千聖編です
「うん、今日も上出来だわ」
私達のイベント参加が決定してから、一夜が明けた。今日も私は、雅の家で朝食を作っていた。昨日と違う点として、今日は千景がいない。昨日の様子を見て安心したのか、今日は起きてくる様子が無かった。まぁ、単純に寝坊しただけかもしれないけれども。
朝食の完成度も申し分ない。そろそろ雅を起こしに行こう。昨日は雅の寝顔を拝むことができなかった。なんだかんだで、もう一週間近く雅の寝顔を見れていない。私の朝の最大の楽しみが実行できていない。だから、今日こそは必ず拝んでみせる。そんな、自分でも少しおかしいと思う意気込みをして、雅の部屋に向かった。
雅の部屋からは、電気の明かりが漏れていた。昨日消し忘れて寝たのだろうか?私はこっそり部屋の中を覗いてみる。するとそこには、椅子に座り、ノートとにらめっこをしている雅がいた。なんだ、起きてたのね。残念、今日も寝顔を拝めなかった。と考えながら、私は疑問に思う。
何故雅が起きているの?ふと、雅の様子を見てみる。服装は寝間着のままだ。それだけなら何もおかしいことは無い。ふと、ベッドに目を向けてみる。そこには、昨日の状態のままのベッドがあった。昨日干した布団をベッドに置いたのは私だから、雅のベッドが昨日どのような状態になっていたかわかる。
結論から言うと、ベッドを使った痕跡が無かった。そこから導き出される答えは一つ。
「雅!?何をしてるの!?」
彼は昨日寝ていない。最近はそういったことが無かったから油断してた。彼の悪い癖。音楽のことに夢中になりすぎて寝ることを忘れてしまう癖。
「何をしてるって、作曲活動だけど。千聖こそ、どうしたの?家までちゃんと送っていったはずだけど?」
「雅、今何時だと思ってるの?」
どうやら、今日は寝るのを忘れていたどころか、時間の経過にすら気づいていなかったらしい。私に言われて時計を見て、それから窓を見て、そして驚愕の表情を見せる。
「え?嘘?もうこんな時間?」
「雅・・・」
そんな雅を見て、私は心配する気持ちが強くなった。昔なら、間違いなく第一声に説教から入っていただろう。だけど、今の私は違った。そもそも、雅のこの癖が出たのは随分久しぶりなことだった。もう私は、この癖が発現することは無いと密かに安心もしていた。
「体調は大丈夫なの?」
「え?」
だけど、その癖がまた出た。私は、この時またこの癖が習慣化してしまったらどうしようと、それが怖くて仕方が無かった。そして、
「頭痛とか目眩は無い?立てる?朝ご飯、今からでもお粥に変える?学校に休みの連絡入れておくわね?病院に行く準備もしておかないと」
「いやいや、さすがにそこまでしなくて大丈夫だよ。体調もなんの問題も無いから」
確かに、雅の顔色は悪くないように思う。だけど、それだけでは安心できない。何かがあってからでは遅いのだから。
「だけど、何かあってからじゃ遅いのよ!?」
「本当に大丈夫だって。一日ぐらい寝なかったところで問題ないよ。それに、今日は帰ってちゃんと休むから」
「・・・わかったわ。だけど、本当に無理をしてはダメよ?」
「うん。心配してくれてありがとう」
私は、今は雅の言うことを信じることにした。本当は、今すぐに寝て欲しいし、病院に行って欲しい。だけど、今は信じることにした。この前まで、雅のことを信じ切れずに迷惑をかけた。だからこそ、雅の言うことはなるべく信じたい。彼の体調管理は、私が細心の注意をしておけばいい。
「それじゃ、朝ご飯にしましょ?もう用意できてるわよ?」
「そうだね。僕もなんだかお腹が空いてきたよ」
そして、私達は雅の部屋を後にした。彼の体調の僅かな変化も見逃さないと、目を光らせつつ、部屋を出た。
次の日になった。雅は約束通り昨日帰ってからちゃんと休んでくれた。今日の朝の様子を見る限り、心配は無さそうに見える。そして今日私は、朝から事務所に来ていた。みんなと一緒にレッスンを行うのが目的だった。
私は、普段から他の仕事の影響でレッスンに参加できないことが多い。だけど、可能な限りはこうやってレッスンに参加するようにしていた。
そして、今日のレッスンを続けていて気になったことが一つある。彩ちゃんの様子がおかしい。普段から、人一倍努力をしたがる彩ちゃんだけど、今日はいつもの比じゃない。このままだと、ハードワークで倒れてしまうんじゃないかと不安になる。
「彩ちゃん。ちょっと休憩を入れたらどう?やる気があるのはいいことだけど、無理はよくないわよ?」
「うん、もう少ししたら休憩するよ」
さっきからこれの繰り返し。いつになったらそのもう少しが来るのだろう?私が何か彩ちゃんに休憩させるいい方法は無いかと思案していると、スタジオの入り口から誰かが入ってきた。その姿を見間違えるわけがない。それは雅だった。
「あら?雅、どうかしたの?」
「うん、ちょっと曲作りのアイデアを探しててね。ここに来れば何か見つかるかと思って」
曲作りのアイデア。確かに、雅は昨日から夢中になって曲作りに励んでいた。雅に今朝聞いたところによると、作詞の方が難航しているらしい。だけど、こんな場所でそんなアイデアが見つかるのかしら?
