生きる時間   作:滝翔

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特別授業八時間目 磨兒子と徒花の時間 友情

保育園を卒園と同時に私達家族は田舎から都会に引っ越してきた

慣れること自体難関の田舎者集団であった私も 追い打ちをかける小学校の新しい生徒達に困惑を隠せず

この歳から陰に隠れるポジションに着こうとしていた

 

そんなとき

 

「義子ちゃん 宿題見せてくれる?」

 

関東なら既にどこにでもいる密度の濃い大人びた生徒が一人近づいて来た

 

「…………うん いいよ」

 

彼女の名前は徒花此乃葉

クラスにも人気があるのは授業中も昼休みも放課後も一目瞭然

そんな彼女が話し掛けてくれることにもちろん当時の私は嬉しかった

 

その子はとても器用で 勉強や運動 人付き合いなどまるで超人だと思わざるを得ない

端から見てて忙しい彼女がそれでも自分のことも気に掛けてくれる迷いの無い憧れの存在

 

ーーそう…… まるでいつも楽しみに読んでいる少年ジャンプのヒーローのような

 

家が近所で通学路が一緒だった私と此乃葉は途中で別れる友達と違って最後には二人で帰るという自慢の時間

下校中を誇り いつも笑顔で家に帰っていたっけ

それを出迎える家族の安堵の表情も私の楽しみだった

 

 

とある昼休み中

私の趣味である絵を描いていると男子生徒達が寄ってきた

 

「うわっ……! 義子絵へったくそだなぁ!!」

 

絵が描かれた用紙を取り上げてクラス中に広めるかのように持ってる腕を掲げて馬鹿にされていた

 

「四年生でこの絵かよ! 俺でさえもっと上手く描けるぜ」

 

「返して…… 返してよぉ!!」

 

こうなったら小学生は相手が泣くまで止めない

その頃から弱さを見せなくなった私は必死で取り返そうとする

しかし男子の力には勝てず そんな時には

 

「止めなさいよ信太君! 長助君も!!

いくら義子さんのことが好きだからって」

 

「「 ち…… 違ぇよ! 」」

 

「そんなちょっかい出してしか好意伝えられないとか 王道過ぎるでしょ 恥っず!!」

 

「「 う…… うるせぇ!! 」」

 

二人は女の子走りで教室から逃げて行った

 

「絵描くの好きなんだ義子ちゃん」

 

「うん……… 漫画とか読んでるから」

 

「ふぅ~~ん」

 

すると此乃葉もノートを取り出して何やら描き始める

 

「此乃葉さん上手い!!」

 

その画力に賞賛の声を上げる

それに釣られて周りの女子も集まってくる

 

「小学生とは思えなぁい!」

 

「さすが美術Aの成績」

 

歓喜が湧く女子達の中に義子もいた

そんな義子を見る此乃葉はあからさまに自慢気の顔を向ける

 

「めっちゃ練習したからね! 努力の勝利って奴だよん!!」

 

「っ…………」

 

 

ーー嫌味に……… 聞こえなかった

 

 

〝 何読んでるの義子ちゃん? 〟

 

〝 え…… 少年ジャンプだよ 〟

 

〝 へぇ~~ 面白いんだぁ でも下校中に物買ったら駄目だよ 〟

 

〝 そう…… だね…… これからは買わなっ 〟

 

帰り道に通る二つ目のコンビニに此乃葉は不意に立ち寄った

扉から出てきた此乃葉が持っていたのは私の手に持っている物と同じ物だった

 

〝 先生に言わないでよね! 〟

 

帰り際に二人で歩きながら読む少年ジャンプ

同じ作品を読んでるときは盛り上がり 面白い話があればその作品に誘導させる

下校がまた一段と楽しくなるばかりだ

 

しかし本を買っていることが先生にバレて職員室で思いっきり怒られた

私は何冊も買っていたからだけど 此乃葉はまだ一回だけの行いなのにと不運を感じせざるを得ない

 

嫌な空気に見舞われる

廊下を前で歩く此乃葉を不快にさせたんじゃないかと

クラスに戻ると必然的に二人の下に生徒が集まる 彼女は何を言うのかと思ったら

 

〝 アハハ…… やらかしちゃったなぁ…… 〟

 

〝 此乃葉は馬鹿だなぁ…… 俺ならもっと上手く買っているぜ 〟

 

〝 はぁ?! 田口…… あんたが買っていることもバラしてあげようか? 〟

 

〝 っ……… なんだとぉ?! 〟

 

賑やかな空気

皆と話している中で彼女がこっちを見て繋がる二人だけの特別とも言える親密なアイコンタクト

つい数分前で抱いていた既視感はどこかへと旅立ち 私も抵抗なくその輪に混ざることが出来た

ついでに少年ジャンプを読んでたことはクラス中にもバレ 男子生徒ともよく話題にする機会が多くなる

 

此乃葉はまるで私の先生のような存在になっていた

 

 

「じゃぁ絵描くの教えてよ! 先生!」

 

 

「うんもちろん!!」

 

 

小学生という時間もあっという間で気付けば最後の一年である六年生に上がっていた

 

「私立受験?」

 

「そう! 椚ヶ丘中学校って進学校なんだけど受けてみない?」

 

この時点で成績は私と此乃葉は以前からのトップ争いを繰り広げているほどの優秀コンビだった

 

「うん いいよ! 同じ中学行きたいしね」

 

「義子ならそう言ってくれると思った!」

 

 

〝 自分が聞いてきた どうなりたいのか?

 

  徒花此乃葉の隣に見合う人になりたい 〟

 

 

結果は二人とも合格

来春からは並んで一緒の中学に通えることで祝い合っていた

 

そして卒業式を終え 卒業旅行を終えて四月

校門にベタベタに咲く桜に胸をときめく私の隣には此乃葉

椚ヶ丘中学の制服を着た生徒達に混じり校舎へと向かった

 

一年は何事もなく勉学に励んで遊んでいた

 

だけど 私は気付いていなかった

 

 

 

 

水面下から浸食されてる徒花此乃葉の変貌に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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