君が演じ、僕は歌う   作:ソウリン

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第12話です
千聖編です


第12演目 夢の続きへ

目覚めの気分は最高だった。

 

悪夢の3日間から解放され、気分は快晴だった。食事を取って、おそらく19時ぐらいには夢の中に入ったはずが、現在の時刻はすでに朝5時半。私がいつも起床する時間になっている。ここまでぐっすり寝たのは生まれて初めてかもしれない。おかげで、体が少し重い。

 

だけど、早く家を出ないといけない。少しでも早く雅の家に行って、溜まった洗濯物などを片付けないと。私は、倦怠感に包まれる体に鞭を打って、急ぎ着替えを済ませ部屋を出る。

 

「姉さん無理はしちゃダメですよ」

 

そして、いざ家を出ようかと思った矢先に、私に話しかける声が聞こえてきた。振り返ってみると、そこにはすでに登校の準備を済ませた千景がいた。その姿に少し疑問を抱く。いつもならば、この時間千景はまだ夢の中にいる。その彼女が、起きてるどころか出かける準備まで済ませている。それに、疑問を抱かないわけがない。

 

「どうかしたの千景?こんな時間におきてるなんて、怖い夢でも見たのかしら?」

 

「そんな子供じゃないんですから。ただ、姉さんのことが心配だったので、私もついていこうかと。どうせ、無茶をしないように止めても無駄でしょうし。だったら、私もお手伝いして、少しでも負担を減らしますよ」

 

私のことを心配してくれる千景。本当は、体調も悪くないし一人でも大丈夫だと思うけれど、おそらく千景は手伝うと言って譲らない。だったら、たまには手伝ってもらうのもいいかもしれない。今日は、いつもよりやることが多いでしょうし。

 

「わかったわ。お願いするわね、千景」

 

「はい。あ、私にかまわず二人だけのあまーい時間を過ごしていただいて大丈夫ですからね」

 

あ、これはやっぱりダメかもしれない。この子は置いていく方がいいかもしれない。蘇るのは昨日の恥ずかしい記憶。ダメ、思い出すだけで顔が真っ赤になりそう。

 

「千景、やっぱり私だけで大丈夫よ。あなたは家でおとなしく」

 

「さぁ姉さん、時間は有限です。急ぎますよ」

 

「ちょっと、千景、私の話を聞きなさ、ちょっと、引っ張らないで」

 

千景がついてくるのを止めようとした私だったけど、その発言は千景に阻止されてしまう。それどころか、千景に手を引っ張られて連れて行かれてしまう。今なら少し仔牛の気持ちがわかる気がする。そもそも、この子は私の体調を心配してくれてたはず。それなのに、私を無理矢理引っ張って、これでは余計に体調が悪くなってしまう。元々悪くないけれども。

 

まぁ、たぶんこの子のことだから、私の体調よりも、私と雅で遊ぶことの方が重要なんだと思う。そう思うと、少し泣けてくる爽やかな朝だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、二人の愛の巣にお邪魔しますね」

 

「まだ住んでるわけじゃないわよ」

 

結局私は、そのまま引っ張られて雅の家まで来た。3日間来なかっただけだというのに、何故か久しぶりに来た気分になってしまう。それまでは、雨の日も風の日も、毎日通っていたのだからそれも仕方ないことだと思う。

 

「いや、でも実際同じようなものだと思いますよ?家に帰ってくるのなんて寝るためみたいなものじゃないですか」

 

確かに、私が自分の家に帰るのは遅い。特に、パスパレとしての活動を始めてからは、いつも雅にベースの練習を見てもらっていたからさらに遅くなっていた。そんな遅くに、女一人で帰るのは危険だと思う人がいるかもしれない。

 

だけど、私は決して一人で帰ってるわけではない。いつも、雅が家まで送ってくれている。中学1年生の時に、家事を初めて以来毎日の恒例になっている。

 

「そうね、確かに最近はそうだったかもしれないわね」

 

「ええ、そうですよ。だからもう、新婚生活と変わらないんじゃないですか?」

 

し、新婚生活?私と、雅が?た、確かに将来的にはそういう日が来ることを毎日のように夢に見ていたけれど、私達はまだ学生。し、新婚だなんてそんなこと考えるには少し早すぎる。

 

「それに、父さんと母さんなんて、もうすでに孫の名前を考えてますよ?早く孫の名前が見たいっていつも言ってますから」

 

