第25話です
雅編です
「あぁ、儚い・・・」
学校からの帰り道、僕は変人に出くわした。2度あることは3度あるとはよく言ったものだ。正にその通りだった。またも、同じ時間帯、同じ場所、同じシチュエーションで遭遇することになった。デジャブを感じる。だけど、まだ見つかっていないという状況も一致している。つまりは、逃亡するチャンスもまた与えられているということだ。これは過去からの脱却。逃れられずに奴に捕らえられた、過去の自分との決別。僕は、今ここで前に進む。
「おや?雅じゃないか。こんなところで出会うなんて、これも運命かな?」
「双子の弟です」
早くも失敗した。今回も儚い運命だった。
「なに?まさか、雅に双子の弟がいたなんて知らなかったよ。初めましてだね。私の名前は瀬田薫。こんなところで会えるなんて、感動的じゃないか。あぁ、儚い・・・」
「え?信じちゃうの?」
いや、こんなモロわかりの嘘を信じられたらこっちも困るんだけど。薫らしいといえば薫らしいけど。
「もちろん信じるさ。疑心からは何も生まれない。かのシェイクスピアもこう言っている。誰の言葉にも耳を傾けよ。口は誰のためにも開くなと。つまり、そういうことさ」
「いや、それは使いどころがさすがにおかしいと思うんだけど。普通に口動いてるじゃん?」
「つ、つまり、そういうことさ・・・」
いつものことながら、どうやら意味もわからず言葉を引用してるらしい。まぁ確かにそれっぽく聞こえなくもない・・・のかな?いや、やっぱり聞こえないかもしれない。
「それよりも、弟君の名前はなんと言うんだい?私に、君の声を聞かせてほしいのだが」
「え?僕の名前?」
どうしよう?なんだか、このまま実は僕本人ですって言っても信じそうにない。はぁ、しょうがない。元はといえば僕が蒔いた種だ。蒔いたつもりは全くないけど。今日はとことん付き合ってあげようか。どうせ、帰るまでの数分だけだろうし。
「えーと、
「
うん、僕の名前の読み方を変えただけだからね。劣ってはいないんじゃないかな?まぁ、僕は『みやび』という名前が割と気に入ってるから、断然そっちの方が良いけど。
「薫さん!また一人で勝手にいなくならないで下さいよ!」
そして、薫の戯れに付き合っていると、助け船が現れた。この状況をなんとか打開してほしい。そういう思いを込めて、僕は現れた彼女、奥沢美咲ちゃんに視線を向けた。
「おや?美咲?どこに言ってたんだい?勝手にいなくなってはダメじゃ無いか」
「それはこっちのセリフです・・・って、
「あぁ、美咲。彼はよく似ているが、
「え?いや、どう見ても
そこで、美咲ちゃんは何かに気づいたように、納得したと言わんばかりの表情を見せた。どうやら、僕が今置かれている現状に気づいてくれたようだ。ならば話は早いと言うように、僕は直ぐさま、美咲ちゃんに、助けを求める眼差しを向ける。答えはすぐに彼女の口から帰ってきた。
「そういえば、最近よく思うことがあるんですよねー。人生時には諦めることが肝心だって」
「急にどうしたんだい?美咲」
「いえ、なんとなく言ってみたくなっただけですよ」
つまり、そういうことだ。うん、美咲ちゃんに諦めろと言われました。儚い。
「そうだ、
「あー、えっと、奥沢美咲です。とりあえず、よろしくお願いします?」
「どうしたんだい美咲?なんだか挨拶がぎこちないじゃないか」
「あはは、そんなこと無いですよ?」
まぁ、美咲ちゃんとしては当然だろう。僕だって、見知った相手にいきなり自己紹介することになったら同じようなぎこちない挨拶になってしまう気がする。挨拶をするという違和感が凄い。
「そうだ
「え?」
どうしよう。僕はこの数分の会話だけで帰るつもりだったのに、まさか長期戦の誘いが来るなんて。ここは、なんとしてでも断らないと。
「なに。遠慮することは無いさ。こころもきっと歓迎するだろう。さぁ、行こうか」
「え?いや、ちょっと待って」
そのまま薫は、僕の腕を引っ張って行く。どうやら、僕に拒否権は存在しないらしい。儚い。
「諦める事って、大事だと思うんですよね。そうすることで、気持ちが楽になれる気がしますから」
美咲ちゃんはそう語る。ただ、その言葉は僕じゃ無い誰かに向けられている気がしたことだけ追記しておく。
そしてやってきたのは、僕もよく知る場所、羽沢珈琲店だった。どうやら、バンドのメンバーとここで待ち合わせているらしい。
「いらっしゃいませー!」
店に入った僕達を出迎えてくれたのはよく知る人物だった。この店の一人娘つぐみちゃんだ。
「あ瀬田先輩、美咲ちゃん、それに・・・
「おや?つぐみちゃんも
「はい。
「そうか。
なんで薫が誇らしげにしてるんだろう?まるで今にも、
「だけど残念ながら、彼は
「え?