「曲作り?へーおもしろそう!なんだかるんってきた!」
「でも、こんなところに何かアイデアなんてありますか?ただ、自分たちがレッスンしてるだけですよ?」
「そうだね。だけど、アイデアっていうのは思いがけないところに潜んでるものだからね。案外、こういう場所にあるものなんだよ」
アイデアは思いがけないところに潜んでいると雅は言う。確かに、過去にも雅はこんな場所で?と思うような場所で曲作りのアイデアを見つけてたりする。例えばスーパーのレジ。あるいは、中学時代の放課後の理科室。なんでそんなところでアイデアが見つかるのか、作曲経験の無い私には皆目見当も付かない。
「じゃあさ雅君。私に歌のレッスンしてよ!」
「彩ちゃんに?」
「うん、なんだか、上手くいかない部分があって、曲を作ってくれた雅君に教えてもらったら上手くいくかなって思って」
「だったら私もキーボードのレッスンをお願いしたいです!」
これを機にと、雅にレッスンをお願いする彩ちゃん。あれだけレッスンを続けておいて、まだ続けるみたい。本当にハードワークで倒れないか心配になる。それに続こうとするイヴちゃんも心配だ。
「二人とも、十分に上手くなってると僕は思うけどね」
「ううん、今のままじゃダメ。みんなに比べて、ハンデがあるのもわかってる。だけど、私はこのグループのボーカルなんだから、そんなこと言い訳にできないよ。ボーカルが1番ダメなグループなんて、バンドとしてダメだと思うから」
「私は、アヤさんよりももっと音楽の経験が少ないです。だから、アヤさんががんばってるのに、私ががんばらない訳にはいかないです。旅は道連れ世は情けです!」
確かに、二人の経験が周りに比べて不足しているのは事実。だけど、今の二人はレッスンの成果で十分に上手くなってるのも事実。そんなに焦る必要は無いと思う。
「うん、彩ちゃんの気持ちはよくわかったよ。イヴちゃんの言いたいことも、最後のはちょっと違う気もするけど、よくわかった。いいよ、僕も何かのきっかけを掴めるかもしれないし、レッスンしようか」
「雅君・・・うん、よろしくお願いしますっ!」
「ミヤビさんありがとうございます!さぁ頑張りますよ!ブシドー!」
「うん、二人とも頑張ろうね。ブシドー!」
二人のお願いを引き受けた雅。雅は、今の彩ちゃんの状態を知らないから仕方が無いと思う。もう少し様子を見てみよう。そして、必要ならば私がなんとかしないと。こういうことに一番長けているのは、メンバーの中でおそらく私だと思うから。世話のかかる子が周りに多いと大変だな、と思いつつ、私は彩ちゃんの様子を見守るのだった。
「イヴちゃん、リズムが少し走りがちになってるよ。もっと麻弥ちゃんのドラムをよく聞いて、それに合わせて。彩ちゃんは曲に入るタイミングが少し遅れがちだね。もっと周り全体の音を聞いて。その音に合わせて自分の中でリズムを刻むんだ。メトロノームみたいにね。そうすれば曲に入りやすいから」
雅のレッスンが始まってから一時間が経過した。その間、みんな休憩を挟むこと無くレッスンに励んでいる。といっても、彩ちゃんが続けるので、仕方なく回りもそれに付き合っているという感じになっている。みんなの様子を見ると、それぞれに疲労の色が濃くなってきている。
「音を聞いて、リズムを刻む・・・うん、雅君、もう一回お願い!」
「わ、私もお願いします!」
「うん、二人ともやる気があることはいいことだけど、少し休憩を挟もうか。他の皆が先に疲れちゃってるよ」
「そ、そうですね。自分も少し疲れました・・・」
「もうあたしもクタクタだよー・・・」
「そうね、みんな少し休息が必要だと思うわ。二人とも、ハードワークは禁物よ?」
レッスンに夢中になるのは、悪いことでは無いけれども、あまりにも周りが見えていない。このままだと、本当にその内誰かが倒れてしまうかもしれない。そうなってからでは遅い。そろそろ頃合いね。彩ちゃんの抱えてる物をなんとかしないと。
「そうだね、ごめん、ちょっと夢中になりすぎてた」
「私もです。すいません」
