生きる時間   作:滝翔

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特別授業三十二時間目 春はもう始まっている

事件は幕を閉じた

私が入院してる間に不破さんが持って来てくれた後日談で盛り上がる

今回の触手の事件を終えて国防省は触手の種がまだ残っていないか調査を開始するようだ

柳沢からの情報を元に世界中に出回ってないか色々と大規模になるらしい

 

裏社会の組織はもちろんのことアギト達は逮捕される

今回は万引きなんてレベルではないから それなりの罪を思い知るだろう

 

此乃葉についても例外は無さそうだった

強盗をしちゃってることで さすがに庇えない

だから面会で仲を修復しようと思う

もう二度とすれ違わないように

 

此乃葉の真意だが 案の定百合成分があったらしい

私に劣等感を感じさせたくないのが当初の動機だったが

彼氏が彼女に弱みを見せない事例だと思って頂きたい

 

二十回目の面会で女性から告られる体験は新鮮でした

 

渚達は高校生活に向けていつもの日常に戻ったらしい

たまに業が私と此乃葉のキスの画像を持ってイジりに来るのだが

正直ヒマなのかなと思っちゃう

 

退院後は生徒全員が集まってくれて退院祝いを

そして半分怒られながら送別会に参加しなかった同級生からお叱りを貰う

 

寺坂が相変わらず苦手でした

 

 

 

そして春休みが明けて

私は山形県内のそこそこ難易度高い高校の門を潜った

 

「義子おはよう!!」

 

「おはよう!! これからまた一緒だね!!」

 

こっちの中学で出来た友人と共に始まる新しい高校生活

どっかで見てるのかぁ 殺せんせーは

それとも旧校舎で雪村先生とイチャついてんのかな

嫉妬しちゃうな

 

 

 

忙しくなる登校前に一度だけ

あの暗殺教室の舞台へと足を運んだ

 

「あっ……」

 

「おや?」

 

殺せんせーと烏間先生とイリーナ先生がいた職員室を覗くと

何故か浅野がいた

 

「久しぶりだね 磨兒子さん」

 

「お…… お久しぶりです…… 覚えててくれたんですね」

 

「アハハ…… 我が校の生徒を全て把握するのは教師の常識さ」

 

私も忘れませんがね

なにせ第1話であんっっっなこと言われましたから

 

「そういえば聞きたかったんです」

 

「何をだい?」

 

「…………今 何をしているんですか?」

 

違う 聞きたいことはそれじゃない

 

「私の好敵手がいた場所を見納めに来たのだよ」

 

「見納め?」

 

「実は学校の経営権を手放すことになってね 理由は分かるね?」

 

「はい……」

 

「次の事業を起こす前に一人の時間を楽しんでいたところさ」

 

「……」

 

相変わらず読めない

この人を理解するにはそれなりに難易度高い計算式が必要なのかと思わされる

 

「……ちなみに私の留年を助けてくれた理由も知りたいです」

 

「なぁに 私の力を持ってすればどうってことないよ」

 

「……怖っ!!」

 

「ハハハ! しかし現実はそう簡単じゃない

真実を言うと私は今ね 人生で稀に見ぬ民意による唯一の弱みを握られているのさ

もし君が留年のことで私と裁判で戦おうものなら 私は何割くらいの勝率だと思う?」

 

「そんなこと…… だって引きこもってたのは事実ですし」

 

「それを知るのはあなたと私と身近な関係者だけだ

世の中の私に対するイメージは〝怪物を飼っていた不審な人間〟

つまりこのネタを初手に出されただけで私の主張は皆無なのだよ」

 

「そんなことってあるんですね……」

 

「子供を虐待したり 政治家が汚職に手を染めれば

理由がどうあれ事実ならば許されないよね? そういうことだよ」

 

「ハァ……」

 

「……だけど一つ 同情される前に言っておきます」

 

なんでだろうと思ってます

席を立つ浅野理事長からは敗北した人間とは思えないくらい輝いてました

既に次の目的を見い出している人はこれ程までに強いんだと教えられました

 

「あなたが二学期の期末テスト前に出された抜き打ちテストに叩き出した点数を見ました

私は思ったのです 勉強が出来る選ばれし人間を潰していたのではないかと」

 

「あ ……ありがとうございます」

 

雰囲気がまるで違うから 正直気持ち悪いと思ってしまいました

 

「期待してますよ! 磨兒子義子さん」

 

「えっ……」

 

 

「あなたもあの殺せんせーの教え子なのですから 私は彼の敵としてあなたを信じます」

 

 

そう言って彼は出て行きました

ポツンと静かな場所に置いてかれた私は今日来たことを後悔する

何故なら誰も居ない旧校舎にあの人がいたことにより

静かで当たり前の場所に寂しさを感じてしまったのだから

 

 

 

 


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