翌朝 制服に着替えた義子は再度鏡の前で自分の姿をジッと見つめる
「もう逃げないぞ……」
って言うと脳裏に浮かぶのは徒花此乃葉
首を横に振って今は思い出さないように 勢いよく階段を駆け下りる
「おはよう!」
「おはよう義子 今日は学校に行くの?」
「………」
自分の娘を諦めてくれていない母親の存在に義子の台所へ入る一歩は楽だった
「はいこれお弁当!!」
「…………ありがとう!」
いつも受け取っていたお弁当が 今日に限って貰うという言語に変換される
家を飛び出し 電車に乗ると次の駅で潮田渚と出会う
「おはよう! 義子さん!」
「おはよっ!」
休日の事で盛り上がる二人
義子にとって久しぶりの中学生らしさを自身に感じ取っていた
しかし次の駅で
「おはよう 渚君!」
「あっ…… 業君!! おはよう」
ーーこいつって確か
「あれぇ? 磨兒子さんじゃ~ん」
義子の回想
ゲーセンでこいつにとっても嫌なことを言われた 以上
「何々ぃ? 今日は登校するんだぁ 大丈夫ぅ?」
「ちょっと業君!」
「…………私もE組の生徒なんだけど 登校しちゃ駄目?」
朝に逃げないと決心した今の義子に 敵はいない 筈
「でもさぁ…… 皆期末テスト控えてて教室ん中殺伐としているよぉ? この前みたいなことやってまた変な空気作っちゃうかもよ~?」
「あ…… あのときは素直に悪かったわよ でも私も勉強しに行くんだから学年上位の赤羽さんには迷惑掛からないと思いますけど?」
「テスト期間の暗殺は二の次だからさぁ 磨兒子さんだけが暗殺に集中できるかもね~~ ねぇ渚君!!」
「私達今度の休日 一緒に殺せんせー倒そうって予定入れ合ったんだから
私だけが集中するわけでもないんだよね~~ ねぇ渚!!」
「えっ…… えと………」
渚を真ん中に互いの目に電撃が迸る
「へぇ…… 呼び捨てできるくらい仲良くなったんだ~」
「休日いろいろありまして親睦を深める機会があったんですよ~~」
電撃が宙を舞い スマホを見ている大学生や新聞を読んでいるサラリーマンを巻き込み 一気に場が重く沈む
そうこうしている内に椚ヶ丘中学校がある駅に着いた
「じゃぁ渚君 俺は今日一人で学校に行くから」
「あっ…… うん」
そう言って業は一足先に駅のホームを出て行った
「大丈夫? 義子さん」
「こ…… 怖かったぁ…… 私あの人苦手」
「うん…… 業君は少し特殊だから」
少し控えめな面持ちで山道を歩く義子は なんとか渚に引っ張られてグランドが見える場所まで着いた
「おっはよぅ 渚! あれ? 磨兒子さんどうした?」
「うぅん…… 何でもない」
「ちょっと電車の中で業君と会ってね……」
「あちゃ~~ それはついてないな……」
杉野と合流し 三人で教室に入ると業がこっちをニヤニヤと見ていた
「っ………!」
「義子ちゃんおはよう!」
「神崎さん!」
ついつい神崎の後ろに隠れる義子
「どうしたの?」
「いやぁちょっとね!」
チャイムと共に全員が席に着き 殺せんせーが入ってくる
「皆さんおはようございます! 全員出席は気持ちがいいですねぇ」
すぐに殺せんせーは義子の席の前に移動し 一枚のプリントを配布する
「これって……」
「磨兒子さんが初めて登校してきたときに言った 補習授業の予定表です
勉学の遅れた分の時間は授業以外で取り戻さなければなりません
ですので放課後 一緒に残って挽回しましょう」
「………分かりました」
「ヌルっフッフッフ! ではホームルームはこれで終了です 授業の準備の為に教材を取ってきます」
胸の内が楽になる
ーー赤羽がなんだ…… 私は変わるんだ!
昼ご飯を食べ終えたお昼休み
休日に集まったメンバーが合体した机を中心に集まる
「じゃぁさっそく義子ちゃんの意見を聞かせて!」
「わ…… わかりました」
一人立ち上がり視線が集中する中 目を泳がせながら義子は口を開いた
「こ…… ここ…… このたびゅいは… 集まマっていたタタタタだいて!」
「落ち着いて義子ちゃん!」
不破が必死にフォローする
深呼吸と共に義子は慣れを 話している中で掴んでいき
ある程度の作戦を伝えることができた
「〝磨兒子さんが一人で白兵戦に持ち込んでの私達で総攻撃〟かぁ…… 進んで囮になるってこと?」
「全体的に言ってそうだね でも暗殺ってよりは殺せんせーとサシで闘いたいなって気持ちがあるんだ 暗殺の経験もまだ無いしね」
「確かにそうだけどさ……」
「素直な暗殺して失敗した奴は結構いるぜ 磨兒子さんよぉ!」
寺坂がチラッと見た方向には赤面する科学大好き奥田さんがいた
「一応王道としては真っ向勝負したいんだよねぇ…… 暗殺するタイプじゃないんだよ私
だから隙を作るだけ作って トドメを皆にお願いしたいんだよね!」
「でも準備もかかるし…… トドメに最適な人材はこの中じゃ渚以外役不足だから まだまだ人手は必要だね」
「E組の即戦力は誰なの?」
「女子は岡野さんと片岡さんだね 男子は前原と磯貝 あと業
遠距離からの狙撃に長けているのは早見さんと千葉かなぁ?」
「赤羽……」
義子は恐る恐る奥の席に座る業を見る
「まぁ… あいつは戦力だよなぁ…」
「うっ……」
義子は嫌そうな顔をしつつも 決心して赤羽業の方へと足を引きずる
「磨兒子さん?」
渚達が心配する中 義子は席に座る業の前に立った
「殺せんせーを殺す作戦があるんだけど赤羽さん…… 手ぇ貸してくれない?」
顎を上げて見下す業がそこにいた