生きる時間   作:滝翔

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特別授業二十八時間目 磨兒子義子VS徒花此乃葉

良くも悪くも温かい

此乃葉から伸びる触手の束に触れる義子はそんな心地良さだった

 

「ねぇどう? 私と義子が組めば最強だと思うんだけど?」

 

「そうだね…… 私と此乃葉が組めば敵無しだと思っていたよ

中学校に入ったとき 本気で思っていた」

 

「…………」

 

「でも…… 違った 一方的な片想いは相手を知らず知らずの内に遠ざけてしまうってわかったんだ

自分の抱く価値観もはっきり言葉にして伝えないと駄目なんだって当たり前のことに気付いたよ」

 

「っ……」

 

「此乃葉が今言ってることは真実じゃない!!

本音かもしれないけど それは触手なんてものを生やしていない いつもの此乃葉から聞く!!」

 

「……そう」

 

此乃葉は触手を引っ込めた

距離を置くように退く彼女の目からダラダラと涙が首筋に流れていく

 

「友達だと思っていたのに…… 友達を認めたくなかった……」

 

「……此乃葉」

 

「あんたに負けたくないのに…… あんたに認めて欲しかった……」

 

支離滅裂なのか それとも本音か

 

 

ーー触手が私に聞いてきた どうなりたか?

 

 

「義子ぉぉぉぉぉ!!!! 助けてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

触手が発火を始め

少女の周辺に火花が散り始めた

 

駆けつけた渚達も前と同じ光景に即身構える

 

「ホント茅野ちゃんと同じになっちゃったねぇ!!」

 

「今それはいいでしょ業ぁ!!!!

……でもあのときとは違う メンテナンスをしてない私とは違って

つい最近まで誰かに施術されていたようだから まだ助けられるよ!!」

 

「そっか…… そういえば柳沢がいなくなってから まだそんなに日が経ってないね」

 

「でも触手が発火してるってことは触手が異常な速度で蝕んでいるっていう証拠

早くしないと僅か数分で死んじゃうよ!!」

 

互いに互いの邪魔にならないよう配置に就く七人は

用意してた濡れタオルを楯に構えた

 

「いつ用意したの? ってかそれ大丈夫なの?」

 

「まぁ少しくらいの火傷で済むかなってだけの即興作戦なんだけどね」

 

「それでどうしたら此乃葉を救えるの?」

 

「えぇと………… 茅野ちゃんのときは

渚のキスで憎悪を忘れさせて 殺せんせーがピンセットで根っこから引き抜いた」

 

「ヘッ… へ~~~ そうなんだ茅野さん」

 

 

「もう許してつかぁーさい 許してつかぁーさい!!」

 

 

義子は この際手段を選んでられないと踏んで渚にお願いする

 

「渚!! あなたは中性的だから許す!! 此乃葉の唇を奪ってきて!!」

 

「…………うぅ」

 

気が引ける渚は目を反らす

そんな渚に熱い触手が襲ってきた

 

「ウッ!!」

 

受け止めたのは義子

しかし素手だったことにより腕に大きな火傷を負ってしまった

 

「あっつ……!!」

 

「大丈夫義子さん!!?」

 

「平気平気!」

 

体勢を立て直す義子は此乃葉を見た

 

「義子…… 義子……」

 

彼女は まだ泣いてた

 

「皆下がって!! ここは私がなんとかする!!」

 

「秘策があるの?!」

 

「触手を抜き取る人と千葉君と速水さんを助ける人に分かれて欲しいの!!

私が此乃葉の気をそらしてみせる!!」

 

義子は軽くストレッチをし

助走を付けて一気に走り出した

 

「義子ちゃん!!」

 

「任せて!!」

 

触手がうごめく領域に入ったとき 義子に違和感を覚えさせた

 

ーーあれ? 襲ってこない?

 

義子が顔を上げると そこには

 

 

「ウァァァァアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 

奇声と断末魔が混同した叫び声を発する此乃葉の表情は人で無くなろうとしている

あまりの燃焼で触手の大半はチリチリに焦げ落ち 残った触手が発火する力を全て受け止めていた

 

「ここまで憎悪を? あなたに何があったっていうのよ?!」

 

「触手ノ全発火能力ヲ解除ダ……」

 

「ん?」

 

「ツイノヒケン…… カグツチ……」

 

「…………フフ」

 

 

ーーまだジャンプ好きなんじゃん 此乃葉……

 

 

襲ってくる触手にもはや勢いは無かった

それほど弱っている宿主の危機的状況を知らせてくれる

 

ーー此乃葉の気がそれるもの…… 考えるんだ!!

私だって此乃葉を全く知らないわけじゃない

小学校のときの此乃葉…… 親しくもない転校生の私に声を掛けてくれた

誰かからイジメられても助けてくれたし 困ったときは側にいてくれた

中学に入ってから上手くいかなくなって……

 

〝 義子ってさ…… 周り全然見ないよね? 〟

 

此乃葉は私に気付いて欲しかった…… 何を?

 

〝 ………悪い奴倒したんだからお礼くらい言って欲しかったな 〟 

 

私が此乃葉を守ったとき お礼を言ってくれなかった

 

〝 なんで私を避けるの!!! 〟

 

それは此乃葉が私の事を

 

〝 だってアンタに見下されるのが死ぬほど嫌だったんだから

クラスにも馴染めなかった 私がいなきゃ何もできなかった義子にナメられたくなかった 〟

 

下に見ていたから…… あれ?

 

 

ーーもしかしてミスリード?

 

 

義子はその場に立ち止まり深く考え始めた

 

「ちょちょちょ!! 義子さん?!」

 

「義子ちゃん危ないって!!」

 

周りの声が聞こえなくなるほど義子は思考回路を稼働させていた

しかし触手の攻撃はヒラリヒラリとかわしていく その姿はまるで

 

「……殺せんせー」

 

渚がそう呟いた

物思いにふけようとも相手の攻撃をものともしない

天性より授かりし才能が漏れ出していた それは渚をも圧倒する様

 

 

ーーもしも此乃葉の抱いていた感情が殺意による嫉妬ではなく…… アレだとしたら

 

……そしてそんなことを考える私もアレだとしたら 非常にマズい この先が

 

 

しかし一つの新しい秘策が思いついてしまった以上

今は実行するしかない

 

 

義子はいつの間にか此乃葉の目の前へと辿り着いてた

 

「正解かどうかわからないけど…… これしか方法が浮かばなかったから」

 

「ゥゥゥ……!」

 

「間違ってたらゴメンね」

 

そう言って義子は此乃葉の後頭部に手を回し

強めに押すように自分の身体を重ね 相手がよろけそうになった体勢で

 

 

義子は自分の唇を彼女の唇に押し当てた

 

 

 

 

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