千聖編です
夏のとある一日の出来事だった。
その日、私はパスパレのメンバーとのレッスンに明け暮れていた。メンバーの演奏は日々成長している。私も含めて。以前に参加した、ガールズバンドパーティーというイベントが私達に良い刺激を与えてくれた。同年代のガールズバンドの演奏を生で体感し、そのレベルの高さに驚嘆させられたイベント。
私達も負けていられないと、あのイベント以来全員に熱が入っていた。私も含めて。最初は参加に反対していたけれども、雅の言う通りに参加して本当に良かったと今では思う。やっぱり、音楽のこととなると、雅の意見は本当に参考になる。さすがは天才シンガーソングライターと言ったところかしら?
「みなさんお疲れ様です。千聖さん、次のお仕事の話をしたいのでこの後事務所に残っていただいてよろしいでしょうか?」
その日のレッスンが終わった瞬間だった。おそらく、終わるタイミングを待っていたのだろう。一人の事務所スタッフが私に話しかけてくる。次のお仕事。一体どのような仕事が入ったのかしら?
「えぇ、わかりました」
私は迷う様子も見せずに、二つ返事で返す。その反応を見て、事務所スタッフさんはレッスンスタジオから出ていった。私も、片付けを済ませてスタジオを後にした。なんだか、次の仕事が気になって仕方が無い。あまりそういったことは信じない性格なのだけれど、なんだか良い予感がする。私はその予感に胸を躍らせながら、事務室へと向かった。この時の私はまだ知る由も無い。この新たな仕事が、私にとっての、いいえ、私達にとっての人生のターニングポイントになることになるなんて。知る由も無かった。
「お待たせしました。それで、新しい仕事とはなんですか?」
私は、事務室に着くなりスタッフさんにそう問いかける。いてもたってもいられない気持ちだった。ここに来るまでの間に、抱いた予感は膨らむ一方だった。
「はい、実は舞台のお話が来ていまして。あの有名な演出家の宮川タカユキ先生から、千聖さんにぴったりの役があるのでぜひ出演してほしいと」
「え?あの有名な劇団の宮川タカユキさんですか!?どうして私に・・・」
スタッフさんの話を聞いて、真っ先に浮かんだのは驚愕だった。宮川タカユキ。劇をかじってる者で、知らない者はまずいないであろう、知らなければ問答無用でにわかのレッテルを貼られるような著名な人物。現在の日本の演出家では、間違いなく五指に入る程の人物。
そんな大先生からオファーが来た。こんな、女優名利に尽きることがあるだろうか?少なくとも、私の女優人生の中に、これほどの大きな仕事は無かった。過去にも、数多くのドラマや映画には出演してきたし、成功を収めてきた自負はある。だけど、その出演作の全てにおいて、宮川先生に並ぶほどの演出家さんの作品には呼ばれていなかった。
もちろん、著名な方の作品にも数多く出演はしている。だけど、言い方は悪くなるけれども、宮川先生とは格が違う。これは、私が出世する上でのまたとない大きな好機となるでしょう。
だけど、どうしても気になってしまう点が一点だけ存在する。一体、どうして私を選んでいただけたのか?大変光栄なことなのは間違いないのだけれども、正直理由が全くわからなかった。
「聞いた話によると、以前に劇場でライブの演出チェックを行った際、たまたま同じ建物内に宮川先生がおられて、リハーサルを見られたそうなんです。その時の千聖さんがとても印象に残ったそうで、今回お声かけをいただいたそうです」
「そ、そんな偶然が・・・」
驚いた。偶然が重なったことによる大抜擢。これは、まさに天運ではないかしら?天が、私に授けて下さった転機。なんて、神なんて信じたことなんて一度も無いのに、そう思いたくなってしまう。だけど、こんな機会逃す手は無いわね。必ず物にしてみせる。