「二人とも、気にしないで。だけど、彩ちゃん一体どうしたの?今日は飛ばしすぎよ?悩みがあるなら言ってみて。一人で抱え込むのはよくないわよ?」
言うことによって解決する悩みだってある。そもそも、その正体を知らないことには、どうすることもできない。まずは、彩ちゃんの口から聞き出さないと何も始まらない。
「そ、そんな大したことじゃないから大丈夫だよ!」
「そんな大したことない悩みに私達は巻き込まれてるのだけれど?」
「うっ、それは・・・」
「ふふっ、冗談よ。誰もそんなこと気にしてないわ。だから、言ってみて?言うことで解決する悩みだってあるのよ?」
「・・・うん。実は、不安で仕方ないの」
「不安?」
「うん。この間、雅君がイベントの話を持ってきてくれたときはすごく嬉しかったの。だけど、それと同時にすごく不安になっちゃって。また、失敗しちゃったらどうしよう?って。今度また失敗しちゃったら、今度こそ私達は解散することになっちゃうと思う。それが不安で不安で仕方なくて、そう思うと、練習してないと落ち着かなくなっちゃって・・・」
その正体はどうやら不安だったみたい。私もわからないわけでは無い。私も、昔からよく不安に駆られることがあった。舞台の前日などは不安で寝れないこともよくあった。そんな時に、私がいつも不安を拭い去る為に行っていたことがある。
「いやーでも彩さんの気持ちもよくわかりますよ。自分も不安で不安でしょうがないですからね」
「そうかな?あたしはそうでも無いけどね。いつも通りやれば大丈夫だと思うし」
「ううっ、日菜ちゃんのその性格が羨ましいよ・・・」
「そうね、日菜ちゃんはともかくとして、みんなそれぞれに不安を抱えてると思うわ。失敗が許されない状況っていうのがプレッシャーにもなってると思う。だったら簡単な話よ。不安なら、不安が消えるまで頑張ればいいのよ」
「不安が消えるまで頑張る?」
不安が消えるまで頑張る。それは、一種の肯定。そう、彩ちゃんがしていることは何も間違っていない。私も昔は同じ方法で不安を拭い去っていたのだから。舞台の前日などは、ひたすらに練習に励んだ。だけど、もちろん練習量の管理は怠っていない。ハードワークにならない範囲でひたすらに練習に励んだ。
「私も、昔から舞台の前日とかは不安で不安で仕方ないことがよくあったわ」
「千聖ちゃんでも?」
「えぇ。私もよく不安で不安で仕方が無くなることがあるのよ。そういう時は、いつも不安が少しでも消えるまで、ひたすら練習したわ」
「チサトさんでもそんな時があるんですね!」
「えぇ。完璧な人間なんていないもの。誰だって不安になるときはあるわ。だからこそ、不安を解消するために何かに取り組むのよ。だけど彩ちゃん、だからといってハードワークはダメよ?ハードワークにならない程度でね」
「ううっ、肝に銘じておきます・・・」
そのことだけは釘を刺しておく。これで彩ちゃんはおそらく大丈夫だろう。これで後顧の憂いを絶つことができたと思う。後は、前進あるのみ。不安を拭い去るには、どのみち前進しないことにはどうすることもできないのだから。だから、今は前だけを見据えてレッスンに励んでいこうと思う。もちろん、ハードワークにならない範囲で。
「みんなで今度のイベントのチケットを配ってみない?」
次の日のことだった。事務所に集まった私達に向かって、彩ちゃんが急にそう言った。
「彩さん。いきなりどうしたんですか?」
「うん。昨日、千聖ちゃんに不安が無くなるまで頑張ればいいって言われて、私なりに考えたんだ。何も、頑張る方法ってレッスンだけじゃ無いんじゃないかなって。それで、こういった地道な活動も頑張るってことにつながるんじゃないかなって思って。ダメかな?」
「ダメなんかじゃないわ。私はいいことだと思うわよ?」
「私もアヤさんに賛成です!」
「へーいいんじゃない?なんだか面白そう!」
「自分も、素晴らしいアイデアだと思いますよ」
「みんな、ありがとう!よーし、頑張るぞ-!」
