雪壁の隙間に小道を発見する二人
足がぬかるむ雪路を競争していた義子と殺せんせーは義子の自宅の前で止まった
「にゅや~~ やはり今の時期の道は私にとって地獄道だったようです」
それもその筈 殺せんせーは裸足(?)なのだから
小道を進めば年季の入った木造住宅が出迎えてくれる
屋根で雪を下ろしていたスコップを持ったお婆さんが声を掛けた
「おぉ! お帰り義子ぉ!」
「ただいまお婆ちゃん!!」
「隣にいる黄色いタコはおめぇの知り合いか~~!!」
「そうだよ~~」
「余計なもん拾ってくんなよ~~!!」
「だいじょ~~ぶ~~!!」
「にゅ~ お婆さんは私を何だと思っているんですかね~?」
庭の方へ向かうとなんと白い和服姿の少女が出迎えてくれた
「あらお帰りなさい義子ちゃん!!」
「ただいま雪女さん!!」
「ニュヤッ!! ああ…… あなたは?!」
廊下から戸を開けて冷たいお茶を飲んでいる名前から妖しい彼女
「知り合いだったの殺せんせー?」
「えぇ…… 奴良組の方ですよね?」
「はい!! こっちに帰省していたんですけど 何故か義子ちゃんに発見されて仲良くなりまして~」
ニコリと笑う雪女の下に別の妖怪が現れた
「大変です雪女様!! 百物語組という勢力が影を見せています!!」
「えぇ!! すみませんが義子ちゃん!! すぐに帰らなければならなくなったので失礼します!!
リクオ様ぁぁぁぁ~~~~~~!!!!」
出会い頭の嵐に圧倒される義子と殺せんせーは
冬の季節だというのに外で呆然とさせられていた
「まさか別作品の人物に会えるとは思いませんでしたよ……
それより磨兒子さんは何も思わなかったんですか?」
「殺せんせーという謎の超生物がそれ言うのおかしくない?」
しばらくコタツで温まる殺せんせーに ホットコーヒーを淹れる義子がテーブルの上のカップに注いだ
「そういえば聞きたいことがあったの殺せんせー
なんか知らないけど浅野理事長のお陰で受験受けられました」
「にゅ~~ あの人も変わりましたからね~~」
「……あの支配者が変わったの?!」
「えぇ…… 理事長も私に似て立派な教育バカですからね
過去に何があったのか分かりませんが教育理念をねじ曲げる程の失敗が彼を変えてしまっていたんです
期末テストでE組が全員学年50位以内を勝ち取り 私とのサシで決闘した話もしましょうか?」
「相変わらずイベントが尽きませんな~~」
親が帰ってくる夕方には話も一段落に落ち着き
殺せんせーは外に出て帰る準備をしていた
「楽しかったよ殺せんせー たまにで良いからまた来てよ」
「……状況に応じてですかね
暗殺教室の行く先々で柔軟に仕事を終えたらまた来ます」
「……濁してるけど またひょっこり現れるんでしょ?」
「そう願いたいです
ですがご存じの通り私は暗殺教室の担任です
生徒達の暗殺対象はこの私
学んで苦しんで 任務を完遂し私を殺した暁には
小さな命を摘み取る彼等は命の尊さを知り 胸を張ってあの教室を卒業出来るのですから」
「…………」
ーー何でなんだろうな……
背中を向ける殺せんせーに抱きつく義子はありったけの思いをぶつけた
「生きてよ殺せんせー…… 何で死ぬことが望みなの? 昔たくさんの人を殺したから?」
「……」
「雪村先生が望んでいたことじゃないよね? ねぇなんで?!」
締め付ける義子の両腕は強くなる
そんな義子を殺せんせーは笑顔で振り返った
「ありがとう磨兒子さん…… あなたも立派なE組の生徒です
しかし暗殺を通して繋がれる絆が教師と生徒の間で繋がれた唯一の糸なのです
銃とナイフを身近に感じる様な場所で生まれた特別な時間が我々の青春と言ってみますかね?」
「それがおかしいよ!! 別に死ななくていいじゃん!! 私がおかしいの?!!」
「いいえ…… あなたの意見は正しいです 人間としてとても素晴らしいと思います
実は今クラスでも私を殺すか殺さないかで迷っている段階でしてね」
殺せんせーが話している途中で彼は触手で感じた
冬の冷たさに似合わぬ温かい涙が浸透していることに
「また元気に会いに来てくれるって約束して下さい お願いします!!」
「磨兒子さん……」
「先生と出会った期間なんてたった一ヶ月だったよ?
だけどいなくなったら悲しくなるのは当たり前のことなんだよね!!
そんなの嫌だよ!!」
ーーあぁそうか……
「困りましたね~~」
ーー私は誰かを助けたい人間だったんだっけ
ーーこれがあなたの一番の刃なんですね
殺せんせーは義子の身体を触手でくるませ
先っぽで彼女の頭を優しく撫でた
「私は今 あなたに救われました」
「え?」
「私はまた全て分かっている気でいたのかもしれません
自分のことを理解してくれる人間が…… 私以上の存在はこの世にいないとばかり思ってました
そんなどこか孤独を感じる自分に手を差し伸べてくれた人が雪村あぐりです
でも……」
触手を離す彼と義子の目が合わさる
「私を対等から慰めてくれる人と出会ったのはあなたでした
経験も無い 事情はもちろん知らない
だけど私とあなたは〝似た者同士〟
生まれた星は違えど海を越えて繋がることが出来たこれを私は…… 奇跡と呼んでもよろしいですか?」
「……やっぱり行っちゃうの?」
「えぇ…… まだ授業は終わってませんから」
そう言って義子と距離を置く殺せんせーは最後にお別れの挨拶を言った
「それでは義子さん さようなら」
「…………うん」
冷たくなった涙を嫌い 必死に袖で拭う義子は
必死に笑顔を作り なんてことのない時間を過ごしたと息撒いて
「どうせまた来るって信じてるから!! また今度ね!!」
「……はい」
マッハ20は辺りの雪を巻き上げ 軽く猛吹雪を作ってその姿は一瞬にして消えた
フンッと一息漏らす義子は何事もなかったかのように暖を求め 家の中へと入って行った