雅編です
爽やかな朝だった。
季節は初夏に差し掛かり、本格的な夏の訪れを予感させる、暑い日々が続いている。
そんな中、この日は比較的涼しい朝を迎えていた。
「えーっと、あれは・・・」
「はい、雅お醤油」
「あ、ありがとう」
そして、いつもと変わらぬ朝を僕達は過ごしていた。穏やかな、いつもの朝。
「おやおや、『あれ』だけで意思が伝わるなんて、本当にもうどう見ても夫婦ですよね」
「ちょ、ちょっと、千景!かかかからかうのはやめなさい!」
ただ一つ、千景の存在を除いて。本当になんでいるの?
「千景、今日はどうしたの?休日とはいっても、朝から僕の家に来るなんて珍しいよね?」
「あ、すいません。熱いお二人の邪魔になってますよね」
「いや、誰もそんなこと言ってないから」
ダメだ。朝から調子が狂いそうになる。彼女も方向性は違うけど、薫に似たものを持っている。つまり、長時間絡んでると疲れる。二人とも実際には良い子なんだけど、長時間傍にいるのは勘弁して欲しい。
「まぁそれはおいておいて、今日はおにいさんライブですよね?」
「そうだね。ライブだね」
確かに今日僕は、ライブの予定が入っていた。ただし、僕の単独ライブというわけではない。あのMarmaladeとの共同ライブだ。どうしてこんなことになっているかというと、約一月前のあのパスパレ復権イベントの日、なんとわざわざ仁さんからお声かけいただいたのだ。彼女達とのいい記念になるからとのことだったけど、その真意まではさすがにわからなかった。なんの記念なんだろう?
そして、本来なら打ち合わせやらチケットの販売準備などの関係で、もっと時間がかかるところを、なんと約一ヶ月でライブを行う強行日程になった。これも仁さんの要望で、時間が無いからと言っていた。何の時間なのかはさっぱりだ。
「それでですね、私も今日はライブを見に行きますので、今日のおにいさんの状態を確認しに来たのです。体調に異常は無いですか?ちゃんと睡眠は取れましたか?」
「大丈夫だよ。コンディションばっちし!今日のライブ、期待しててね!」
「ふふっ、がんばってね。私もレッスンが終わってからすぐに行くわ」
「うん、満足してもらえるようなライブに絶対するよ!」
千聖が来てくれるのは知っていたけど、どうやら今日は千景も来てくれるらしい。これは、絶対今日のライブは成功させないといけない。なんだかやる気が漲ってきた。今からライブが楽しみだ。
「・・・続いてのニュースです」
その後も僕達三人は、朝のニュースをBGMに、穏やかな朝を過ごしていた。今日も千聖の作る朝食はおいしい。それは当然わかっていることなんだけど、以外にも千景も千聖に負けず劣らずの料理の腕前をしている。
まぁ、千聖は僕の好みを僕以上に熟知している。その分、やっぱり千聖の料理の方がおいしく感じてしまう。だけど、実際に違う人が口にし、審査した場合、甲乙付けがたいんじゃないだろうか?運命の人を料理で釣れそうなほどの腕前だ。
「・・・ここで臨時速報が入ってきました」
そんな、脳内で二人の料理勝負を思い描いてるときだった。テレビのアナウンサーが臨時速報と銘打って、何かを伝えようとしている。人間誰しも、そんな前置きをされたら内容がどうしても気になってしまうだろう。僕だってそうだ。今まで聞き流していたニュースに耳を傾ける。
「人気アイドルグループMarmaladeが、来月のライブを最後に電撃解散することを発表しました」
「・・・え?」
僕の耳はおかしくなってしまったのだろうか?確かに、アナウンサーは、電撃解散と口にした。誰が?人気アイドルグループが。グループ名は?Marmalade。聞き間違いで無ければ、確かにアナウンサーはそのように伝えた。僕は、いや僕達は、その後のアナウンサーの声が全く耳に入ってこなかった。誰も動くことすら忘れて、ただ呆然としていた。
「嘘・・・ですよね・・・?」
最初に声を出せたのは千景だった。その声のおかげで、少しづつ現実に思考が帰ってくる。
「わからない。でも、確かめなくちゃいけない」
今日は、ちょうど彼女達に会える。その時に確認すればいい。正直に言うと、嘘だと言って欲しい。だけど、これが現実なのだろう。僕達は、その後も口数少なく、不穏な朝を過ごすのだった。
