雅編です
時の早さを実感する日々だった。
早いもので、今日はイベント前日、もっと言うなら前夜になった。
この3週間やれることは全てやってきた。僕は知らないのだけど、彼女達が密かに行っていた行動により、パスパレのイメージも良い方向に傾いているらしい。演奏の方も、新曲も含め全曲完璧と言っていいほどの完成度に到達した。
やれることは全てやってきた。後は皆を信じて見守るだけ。彼女達ならきっと大丈夫だ。心配する必要は無い。最高の結果を出してくれるに決まっている。
「いよいよ、明日だね」
「えぇ、そうね。明日で、全てが決まるわ」
そう言う千聖の表情は、どことなく楽しそうに見える。見たところ、緊張なども特にしてなさそうだ。
「不安とかはない?」
「えぇ、大丈夫よ。これまで頑張ってきたんだもの。いつも通りやればいいだけ。問題も不安ももう無いわ」
本当に彼女達は頑張ってきた。時には心ない声に涙した日もあった。時には練習が上手くいかず、挫けそうになった日もあった。だけど、誰一人として折れることは決して無かった。彼女達はもう、偽物バンドのPastel*Palettesではない。正真正銘、アイドルバンドのPastel*Palettesだ。あの日忘れてきた栄光を、今こそ取り戻す時が来た。そう思うと、なんだか感涙がこみ上げてきそうになる。
「なんで雅が泣きそうになってるのよ」
「だって、みんなが本当に頑張ってきたことは僕も知ってるからさ、その努力が報われる時がやっと来たのかと思うと、なんだか感動しちゃって」
「ふふっ、昔から雅はそうだったわね。感動物の映画とかに弱くて、映画館でも関係無しにすぐ泣いちゃって」
「だ、だってしょうがないじゃん!泣いちゃうものは泣いちゃうんだから!悪い?」
「誰も悪いだなんて言ってないわよ。それだけ、雅が私達のことを想ってくれてるってことだもの。感謝することはあっても、悪いなんて思うことは絶対に無いわ。雅、ありがとう」
その千聖の言葉がとどめとなってしまった。そんなセリフ今言われたら、僕の涙腺が耐えられるわけが無い。
「ふふっ、やっぱり泣いた」
「千聖、ぜ、絶対確信犯でしょ」
優しいまなざしで僕のことを見てくる千聖。その顔がなんだか憎たらしい。
「だけど、本当に長かったわ。あのお披露目イベントから、言葉にしたらたった一ヶ月の出来事なのだけれど、本当に長く感じたわ。それはもう、まるで時間が止まってしまっていたかのように」
長く感じたと語る千聖。その意見は僕とは真逆だ。僕は最初に言った通りこの3週間、いや、お披露目イベントからの一ヶ月、本当に時間の流れが速く感じた。
いや、正確にはお披露目イベントからでは無い。あの日からの3日間は、僕の時が止まっていたかのように長く感じていた。そう、あの日、千聖の気持ちを知ることになったあの日までは。
あの日から僕の時間は再び動き出した。それまでの遅れを取り戻すかのように、まるで駆け抜けるかのような勢いで時間は過ぎていった。
だけど、おそらく千聖の中の時間はまだ止まったままなのだろう。あの日、あのイベントの失敗は未だ彼女の中で
あの日、彼女が僕に言った通り、おそらく僕の夢の壁になってしまったことが最大の要因なのだろう。あの時の僕の言葉だけでは、まだその時を動かすまでには至らなかったようだ。
だけど、それも明日までのこと。明日のイベントの成功は、そのまま彼女達、そして僕の復権に直結する。それは即ち、僕の夢が再び歩みを始めるということ。彼女の時が止まっている理由は、僕の夢があの日から止まってしまっているため。
だったら僕の夢が再び動き出せば、彼女の時もまた動き出す。単純なことだ。
「千聖、明日で全て終わりにしようね」
「えぇ、当然よ」
明日で全てに決着をつける。僕はそう誓い、千聖との和やかな前夜を過ごすのだった。
そして、イベント当日になった。いつも通りの朝だった。いつも通り千聖に起こしてもらい、いつも通り身だしなみを整え、いつも通り千聖の用意してくれた朝食をいただく、いつも通りの朝だった。そして、いつも通り二人で家を出た。