「そのお仕事、喜んでお受けします。宮川先生にはよろしくお伝え下さい」
「わかりました。こちらが台本です。先生のオリジナルストーリーだそうです。稽古が始まる日までに読み込んでおいて下さい」
受け取った台本をその場で軽く流し読みをする。どうやら、病弱で姉想いな妹と、女優を夢見る妹想いの姉を中心にした物語のようだ。女優を目指し、オーディションを受けたい姉だけれども、お金も無い上に病弱の妹を放っておけない。そんな姉に対して、自分は負担になってると思い、姉に自分の夢を自由に追いかけて欲しい妹。その二人が、様々な困難を乗り越えつつ、互いの絆を確認し合い、最終的には妹の想いを汲んだ姉がオーディションを受け、見事女優としてデビューを果たす物語のようだ。さすが宮川先生。素晴らしい脚本ね。
「それで、私はどの役を担当するのでしょうか?」
「妹さんの方だと聞いていますね」
病弱な妹。今までに体験したことも無いような役ね。ますますやる気が漲ってくる。未知の経験は、いつだって自分の成長に大きな刺激を与えてくれるもの。大歓迎ね。
「千聖ちゃん、お仕事のお話は終わった?」
私が、台本に目を通している時だった。自主練習をしていたのだろう。私よりも遅れて彩ちゃんが事務室に入ってくる。本当に努力熱心ね。その後ろには、彩ちゃんに付き合っていたのでしょう。他の3人の姿も見える。
「そうね、他に連絡事項はありますか?」
「いいえ、特にないので終わりにしましょう」
「わかりました。ありがとうございました。えぇ、彩ちゃん今終わったわよ」
「ねぇねぇ千聖ちゃん、今度はどんなお仕事なの?るんってくるお仕事だった?あれ?何読んでるの?」
「おや?千聖さんが読んでるのってもしかして台本では無いですか?」
「台本?ということは、チサトさんの次のお仕事はドラマですか?」
「イヴちゃん、違うわよ。ドラマではなくて、舞台なの。宮川タカユキ先生からご指名を頂いて、出演することになったのよ」
「えええええええええええええ!?あの宮川先生の舞台に!?」
彩ちゃんの絶叫が事務所内に木霊する。最も、その気持ちも理解できるので驚きは無い。他にも麻弥ちゃんが目を大きく見開いているのが印象的だった。日菜ちゃんも驚いているけれども、そこまで大きなリアクションでは無いわね。イヴちゃんに至っては凄さがわかっていないみたい。
「すみません。舞台には詳しくないもので、そのミヤカワさんという方は凄い方なのですか?」
「ハッキリ言って凄いなんてものじゃ無いですね。日本に数多いる演出家先生の中でも、間違いなく五指に入る程の大先生ですね」
「あたしもテレビとかで見たことあるよー。そんな人から指名されるなんて、さすが千聖ちゃんだねー」
「えぇ、本当に光栄なことだと思うわ。これも、みんなと頑張ってきたおかげかしらね」
「そんな、私達は何もしてないよ!これも全部千聖ちゃんの努力が実っただけだもん!うぅ、なんだかそう思うと泣きそうになってきた」
そう言って涙目になる彩ちゃん。本当に感受性豊かね。こんなにすぐに泣けるなんて。女優としては少し羨ましい。泣き演技って大変なのよね。役者は大抵、泣くほど悲しいことを想像して、涙を無理矢理出している。私の場合は、雅と長期間会えないことを想像して泣いている。だけど、この想像やりすぎると落ち込みすぎてその後撮影どころじゃ無くなるから危険なのよね。もちろんこれは体験談。
「でも本当によかったぁ。そうだ!皆今日この後時間ある?もし良かったら千聖ちゃんのお祝いしない?皆でご飯食べにいいこうよ!」
「いいですね!ジブンは賛成です!」
「私も行きたいです!チサトさんのお祝いみんなでしましょう!」
「へーいいんじゃない?るんってくるアイデアだと思うよ」
