義子の銃弾が殺せんせーの心臓部を捉えたそのとき 窓ガラスが大きな音を立てる
それに気付いた教室にいる生徒達も駆けつける
「殺せんせー?!!」
第一声を出したのはあの生徒だった
「あ…… あのときの」
「潮田…… 渚だっけ?」
「何々? 渚の知り合い?」
と生徒達がそっちのけで騒いでいる中 黄色い生物が息を荒立てて壊した窓の向こうから入ってきた
「すごっ…… 当たってないんだ」
「ヌルフフフフ…… やりますねぇ磨兒子さん」
「100億貰えるとか言ってたので本気でやってみました」
どや顔する義子にその場にいた全員が驚いて見ている
「何故背後に奴が行くとわかったんだ?」
烏間が聞くと何の捻りもなく答える
「ゲームとかの敵キャラってどいつも死角を取ろう絶対背後に回るんですね~ シューティングとかだと大体そういう動きで鬱陶しいんですよ」
「っ…………」
「素晴らしいです磨兒子さん!! 見事不意を突かれましたよ」
「別にわかってたし 外れるって」
「にゅや?」
「これだけ生徒がいるのにこの半年であなたを殺せていない 私一人で殺せる訳ないじゃん」
「………」
意表をついただけで満足していいものを すぐに冷めた顔をしている彼女の表情を殺せんせーは見逃さなかった
義子は鞄を持つなり 廊下にいる生徒達に向けて改めて
「本校舎から落ちてきた磨兒子義子です よろしくお願いします」
すると一人の生徒が近づいてくる
「初めまして潮田渚です よろしく磨兒子さん!」
全員がクラスへと戻る中 教師三人はその場で度肝を抜かれていた
「見事に不意を突かれたな……」
「えぇ……! しかしもっと恐ろしいのは他にあります」
「??」
次の授業の為に教材を触手で持ち
いつも通りの陽気なスタイルで教室へと向かう殺せんせーは何処か嬉しそうだった
木製のドアを開くとクラスの生徒が磨兒子の席を中心に集まっている
その席に座っているのは当然磨兒子義子
「ヌルッフッフッフ! 早速人気者ですね~~ 磨兒子さん」
「アハハ…… ありがとうございます」
「義子さん頭よそうだよね!」
「うん! 初日から殺せんせーを焦らすとかすごいぜ!」
「烏間先生達も驚いてたし こりゃぁ有力な戦力ができたな……」
「アハハ…… ハハ……」
クラスの大部分に賞賛されている義子より離れた席に座る寺坂竜馬は 隣の席の堀部糸成越しに座る赤羽業と会話していた
「何だ? あぁいう調子乗ってる奴に言ってやる嫌味な毒は今回持ってないのか業さんよぉ!」
「馬鹿だねぇ…… 寺坂はぁ~~…」
「あぁん!?」
「…………」
その業の顔はいつもの人を見下す様なあざ笑い顔で義子を見ていなかった
ーーあんな豆腐のようなメンタルに俺が何か言ったら 即部屋に閉じ籠もっちゃうよねぇ
チャイムと同時に一斉に全員が席に座る ここで義子が恐怖に寄った疑問を抱く
ーー早………
生徒一人一人素早く教科書やノート 筆記用具を取り出すその光景はまさに
ーー………真面目かよ
一番後ろ 自立思考固定砲台略して律の隣に座る義子はそのときクラスを見下した
その表情を業は見逃さない
「えぇそれでは今日の数学は…… 抜き打ち!! 小テストをしてもらいます」
「「「「「 え~~~!! 」」」」」
周りのブーイングに義子は安心する そして自分もその空気に混ざってみた
「そうだよぉ! テストなんて無駄だから止めろぉ!」
その時だった
「磨兒子さん………?」
「え……?」
クラス全員が義子を注目していることに義子は 先ほどの賞賛とは全く別の圧力にかけられる
「まぁ…… テストは嫌だけどさ 期末控えてるんだから頑張ろうぜ」
「こ…… 殺せんせー……!! さっさとテスト配ってよ!」
「ヌルフフフ 今配りますよ」
ーー何この空気
彼女は一本の刃に刺された気分だった 何が起こったのかわからない義子に渡されたテスト用紙を見てさらに追い打ちを食らう
ーー………これが中学三年生の問題?!
義子はペンを取るまでもなく そのまま黙り込んでしまう
授業終了間近にテストは殺せんせーに回収され まるで元気が無い義子が見つめる机の上に早速とテスト用紙が返されてきた
ーー………早
「さすが期末テスト半月前だけあって皆さんの磨きは既に輝いていますねぇ……」
周りが個々の点数に手応えを感じ合っている中 一番後ろの義子だけが浮かない顔をしていた
「義子さん……」
教壇から彼女の席まで移動した殺せんせーは触手で義子の額に触れる
「…………」
「今の時期の環境はわかりましたね」
「っ………!」
柔らかい触手から伝わる重圧を実感する 自分が怠けていたという実感を
「ですが大丈夫です 勉強も暗殺もこれからの補習授業で先生と一緒に周りに追いついて行きましょう」
「……無理」
「にゅ?」
「無理に決まっているじゃないですか…… こんな訳のわからない問題… 私が解けるわけ……!」
俯く顔を上げる義子の目に入ってきたのは
「「「「「 ……… 」」」」」
全員が心配と哀れみの眼を向ける生徒達に義子はトドメを刺される
ーー何なの…… 皆のその顔……
私と同じ低レベルなんでしょ? 落ちこぼれなんでしょ?! エンドのE組じゃなかったの?!!
義子は震える手で机にかけてある鞄に手を付け そして
逃げ出す
「磨兒子さん!!」
勢いよく廊下を走って旧校舎から出る義子の前に殺せんせーが行く手を阻んだ
「ヌルフフフ 速いですね~~」
「………どいて下さい」
「駄目です」
「…………」
懐から銃弾の入った瓶を取り出し 蓋を開けて殺せんせーに投げつける
「どけって言ってるでしょ!!」
「にゅ……」
その無数のBB弾をかわす殺せんせーに隙を突いてはいないが義子は山を下った
そんな彼女を追うこともせず後から来た烏間に任せて頭を触手で掻きながら教室へと戻っていく
一方で山を下る義子は不意に目に涙を溜ながら
ーー理想と違った 楽しいことしか考えていなかった私は馬鹿だ