今日は僕もイベント会場で皆を見守る。お披露目イベントの時は、いてあげたくても側にいることができなかった。だけど、今日僕は仕事が入っていない。いや、正確には全て断った。今日だけは、どうしても彼女達の側にいたかった。
そして、僕と千聖はイベント会場に到着した。中々大きな会場だ。さすが仁さんがプロデュースするイベントなだけはある。
「姉さん、おにいさん」
会場の規模に感嘆している時だった。背後から聞き慣れた声が聞こえてきた。その声とおにいさんという呼び方。間違いなく彼女だ。
「どうもです」
振り返ると、案の定そこには千景がいた。どうやら、今回のイベントを見に来てくれたようだ。
「千景、態々見に来てくれたのね」
「ここまで結構遠いのに。千景、お疲れ様」
「本当にお疲れです。いやーこんなに姉思いな妹を持てて、さぞその姉は幸せ者なんでしょうね」
「えぇ、そうかもしれないわね」
「そこは否定しないんだね」
素直に肯定する千聖に思わずツッコミを入れてしまった。だけど、千景が見に来てくれたからか、本当にその顔は幸せそうに見える。
「では姉さん。私は客席で姉さんの勇姿を見守ってますね」
「えぇ、お願いするわ」
「姉さん、最高のイベントを期待してますね」
「・・・えぇ、必ず今度こそ、最高のイベントにしてみせるわ。千景のためにもね」
その言葉を聞くと、千景は満足そうに会場の中に入っていった。その姿を見送り、僕達も関係者入り口へとその足を向ける。そして、そのさらに先にある控え室に着くと、そこにはすでに他のメンバー4人全員が揃っていた。どうやら、僕達が一番最後だったようだ。
「あ、雅君、千聖ちゃん、おはよう!」
「おはよう彩ちゃん。みんな早いね」
「おはよう。待たせてしまったみたいね。ごめんなさい」
「いえいえ、自分たちが早かっただけで、千聖さんが遅刻したわけでは無いですから。謝ることは無いですよ」
確かに、僕達は遅刻していない。むしろ、僕達も早かったぐらいだ。当然のことながら、どうやら今日は皆やる気十分みたいだ。これなら、本当に今日は最高のイベントが期待できそうだ。
「失礼するよ」
そして、僕達が到着してからしばらく経ったころだった。控え室に一人の男性が入ってきた。特徴的な男性。頭に乗せられたテンガロンハットと顎下に伸びた髭が特徴の男性。紛う事無き人物、早乙女仁さんだ。
「仁さんおはようございます。今日はよろしくお願いします」
「グッドモーニングミヤッビー。あぁ、トゥデイは頼むよ。ユー達」
「早乙女仁さん。お会いできて光栄です」
「OK。堅苦しいのはナッシングだ。ミーはそういうのが苦手なんでね。ユーがミヤッビーのラバー、チーサだね?よろしく頼むよ」
ちょっと待ってほしい。ナチュラルにこの人僕達のことをラバーって言ったよ。チラッと千聖の方を見てみると、顔がトマトのように真っ赤になっていた。
「ら、らーらららーらら、ららら、ら、らー、ら」
「おー千聖ちゃんがモールス信号しゃべってるよ」
「日菜さん、モールス信号はしゃべる物ではないですよ」
「まるで壊れた蓄音機みたいですね!」
「イヴちゃん、なんで古くなってるの。普通は壊れたラジオって言うところだと思うよ」
「彩さんもそういう問題では無いと思いますよ」
「ははっ、マリーから聞いてたとおり、見かけによらずウブなガールのようだな」
あ、この人確信犯だったんだ。なら余計質が悪い。千聖はまだ元に戻りそうに無いし、困った物だ。
「まぁ、千聖さんに関しては、戻ってくるのを待つしか無いみたいですのでお先に挨拶をしますね。ドラムを担当している大和麻弥です。早乙女さんのことはいつもテレビ等で見ています。今日はよろしくお願いしますね」
「ボーカル担当の丸山彩です。Marmaladeのプロデュースをしている早乙女さんに会えて、感激していますっ!今日は本当に、イベントに招いていただいてありがとうございますっ!」