そう言ってくれるみんな。その気持ちはありがたい。だけど、私には帰ってからやらなければいけないことがある。
「ごめんなさい。気持ちはありがたいのだけれども、帰ってから雅の晩ご飯を用意しなければいけないの。気持ちだけありがたく受け取っておくわ」
「そうですか。それなら仕方ないですね」
「チサトさんとご飯行きたかったです・・・」
「イヴちゃん、無理は言えないよ。ここは引き下がるのが千聖ちゃんのためだと思うよ」
「あ、じゃあさ、皆で雅君の家に行けばいいんじゃない?そこで皆でご飯作ろうよ!」
この天才少女は一体何を宣ってるのかしら?雅の家に皆で来る?そんなの許すわけ無いじゃ無い。雅の家にパスパレの皆とはいえ、他の女の子を招くなんてそんなことありえない。それに、他の皆だってきっと反対してくれるに決まってる。
「日菜ちゃん、それナイスアイデア!」
「いいですね!ジブンも賛成です!」
「そうと決まればチサトさん!早く行きますよ!」
「え、イヴちゃん押さないで。ちょっと待って。私はまだ許可してな、お願い話を聞いて、ちょっとイヴちゃんどこ触ってるの、ちょっと待って・・・」
そのまま私の話は受け入れられず、結局雅の家まで案内することになった。本当にどうしてこうなったのかしら?
「着いたわ。ここが雅の家よ」
結局、雅の家まで皆を案内することになった私。黒城家は、鍵がかかったままになっており、雅の不在を報せてくれた。今日は確か、Roseliaのみんなとの合同練習に行っていたはず。少し遅くなるかもとは確かに言っていた。最近、雅は友希那ちゃんと非常に仲が良い。雅のことだから、変な方向に関係を発展させるとは思わないけど、少し注意しておいた方がいいかもしれないわね。今度友希那ちゃんにでも聞いてみようかしら?何故か青ざめた友希那ちゃんが頭に浮かんだけれども、きっと気のせいね。
「へーここが雅君の家か-。思ったよりも普通の一軒家だね」
「私も、ココロさんの様な家を想像してました」
「弦巻さんのですか?ジブンは弦巻さんのご実家は見たことが無いので知りませんけれども、あの弦巻家ですからね。さぞ豪邸なんでしょうね。さすがにそれを雅さんに求めるのは酷だと思いますよ」
「中が一面楽譜だらけとかだったらどうしよう?」
「ちゃんと定期的に掃除してるから大丈夫よ。楽譜も全部剥がしてあるわ」
「むしろ、掃除しなければ彩さんの予想通りになってるわけですね・・・」
「さすがミヤビさんです・・・」
「そんなことより早く中に入ろうよ。あたしお腹空いてきちゃったー」
そんな日菜ちゃんの言葉に促され、全員で家の中に足を踏み入れる。慣れた足取りで、ダイニングキッチンに向かい、テーブルの上に今日のために買ってきた食材を置く。
さて、やりましょうか。
「千聖ちゃん、何からしようか?」
「そうね、皆はサラダ用の野菜でも切ってくれるかしら?」
「え?それだけでいいのですか?」
「えぇ、十分よ。後、食器の用意だけお願いね。そこの戸棚に入ってるから」
それだけ指示すると、私は調理に取りかかった。今日用意するのはいつもよりも多い6人分。頑張りましょう。
「す、凄い手際・・・」
「じ、ジブンたちの手伝う余地がありません・・・」
「ち、チサトさん凄いです・・・」
「あはは、これは千聖ちゃんに任せた方がいいね!あたしたちは言われた通り野菜を切ってよう?」
その言葉を皮切りに、皆も野菜の準備に取りかかってくれた。これなら、予想よりも早く完成しそうね。その後も、私達は雅が帰ってくるまで談笑しながら調理を進めていった。皆の気持ちがありがたい、自分が恵まれてると思えた夜の一時だった。
