千聖編です
「ふえぇ・・・ここどこ?」
ショッピングの帰り、迷子に出会った。なんだか、以前にも同じような場面に出くわした気がするのだけれど、気のせいかしら?確か、以前は仕事の帰りに、そして今回はショッピングの帰りに。微妙なシチュエーションの違いはあるけれど、デジャブを感じずにはいられない光景。そんな光景が今私の目前で展開されていた。
「えっと、花音?何をしているのかしら?」
「あ、千聖ちゃん!」
私を見つけると、とたんに笑顔を花開かせる少女。私の親友、松原花音。その性質は極度の方向音痴。一体今日はどこに行こうとしていたのかしら?
「はぁ、また迷子になったのね」
「あはは、ごめんなさい・・・」
「なんで謝るのよ。それで、どこに行こうとしていたのかしら?」
「うん、今日はハロハピのみんなと羽沢珈琲店でお茶する約束をしてて・・・」
羽沢珈琲店?また学校から真逆の方向じゃない。普段からこんな調子で、生活に支障は無いのかしら?少し心配になる。
「はぁ、まぁいいわ。それじゃあ行きましょうか」
「え?一緒に来てくれるの?」
「えぇ、私もたまにはハロハピの皆とお茶したかったし、薫が皆に迷惑かけてないか見張る必要もあるわ」
「あはは、ありがとう、千聖ちゃん」
「気にしないで。それじゃ、行きましょうか?」
そう言って、私は羽沢珈琲店への道を歩む。ここからは少し距離があるけれど、歩けない距離では無い。電車を使う方が早いけれども、電車にはあまり乗りたくない。理由?そんなこと言う必要があるかしら?
「でも、本当に千聖ちゃんがいてくれて良かったよ。いてくれなかったら、私どうなってたかわからないよ・・・」
「そ、そうね。偶然とはいえ、ここで花音を見つけることができてよかったわ」
本当に、ここで花音を見つけていなかったら、この子はどこまで言っていたのかしら?そう考えたらぞっとする。その内、警察に捜索願を出さなければ行けない日が来るかもしれない。いっそのこと、発信器を仕掛けておこうかしら?それは、名案かもしれない。
「千聖ちゃんは、今日は雅君と一緒じゃないの?」
「えぇ、今日は私個人のお買い物に来たの。雅の家からは少し遠いし、私の個人的な買い物に付き合わせるのもさすがに悪いかと思って、今日は声をかけてないの。この後、雅の家には行くけれども。花音も来る?」
「それはさすがに遠慮するよ。二人の邪魔はしたくないし」
賢明な判断ね。実の所、誘ってはみたけれど、花音を雅の家に招き入れるつもりは最初から無かった。というのも、いくら花音とはいえ、雅の家に他の女の子が入るのは嫌。千景だけは、妹だし仕方なく、本当に仕方なく認めているけれど、できることなら、他の女の子は入ってほしくない。例え、花音やパスパレのメンバーだって例外では無い。
「そう?気にしなくてもいいのに」
「あはは、千聖ちゃん、顔に本音は招き入れるつもりありませんって書いてあるよ」
あら?それは大変、急いで消しておかないと。それにしても、そんなにわかりやすかったかしら?
「千聖ちゃんって、普段はポーカーフェイスが得意だけど、雅君のこととなると急に思考が筒抜けになるよね?」
そんなこと・・・あるかもしれない。そういえば、普段から雅のことになると、皆に考えていることを簡単に言い当てられていた気がする。そう思うと、なんだか恥ずかしくなってきた。
「あまり気にしなくてもいいんじゃないかな?それも、千聖ちゃんの良いところだと思うよ?それだけ、雅君のことを大切に思っているってことだもん。羨ましく思うな。そういうの」
そうね。花音の言う通りだと思う。雅のことを考えると、どうしても想いが先走ってしまっている気がする。それだけ雅のことが愛おしいってことでしょうけど。
「さぁ、着いたわよ」
そんな他愛も無い会話を繰り返している内に、私達は目的の場所、羽沢珈琲店に着いた。きっと、もう他の皆は着いているころでしょう。
「ありがとう、千聖ちゃん」
「どういたしまして。さぁ、入りましょう?」
そう言って、店の中に入る私達。中ではつぐみちゃんが出迎えてくれた。どうやら今日は家の手伝いをしているみたいね。
「いらっしゃいませ!あ、花音さん!千聖さんも一緒に来られたんですね!」
「つぐみちゃん、こんにちは」
「つぐみちゃん、お邪魔するわね」
「もう皆さん来てますよ!ただ、ちょっと大変なことになってるみたいですけど」
「大変なこと?」
「あはは、見る方が早いと思います。一番奥の席にいますので、どうぞ」
つぐみちゃんに言われるままに、一番奥の席に足を進める私達。そこには、ハロハピの皆がすでに集まっていた。薫もすでに来ており、相も変わらず態とらしい演技をしている。
「ごめん!遅れちゃった・・・」
花音の後ろから皆の席へ向かう私。席に辿り着いて気づいた。そこに一人、この場にいると思わなかった少年がいることに。
「おや?千聖じゃないか。君も一緒だったんだね」
「えぇ。あなたがみんなに迷惑をかけてないか確認しにきたのだけれど・・・あら?