ま、孫?それってつまり、私と雅のこ、子供?た、確かに将来結婚した暁には、そういう日も間違いなくやってくる。私的には、女の子と男の子一人ずつ欲しいと思っている。でも、これは私の個人的意見。もし、雅が望むなら何人でも、って私は何を考えてるのだろう。私達はまだ学生。学生のうちからこういうことを考えるのは早すぎる。

 

でも、将来的には間違いなくそういう日がやってくる。早い内から将来設計を建てておくのも決して悪い話じゃない。当然、子供のこともその中に含まれる。でも、そもそも、子供を作るということは、つまり、その、雅と、そういうことをするということで、つまり、その、

 

「ふみゅぅ」

 

「え?ちょっと姉さん!?」

 

私は、そのまま思考がオーバーヒートしてしまい、そこで意識がシャットダウンした。後に千景から聞いた話によると、その時の私はリンゴが真っ青に見えるほどに顔が真っ赤になっていたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、うーん。・・・あら?私、どうしたのかしら?」

 

「あ、姉さんやっと気がつきましたか」

 

どうやら、私は家事の途中で寝てしまっていたらしい。寝る前の記憶が思い出せない。私は一体どうしてしまったのだろう?

 

「姉さんが急に気を失うからビックリしちゃいましたよ。まぁ、理由はなんとなくわかりますけど。姉さんが倒れて大体30分ぐらいですね。洗濯の方は大体終わりましたよ?さぁ、朝ご飯を作りましょう」

 

どうやら、私は30分も時間を無駄にしてしまったらしい。遅れた時間を取り戻さないと。私は起き上がると直ぐさま朝食作りに取りかかった。千景と協力して作っていく。千景の家事スキルは、私が思っていたよりも高かった。いつの間にこんなスキルを。

 

「私も、姉さんみたいに運命の人に出会える日を夢見て、ちゃんと家事の勉強してるんですよ?」

 

そういえば、千景は来年高校受験だけど、その志望校は私が通う花女ではなく、雅が通う花高になっていた。千景の学力なら、もっと上の高校を目指せるはずなのに、花高を選んだ理由、それが運命の人に出会うためらしい。

 

花高の生徒は、男女比が男の方が割合が多い。およそ8割は男子が通っている。そんな高校に進学することによって、運命の人に出会える確率を高めるらしい。将来、悪い男に捕まらないか心配になる。

 

「姉さん、お味噌汁の味付けはこの程度でいいですか?」

 

「そうね、雅は、もう少し濃いめの方が好きだから、お願いできるかしら?」

 

「了解です」

 

そうやって、二人で手際よく朝食を作っていく。たまには、こうやって誰かと料理するのも悪くない。なんだか、楽しくなってきた。

 

料理が完成に近づいてきた頃、背後から誰かの足音がした。振り返ってみると、そこにはこの家の住人、雅がいた。

 

「おはよう千聖。もう体調は大丈夫なの?」

 

「おはよう雅。えぇ、昨日グッスリ寝れたおかげでもう、大丈・・・夫・・・?」

 

だけど、よくよく考えるとそれはおかしい。雅が今ここにいるということは、起こしにいかずとも一人で起きてきたということ。あの寝ぼすけ雅が?

 

「どうしたの千聖?やっぱり体調が悪いんじゃ」

 

「いえ、それは大丈夫なのだけれど、本当に雅なの?」

 

「そうだよ。雅だよ。他に誰に見えるのさ?」

 

「だけど、雅が一人で起きてくるなんて・・・」

 

「うん、僕が普段どう思われてるのかよくわかったよ」

 

少し残念そうな表情をする雅。でも、事実だから仕方ないと思う。だけど、雅が一人で起きてくるということは、私の毎朝の楽しみが無くなるということ。雅の寝顔を眺めるという私の楽しみが。

 

「ま、まぁ一人で起きてくれるなら私も助かるけれど、起こしに行くまで寝ててくれても大丈夫よ?雅も疲れてるでしょうし」

 

「それを言うなら千聖もでしょ?僕と違って家事までしてくれてるわけだし、少しでも負担を減らさないと申し訳ないよ」

 

「気にしなくていいわよ。それに、一人で起きられると私の朝の楽しみが・・・」

 

「楽しみ?」

 

しまった。思わず口が滑ってしまった。雅が一人で起きてくるのを阻止したいあまり、つい言ってしまった。

 

「い、いえ、なんでもないの。気にしなくても大丈夫よ」

 

「えー、すごく気になるんだけど。教えてくれてもいいじゃん」

 

「ほ、本当に大したことじゃないから。み、雅が気にするようなことじゃないわ」

 