そして数日が経過した。遂に、舞台の初稽古の日がやってきた。この日のために、私にできるだけのことはやってきた。セリフは自分のパートだけで無く、他の人のパートも全て覚え、相手の演技パターンを数個思い浮かべ、それに合わせた演技パターンの練習も行ってきた。相手がどのようなタイプの役者でも、スムーズに演技ができるように。まぁ、相手の姉役が薫で無い限り、誰でもいいけれども。
「おはようございます。お初にお目にかかります、宮川先生。白鷺千聖です。この度は素敵な舞台にお招きいただいて、とても光栄です。私にできる限り、精一杯務めさせていただきますので、よろしくお願いいたします!」
「おお、白鷺君、よろしく頼むよ。熱い芝居、期待しているよ」
「はい。ご期待に添えるよう頑張ります」
宮川先生への挨拶を済ませ、私は空いた時間で台本に目を通す。全て暗記しているとはいえ、何か思わぬ見落としがあるかもしれない。念には念を入れ、細かな部分までチェックしていく。そして、最初の稽古が始まった。だが、その稽古は私の想定とは大きくかけ離れたものとなっていった。
「ストップ!白鷺君!そこはもっと感情を押し上げないとダメじゃないか!役にもっと感情を込めるんだ!」
まただ。これで何度目だろう?数えるのも億劫になっていた。数回セリフを演じれば似たようなことの繰り返し。具体的な改善案等も無く、感情論のような注意ばかり。正直、どうすればいいのか正解のビジョンも全く見えてこない。
「止めて!そこはもっと熱く演じないとダメじゃないか!それだとお客さんに何も伝わらないぞ!」
何が伝わらないのだろう?私は、私なりに熱く演じてるはず。何が足りないのだろう?これで十分だと思って演技をしているのに。その証拠に、注意されてる私以外の役者さんにも、宮川先生に対する困惑が在り在りと浮かんでいた。
「よし!ここで一旦休憩にしよう!夏場だからしっかり水分を取っておくように!」
そしてかかる休憩の合図。助かった。少し自分なりに整理する時間が欲しかった。おそらく、このままの演技を続けても宮川先生の求めるようなものには届かないのだろう。じゃあ、一体どうすれば?
「白鷺さん、これを渡して欲しいとあの黒城雅さんから預かりましたよ。お知り合いなんですね」
そう言って、スタッフの方が私に何かを差し出してくれる。雅、来ていたのね。もう帰ってしまったのかしら?話しかけてこなかったということは、気を使わせちゃったかしら?今は一人で考えたかったから、その気遣いがありがたい。差し入れを見てみると、天然水と塩キャラメルだった。熱中症対策ね。私のことをよく考えてくれてて、ありがたい。その気遣いに応えるためにも、私の演技で結果を出さないと。その後も私は気持ちを切り替え、稽古に望んだ。だけど、その結果は散々なものとなってしまった。
稽古を終え、夕食も終えた時間だった。私は、雅の家で台本に目を通していた。未だに、宮川先生の求めるものがわからない。一体何がいけないの?私に何が足りないの?
何度考えても答えが出ない。一体、何だというの?
「お困りみたいだね」
「そうね、今回は私もお手上げだわ。自分に足りないものがなんなのかさえ全く見えてこない。これじゃ、女優失格ね」
「そんなことないさ。千聖は十分良くやってるよ。だけど、少し一人で頑張りすぎかな?そんな千聖に素敵なプレゼントだよ」
そう言って雅は、数枚の便箋を取り出す。これは一体?
「雅、これは一体何かしら?」
「そうだね、一言で言うならば、愛のかたまりかな」
「愛の・・・かたまり・・・?」
私は、その便箋に目を通してみることにした。そこに書かれていたのは、皆から私への愛だった。
日菜ちゃん流の視点から言うと、千聖ちゃんが演じてた妹役、どっちかというと千聖ちゃんがしゃべってるように見えたよ。もっと大げさな演技でもいいと思うな。千聖ちゃんの舞台、楽しみにしてるからね!るんってくる最高の妹期待してるよ!