どうしてここにいるのかしら?そして、どうしてそんな救いを求めるような瞳で私のことを見ているのかしら?
「おや?千聖、さすがの君も間違えてしまうのだね?それほどそっくりということか。あぁ、愛しのお姫様にまで見間違えられるなんて、なんて儚いんだ・・・」
「えっと、何が言いたいのかしら?」
「千聖、彼は
「はい?」
この頭のおかしな幼なじみは何を言ってるのかしら?双子の弟?そんなのいるわけないじゃない。これは一体どういう状況なのかしら?そういえば、店の入り口でつぐみちゃんが大変なことになっていると言っていた。これが、その大変なことなのでしょう。本当に厄介な事態になっているみたいね。
冷静になって、事の経緯を考えてみることにしましょう。薫が
そこから導き出される結論は、おそらく偶々
改めて思うと、どうしてこんな事態に発展してるのかしら?周りを見渡してみる。様子を見るに、こころちゃんとはぐみちゃんは嘘を信じていて、美咲ちゃんと花音はこの事態に呆れているみたいね。
だけど、問題はこの事態にどうやって収拾をつけるかね。真実を皆に知らせるのは簡単なこと。だけど、それはあまりいい手では無い。それはつまり、雅が嘘を付いたと皆にバレるということ。要するに、雅が嘘つきだと思われるかもしれない。それは不本意ね。
だったら、取る手段は一つ。嘘を真実にしてしまえばいい。ここからは、演技力の勝負。如何に、皆にこの嘘を真実だと信じ込ませるか。私は静かに決意を固める。必ずこの場を丸く収めて見せると。
「ごめんなさい。一時帰国するって聞いてたのをすっかり忘れていたものだから、間違えてしまったわ。相変わらずお兄さんにソックリね。久しぶり、元気だったかしら?」
うん、良い感じね。ここからは私の舞台。どんなアドリブにだって必ず応えて見せる。
「うん。ひ、久しぶりだねー千聖。た、偶々そこのに、兄さんのお知り合いの人?に出会ってここに来たんだ」
ダメ、応えられないかもしれない。雅の演技はお粗末なものだった。声は平坦で棒読み。セリフがぎこちなく、何度も噛みそうになっていた。思わず笑いそうになってしまう。ダメよ白鷺千聖。ここは舞台の上。決して演技を崩してはダメ。堪えなさい。
「そういえば
「え?あ、そ、そうだね。えっと、初めまして、僕は黒城みや・・・
ダメ、限界。なんで本名を言おうとしているの?ホント、ごまかす気あるのかしら?私は、ガマンできずに、下を向いて必死に笑うのを堪えていた。
「次ははぐみだね!はぐみの名前は北沢はぐみだよ!よろしく!」
はぐみちゃんの声がする。はぐみちゃんは、商店街にある北沢精肉店の子。あそこのコロッケは私も
「あたしの名前は弦巻こころよ!」
この声はこころちゃん。こころちゃんは、あの弦巻の家の子。その影響か、少し世間離れした発言や行動が目立つ。根は良い子なのだけれど。
「さぁ、次は花音の番だ」
「え?あ、はい。えっと、松原花音です。よ、よろしくお願いします」
そして、次は花音。花音については、特に語る必要も無いでしょう。あえて言うならば、その自己紹介は
「そういえば美咲。ミッシェルはまだかしら?」
「え?あぁ、ミッシェルは今日急用ができたから来れなくなったらしいよ」
「あら?それは残念ね」
「ミッシェル?」
「ミッシェルははぐみ達のバンドメンバーなんだよ!」
ミッシェルは、ハロハピのマスコットキャラクターの熊の着ぐるみ。その正体は美咲ちゃんなのだけれど、ハロハピのメンバーは花音以外その正体に気づいていないらしい。本当にこのバンドは大丈夫なのかしら?
「そういえば、
「お兄さんは凄く歌が上手いよね!はぐみ、いつもテレビで聞いてビックリしちゃうよ!」
「あぁ、まぁそれなりに」
「あら?だったらあたし達のバンドに入らないかしら?」
うん、どうしてそうなるのかしら?そんな勧誘まで考慮していなかったわ。どうやって断ろうかしら?