「あぁそうさ。彼の名前は
「双子の・・・弟?」
まるで、何言ってるんだこの演劇バカとでも言いたげな表情で、僕と薫に交互に視線を送るつぐみちゃん。僕も同感だ。本当にこの演劇バカは何を言ってるんだろう?助けを求めるように、僕はつぐみちゃんにアイコンタクトを送る。助けて下さいつぐ神様。
「えっと、お、弟さんとは会うの初めてですね?羽沢つぐみです。これからどうぞよろしくお願いします」
結論を言うと、見捨てられた。もうダメだ。おしまいだ。つぐみちゃんにまで見捨てられてしまったら僕は誰に頼ればいいんだ・・・
「やっぱり、人生って時には諦めることによって前に進めるときもあると思うんですよね。羽沢さんもそう思いますよね?」
「あはは、そうだね」
いや、ここで諦めてしまったら僕はもう黒城
「ところで、こころ達はもう来ているかな?」
「あ、はい!こころちゃんとはぐみちゃんが先に来てますよ」
「そうか。ということは、花音はまだ来ていないのか」
ん?花音ちゃんがまだ来ていない?あれ?なんだか嫌な予感がするんだけど。花音ちゃんって、確かかなりの方向音痴だったような。大丈夫かな?
「では、私達も先にこころのもとへ行くとしよう」
「あ、はい!奥の席にいますよ」
そう言って奥の席を指差すつぐみちゃん確かに、そちらの方からは賑やかな話し声が聞こえている。薫の先導に従い、そちらの方に向かうと、そこには二人の少女がいた。
「薫、美咲、遅かったじゃない!」
「これで後はかのちゃん先輩だけだね!あれ?そっちの人は?どこかで見たことあるような・・・」
そう言って考え込むオレンジの髪をした子。だけど、どうやら思い出せずにいるようだ。
「まぁ、はぐみが見たことあるって言うのも当然だと思うよ。有名人だからね。黒城
「あ、そうだ!はぐみ、テレビで見たことあるよ!本当に、その黒城
「そっくりも何も、本人だから」
「へー本人なんだ!・・・で、そんな有名人がなんでこんな所にいるの?」
うん。それは僕が一番聞きたいんだけど。なんで僕はこんな所に連れてこられてるの?
「美咲、嘘はよくないんじゃないかな?はぐみ、彼は実際には
「え!?弟なんだ!すごいそっくり!」
「あーはい。そうでしたね」
本当に誰かこの演劇バカを止めてくれ。僕はいつになったら
「へー、あなたのお兄さんって有名なのね!あたしは知らないわ!」
「うん。素直でいい答えだね」
知らないことを恥じることも無く、言い切って見せた。下手に知ったかぶられるよりも好感が持てるね。
「ごめん!遅れちゃった・・・」
そして彼女達の談笑に付き合っていると、見知った少女がやってきた。花音ちゃんだ。だが、来たのは彼女だけでは無かった。彼女の横にもう一人、見慣れた少女がいた。千聖だ。
「おや?千聖じゃないか。君も一緒だったんだね」
「えぇ。あなたがみんなに迷惑をかけてないか確認しにきたのだけれど・・・あら?