ライブ会場に到着した。会場にはすでに多くのお客さんが押し寄せている。今日の合同ライブは話題性もあり、聞いた話によると、チケットも即日完売したらしい。欲しくても手に入らなかったファンも多いとのことだ。
「雅君、久しぶり!去年の音ステ一緒に出て以来かな?」
控え室に入って数分のことだった。一人の女性が入ってきた。彼女はあゆみさん。Marmaladeに所属するアイドルだ。彼女とは何度かテレビ番組などで共演したことがある。去年の音楽ステーションという番組に共演したのが最後の共演となっていたが、こうやって今日、また同じステージに立つことができる。間違いなく、今日が最後の共演になるのだろうけど。
「あゆみさん、お久しぶりです。今日は誘っていただいてありがとうございます」
「いいのよ。私も、いい思い出になるから」
「あゆみさん、解散するっていうのは・・・」
「雅君、暗い話は終わってからにしよ?今は、ステージをおもいっきり楽しみましょ?」
「・・・そうですね。今日はよろしくお願いします」
簡単に挨拶を済ませると、あゆみさんんはそのまま控え室を出て行った。彼女にしては珍しい。いつもなら、控え室に来るともっと長居していくのだが、非常に短い挨拶だった。
「まぁ、アーミーにも複雑な事情があるんだ」
「あゆみさんは兵隊かなんかですか」
あゆみさんと入れ替わるように、一人の男性が入ってくる。仁さんだ。そして、相変わらずのネーミングに思わずツッコんでしまった。何?アーミーって。いつからあゆみさんは兵隊になったのだろう。
「まぁ、シー達に関しての事情はラバーも交えてトークしようか。入ってきたらどうだい?」
仁さんが誰かに対して入室を促す。仁さんはラバーと言った。その時点で誰のことかは検討がつく。だけど、どうして彼女がここにいるんだろう?ここは関係者専用の控え室。いくら彼女とはいえ、入室は許されてないと思うのだけれど。ほどなくして一人の少女が入ってくる。予想通り、そこにいたのは千聖だった。
「千聖?どうしてここに?」
「ミーが呼んでおいたのさ。今からするトークはシーにも一緒にリッスンしてほしかったからね」
「えぇ、会場に着いたら雅の控え室に来るように早乙女さんに呼ばれたのよ」
どうやら千聖のことを呼んだのは仁さんらしい。だけど一体、仁さんが千聖にも聞かせたい話とは一体なんだろう?
「まず、今回のMarmalade解散のリーズンからだ。それは、とあるメンバーのマリッジだ」
マリッジ。つまり結婚。ニュースではそこまで報道はされていなかった。おそらくまだ、情報規制をかけているのだろう。そんなことを今僕達に言ってもいいのだろうか?
「ユー達にはリッスンして欲しかったんだ。シー達も今回のことで悩みに悩んだ。解散か、残りのメンバーで活動継続か。そしてメンバー全員で出したアンサーが解散だった。Marmaladeは全員揃ってこそMarmalade。例え一人でも欠けたらそれはもうMarmaladeじゃ無い。それがシー達のアンサーだ。アーミーもそう認めた。だが、シーは本当にMarmaladeのことがベリーライクだった。今もそれがベストだと理解はしている。メンバーのマリッジを祝福するべきだということはわかっているし、実際祝福している。だが、解散したくないと思っているシーが、シーの中にいるんだ。このままだと、シーは解散することをリグレットしてしまうだろう。なんとかリグレットの残らない方法は無いかと考えてはいるのだが、全くグッドなアンサーが出てこない。シー達のフリーダムを尊重したい。そう思って、シー達の事務所ともトークして、ラブに対する規制を設けてなかった弊害が今回の解散だ。ミーも、その措置がベストだと思っていた。実際に、シー達のフリーダムを尊重することによって、シー達のパフォーマンスはエクセレントなものになった。だが、このままだと、ミーも、アーミーもリグレットしてしまうかもしれない。ユー達の事務所もラブに対する規制は設けていないだろ?だからこそ、ユー達の関係が認められているわけだから。だが、チーサ、ユーもアイドルなのだからこれだけはラーンしておいてほしい。ラブは、少なからず周りにも影響を与えると。ユー達の関係は応援しているが、そのことだけはラーンしておいてほしい。ロングトーク失礼した」