氷川 日菜
ジブンは、お姉さんへの気持ちをもっと前面に出してもいいかと思います。日菜さんを参考にしてみてはいかがでしょう?最も、病弱な日菜さんなんて想像もできないですけどね。ですが、姉思いな部分のイメージとしては日菜さんに近いかと思いました。下手なイメージですみません。完成した千聖さんの演技、楽しみにしてますね!
大和 麻弥
私は、演技については何もいい意見が言えません。ですが、チサトさんに対する想いはみなさんにも負けません!チサトさん、ブシドーです!ミヤカワさんに、最高にネッケツな妹さんを見せてあげましょう!
若宮 イヴ
千聖ちゃん、最後まで諦めないで!熱い千聖ちゃん、すっごく見てみたいよ!諦めなければ、きっと千聖ちゃんならできるよ!私、千聖ちゃんがすっごく努力してるの知ってるから!努力すれば夢は叶う。だから、自分なんかなんて絶対思わないで!最高の舞台期待してるからね!
丸山 彩
「みんな・・・」
それは、正しく愛のかたまりだった。皆の、私に対する愛が詰まったかたまり。たかが薄っぺらい紙切れだと言う人もいるだろう。だけど、私にはわかる。この紙切れに込められた想いは、両手で抱えきれないほどに重いと。その思いが嬉しくて、嬉しくて、思わず泣きそうになってしまう。そして私は気づく。もう1枚、便箋が残っていることに。もう、パスパレの皆の分は読み終わった。では、この便箋は一体誰の?
楽しんでいこう。
その便箋には、たった一言だけ、そう書かれていた。その筆跡は非常に見慣れたものだった。目の前でこちらに笑顔を向けている彼のものだ。そして、私は堪えきれずに泣いてしまった。皆からの愛が嬉しくて、愛おしくて、堪えきれずに涙を流してしまった。
そんな私を、隣に来て彼は優しく抱きしめてくれる。その温もりがまた、愛おしい。楽しんでいこう。彼は私にそう書いた。楽しむ。最後に、演技を楽しいと思ったのはいつだったかしら?私は少なくともここ数年、演技に楽しみを求めたことは無かった。ただ、自分の成長の為。ただ、義務感。ただ、責任感。それらのためだけに演技を行ってきたし、実際成功してきた。
仕事と割り切って役を熟す日々。それが普通だと思っていた。最後に本気で演技に取り組んだのはいつだろう?私は、知らぬ間に演技に対して手を抜いていたのかもしれない。責任感と義務感だけで台本を覚え、上っ面の演技だけで通す日々。実際、それで認められてきたのだから、これでいいものだと思っていた。
今回の舞台は、私にとっての大きな転機になるだろう。
「・・・雅、どうやら私の演技は今までただの蕾だったみたいだわ」
「蕾?」
「えぇ、蕾よ。だけど、皆の愛が雨となり、私の演技は花開く。今度の舞台で、満開の花となった私を見せるわ」
「うん、期待してるよ」
私の演技が花開く、その瞬間をみんなに見てもらおう。私の体を、今まで感じたことの無いほどの熱意が支配していた。今なら、きっと最高の演技ができる。私は、この時点で舞台の成功を確信していた。
そして、その日がやってきた。公演初日、その日の客席は満席となっていた。宮川先生の新作舞台なのだから、当然だろう。そして、その多くの人に新生白鷺千聖を見てもらおう。これが、私の晴れ舞台。今、芽吹いた愛の花が、咲き誇る。
舞台の幕が上がり、順調に物語が進行していく。なんだろう?体が凄く軽い。それに、頭が驚くほど冴え渡っている。好都合だ。余計役を演じやすくなる。一瞬たりとも集中を緩めず、私の熱意を余すところなく声に、体に乗せる。
もっと、大げさな演技を。もっと、姉への気持ちを前面に。熱血的にブシドーに。決して諦めず、楽しんでいく。