「キーボード担当の若宮イヴです!早乙女さんに感謝の気持ちを込めて、今日はブシドーの気持ちでがんばりますね!」
「ギター担当の氷川日菜だよ。今日はキラッてしたイベントに絶対するからね!」
「OK。マーヤにアーヤにイヴにサンガールだな。トゥデイはエクセレントなステージを頼むよ」
うん。マーヤやアーヤにイヴはまだいい。というより、イヴちゃんだけ普通なのも気になるけど、サンガールって何?なんで日菜ちゃんだけ原形とどめてないような呼び方になってるの?仁さんの人の呼び方はいつも謎だ。
「サンガール?」
「あぁ、ソーリー。昔フランスに留学してた影響でね、イングリッシュが抜けないんだ。許してほしい」
「フランスなのに、英語?フランス語じゃなくて?」
「日菜ちゃん、気にしても仕方が無いよ。仁さんはこういう人なんだって思っておいたらいいよ」
「おいおいミヤッビー。さすがのミーも少しショックを受けるぞ」
「あ、すいません。そういうつもりじゃなかったんですけどね」
「ら、ラバー!?」
「あ、チサトさんが帰ってきました!」
「ずいぶんと長い旅でしたね。自分少し心配になってきてましたよ」
本当にそう思う。今までも頻度は少ないけど、割と千聖は今回のようにどこかにトリップすることがあった。千聖の気持ちを知る前の僕は、千聖がどうしてしまったのか、何がそうなるスイッチなのかもわかってなかったけど、今になるとスイッチも理由もわかる。わかるからこそ、嬉しくもなる。僕のことをそれほど想ってくれてるということなのだから。まぁ今回のはさすがに長かった気がするけど。
だけど、仁さんのおかげなのかはわからないけど、みんなに緊張は無さそうだ。心配だった彩ちゃんも楽しそうにしている。これなら良い感じにリラックスしてみんな本番に臨めるかもしれない。本番の時は刻一刻と近づいてる。もうすぐ本番がやってくる。そんな本番前とは思えないような、和やかな事務所の様子だった。
「Pastel*Palettesさん、スタンバイお願いします!」
ついにこの時が来た。僕達は現在舞台袖に来ている。そして、スタッフさんに呼ばれたということは、ついに出番が回ってきたということだ。
「うぅっ、なんだか緊張してきたよ・・・」
「ふふっ、彩ちゃんは本当に本番に弱いのね。でも、それも彩ちゃんらしくていいと思うわ」
「千聖ちゃん、それって絶対ホメてないよね?」
まぁ、これも千聖なりの彩ちゃんへの配慮だったんだろう。心なしか、彩ちゃんの表情に少し余裕ができたように思う。
「あ、そうだ!みんなであれやってみない?あの、本番前にみんなで輪になって手を重ねるやつ」
「円陣ね。いいんじゃないかしら?」
「自分もいいと思いますよ。なんだか、アイドルって感じがしますね!」
「私やってみたいです!これで士気向上ですね!」
「おーイヴちゃん難しい言葉知ってるねー。いいんじゃない?あたしもなんだかるんってきた!」
そう言って、みんなが順番に手を重ねていく。一番下が彩ちゃん。その上に、イヴちゃん、日菜ちゃん、麻弥ちゃんの順で続き、最後に千聖がみんなを包み込むように手を重ねる。
普通なら、これでかけ声を言って手を離して終わり、なはずなんだけど、みんな何も言う気配がない。それどころか、全員で何かを期待するように僕のことを見ている。どうやら、彼女達の中では僕も頭数に入っているらしい。
僕は実際にステージに立つわけではないんだけど、そんなの彼女達には関係無いらしい。だったら、せめて彼女達の期待には応えよう。僕の手を、千聖の手の上に置く。せめて、僕の想いだけは一緒にステージに立たせる。この想いが少しでもみんなに伝わるように。そういう意を込めて、僕は静かに手を重ねた。
「ついに、この時が来たんだね。私、Pastel*Palettesの丸山彩になれて、本当によかった!」
「アヤさん、まだ終わったわけでは無いですよ!今から修行の成果をみなさんにお見せしましょう!」