どうやら、彩ちゃんなりに、昨日の私の言葉の意味を考えた結果らしい。いい傾向だと思う。悩んで足踏みするよりも、悩んで前進する方がいいに決まっている。これは、一種の前進。これを機に、不安が一気に拭い去れたら最高だと思う。さぁ、私も頑張らないといけない。配るからには、全部売り切ってしまう心持ちで挑まないと。そんな強い気持ちで、私は事務所を後にした。
チケットを配り始めてから、早くも一週間程が経過した。売れ行きは芳しくない。やはり、私達に悪い印象を持っている人が多いのか、日に数枚程度しか売れない。それどころか、心ない言葉を投げかけてくる人もいるほど。正直、気が滅入りそうになる。
「みなさーん!今度、私達Pastel*Palettesがイベントに出演しまーすっ!今そのイベントのチケットを販売していまーすっ!是非見に来て下さいねー!」
そんな中でも、彩ちゃんはめげなかった。毎日、大きな声で呼び込みを続けていた。本当に凄い子だと思う。普通ならすでに諦めていてもおかしくないと思う。売れないチケット、心ないヤジ。こんな状況で笑顔を保つのだけでも大変なこと。だけど、彩ちゃんから笑顔が消えることは決して無かった。
「彩ちゃん、辛くないの?」
私は、堪らず彩ちゃんにそんな疑問を投げかけた。単なる好奇心だったかもしれない。聞かずにはいられなかった。
「もちろん辛いよ。だけど、私にできることなんて、こんなことしか無いと思うから。それに、まだ不安が消えてないから、だから消えるまで辛くても頑張らないと」
そう言う彩ちゃんの顔は確かに辛そうだった。だけど、笑顔だけは消えることが無かった。そんな彼女が眩しかった。そんな彼女の笑顔に見とれている時だった。突然雨が降ってきたのは。その雨は、瞬く間に激しさを増していった。
「あっちゃー凄い雨だね。早く帰ろ-?」
「そうですね。さすがにこの雨の中続行するのは無理がありますね」
「アヤさん、チサトさん、早く帰りましょう!」
「皆は先に帰ってて!私はもうちょっとだけ頑張ってみるよ!」
「彩さん、無茶ですよ!こんな雨の中じゃお客さんも来てくれませんよ!」
「それでも、私にはこんなことぐらいしかできないから、頑張らないと!」
「彩ちゃん・・・皆、彩ちゃんには私が着いておくから、先に帰ってて!」
「そうだね。千聖ちゃんが着いてたら大丈夫じゃないかな?あたし達は早く帰ろうよ-」
「アヤさん、チサトさん、無理はしないで下さいね!」
「千聖さん、彩さんのことお願いしますね!」
そう言って、事務所へと引き返していく皆。雨は今もなお激しさを増している。はっきり言ってこんな中でチケットを売るなんて無謀だった。
「千聖ちゃんごめんね?また巻き込んじゃって」
「気にしないで。不安が消えるまで頑張るんでしょ?気持ちは私も一緒よ。お互いがんばりましょう?」
「一緒?」
「えぇ、一緒よ。私も、今度のイベントが不安で不安で仕方が無いの。もし、また失敗してしまったらどうしよう?また、雅の壁になってしまったらどうしよう?って不安で不安で仕方が無いの」
これは事実だった。先週、雅がイベントの話を持ってきてくれてから、私の中でも不安という感情が膨れあがっていた。だから、私もこの一週間、不安を消し去るために練習を頑張ってきた。家に帰っても、時間が許す限りベースの練習に励んできた。
「千聖ちゃんも?」
「えぇ、だから、私も彩ちゃんに負けないように頑張るわ。さぁ、声を出していきましょう?少しでもチケットを買ってもらうわよ?」
「うん!そうだね!みなさーん!今度、私達Pastel*Palettesがイベントに出演しまーすっ!今そのイベントのチケットを販売していまーすっ!是非見に来て下さいねー!」
「お願いしまーす!」
雨の中という悪天候にもかかわらず、私達の心は逆に晴れていくような気がした。気づけば、雨も勢いが衰えてきている気がする。おそらく、一時的なものだったのだろう。雲間からも、光が漏れ始めた。空には虹も見える。雨上がりに見られるその幻想的な光景が、私達の心の不安を拭い去る手助けをしてくれているような、なんだかそんな風に感じた。今の私達なら問題ない。そう思える雨上がりの風景だった。
