「義子おはよ!!」
「おはよう」
古木の匂いがする下駄箱が並ぶ朝
登校してきた義子に声を掛ける同級生
あれから3ヶ月
田舎の中学へと転校した義子は 三学期を迎えた頃には今の同級生と馴染むことが出来ていた
「磨兒子さん…… 今から相談室へ来て下さい」
担任の先生に呼ばられて後を付いていく義子
おそらく留学の話だろうと踏んで歩いて行く彼女は落ち着いていた
「来年のことなんですが」
「はい…… 留年のことですよね?」
「いえ…… 特別に高校への受験を許可されたので そのお話を」
「え?!」
「とても異例ですが 義子さんの元いた椚ヶ丘中学校の浅野理事長から教育委員会に一報があったようです」
「え……」
「〝成績も申し分なければ 留年の原因は私し共教員に非がある〟とのことでした
三学期のこちらでの中間テストの成績は上位に位置してますので県内の上の高校への受験も可能ですが?」
ーー…………どうなってるの?
今では知り得ようのない冷酷理事長の行動にモヤモヤを隠せない義子
授業中も そして帰りの雪道をズボズボ歩いて行く中
変に見覚えのある黄色い雪だるまが田んぼの広がるど真ん中に存在していた
ーーえぇ……
おそるおそる近づく義子
その正体がハッキリわかる頃には
「にゅやぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「…………殺せんせー!! 久しぶり!!」
「やっと見つけましたよ磨兒子さん!!
おうちに寄ってもあなたのお婆さんから烏間先生の変装を見破られるが如く邪険に扱われましてね」
「……そんな格好で何しに来たの?」
「それはもちろん磨兒子さんの近況を確かめに来たんですよ
LINEは一回したんですけどね!! 立て続けに送るのはさすがに教師として越えてはならないと思いましてね!!」
「あぁ…… そういえば飛行機に乗った次の日から近況報告を求めてきましたね
あの時はバタバタしてたから返せなかったんでしたね」
「ニュヤ!! そこは何日遅れでもいいから送って欲しかったですぅ!!」
とりあえず義子は殺せんせーをなだめてから
近くのストーブが効いてる駄菓子屋へと暖を取りに行った
「悪いねおばちゃん!! ちょっとだけ囲炉裏場を借ります」
「構わねぇ!! 今じゃぁあの〝せぶんいれぶん〟っちゅう店もくつろげる場所あるって聞くべぇ?
うちも潰れねぇように都会もんのマネするがらねぇ!!」
奥から煎餅とお茶を取ってくる腰の低い駄菓子屋のお婆ちゃんがいなくなったところで
楽にする二人の内 会話を切り出したのは義子からだった
「ここ創業百年なんだって」
「ほぉ…… それはすごいですね 何代にも継いで来られたんですか?」
「いいや二代らしいよ? お父さんから始めたこの店をコンビニに負けないよう必死にやりくりしてるらしいよ」
「そうなんですか…… ニュ~~~
それにしても田舎という場所は不思議です マッハの私ですらもゆったりしてしまいます」
「今なら余裕で殺せるね!! 暗殺教室さえ卒業してなければな~~」
「ヌルフフフフ…… 私の弱点の一つが田舎とは考えもしませんでしたよ ここに来るまでは」
「ずっといると退屈する場所だから期間限定の弱点かもね!!」
久々に二人で笑い合えることに義子はどこか喜んでいる
奥から甘い煎餅〝冬の宿〟を持ってきたお婆ちゃんも久しぶりの賑やかなお客に喜んでいる
「名前にそぐわないエンドのE組はどうですか?」
「………それがですね」
シュレッダーのように頬張っていた殺せんせーの口が止まり
特に表情が変わるわけでもない顔から少し深刻なオーラを感じ取った義子
「実はE組の生徒達に私が人間だった頃の話をしました」
「えっ……」
「それは私が今の姿になるまでのお話です……… 磨兒子さんも聞きますか?」
「……先生って人間だったの? 宇宙人じゃないの?」
「そこから?!!!」
「えぇ…… なんかワクワクしてたものが
「にゅ~~……」
なんとも言えない顔の殺せんせーはお茶をすする
「でも私は…… 殺せんせーの前世なんてどうでもいいかな」
「前世ではありません」
「私は暗殺教室から離れたんだし
もし聞いてしまったら必死に先生を殺そうとしていているE組の皆に失礼だよ」
「……そうですか」
「あれ? もしかして聞いて欲しかった?」
「べっ… 別にぃ! どうしても聞きたかったら教えてあげてもいいんだからね!!」
「ハハハ…………」
駄菓子屋のお婆ちゃんに挨拶してお店を出る二人は
義子の家までの道のりを歩いて別れることにした
「前から聞きたかったんだけどさぁ 殺せんせーって生徒から殺されたいと思ってるの?」
「とんでもない 今のE組の生徒を卒業させたら…… そうですね~~
船旅で世界一周でもしますかね~~」
「…………そうなんだ でもあと三ヶ月の内に自分が死んでもおかしくないって腹くくってるように見えるけど」
「……私が磨兒子さんに抱いていたことがあります」
殺せんせーは立ち止まった
気付かず歩き続ける義子に放った言葉は
「あなたは私と似てます とても大事な部分でね」
「えぇ? 私と先生の間で似てる所なんか無いよ!!
だって私の顔は黄色じゃないし!! 触手無いし!!」
「そこじゃありません!!!!」