「そうだね!今日は絶対、みんなピカッとして、お客さんがグッとくるようなキラッとしたステージにしようね!」
「最初は、自分なんかがアイドルなんて絶対無理だって思ってました。だけど、みなさんと一緒に汗を流して、笑っているうちに、なんだか自分でもできるんじゃないかと思えてきました。みなさん本当にありがとうございます。ふへへ」
「麻弥ちゃんなら立派にアイドルとしてやっていけるわよ。私が保証するわ。だけど、ふへへは禁止ね。みんな、本当にこの一ヶ月頑張ってきたわ。やれることは全部やってきた。だから、本番だからといって特別何かが変わるわけでは無いわ。レッスン通りやれば私達ならきっと大丈夫よ。みんなで、夢の続きを見ましょう?」
「僕は、みんなと一緒にステージに立つことはできない。本当に残念だけどね。だけど、覚えてて。僕の魂はみんなと一緒にいつもいる。みんなの中に置いていくから。だからこそ、あえて言うね。僕達は6人でPastel*Palettesだ。僕の分も思いっきり楽しんできて?」
みんなの表情に不安の色は一切見えない。ここにいる全員、この1ヶ月不安が消えるまで頑張ってきた。千聖の言う通り、やれることは全部やってきた。後は結果で示すだけだ。みんな気合いは十分だ。そして、最後の一押しに彩ちゃんの掛け声が入る。
「よーし、みんな!がんばるぞー!」
そして、全員でずっこけた。いや、彩ちゃんらしいけど。
「え?みんなどうしたの?」
「あ、彩ちゃん。もうちょっと皆引き締まるような掛け声はなかったのかしら?」
「えー!そんなの私わかんないよ!」
「あはは!いっそのことブシドー!とかの方がよかったかもね!」
「ひ、ヒナさん!ブシドーは掛け声では無いですよ!」
「ま、まぁこの方が自分たちらしくていいんじゃないですか?」
「ははっ、そうかもしれないね。僕もそんな気がするや」
確かに、この方が僕達らしいかもしれない。Pastel*Palettesらしい色が出ていると思う。緊張感は無いけれど、その方が本当にPastel*Palettesらしい。
「Pastel*Palettesさんお願いします!」
「はいっ!いこう、みんな!」
そして、ついにお呼びがかかった。さぁ、泣いても笑ってもここで全てが決まる。
「みんな、頑張ってね!」
返事は無かった。だけど、みんなが振り返って微笑んでくれた。それだけで、皆の気持ちがよく伝わってきた。なんだろう、いつもは人の気持ちに疎いって言われる僕だけど、今日は何故かみんなが言いたいことが言葉にせずともよくわかる。不思議な感じだ。
「みなさーん!こんにちはっ!私達、Pastel*Palettesです!まずは一曲聞いて下さい!しゅわりん☆どり~みん!」
ついに、始まった。彩ちゃんの歌声が聞こえてくる。その歌声は少しだけ堅い。だけど、気になるような問題でもない。むしろ、そちらの方が逆にリアリティがあっていいと思う。演奏も完璧と言っていいレベルだ。心配してたイヴちゃんも、素人だと言われても誰も信じないような演奏を披露してくれている。これなら、なんの問題も無さそうだ。
お客さんの声はここからだと少し遠くて聞こえない。だけど、反応を見る限り、どうやらみんな驚いてくれているようだ。それもそうだろう。今までただのエアバンドだと思っていた少女達が今日は、生演奏でプロ顔負けの演奏を披露しているのだ。みなそれぞれに鳩が豆鉄砲を喰らったような表情をしているのがわかる。そして、一曲目は無事に終了した。
「みなさん、改めましてPastel*Palettesのボーカル彩です!今日は来てくれてありがとうございます!最初に、みんなに謝りたいことがあります。私達は、前回のステージで歌も演奏もしていませんでした。みなさんに嘘をついてしまったこと、とても申し訳なく思っています。本当に、ごめんなさいっ!」
彩ちゃんの声に合わせて全員が頭を下げる。誰にも見られていないのはわかってるけど、ついつい僕まで一緒に頭を下げてしまった。