仁さんの言葉が心に響く。愛は周りにも影響を与える。確かにそうなのだろう。影響を与えた上で、それが決して良い影響とも限らない。あゆみさんも、仁さんも、このまま解散してしまったら後悔が残る結果になってしまうのだろう。何かいい打開策は無いのだろうか。
「では、ミーもこれで失礼するよ。今のミーのトーク、よく考えてみてほしい。では、また後で会おう」
そう言い残して、仁さんは事務所を出て行った。今思えば、おそらく一ヶ月前のあの復権ライブの時にはもう解散が決まっていたのだろう。だからこそ、今回の合同ライブを仁さんは企画した。少しでも、あゆみさん、それに仁さんの後悔を無くすために。
「愛って、重いのね」
「そう、だね」
愛は重い。だからこそ、大切にしたい。だからこそ、影響が大きい。おそらく、この先も僕達の関係が進展、まぁつまり本当に夫婦になるとすると、その時パスパレのみんなはどうするんだろう?やっぱり今回のあゆみさん達のように解散という選択をするのだろうか?彩ちゃんあたりは間違いなく大泣きするだろうな、と思う。
「雅、Marmaladeのことも気になるのだけど、実は彩ちゃんも今問題なのよ」
「彩ちゃんが?」
彩ちゃんに一体何があったんだろう?昨日も会ったけど、その時はいつも通り元気そうだったけど。
「実は、彩ちゃん、Marmaladeのあゆみさんに憧れてたそうなのよ。それで、解散することを知って、元気が無くなっちゃって、レッスンにも全く気が入ってないみたいで・・・」
「あらら、それは大変だね」
言われてみれば、アイドルとしての彩ちゃんのスタイルはあゆみさんに似ている。彼女に憧れているというのも納得できる。そこで、僕はふと、あるアイデアを思いつく。うん、上手くいくかはわからないけど、もしこれが上手くいけば彩ちゃんは元気になり、あゆみさん達の後悔も無くせるかもしれない。
「そうだね。彩ちゃんに元気になってもらうために、一つサプライズプレゼントを用意しようか」
「サプライズプレゼント?」
そう、サプライズプレゼント。そのために、彼女達の協力が必要だ。それがサプライズのための第一条件。それさえクリアできればきっと上手くいく。僕は、頭の中で計画を組み立てつつ、ライブの準備を進めていった。余談にはなるけど、その日の合同ライブは、大成功に終わった。千聖も、ずっと興奮しっぱなしだったと終わってから僕のかっこよさについて熱弁してくれた。かなり恥ずかしかった。
そして、それから一ヶ月ほどが過ぎた。今日はMarmaladeの解散ライブの日だ。今はまだ開場一時間前にも関わらず、すでに多くのお客さんで入り口前は溢れかえっている。そんな中、僕は関係者入り口前にいた。ここで今は人を待っている。
「雅、連れてきたわよ」
ほどなくして、千聖が来る。千聖だけでは無い。そこには日菜ちゃん、イヴちゃん、麻弥ちゃん、そして彩ちゃん、Pastel*Palettesメンバー全員がそこにいた。
「み、雅君?どうしてここに?それにここって関係者入り口だよね?こんなところにいたらまずいんじゃ」
今から行うことは彩ちゃんにだけは伝えていない。当然だ。これはサプライズなのだから。教えてしまっては意味が無い。
「大丈夫だよ。事前に仁さんに許可はもらってるから。さぁ、こっちだよ。着いてきて」
そう言って、先頭を歩く僕。途中にはMarmaladeの控え室もあり、彩ちゃんの顔が段々緊張で堅くなっているのがよくわかる。この先のことを考えると、少し心配だ。
「さぁ、着いたよ」
「ここって?・・・ぱ、Pastel*Palettes控え室!?な、なんでこんなのがあるの!?」
そう、ここは正真正銘Pastel*Palettesの控え室。ここまで来れば、大体の察しはつくだろう。
「さぁ、みんな。そんなに時間は無いんだから準備を早くしちゃってね」
「えぇ、さぁ、みんな、いきましょ?」
千聖に促されて部屋の中に入っていくみんな。そんな中でも、彩ちゃんは未だに何が何やらわかっていないようだ。このままで大丈夫だろうか?
