生きる時間   作:滝翔

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特別授業十時間目 磨兒子と徒花の時間 苦情

「君がちゃんとレシートを持っていて助かったよ あいつらと共犯扱いせずに済んだ

しかしなぜあの場に君はいたんだね?」

 

「それは…… 絡まれていたんです! それで正当防衛で」

 

「…………やっつけたのか すごいな?! 警察には君は無関係 むしろ巻き込まれた被害者だと伝えておくよ」

 

「ありがとうございます」

 

そのまま私は店を後にした しかし心はすっきりしていない

 

 

ーー此乃葉の鞄に詰められていた あの……

 

 

考えたくなかった そうであって欲しくないと 家に帰っても眠れない

明日彼女にちゃんと聞いてみようと私は決心する

 

翌日の放課後

私は此乃葉を屋上に呼んだ 

不思議と彼女は来てくれた 本来ならそれが当たり前だと思いたいのだが

 

「用って何?」

 

「っ………… 昨日の事なんだけどさ」

 

久しぶりに会話ができた 嬉しいと感じたい筈なのに

 

「昨日の鞄に入ってた物…… どうしたの?」

 

「…………買ったんだから食べたに決まってるじゃん」

 

「っ……… はっきり言うよ 盗んだんじゃないの?」

 

「………酷いね義子 友達を疑うなんて」

 

「…………」

 

 

ーー此乃葉って意外に不器用だったんだ

 

 

「ここに来て友達発言 状況が違ってたら嬉しかったのになぁ………

聞くけどたまたま不良達に絡まれてたまたま双方の鞄が物でギッシリなんて状況そうそう無いよね?」

 

「そのたまたまだったどうすんのよ? 私が結構お菓子を食べることなんて義子でも知っているでしょ?」

 

「じゃぁなんで私が声をかけたとき 友達を見る目じゃなかったの? 助けを求める顔じゃなかったのよ!」

 

「……………」

 

此乃葉はほくそ笑んだ

 

 

「やっと私のこと考えてくれる義子に出会えた」

 

 

「何よそれ…… 周りが見えていないとかさ…… 此乃葉のことならいつも考えてるよ!! 友達だもん!!」

 

必死に訴える義子の下にとある本が投げ出された

 

「…………少年ジャンプ」

 

「私には目を覆いたくなるやつだから義子にあげる」

 

「え………」

 

「私さ 入学式のときから何食わぬ顔で義子の隣にいたけど実は落ちてたんだよね

枠が一つ…… いや二三個くらい空いたからギリギリ入れただけなんだ」

 

「……なんで なんで言ってくれなかったの?」

 

「当たり前じゃん だってアンタに見下されるのが死ぬほど嫌だったんだから

クラスにも馴染めなかった 私がいなきゃ何もできなかった義子にナメられたくなかった」

 

「…………」

 

ただただ呆然と聞いている義子 ドッキリだったら今にでも言って欲しい

 

「アンタは良いよね 単純だから

そんな漫画ごときで勉強もできて 絵も上達して 空手まで覚えてさ」

 

「それは…… 此乃葉のおかげで……」

 

「私がどんな気持ちだったか知ってた?!!

そんな本でどうにかなるほど世の中甘くないんだよ普通は!!

一年に義子以外のどの生徒にも遅れを取った 部活もままらない

きっとは私はあの〝エンドのE組〟に行くことになるなんて日が目に見えてる あなたにこの絶望がわかるの?

わからないわよね?!」

 

「そんなことないよ! 私も勉強教えるから!!」

 

「それが敗北なのよ! 昨日の事だって…… 漫画の主人公ごっこしてんじゃないよ そういうの偽善って言うんだよ?!

やって駄目だったときどうせ見捨てるんでしょ?! ここの教師達にみたいに…… 私の家族みたいにさぁ!!!」

 

「?!!」

 

初めて泣いてる彼女を見た

振り返ると私が彼女に相談したことはあったけど 彼女が私に相談して来ることはなかった

プライベートではいつも遊びの話しかしない 当然それが今までの日常だったのだから

それはいつの間にか此乃葉にとって嫌味に捉えられてしまっていたのだろう

 

本音を打ち明けられた私はもう何も言えなかった

扉の方へと去って行く彼女を呼び止めることができなかった

 

「万引きの主犯は私だよ」

 

「え……?」

 

 

〝 ちょろいぜ…… まったくよぉ…… 〟

 

〝 ホントホント…… しっかし徒花の作戦はいつもぶっ飛んでやがる まさか一度にこんなに万引きが出来るとはよう…… 〟

 

〝 別に…… 監視カメラの位置から映せない死角を教えただけでしょ

店員も面倒臭い態度の奴が多いから 場を動く数名を注意すればどのタイミングで盗めるかわかるし

………楽勝よ 〟

 

 

「ねぇ…… 義子には私どう映っていた?

心が強いジャンプのヒーローと重ねてたりしてた? ………ごめんね

私はそんなに強くないよ

もう私に関わらないでね 私なりに高校生活を楽しむから」

 

扉を閉められてもはっきりしない自分

辺りが暗くなって初めて帰ろうと口にした

 

二年の一学期の期末テストが終わり椚ヶ丘中学は夏休みに入った

自分のことを蔑んでるよとまで言われた此乃葉とは連絡を取る気にもなれず

休み中は勉強するか一人で遊ぶかに限られていた

 

万引きのことは誰にも言わなかった

これが正解なのかどうとか 今の私にはどうでもよくなった

街の方へ一人で出向くと必ず多人数の若者が自分を横切る

本来なら此乃葉とああいうことをしてたかもしれないと思うと何も考えたくなくなっていた

 

けして短くない夏休み それが地獄だった

友人は今何をしているんだろう そればかりを考えるも家から出ようとしない まるで出口が開いた檻の中にいるよう

 

頼る相手もいない

小学校で仲の良い相手は常に此乃葉だったから 此乃葉がいたから私の周りにも人が居た

だけど今となっては

 

ベッドの上で寝る前は必ず嫌悪してしまう 此乃葉の会話に出てきた友達に言わないような台詞が再生されてしまう

 

〝 クラスにも馴染めなかった 私がいなきゃ何もできなかった義子にナメられたくなかった 〟

 

〝 あなたにこの絶望がわかるの? わからないわよね?! 〟

 

〝 もう私に関わらないでね 私なりに高校生活を楽しむから 〟

 

窓に映る夜空と自分の顔を照らし合わせると月が泣いていた

 

そんなことを繰り返す私は

 

 

 

 

新学期には学校へ来なくなっていた

 

 

 

 

〝  自分が聞いてきた どうなりたいのか? 

 

   …………もうどうでもいい      〟

 

 

 

 

 

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