み取ることはできなかった。

 

まぁプライバシーに関わる事かもしれないし、それで良かったのかもな。

 

ていうか、今はそれよりも。

 

((( 廊下で寝るの、やっぱ寒ぃ… )))

 

トウカ「!!」

 

トウカ「……………」

 

トウカ「……ねぇアンタ、まだ起きてる?」

 

ツバメ「えっ⁉︎あ、あぁ…起きてるけど」

 

トウカ「………わよ」

 

ツバメ「え、何て?」

 

トウカ「だから!和室で寝てもいいわよ、って言ったの!///」

 

ツバメ「はぁ⁉︎何だよ急に、どういう…」

 

トウカ「いいから布団持ってこっち来なさい!よく考えたら、どうせアンタにアタシの寝込みを襲う甲斐性なんかないし?」

 

ツバメ( それはそれでヘタレ扱いされてて複雑な気分だな… )

 

トウカ「べ、別にアンタに気を許したとか!そういうんじゃないんだからね!///」

 

ツバメ「へーへー、分かってますよ」

 

何だろうな。

 

さっきの感謝の言葉を聞いた後だと、コイツの減らず口が少しだけ微笑ましく感じた。

 

トウカ「ちょっと…なに笑ってんのよ」

 

ツバメ「いや何でも?とにかくサンキュなトウカ」

 

トウカ「ふんだ……」

 

ツバメ「じゃ、おやすみ」

 

トウカ「………………おやすみ」

 

今度は返事をしてくれた。

 

トウカの手を握る力が、緩んだ気がした。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

翌朝。

 

トウカ( 結局…… )

 

ツバメ( 一睡もできなかった……でも実験は無事に終わりだ!)

 

ツバメ「しかし今日は学校がなくてよかったぜ、ヘタすりゃ手繋いだまま登校する事になってたかもしれないし」

 

ツバメ( 何より、風上たんぽぽにトウカと手を繋いでるトコなんて見られたくない!)

 

ツバメ「さ、爺ちゃんトコ行こうぜ。早いとこリングを外してもらおう」

 

トウカ「そうね……」

 

トウカ( これでもう、ツバメと手を繋ぐ理由はなくなっちゃうんだ )

 

トウカ( …ちょっと名残惜しいなぁ )

 

爺ちゃんのラボに行くため、オレとトウカはドアを開けて外に出た。

 

ガチャ

 

たんぽぽ「……え、坂田くん?」

 

ツバメ「………は?」

 

なんと家の前を風上が歩いていた。

 

たんぽぽ「ビックリした…ここ坂田くんのお家だったんだ」

 

ツバメ「な、なんで風上がここに……」

 

あまりにも予想外のシチュに、絞るような声を出すオレ。

 

たんぽぽ「この近くに中学の頃のお友達がいて…昨日の夜はお泊まりしてたんだ、今帰るところだよ」

 

ツバメ「そ、そっかー。ははは…」

 

たんぽぽ「それより坂田くん…と、咲林さん?だっけ」

 

たんぽぽ「えっと…どうして2人が同じ家から、手を繋いで出てきたのかな…?///」

 

赤面する風上。

 

その表情だけで、風上があらぬ誤解をしている事が伝わってきた。

 

ツバメ「いやっ…違うんだ風上!これには深いわけが!」

 

トウカ「そーよ風上さん!アタシたち決してその、そういう関係じゃ…」

 

たんぽぽ「だ、だだだいじょうぶ!私は何も見てないよ!うん!」

 

たんぽぽ「とにかく…お、お邪魔しました〜〜〜〜〜!!//////」

 

ツバメ&トウカ「だから違ぁぁぁぁぁぁう!!!//////」

 

物凄い勢いで走り去っていく風上。

 

こうして、オレとトウカの関係は風上から完全に誤解されてしまった。

 

ツバメ「あーもう!なんでこんな事になるんだぁぁ!!」

 

トウカ「知らないわよ!アンタがちゃんと説明しないのが悪いんでしょー⁉︎」

 

ツバメ「したわ!それでも信じてもらえなかったんだからしゃーないだろうが!」

 

ツバメ&トウカ「「ぐぬぬぬ〜〜!!」」

 

ツバメ「はぁ…言い合ってても仕方ねぇし、早くラボ行ってこのリング取ってもらおうぜ」

 

トウカ「あっ……」

 

トウカ「………っ!」

 

ぎゅっ

 

ツバメ「え…?」

 

急ぐオレを引き止めるように、トウカが手を引いてきた。

 

ツバメ「な、なんだよ」

 

トウカ「その…ね?このリング、まだ外さなくてもいいんじゃないかな〜なんて…」

 

ツバメ「は⁉︎何を言って…」

 

トウカ「ほら、今回の実験ってリングでお互いの気持ちが読み取れるかどうか…を調べるのが目的でしょ?」

 

トウカ「半日たつけどまだ全然、アンタの気持ち読み取れた感じしないし…もう少しだけ様子、見てみない?///」

 

ツバメ「なっ…///」

 

このリングのせいで、風上からは関係を誤解されたばかり。

 

立場的に言うと、ここは断るべきなのかもしれないけど。

 

ツバメ「………か、勝手にすればいいんじゃねーの?///」

 

トウカ「え…」

 

ツバメ「長い時間データ取ってやったほうが、爺ちゃんも喜ぶだろうしな…」

 

トウカ「………!!」

 

トウカ「分かった…じゃあもうちょっと付けてましょ///」

 

ツバメ「………おう///」

 

そういえばオレたちがまだ幼稚園児だったころは。

 

まだトウカがオレにキツく当たったりしていなかったころは。

 

こうして2人で手を繋いで、公園に遊びに行ったりしてたっけ。

 

そう考えるとこの手の感触が、なんだか懐かしいものに思えてきて……。

 

ツバメ「……………」

 

トウカ「………ツバメ?」

 

ツバメ「……いや何でもねぇ、それより飯食おうぜ飯!」

 

トウカ「まさかまた作り置き〜?」

 

ツバメ「うっせ、贅沢言ってんじゃねーよ」

 

このままじゃ生活は不便だし。

 

爺ちゃんに冷やかされるかもしれないし。

 

風上の誤解は解かなきゃいけないし。

 

心配ごとは色々あるけれど。

 

今だけはこうして、手を繋いでいよう___

 

 

【おわり】

 

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