しばらくすると、彼女達が部屋から出てくる。そこには、メイクを整え、ライブ衣装に身を包んだPastel*Palettesの姿があった。
「雅、おまたせ」
「へへへー、さぁ、今日はがんばっちゃうよー!」
「私も、今日はやる気十分です!さぁ、いざイクサへ!」
「じ、自分は彩さんほどじゃないですけど、なんだか緊張してきました・・・」
「ちょ、ちょっと待って。衣装にまで着替えて、ほ、本当にどういうこと!?」
「彩ちゃん、本当はもうわかってるでしょ?」
「わ、わかってるけど、わかってるけど、そんなのって・・・」
「さぁ、もう時間だよ?行こう?」
そう言って、またもみんなの前を歩く僕。目指す先はライブステージ。その舞台袖にはすでに先客がいた。いや、お客さんなのは僕達なのだから、この表現はおかしいかな。主役の姿がそこにはあった。
「あゆみさん、今日はありがとうございます」
「ううん、お礼を言うのは私の方よ。一度、Pastel*Palettesのみんなとは共演してみたかったの。雅君、ありがとうね?」
「あ、あ、あゆみ、さん・・・!?」
「うん、Marmaladeのセンター、柑橘系な桃こと、あゆみです!」
やっぱり緊張している彩ちゃん。さっきから、言いたいことはいっぱいあるけど、なんて言っていいのかわからないようで、口をパクパクさせている。そして、やっとの思いで出てきたのは彼女の名前だった。
「な、なんで・・・」
「最近、彩ちゃんの元気が無かったから、雅がサプライズプレゼントとしてこの舞台を用意してくれたのよ。彩ちゃんにとっても良い思い出になるだろう、って」
「うん、私もPastel*Palettesのみんなと、彩ちゃんと最後に共演してみたかったから嬉しいわ」
「雅君・・・」
「さぁ、そろそろライブが始まるわ。私が合図したら入ってきてね?思いっきり楽しみましょ?」
そう言って、入場の準備をするあゆみさん達、Marmalade。今も彩ちゃんは緊張で堅くなっている。これじゃちょっと心配だ。
「彩ちゃん緊張する気持ちもわかるけど、そんなんじゃいいパフォーマンスできないよ?」
「うぅっ、でも・・・」
「それに、泣いても笑っても、あゆみさん達Marmaladeと共演できるのは今回が最初で最後なんだよ。楽しまなくちゃ絶対後悔するよ」
「後悔、する・・・」
「そう、だから、最高の思い出になる、最高のステージにしようよ!」
「最高の思い出・・・うん、そうだよね!こんなチャンス絶対にもう来ないよね!雅君、ありがとう!私、おもいっきり楽しんでくる!」
そう言う彩ちゃんは最高の笑顔をしていた。これならもう心配無いだろう。そして、ついにラストライブが始まった。
「みんなー!今日は私達のライブに来てくれてありがとうー!最後まで全力で楽しんでいってね!そして、今日はなんとサプライズゲストがきてまーす!まずは、彼女達とのオープニングイベントを行うよー!入ってきて-!」
「さぁみんな、後悔の無いようにね!」
みんながあゆみさんの声に従ってステージに入っていく。これが、僕が彼女に贈るサプライズプレゼントだ。アイドルとしての道を走り始めたばかりの彼女に贈る、最高級のプレゼント。その瞬間、客席にはざわめきが起こる。彼女達のことは、お客さんにも伝えていない。まさにサプライズだ。
「知っている人も多いと思うけど、いちお紹介するね!Pastel*Palettesのみんなです!今日私は、どうしても最後に彼女達と一緒のステージに立ちたかったから、わざわざ呼んじゃいました!じゃあ彩ちゃん、軽く自己紹介よろしくね!」
「はいっ!みなさんこんにちは!Pastel*Palettesボーカル担当の丸山彩です!今日は、憧れのあゆみさんに呼んでもらってここに立たせていただいてます!本当は、今すぐ泣きたい気持ちですけど、がんばって歌います!」
その瞬間に客席から歓声が飛んでくる。どうやら、お客さんにも歓迎されているようだ。実をいうと、お客さんに受け入れられるのか少し心配していた。でもその心配は杞憂だったようで、安心した。
「私達、Marmaladeは今日で解散しまーす!だけど、Marmaladeのバトンは、Pastel*Palettesのみんなに、私、あゆみのバトンは彩ちゃんに託します!みんな!これからはPastel*Palettesのことをもっと応援してあげてね!それじゃ一曲歌うよ!Pastel*Palettesで、しゅわりん☆どり~みん!」