みんなから受け取った愛を、余すところなく声に、体に乗せる。自分でもわかる。今の私は、過去全ての白鷺千聖の中でも、最高の白鷺千聖になっていると。
そして、舞台の幕が下りる。あっという間の公演だった。楽しい時間ほど、時間が経つのは早いもの。そう、私は今回の舞台を本当に心から楽しんだ。楽しかった。本気で演じるということが、こんなに楽しいことだなんて忘れていた。本当に最高の経験だった。
他の役者の方も皆笑顔を浮かべている。その笑顔が述べている。今回の舞台は大成功だったと。そう思うと、私の顔にもまた自然と笑顔が浮かぶのだった。
「皆、見に来てくれていたのね。ありがとう」
控え室に私が戻ると、しばらくしてから雅達が訪ねてきてくれた。今回の舞台の成功はなんといっても皆のおかげ。だからこそ、見に来てくれて本当に嬉しい。
「千聖ちゃん!ほんっっっっっとうに良かったよ!私感動しっぱなしだった!」
「彩ちゃん、舞台の間ずっと泣きっぱなしだったもんねー。それが面白くてあたしは舞台に集中できなかったよー」
「だ、だって本当に感動したんだもん!」
「まぁ、ジブンは彩さんの気持ちもわかります。本当に言葉にするのも困難なぐらい素晴らしい演技でしたからね。ジブンも思わず泣いちゃいましたよ」
「はい!私もです!鬼の目にも涙ですね!」
「いや、いつからイヴちゃんは鬼になったの。でも、皆の言うことは本当だよ。本当に、今まででも最高の演技だった。正に進化形白鷺千聖だね」
「皆、ありがとう。私自身も、本当に素晴らしい舞台にできたと思うわ。皆のおかげね。本当にありがとう」
皆、私の演技を見て感動してくれたみたいね。良かった。これで何も感じなかったって言われたら凹んでいたわ。
「白鷺君、失礼するよ。初日の上演ご苦労だった。客の反応も盛況だ。明日からも期待しているよ」
しばらく、雅達が見た舞台の感想を中心に話をしていると、宮川先生が控え室を訪れて下さった。まさか、先生自ら訪ねてきて下さるなんて。
「はい、ありがとうございます!」
「ん?この子達は・・・」
「私が所属しているバンド、Pastel*Palettesのメンバーと、お世話になっているシンガーソングライターの黒城雅さんです」
「おー!君が噂の白鷺君の彼氏さんか!」
ちょっと待って。なんでそんな噂になってるのかしら?発信源はどこ?まぁ、私もそこまで隠す気も無いからいいけれども。
「み、宮川先生、一体どこでその噂を・・・?」
「うん?この前飲みに行ったときに大木内君が言っていたが?」
あの人は一体何をしてるのよ・・・確かに、口止めはしていなかったけれども・・・
「マリさん、本当に何をしているのかしら・・・」
「わはは、まぁ若い間は存分に青春しなさい!ということは、白鷺君の本気を引き出してくれたのも彼氏君だったかな?」
「いえ、今回僕は何もしていませんよ。今回は千聖本人と、Pastel*Palettesの皆の功績ですよ」
「そ、そんな、私達もそんな大したことはしてないですよ!」
「そうそう、あたし達は何もしてないですよ。千聖ちゃんががんばっただけ!」
「そうです!チサトさんはすっごく努力してました!」
「そうですね。ジブンたちはただ見守っていただけです!」
「そうか。白鷺君はいい友人に恵まれたみたいだな。では、私は挨拶まわりがあるから失礼するよ」
えぇ、宮川先生のおっしゃるとおり、本当に素晴らしい友人に恵まれたと思う。私には勿体ないほどに。そして、それだけ言い残して宮川先生は部屋を出て行こうとする。だけど、私にはまだ、宮川先生に聞いてみたいことが残っていた。