翌日、今日も私は雅の家に来ていた。むしろ、来ていない日なんてほぼ無いのだけれども。そして、今日も雅の寝顔を拝もうかと思っていた私は、雅の部屋から電気が漏れているのをまた発見してしまった。まさか?と思い部屋の中を覗き込むと、そこにはノートを持って満足そうな顔をしている雅がいた。間違いない。また寝ずに作曲活動に没頭していたのだろう。
「雅、また朝まで起きてたの!?」
私は堪らず、雅の部屋に入るなり、大きな声を出してしまった。そんな私を見るなり、雅はやっと来たか、とでも言いたげな顔を浮かべる。なんだかちょっとムッときた。
「違うよ。今日は早起きしただけだよ。ちゃんと寝てたから心配しないで?」
早起きしたという雅。珍しい。過去に雅が早起きして作曲活動をしているなんてことは無かった。寝ずにしていることはあっても、早起きしてということは無い。だけど、ベッドの状態を見る限り、使用していた痕跡がちゃんと残っている。寝ていたというのは本当なのだろう。
「雅が早起き?珍しいわね。まぁちゃんと寝てたのならいいのだけれど・・・くしゅん!」
「千聖、大丈夫?風邪でも引いた?」
「大丈夫よ。昨日ちょっとね・・・くしゅん!」
突然クシャミをする私を心配してくれる雅。流石に昨日の行為は無茶だったみたいで、私は朝からクシャミが止まらない事態に陥っていた。別に、他に症状は無いから大丈夫だとは思う。
「あまり無理しちゃダメだよ?しんどかったら僕のことはいいから、自分のことを優先してね?」
「本当に大丈夫よ。ちょっとクシャミが止まらないだけだから。しばらくすれば治ると思うわ・・・くしゅん!」
「ははは、だけどそんな状態じゃ、僕の体調管理のことも文句言えないね」
「ううっ、返す言葉も無いわ・・・くしゅん!」
全くその通りだと思う。こんな状態だと、この前雅に注意したことの説得力が無くなってしまう。早く治さないといけないと思いながら、私は雅と部屋を出るのだった。
朝食を済ませた私と雅は、二人で事務所まで来ていた。私は元々来るつもりだったのだけれども、雅も何か事務所に用があるらしい。内容までは何故か教えてくれないけれども。
「あ、雅君、千聖ちゃんおはよう・・・くしゅん!」
「彩ちゃんおはよう。って、彩ちゃんもクシャミ?」
「私も?ってことは・・・」
「くしゅん!」
「やっぱり千聖ちゃんもなんだ・・・」
どうやら、彩ちゃんも私と同じ状態になっているらしい。予想通りだった。さすがに昨日のは無茶が過ぎたみたい。
「お二人とも昨日は頑張ってましたもんね。むしろ、頑張りすぎですよ」
「はい!チサトさんもアヤさんもすごかったです!」
「だけど、それで体調崩してたら元も子も無いよねー」
「ううっ、ごめんなさい・・・」
「ごめんなさい、本当に返す言葉も無いわ・・・」
今日の私の立場はグループ内でも低そうな気がする。まぁ、昨日無茶した結果、こんな状態になってたら仕方が無い。だけど、その無茶の結果は悪い話ばかりでは無い。昨日のチケットの売り上げは上々だった。
というのも、どうやら昨日雨の中頑張ってチケットを販売してた私達の情報をネットに流してくれた人がいたみたいで、その情報を見た人達がパスパレの努力を認めてくれてチケットを買いに態々来てくれたらしい。おかげで、密かにファンが増えたらしい。
「それで、雅さんはどうしたんですか?朝から事務所に来られるなんて珍しいですね」
「あ、そうだった。実はみんなのために新曲を作ってきたんだ」
「え?私達の新曲!?」
「へーすごい!うーん、るるるるんってきた!」
「新しい刀を手に戦に望むのですね!燃えてきました!」
「イヴさん、その表現は物騒ですよ。ですが、新曲は嬉しいですね!今から練習するのが楽しみですよ!」
「雅、あなたが最近作ってた曲って・・・ありがとう雅。必ず今度のイベント成功させてみせるわ」
これは思わぬサプライズだった。まさか、雅が最近作っていたのが私達の新曲だったなんて。素直に嬉しかった。
「みんなで夢のうたを描こう!」
夢のうた?雅は確かに夢のうたと言った。どういう意味なのだろう?