「いや、こころ、さすがにそれは無理だと思うよ」
「あら?どうして無理だと決めつけるのかしら?やってみなくちゃわからないわ!」
そこはわかってほしい。だけど、困ったわね。こころちゃんはどうやら本気っぽい。上手く断れないかしら?そうして、断る方法を考えていると、後方の席から何やらひそひそ声が聞こえてきた。振り返ってみると、そこには黒い服を着た人達がいた。あの人達って、確かこころちゃんの周りにいつもいる人達よね?何を話しているのかしら?私は気になって、その声に聞き耳をたててみる。
「・・・今すぐ黒城
あの人達は何を言っているの?そんなことをされたら、
「こ、こころちゃん?残念だけど、
「そう?それなら仕方ないわね」
私の言葉に納得してくれたのか、こころちゃんは素直に引き下がってくれた。本当に良かった。このままだと、本当に取り返しの付かない事態に陥っていたかもしれない。それだけは避けられて、本当によかった。後ろを見てみると、先ほどの黒服の人達が、慌てて行動を変更しているのがわかる。もう少しで、本当に取り返しの付かない事態になっていたかもしれない。それよりも、またピンチに陥る前にこの場を去った方が賢明かもしれない。
「ま、
「え?」
便?なんのこと?とでも言いたげな表情で私のことを見てくる
「あ、そうだったね。もうそんな時間か。ごめんねみんな。もう帰らなくちゃ」
「あら?それは残念ね。また会いましょう!」
「はぐみも、今度はお兄さんのお話しも聞かせてほしいな!」
「
「まぁ、何はともあれお疲れ様でした」
「あはは、私はあんまり話せなかったけど、またね?」
「
「うん。ありがとう。じゃあみんな、元気でね。また手紙でも書くよ。じゃあね」
そう言い残して、私達は羽沢珈琲店を後にした。本当に疲れたわ。まさかこんな目に遭うなんて思いもしなかった。だけど、なんだかんだで楽しかったかもしれない。つぐみちゃんに別れを告げて、私達は店を後にする。そういえば、結局何も注文しなかったわね。つぐみちゃんに申し訳なくなる。また近いうちに寄らせてもらいましょう。
「そういえば
「え?無いけど?そもそも、千聖の設定だと、僕はイギリスだよ?手紙なんて書けないよ?どうやってエアメールを日本から日本に向けて飛ばすのさ」
「はぁ、またそんな半端な嘘をついて。薫達、たぶんあなたから手紙が来るものだと信じてるわよ?」
私の言葉を聞いて、急に顔を青くする
「い、イギリスの父さんにでもお願いしようかな」
「まぁ、それしか方法は無いでしょうね。」
「あはは、千聖がイギリスに設定しておいてくれて助かったよ」
まぁ、こうなる可能性も考慮して、
私も、たまには雅にお手紙を送ってみようかしら?普段は言えないような想いを文字に変えて伝えるのも、また一興かもしれない。
・・・やっぱり無いわね。そもそも、言えない想いというものが無かった。普段から、包み隠さず口にして伝えてるのだから、当然ね。だって、手紙で伝えるよりも、口で伝える方が想いは伝わるのだから。
だから私は、自分の想いを包み隠さず雅に言う。私達の間で隠し事は無し。これからも、伝えたい言葉を、声にして伝えていこう。それが、私達らしいと思うから。
どうも、ソウリンです。
なんとか間に合いました(眠い
今回のサブタイトルはシドさんの御手紙です。本当にいい曲なので、是非聞いて頂きたい一曲ですね。
いやー以前までは執筆中、anfangを流しながら執筆していたのですが、今回からカバーアルバムに変わりました。いやー本当にいいアルバムですねー。今からvol2の発売が楽しみです。特に自分のお気に入りは、ふわふわ時間ですね。ロメオと双璧をなしてます。
いやーもう特にCメロからが可愛すぎて何回も聞いちゃいますね。
それと、今自分悩んでるのですが、パスパレのバンドストーリー2章どうしましょうね?物語に組み込むべきか、組み込まないべきか、少し悩んでます。まぁ、組み込むとしても、おそらく当作品の3章でだと思います。というのも、微かにですが、3章の内容に擦る部分があるんですよね。おそらく、その部分を軸にして、組み込むかと思います。まだどうするかは未定ですけど。
では、今回はこの辺で。
次回は雅編です。とあるイベントストーリーのお話を予定しています。9日午前0時を目標とします。最近の流れで行くと無理な気しかしない(白目
間に合わない場合はまた活動報告投稿します。
ではでは、また次回もお願いします!