曲が始まる。あゆみさんは、今日のためにわざわざこの曲を練習してくれた。二人で歌う彩ちゃんとあゆみさん。演奏するPastel*Palettesのみんな。振り付けを踊るMarmaladeのみんな。素敵なステージだった。まるで、初めて共演するなんて嘘かのような息の合いよう。本当に素晴らしいパフォーマンスだ。
曲が終わり、最後の挨拶を済ませてからパスパレのみんなが舞台袖に帰ってくる。みんなの表情は本当に明るいものだった。本当にステージを楽しんだのが容易にわかる。
「みんなお疲れ。どうだった?」
「素晴らしかったわ。本当に、いいステージだったわよ」
「もうみんなぴかってたよね!Marmaladeもあたし達も本当にみんなぴかってた!」
「最高の舞台でした!みなさん本当に武士のように輝いてました!」
「じ、自分は緊張しました・・・でも、それでも本当に素晴らしいステージでした。楽しかったですね」
「うん、本当に、楽しかった!雅君本当にありがとう!最高の思い出になったよ!」
みんな満足してくれているようだ。本当によかった。これでみんなの思い出に、Marmaladeは強く残っただろう。その後も舞台袖からライブを僕達は見ていた。そして、ついにその時は来た。
「みんなー!楽しんでくれてるかなー?・・・次で最後の曲になります」
「次で・・・最後・・・」
彩ちゃんのもの悲しい呟きが聞こえる。泣いても笑ってもこれで最後。これで、Marmaladeは解散する。
「その前に、少しだけいいかな?今日で、Marmaladeは解散します。だけど、Marmaladeがこの世界から消えるわけじゃないよ。もちろんあゆみも!みんなのなかで、Marmaladeは、あゆみはどんな存在ですか?きっと歌が苦手で、きめポーズがへんてこで、感動してすぐ泣く、だけど、何があっても絶対にめげない、諦めない!どんな時だっていつも笑顔!みんなにとって、そんな存在になれていたらうれしいです!そしてあゆみも、Marmaladeもみんなの中でずっと生き続けます!もしもつらいことがあった時、ぽんこつなりにがんばってた変なアイドルがいたな、って思い出して元気になってくれたら嬉しいかな」
「・・・っ、あゆみさん・・・」
彩ちゃんは堪えきれずに泣いていた。客席からもあゆみさんに対する熱い声援が飛び交っている。暖かくて、熱い声援が。
「ううっ、みんな、ありがとう!それでは最後の曲、全力で楽しんで下さい!」
最後の瞬間まであゆみさんから笑顔が消えることは無かった。その顔は涙でグチャグチャになり、アイドルとしてどうかと思うほど汚れていた。だけど、笑顔だけは消えることが無かった。そんな彼女は、まさしく最後までトップアイドルのあゆみだった。
そして、最後の曲が終わる。それが意味することは、Marmaladeの解散。ついに、彼女達のアイドル活動は終わりを迎えたのだ。
「・・・みんな行こうか」
そして、僕達は舞台袖を後にし、控え室に向かった。泣きじゃくる彩ちゃんをあやしながら。
控え室に戻ってきたみんなは、すでに着替えを済ませて帰り支度を整えていた。僕はこれからまたあゆみさんの所に寄っていこうと思う。今日のお礼を改めてしないといけない。だけど、その前に控え室の扉がノックされて、二人の人物が入ってきた。あゆみさんと仁さんだ。
「あ、あゆみさん!?」
「うん、あゆみです。彩ちゃん、みんな、今日は本当にありがとうね」
「そ、そんな、お礼を言うのは私の方で、あう、その、」
「あはは、緊張しなくても大丈夫よ。今はもう、アイドルのあゆみじゃなくて、普通のどこにでもいる女の子のあゆみだから」
「あゆみさん・・・」
その言葉に、少し緊張が解けたのか、彩ちゃんの表情が少し柔らかくなる。だけど、同時に解散した事実がまた悲しくなってきたのか、少し悲しそうにも見える。
「あの、私あゆみさんの言葉に勇気をもらって、アイドルを目指したんです!いつも言っていたあの言葉に感銘を受けて」
「どんな人でも、努力すれば夢は叶う。だからみんな、自分なんかなんて思わないで夢を見て欲しい、ってやつね。私もこの言葉を信じてがんばってこれたの。私の言葉、届いてる人がいてうれいいな。それでかな、彩ちゃんが私に似ている気がしたのは」
「えっ!」