「本当は演奏するつもりだったけど、練習が間に合わなかった・・・って言っても言い訳にしかならないですよね。ごめんなさい、忘れて下さい。こうしてまたチャンスをいただけたことをとても嬉しく思っています!本当にありがとうございます!そして、これからもPastel*Palettesをどうぞよろしくお願いしますっ!」
その言葉に合わせてまた頭を下げるみんな。僕もまた一緒に頭を下げる。誰も見ていないとしても、下げずにはいられなかった。だけど、安心した。多くの歓声が客席の方から聞こえてきている。それが意味することは、皆が受け入れられたということ。安心した。
そして、みんなの様子を見てみる。みんな思い思いに安心したような表情をしている。これまでの努力が無駄じゃなかったとわかったんだ。当然だろう。そして、彩ちゃんの様子を見てみると、感極まって今にも泣きそうになっていた。これはまずいかもしれない。彩ちゃんはMCだ。MCが泣いてしまっていてはまともに進行ができない。彩ちゃんをなんとかしないと。
「みなさん、ベース担当の白鷺千聖です。こんにちは。生演奏ならではの臨場感をみなさんに楽しんでいただけたみたいで、何よりです!彩ちゃんのおかげね」
「ええっ!?そ、そうかな?ていうか、喜んでいいのかな?それ」
「私達はまだまだ未完成ですが、少しずつ、夢に向かって前に進んでいます。もっともっと前に進むために、応援よろしくお願いします!」
さすが千聖、ナイスフォローだ。正直、彼女がいないと大変なことになっていたかもしれない。無事、彩ちゃんも回復できたみたいだ。本当によかった。
「ねーねー、お客さんたちー!日菜ちゃんの演奏もちゃーんと見ててよねー!」
「私も、ブシドーのすばらしさがみなさんに伝えられるようにがんばります!」
「じ、自分もが、がんばります。す、すいません緊張してて。ふ、ふへへ、あっ、またふへへって言っちゃいました。本番前にも千聖さんに注意されてたのに・・・」
「それじゃ、次ももちろん生演奏でみなさんにお聴かせしたいと思います。彩ちゃん、曲紹介よろしくね」
みんなの機転で会場のボルテージはMAXになった。ここまで大歓声が聞こえてくる。さぁ、ここからが本当の見せ場だ。次の曲はあの曲だ。
「は、はいっ!この曲は、今日のために私達のたーいせつなお友達が態々作ってくれた新曲です!聞いて下さい!」
この曲で、お客さんの心を完全に掴む。この曲で、世間が持っている彼女達に対する悪感情という壁を壊す。いや、今となってはそんなもの壁ですらない。彼女達の地道な活動や、今日のここまでの彼女達のステージによって、そんなものはすでに存在しない。あるとしても、それはもはや壁ではない。軽くたたけば割れるようなただのガラス板だ。さぁ、今こそ目の前のガラスを割ろう。これから起こるのは革命だ。Pastel*Palettesによる革命だ。だからこそ名付けた。この曲の名前は
「パスパレボリューションず☆」
色が付いたその曲は、僕の想像を超えていた。
「すごい・・・」
ただただ、感嘆の声しか出てこない。まず最初に驚いたのは、その曲に付いた色は決して1色では無かった。彩ちゃんの努力の色。麻弥ちゃんの優しさの色。イヴちゃんの向上心の色。日菜ちゃんの自由の色。そして、千聖の愛の色。この5色が高いところで混じり合い、見事な共存を果たしている。聞いてて楽しくなってくる、まさに感情のフルコースだ。
「これが、アイドル・・・」
僕は今までその分野に対してあまり踏み込んだことは無かった。だけど、彼女達に出会い、そして仁さんに出会い、アイドルという分野の奥深さに驚嘆した。僕の知らない音楽の世界。僕の知らない音楽の色。あぁ、本当にあの時、事務所の依頼を受けて大正解だった。こんな素晴らしい経験ができてるのだから。
そして、演奏が終わる。客席からは惜しみない拍手と歓声が送られている。彼女達の表情も満足そうだ。これで、全ての不安は割れて砕けた。惜しみない拍手に見送られながら、彼女達が舞台袖に帰ってくる。