「えー、そう言われると余計に気になるんだけど」

 

「ゴホン、お二人さん。ラブラブなのはよろしいことですが、私の存在を忘れないでいただけますでしょうか?」

 

どうやって雅をごまかすかと考えていたときに、思わぬ助け船が入った。そういえば、千景がいたのをすっかり忘れてしまっていた。なんだか、この後のことを考えると無性に嫌な予感がするけれども、今は助かったから大目に見ることにする。

 

「えーと、おはよう千景。いちお聞くけど、いつからそこに?」

 

「最初からいましたよ。どうやら、おにいさんの眼には愛しの姉さんの姿しか映ってなかったみたいですけど」

 

「ご、ごめん千景。僕が悪かったからそのオモチャを見るような眼をやめてもらっていいかな?」

 

あ、これはダメね。千景の眼を見ればわかる。彼女がこういう眼をする時は、彼女の気が済むまで対象になった人物はいじり倒される。昨日被害にあった時は、本当にひどい目にあった。救いなのは、今日の対象が私ではないこと。本当に助かった。さすがに、

連日であんな目にはあいたくない。だけど、このままだと私にも被害が出る可能性が否めない。なんとか、千景を追い出せないだろうか?

 

「ち、千景。ほ、ほら私の体調はもう大丈夫だから。先に学校に行っても大丈夫よ?」

 

「えぇ、最初は姉さんが心配で来ましたけど、こんなに面白そうな状況は見過ごせないじゃないですか。昨日の姉さんも面白かったですけど、今日は二人まとめてなんて、贅沢極まりない状況ですね」

 

「二人まとめてって、もしかして私も対象に入ってるのかしら?」

 

「何を言ってるんですか?姉さん。当たり前じゃないですか」

 

その言葉を聞いて私は血の気が失せた。ま、まさか連日で対象になってしまうなんて。今日この後、無事に学校に行けるのかしら?

 

「ところで、おにいさんはいつ姉さんに告白するんですか?」

 

あ、行けない気がする。いきなりハードな質問が飛びだした。でも、私もその答えは気になっていた。心の準備はすでにできている。いつ、言われてもいいように準備はできている。だけど、待つのはもどかしい気持ちになる。できたら早く言って欲しいと思っている私がいる。だけど、雅のタイミングでいいと言ったのは私。待つ覚悟はできてるはずだった。

 

「ち、千景。その質問はさすがに・・・」

 

そもそも、本来なら、私から気持ちを雅に伝えるつもりは無かった。それは、私の気持ちを知ることが雅の夢への壁になってしまう可能性があったから。だけど、昨日の1件で雅は言ってくれた。私と二人なら、きっとどんな壁だって乗り越えることができると。

 

だから、私は思いきって雅に伝えることにした。数日間雅に会わない日が続いたせいで、雅への想いがより膨らんでしまっていたのも影響し、自分の気持ちが抑えられなかったというのもある。そして、強まった気持ちは今も変わらない。

 

元々、年単位で待つつもりでいたのに、今では到底待てる気がしない。今か今かとソワソワしてる私がいる。このまままだと、私から告白してしまいそうなほどに、気持ちは膨らんでいた。だけど、決めたからには雅が言ってくれるのを待つ。待てる女は魅力的だと何かの雑誌で読んだ。だから、私は自分の気持ちを抑えて待つ。でも、タイミングが気になってしまうのは仕方ないことだと思う。

 

「ち、千景、それにね、そういうのにはちゃんとした雰囲気やタイミングってものが」

 

「そういえばおにいさん。昨日あの後家に入ったら何故か姉さんが玄関の隅で顔を真っ赤にしてしゃがみ込んでたんですよ。なんででしょうね?」

 

「千景!?」

 

え?この子は急に何を言ってるの?それを今ここで言うの?私は顔から火が出てしまったのかと思うほど、熱くなっていた。恥ずかしすぎる。なんとかしてごまかさないと。

 

「み、雅違うの。昨日は、そう、あの後また体調が悪くなって、少し玄関で休んでたのよ」

 

「それに姉さんったら、自分の口元に手を当てて、『ふふっ、雅』ってニヤけながら呟いてたんですから」

 

「千景!?」

 

この子は本当に何をしてくれてるの!?た、確かに昨日は雅と別れてから急に自分のした行為が恥ずかしくなって玄関で蹲ってしまったし、雅と口づけした余韻を味わって、すごく幸せな気持ちに浸ってたけど、それを雅の前で言うかしら!?私の顔は、おそらく今真っ赤になってると思う。恥ずかしすぎて穴があったら飛び込んだ上で掘り進めたい。