「最初はお披露目イベントのことニュースで見て知ったの。そして、仁さんのイベントに出てる姿を見て、その中で彩ちゃんを見ているうちに、自分に似ている気がして。決して完璧なタイプではないけれど、それでもいつも笑顔で一生懸命なところとか、すぐ泣いちゃうところとか、他人な気がしなくて、それで一緒に共演してみたくなったの。彩ちゃんに興味があったっていうのが本音ね」
「あゆみさん、私、」
「彩ちゃん、今日のライブで、私はあなた達にバトンを託した。だけど、私達と同じ道を走らなくても大丈夫だからね?あなた達なら、私達を超えていける。だから、私達に囚われないでね」
「あゆみさんを、超える・・・」
「そう、大丈夫彩ちゃんなら絶対私達を超えるアイドルになれる。だって、彩ちゃんは何があっても絶対にめげない、諦めない、どんな時だっていつも笑顔!彩ちゃんなら絶対大丈夫!」
「・・・わかりました!私、あゆみさんを超えるそんなアイドルになってみせます!」
「うん、楽しみにしてる!本当は、今まで私も解散することを後悔してたの。だけど、彩ちゃんのおかげでその後悔ももう無くなった。私の言葉が届いてくれる人がいた。私の思いを受け継いでくれる人がいる。そう思うと、もう未練は無いわ。後悔は無いわ。よし、今から彩ちゃんに私直伝のとっておきの決めポーズ教えてあげるわね!」
「はい!お願いしますっ!」
どうやら、あゆみさんの後悔も消えて無くなったようだ。安心した。彩ちゃんも元気になってくれたみたいだし、今回の計画は全て上手くいったと言えるだろう。いや、まだ仁さんの後悔が残っている。これを無くさないことには、成功とは言えない。
「ミヤッビー。本当にサンキューベリーマッチだ。ユーのおかげでアーミーのリグレットは無くなったようだ」
「はい。でも、まだ仁さんの後悔が残っています」
「それこそ、ノープロブレムだ。ミーのリグレットは、アーミーにリグレットが残ってしまうことだからね。アーミーのリグレットが無くなった今、ミーのリグレットも無くなったということさ」
そういえばそうだった。仁さんに関してはなんの問題も無いんだった。これで全て万事解決だ。本当によかった。これで、誰一人後悔する人はいない。今回の計画は大成功に終わった。彩ちゃんも、パスパレのみんなも喜んでくれたみたいで何よりだ。これで、彩ちゃんもまた走り出すことが出来る。
パスパレのみんなは、アイドルとしての、アーティストとしての道を走り始めたばかりだ。これでも僕は、アーティストとしては彼女達の大先輩。可能な限り、彼女達を支えていかないといけない。それが、先輩の努めだと思うから。だからこそ、困ったときはいつでも手を差し伸べよう。また彼女達が走り出せるように。後に仁さんが言うには、みんなを見つめるその時の僕の瞳は、ひどく穏やかだったそうだ。
どうも、ソウリンです。
今回のサブタイトルは、ポピパの走り始めたばかりのキミにです。次話もポピパの曲からつけます。
2章は5000字~6000字程度と言ったな?あれは嘘だ(白目
いやーこのお話プロット考えてる時からじっくり書きたいと思ってたんですよねー
そしたら過去最長になりました(白目
もう後数十字で10000字だよ・・・
こりゃまだ現時点では執筆してないけど、千聖編は間違いなく10000字超えるな(遠い目
これでも内容やら色々削ったんですけどね・・・
まぁ、その後はたぶん5000字~6000字ほどになります。わからないですけど
それと、またまた☆10評価いただきました!ありがとうございます!大変励みになります!
それと同時に、初の☆3評価いただきました・・・少しへこみました・・・
うーん、前回投稿分、自分でも出来映えに納得できてなかったので、それが原因でしょうか?もっとクオリティ上げていかないといけないですね。読んで下さる皆さんに納得していただけるような作品を目指していきます!
それと最後に宣伝を。最近、丸山彩主人公のとある小説を書き始めました。まぁ、そちらの方は息抜き目的で、完全に自分の趣味とネタに走った小説なので、興味ある人だけ、ぜひ読んでみて下さい。まぁ、あくまで更新じたいはこちらを優先するので、こちらの更新が遅れるようなことは無いと思います。目標の1週間は守れる範囲で書いていきます。
では、今回はこの辺で。
次話は千聖編です。午後12時に投稿します
ではでは、次回もよろしくお願いします!