「雅、夢のうたってどういうことなの?」
「うん、実はこの曲はまだ完成していないんだ。この曲は、みんなの色に染まることによって初めて完成する。さらに言うなら、皆の色次第ではどんな曲にだってなるまるで夢のようなうただよ。だから夢のうた」
「へーなんだか面白そうですね!」
私も麻弥ちゃんに同意見だ。何色にでも変わる夢のうた。本当に面白そうだと思う。
「あ、じゃあさじゃあさ、千聖ちゃんの雅君に対する愛の色で染めて愛のうたにしちゃおうよ!」
「ひ、ひひひ、日菜ちゃん!?急に何を言ってるの!?」
急に、面白いイタズラを思いついたとでも言いたそうな表情でとんでもないことを言ってくれる日菜ちゃん。本当にこの子は何を言ってくれてるのかしら?
「チサトさん、顔が真っ赤ですよ?」
「い、イヴちゃん、そういうことは言わなくていいのよ?」
真っ赤になってるのは自分でもわかってる。いきなり、あんなことを言われたら真っ赤になってしまうに決まっている。そう、これは不可抗力。抗うことができない自然現象。
だけど、私の愛で染めた愛のうた。それも悪くないかもしれない。むしろ、雅が作ったそんな曲をいつか歌ってみたいとすら思う。
「あ、千聖さん今、満更でも無さそうな顔しましたね?」
「千聖ちゃんなんだか嬉しそうだよね?」
「ま、麻弥ちゃん、彩ちゃん!そんなこと無いわよ!」
「あはは、千聖ちゃんそんなに取り乱しちゃってー。ねぇ?雅君も千聖ちゃんの愛で染めてほしいよね?」
「え?ここで僕に振るの!?えっと、その、あ、そうだ!僕この後用事があったんだった!みんなレッスンがんばってね!」
「あ、ミヤビさん行っちゃいました」
バタバタと慌ただしい朝の事務所。だけど、それがどことなく心地よかった。恥ずかしい思いはしたけれども、悪くないと思ってる私がいる。段々とパスパレが、私にとっての居場所になってきている気がする。
いい傾向だと思う。だからこそ、この場所を無くしたくない。雅の想いに応えたい。そのためにも、今度のイベントに失敗は許されない。だけど、私の中に不安はもう無かった。今なら確信を持って言える。間違いなく成功すると。私は、その後の明るい未来に想いを馳せて、その日のレッスンに臨んでいくのだった。
どうも、ソウリンです。
初の9000字オーバーどころか約10000字という(白目
おかしい。これでもかなり削ったはずなのに・・・
この話のメインとなるチケット売りの話削って地の文もかなり削ったんですけどね。遠慮無く書いてたら2,3千字はまだ増えてましたね(遠い目
とまぁ、目標7~8千字に定めてるのにいつもオーバーしてしまう作者であります。はい。
今回のサブタイトルは倖田來未さんの愛のうたです。夢のうたと来たらこれですよね。
あ、それと今更なことなんですけどこの物語の千聖ちゃんは原作に比べてかなりパスパレメンバーに心開いてます(本当に今更
まぁ、雅がいる影響ですね。
そしてまたまたお礼を一つ。
またまた☆10評価並びに☆9評価いただきました!
本当にありがとうございます!大変執筆の励みになります!いただいた評価に恥じない作品をこれからも目指していきますので、よかったら応援お願いします!
後そういえば、現在ガルパではドリフェスが開催されていますね。皆さんの引きはどうでしたか?自分は一種類も持ってなかった花音☆4を3種類コンプしました。
どうしてこうなったし。
いや、本当は一番ほしいのクール日菜なんですけどね、日菜の虹シルエット来たけど、既に持ってる七夕日菜が来ました(白目
後、限定キャラはあこちゃんだけ引けました。トータルしたら悪くない方だったと思います。
では、今回はこの辺で。
次回は雅編です。次回投稿分で1章終了予定です。
5月13日午前0時までの投稿を目標とします。遅れそうな場合は活動報告に掲載します。
ではでは、次回もよろしくお願いします!