そう、僕も来ていたんです。救世主が現れたことを、僕は大いに喜んだ。
「おや?千聖、さすがの君も間違えてしまうのだね?それほどそっくりということか。あぁ、愛しのお姫様にまで見間違えられるなんて、なんて儚いんだ・・・」
「えっと、何が言いたいのかしら?」
「千聖、彼は
「はい?」
いかにも、この頭のおかしな幼なじみは何を言っているんだ?とでも言いたげな顔で薫のことを見る千聖。僕も全面的に同意見です。そんな千聖に向けて、助けを求める視線を僕は送る。本当になんとかしてください。千聖様。千聖も、何かを探るような視線を、僕と薫、そして周りに向ける。そして、意を決したかのような
「ごめんなさい。一時帰国するって聞いてたのをすっかり忘れていたものだから、間違えてしまったわ。相変わらずお兄さんにソックリね。久しぶり、元気だったかしら?」
女優としての白鷺千聖の
彼女がそう決断したということはつまり、その方がこの場では得策と踏んだと言うこと。下手に真実を伝えるよりも丸く収められると判断したということ。ここは、彼女の判断に従うのが吉だろう。
「うん。ひ、久しぶりだねー千聖。た、偶々そこのに、兄さんのお知り合いの人?に出会ってここに来たんだ」
ダメだ。僕に演劇は向いていない。ものすごくぎこちなくなってしまった。それを見た千聖の頬が笑いを堪えるためか、ヒクヒク動いている。思わずつついてみたくなった。
「そういえば
「え?あ、そ、そうだね。えっと、初めまして、僕は黒城みや・・・
危ない。思わず
「次ははぐみだね!はぐみの名前は北沢はぐみだよ!よろしく!」
北沢。もしかして、商店街にある北沢精肉店の子だろうか?あのお店も昔からお世話になっている。千聖とよくコロッケを買い食いしたものだ。
「あたしの名前は弦巻こころよ!」
弦巻?え?弦巻ってあの弦巻?通りで育ちが良さそうなわけだ。日本有数のお金持ちじゃないか。
「さぁ、次は花音の番だ」
「え?あ、はい。えっと、松原花音です。よ、よろしくお願いします」
花音ちゃんも、自分まで自己紹介することになると思っていなかったからか、少しぎこちない。
「そういえば美咲。ミッシェルはまだかしら?」
「え?あぁ、ミッシェルは今日急用ができたから来れなくなったらしいよ」
「あら?それは残念ね」
「ミッシェル?」
「ミッシェルははぐみ達のバンドメンバーなんだよ!」
へー。まさか外国人までバンドに参加しているなんて。随分とラインナップの豊富なメンバーだことだ。
「そういえば、
「お兄さんは凄く歌が上手いよね!はぐみ、いつもテレビで聞いてビックリしちゃうよ!」
「あぁ、まぁそれなりに」
「あら?だったらあたし達のバンドに入らないかしら?」
え?なんで僕いきなり勧誘受けてるの?いや、入らないけど?
「いや、こころ、さすがにそれは無理だと思うよ」
「あら?どうして無理だと決めつけるのかしら?やってみなくちゃわからないわ!」
うん、丁重にお断りさせて頂こう。と、思っていたのだけれど、何やら後ろの方からひそひそ声が聞こえてきた。僕はその声が気になり、後方に目を向けてみる。見てみると、少し離れた席に黒い服に身を包んでサングラスをした数人の人物が座っていた。その人達がなにやらひそひそ声で話し込んでいる。僕はその声に聞き耳を立ててみた。
「・・・今すぐ黒城
なんだって?いやいや、待って下さい。いくらなんでもそれはダメだ。僕の人生にも関わってくる。どうすればいいんだ・・・
横にいる千聖も、今の声が聞き取れたのか顔を青くしている。さすがにこのままじゃ大変な事態に発展してしまう。
「こ、こころちゃん?残念だけど、
「そう?それなら仕方ないわね」
た、助かった・・・千聖のナイスプレーによりなんとか難を逃れた。それを聞いた黒服の人達も、予定を変更してくれたようで、携帯に向かって慌ててキャンセルを入れている。本当に寸前のところだったようだ。
「ま、
「え?」
便?便って一体なんの便だろう?そこで、僕はこれまでの千聖の話を思い出す。確か、千聖は僕の設定として、現在イギリスに住んでいるという設定を設けていた。さらには、一時帰国しているという設定を。そこから導き出される結論は、イギリスに帰る飛行機の便のことだろう。つまり、この場を去る口実を作ってくれているのだ。