「みんな、お疲れ様。最高のステージだったよ!」
「雅君、ありがとう!私、ほんっとうに楽しかった!」
「ミヤビさん、ありがとうございます!私も本当に楽しかったです!さぁみなさん勝ち鬨を上げましょう!おー!」
「おー!雅君、あたしのステージどうだったー?可愛い日菜ちゃんに見取れちゃったかなー?」
「じ、自分は緊張して気が気じゃ無かったです・・・ですが、雅さんが自分の中にもいてくれてると思うと、自然と勇気が出てきました。雅さん、本当にありがとうございます」
「雅、本当にありがとう。ここまで来れたのも本当にあなたのおかげよ。今までも、今日も、本当にありがとう。これからも、よろしくお願いするわね?」
口々にお礼を言ってくれるみんな。今そんなこと言われたらダメだ。必死に堪えていたけど、もう限界だ。
「ふふっ、そろそろ限界だろうと思っていたけど、やっぱりね」
「あ、ミヤビさんが泣きました!」
「おー千聖ちゃんが言ってた通り、ほんとーに感動的場面に弱いんだねー」
「ところで、なんで彩さんも泣いてるんですか?」
「ふえぇ!?だ、だって、なんだか安心しちゃって、それに雅君の涙を見たらつられちゃって、ううっ・・・」
二人して涙を流す僕と彩ちゃん。それを優しく見守る4人。なんだか恥ずかしくなってきた。でも、泣いている場合でもない。まだ、決着は付いていないのだから。いや、Pastel*Palettesとしての決着自体はもう付いた。それに関しては、もう懸念事項は無い。
今日で全てに決着を付ける。昨晩僕はそう決意した。全てとは、何もPastel*Palettesのことだけでは無い。僕達の関係にも決着を付ける。今日のステージにより、僕達の汚名は返上できた。つまり、僕の夢も再び歩みを始めた。唯一の懸念も無くなった。僕達の関係を進展させるときだ。僕達の関係を妨げるガラスも割る。
さぁ、最後の大勝負だ。黒城雅、今までの人生最大の大勝負が待っている。僕は、静かに、だが熱く決意を込めて、流す涙を拭うのだった。
どうも、ソウリンです。
雅編初の文字数8000字どころか、9000字超え(白目
本当は最後もう少し加えるつもりだったんですけどね、文字数の都合上雅編ではカットしました。この続きは千聖編でご確認下さい。
今回のサブタイトルは欅坂46さんのガラスを割れ!です。
みなさんは欅って漢字書けますか?自分は書けないです(白目
まぁ欅坂46さんは好きですけどね。次話サブタイトルも欅坂46さんの曲から付けます。まぁ欅坂46さんの曲を知ってる方からしたら、簡単に予想が付くと思います。いや?そうでもないのかな?わかんないです(白目
それと、前前話サブタイトルはとある曲の歌詞からも取ってると言いましたが、はい、パスパレボリューションず☆がその答えです。
この曲、曲調自体はアイドルアイドルした曲なんですけど、割と歌詞は良いこと言ってたりするんですよね。
因みに、前話のテーマ的内容になっていた「不安なら不安が消えるまで頑張る」これも同曲の2番の歌詞からの引用だったりします。気づいた方おられたかな?
後、気になった方もおられるかもしれませんが、今作、彩ちゃんの歌うか歌わないかの最後の葛藤シーンはカットされました。「かっと」うだけに。(寒
まぁ、正確には回避されました。5,6話で千聖と雅が二人で反対意見出した影響ですね。これ以上空演奏につながること言ったら、本当に雅に曲作ってもらえなくなるかもしれないと思ったスタッフさんが、その思考を捨て去りました。
この世界は彩ちゃんに優しい世界なんや!千聖との衝突も回避されるし!
因みに、そんな彩ちゃん。今作ではちょっとした裏設定があったりします。まぁ、それはその内本編で書くかもしれないですね。書かなかった場合、またどこかのあとがきで書きます。
まぁ、他にも裏設定のあるメンバーはいるんですけどね。
では、今回はこのへんで。
次話は千聖編です。次話で1章完結です。午後12時に投稿します。
ではでは、次回もよろしくお願いします!