「宮川先生、待って下さい!一つだけ、聞かせて下さい。どうして私を起用してくださったのですか?私と似通った演技力、容姿の女優はいくらでもいます。その中で、どうして私だったのかと」
「そうだな。君が開花したら、面白いものが見れそうだと思ったからだ」
「面白い?」
「以前からテレビ等で君のことは知っていたよ。年齢の割に、とても器用な演技をする子だと思っていたが、役に対する熱意や本気というものがあまり見えなかった。そんな君が本気になった時、何が観られるんだろうと興味があったんだよ。だが、結果を見る限り、どうやら私の目は曇っていたようだ」
「え?」
その宮川先生の言葉に愕然とする。まさか、この演技でも宮川先生の望むレベルには到達していなかったと言うの?私は、唯々困惑していた。だがそれも、次の宮川先生のお言葉で綺麗に吹き飛ぶこととなる。
「あぁ、曇っていたようだ。君の本気は、私の想像をはるかに
「宮川先生・・・はい、よろしくお願いします!」
お褒めいただいた上での、また別の作品に呼んでいただけるというお言葉までいただいた。凄く嬉しい。それは、私が日本でも五指に入る演出家先生に認めていただけたということ。これを、喜ばずにいられるだろうか?嬉しくないという人は、きっと役者では無いのだろう。
今回の舞台で、私は多くのことを学んだ。それこそ、数え切れないほどの。そして、多くの愛を受け取った。パスパレの皆からの、雅からの、舞台を見に来て下さったお客さんからの、そして宮川先生からの。多くの愛を頂いた。だけど、受け取るばかりでは私の性に合わない。私もこの先多くの人に私の
それが私にできる、一番の恩返しだと思うから。だから私はこれからも女優として進化し続ける。一人でも多くの人に、少しでも恩返しができるように。私の愛を届けよう。私の生が続く限り。
どうも、ソウリンです。
2話合わせて2万字超えちかれた(疲労
本当は千聖編、もっと書きたいシーンあったんですけどね。手紙受け取った後の、最初の稽古シーンとか、イベントであった、羽沢珈琲店のシーンとか、はい大幅カットしました。
文字数多くなりすぎだし、ちかたないね。羽沢珈琲店のシーンは個人的に書きたかったんですけどね。あまり語るつもりの無いどうでもいい設定とか出す予定でしたし。まぁ今後出すかも知れないですね。わからないですけど。まぁ、最終的に惚気につながる予定だったんですけどね(呆れ
てか、こんなに文字数多くなってるバンドリ小説ってあるのかな?真面目に自分の作品文字数多すぎじゃね?って思ってきました。まぁこの作品はたぶん完結までこのまま行きますけど。
あぁ、でもやっぱ喫茶店書きたかったな
つぐ出したかったな(本音
そういえば、今日からガルパはドリフェスが始まりますね
そしてなんとフェス限がつぐ!あかん、超絶欲しい・・・
タイプは何になるんでしょうね?つぐで☆4が無いのはパワフルかクールですけど。
個人的にはパワフルがいいですね。パワフルアフロ良い感じに今そろってるんですよね。後つぐとモカが揃えば☆4艦隊ができあがるので。是非ほしいですね。
そして最後になりますが、今回のサブタイトルはKinKi Kidsさんの愛のかたまりです。
ファンの間でカリスマ的人気のある曲ですね。自分も大大大好きです。
ではでは、今回はこの辺で。
次回は雅編です。皆大好きデート回+αです。8月7日午前0時を目標とします今回はがんばりゅ(間に合うとは言っていない
ではでは、次回もよかったらお願いします!