 

そうやって、恥ずかしすぎて私が慌ててるときに、不意に吹き出す声が聞こえてきた。声の主は見なくてもわかる。

 

「み、雅?わ、笑わないでよ」

 

「ははは、ごめんごめん」

 

「さて、かわいい姉さんも十分堪能しましたし次はかわいいおにいさんの番ですね」

 

「あ、もうこんな時間だ。早く朝ご飯食べないと遅刻しちゃうよ」

 

「あら、ほんとだわ。千景、早く準備済ませるわよ」

 

「うーん、しょうがないですね。おにいさんを堪能するのはまたの機会にしますね」

 

助かった。これ以上は、本当に今日の学校に支障が出る事態になっていたかもしれない。努めて冷静になったように見せているけれど、内心では全く落ち着いていなかった。朝から本当に恥ずかしい目にあった。こんなことなら、やっぱり千景を連れてくるんじゃなかった。そう、少し後悔する慌ただしい朝だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後になった。今日から、パスパレとしての私の活動が再開される。この3日間休んでた分がんばらないといけない。雅は今日事務所にはこないらしい。仕事があるらしく、遅れて顔を出すかもとメールが来ていた。

 

本来なら私も、今日は遅れて事務所に寄るつもりだった。というのも、今日はパスパレが参加することができそうなイベントは無いか探そうと考えていた。だけど、雅に今日は真っ直ぐ事務所に顔を出して欲しいと頼まれた。

 

パスパレのメンバーも心配してるから、早く顔を見せてあげて欲しいらしい。それも当然かと思う。確かに、この数日間で本当に皆には心配と迷惑をかけたと思う。本当に申し訳なく思う。少しでも早く顔を出して、みんなを安心させてあげよう。

 

「お疲れ様です」

 

「あ、チサトさん!」

 

事務所に入って最初に見かけたのはイヴちゃんだった。私を確認するなり、いきなりハグをしてくる。少し苦しい。

 

「チサトさん!体調はもう大丈夫なのですか?」

 

「ええ、もう大丈夫よ。心配かけてごめんなさいね」

 

「本当だよー。彩ちゃんなんてここのところ毎日100回ぐらいは千聖ちゃんの名前出してたもんねー」

 

「そ、そこまで言ってないよっ!」

 

「いやー、でもそれぐらい言ってたと自分も思いますよ。何かある度に千聖さんの名前を呟いてましたからね」

 

「だ、だって、本当に心配だったんだから仕方ないよっ!」

 

イウちゃんの後ろから声が聞こえる。声の主は見なくてもわかる。日菜ちゃん、彩ちゃん、麻弥ちゃん、そこにはPastel*Palettesのメンバーみんなが揃っていた。みんなより早く来たつもりだったけど、どうやら私が一番最後だったらしい。

 

「みんな、本当にごめんなさい。心配と迷惑をかけたわね。この分は、これからの仕事で返すわ」

 

「千聖ちゃん・・・うん!頑張ろうね!」

 

「ところで、彩ちゃんはちゃんと歌えるようになったの?」

 

「うっ、が、がんばって練習してるんだけど、なんだか上手くいかなくて・・・」

 

「あまりのんびりしてると、私がボーカルの椅子取っちゃうわよ?」

 

「えー!それは絶対ダメだよっ!」

 

「ふふっ、冗談よ」

 

何気ないみんなとの会話が楽しい。何気ないこの時間が愛おしい。この場所を失いたくない。このメンバーでもっと高みを目指したい。このメンバーで、あの日見るはずだった夢の続きを見てみたい。そのためにも、今は私にできることを全力でやろう。

 

「さぁみんな、レッスンしましょ?遅れた分を取り戻すわ」

 

「そうですね。そろそろ時間ですし、スタジオに行きましょうか」

 

麻弥ちゃんの発言に続いてみんな部屋を出て行く。私も、気合いを入れてがんばろう。楽器というのは、毎日触らないと感覚が鈍ってしまう。いつもはなんの問題も無くできる演奏が、数日楽器に触れなければできなくなってしまったなんてこともよくある。

 

私は数日間楽器から離れてしまった。早くこの遅れを取り戻さないと。私もそう意気込んで、みんなに続いて部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

「彩ちゃん、今のところ入るタイミングが少し遅いわ。もう一度やるわよ」

 

「ううっ、千聖ちゃんがスパルタだよー・・・」

 