「あ、そうだったね。もうそんな時間か。ごめんねみんな。もう帰らなくちゃ」
「あら?それは残念ね。また会いましょう!」
「はぐみも、今度はお兄さんのお話しも聞かせてほしいな!」
「
「まぁ、何はともあれお疲れ様でした」
「あはは、私はあんまり話せなかったけど、またね?」
「
「うん。ありがとう。じゃあみんな、元気でね。また手紙でも書くよ。じゃあね」
そう言い残して、僕と千聖は店を後にした。店を出るときに、つぐみちゃんになんだか申し訳なさそうな顔をされてしまった。おそらく、僕のことを助けられなかったことを申し訳なく思っているのだろう。本当に良い子だ。だから、去り際に気にしないで、とだけ言葉を添えて店を出た。
まさか、一つの何気ない嘘からこんなことになってしまうとは思いもしなかった。結局、みんなに助けを求めることしかできなかったし、千聖がいなかったらもっと大変な事態に陥っていたかもしれない。本当に千聖がいてくれて助かった。
今回の件から僕が得るべき教訓は、如何なる場合でも、嘘をつくのはよくないとうことだ。周りの人まで巻き込んでしまう。うん、やっぱり僕に嘘は似合わない。今度からは薫と遭遇してしまっても普通に対応しよう。そう誓った、ある夏の一場面だった。
どうも、ソウリンです。
大変長らくお待たせしました(白目
いやーほんどこんなに間が開くとは正直自分でも予想外でした。(おい
全部仕事が悪い。後、テニスする髭のおっさん(白目
はい、某テニスゲームにはまって土日執筆時間減ったりしてました。申し訳ないです。
あ、現在最強のキノコ♂目指して頑張ってるので、某テニスゲームやってる人は、ソウリンって名前のキノコ♂をオンライントーナメントで見かけたら自分だと思っておいて下さい。まぁ、シンプルルールにしか潜ってないですけど。
スタンダードって前作もそうでしたけど、なんか潜る気になんないんですよね。
シンプルの方が面白いと思う。
そして、ガルパではついに
パスパレ2章来ましたね!(終わった
はい、2章イベ期間中に全く投稿できないこのダメパスパレ推し作者・・・
いやーでも本当に2章良かったですね。もう自分何回泣いたかわからないです!
もう、何周もしちゃいましたね。
そして、あのお話しを読んで、千聖ちゃんに対する評価が上方修正された人は多いんじゃないでしょうか?
自分もそうです。今まで、個人的キャラランキング4位だったのが、ついにリサを抜いて3位に浮上しちゃいました。千聖尊い・・・
MVも本当に良かったですね。もう自分何枚スクショしたかわからないぐらい、MVスクショしちゃいました。日菜がかわいすぎてもう・・・
まぁその話はさておき、遅くなりましたが、前話誤字報告下さった方ありがとうございました!いやー恥ずかしい誤字をしました。
お気づきの方も多いかと思いますけど、千聖編に出てくる会話文で、雅編と同じ部分に関しては、コピペしてるんですけどね、はい、見事に誤字ごとコピペして、同じ部分を誤字報告頂いちゃいました(白目
これは恥ずかしい・・・
以降気をつけます・・・
それと、今回は完全コメディ回となっております。なので、お話の中にもいくつか小ネタ的なのを挟んでいたりします。まぁ、すぐわかるようなのばかりなんですけどね。見つけたら、あ、これこの作品のネタだ!とか思って頂けたらありがたいです。
そして、今回のサブタイトルは嘘。これだけなら、同じ曲名で歌ってる人は多いですね。今回のサブタイトルの嘘、これはシドさんの嘘です。次話もシドさんの曲からサブタイトルを付けます。わかりますかね?
といっても、今回のお話で、次話タイトルのヒント、というより答えが書いてあったりします。シドさんが好きな人ならわかるかと思います。
ヒントは自分の大好きな曲です(わかんねーよ
では、今回はこの辺で。
次話は千聖編です。例のごとくまだ執筆終わってません(白目
ですが、今から頑張って間に合わせます。午後12時投稿予定です。
ではでは、また次回もよろしくお願いします!