スタジオでレッスンを続ける私達。すでに、決められていたレッスンは終了し、今は自主練の時間になっている。やっぱり、感覚がどうも鈍っている。数日も続ければ元に戻れると思うけど、なんだか悲しい気持ちになる。

 

「千聖ちゃん、そろそろ休憩にしない?さすがにあたしも疲れちゃったよー」

 

「チサトさんも、無理してはダメです!」

 

「そうですよ。それに、千聖さんはまだ病み上がりなんですから、あまり無理をしすぎると、自分も含めてみなさんまた心配してしまいますよ」

 

どうやら、私はまたみんなに心配をかけるところだったみたい。ダメね。私も、きっと内心では焦ってるのだと思う。次のチャンスは絶対に成功させないといけない、という思いが焦りにつながって、オーバーワークに発展しそうになる。気をつけないといけないわね。

 

「ごめんなさい。少し焦っていたみたいね」

 

「ほんとだよー。千聖ちゃんにまた何かあったら、また彩ちゃん泣いちゃうからね-」

 

「な、泣いてなんかないよ!」

 

「本当ですか?自分も泣いてる彩さんを見た気がするんですけど」

 

「私も見ました!」

 

「ううっ、みんながいじめるよー・・・」

 

どうやら、彩ちゃんを泣かせないためにも、みんなに心配をかけるわけにはいかないみたい。気をつけないと。

 

「あ、みんなまだ残ってたね?よかった」

 

と、その時スタジオの入り口の方から聞き慣れた声が聞こえてきた。その声の主はやっぱり雅だった。

 

「雅さん、お疲れ様です。こんな時間にどうされたんですか?」

 

「うん、ちょっと見て欲しいものがあってさ。みんなこのポスターを見て」

 

そう言って、一枚のポスターを取り出す雅。そこには、とあるイベントの告知が描かれていた。

 

「Fresh♪ IDOL Festival vol.8?なにそれー?」

 

「これって、デビュー一年以内のアイドルしか出られないイベントだよね?これをきっかけに有名になる子が多いから、業界では注目されてるイベントだよ」

 

「アヤさん詳しいですね!でも、そのイベントがどうかしたのですか?」

 

「うん。このイベントに君たち、Pastel*Palettes が出ることになったんだ」

 

「え?雅さんそれって本当ですか?すごいじゃないですか!」

 

私もビックリした。すごいことだと素直にそう思える。だけど、きっとこれは・・・

 

「雅、あなたこのために・・・」

 

「いいんだ千聖。僕にできるのなんてこんなことぐらいだから。だけど、ここから先は君たちの力で切り開くんだ。僕にはどうすることもできないからね」

 

「雅君・・・うん、私達がんばるね!」

 

そう言って笑顔を見せる彩ちゃん。私もつられて笑顔になる。本来なら私がする予定だったのだけれど、雅にまた助けられてしまった。だけどそのおかげで、演奏の練習に集中できる。なおさら、失敗は許されなくなってきた。絶対にこのチャンス成功させてみせる。

 

前回の失敗で雅の夢への歩みは停滞してしまった。いえ、押し戻されたと言ってもいい。だけど、また歩き出すことはできる。この機会を逃すことは許されない。ここからまた、終わりなき夢の続きへの歩みが始まる。もう二度と、その歩みを止めてはいけない。私は改めて気持ちをこめて、そう誓うのだった。

 

 

 

 




どうも、ソウリンです。
ギリギリ間に合った(白目
いや、正直目標期日ギリギリになっちゃったので思ったようなクオリティにできてない気がする(白目
連休前の追い込みで仕事がめちゃくちゃ忙しかったんや(三連白目
まぁ、その内加筆修正するかもしれないです。おそらくするとしても完結後ですが。
まぁ、それでもギリギリ8000字超えてしまいましたけど・・・
本当は学校での話も書く予定だったのですが、文字数の都合でカットしました。
だから、パスパレの花女メンバーも千聖の復活を事務所で初めて知った感じになってますが、学校で見なかったのかよとか突っ込まないで下さい(切実
それと、今回のサブタイトルはD.Gray-man より、surfaceさんの夢の続きへ、です。この曲もほんとに歌詞が好きです。
後、前々話で募集した千聖編の特別編の希望者はまだ募集してます。いない場合は、需要無しと見て本編を進めます。
では、今回はこのへんで。
次回は雅編。投稿目標日時は、連休に入りますが、いちお5月6日の午前0時にしておきます。
ではでは、次回もよろしくお願いします!
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