第45話です
雅編です
今年も残り一ヶ月を切った。
外気はすっかり冷たくなり、場所によっては連日雪が降り続いている地域もあるらしい。そんな冬色に染まったある日、僕は事務所からの招集を受けた。なんでも大事な話があるらしい。
僕にはその話について全く検討が付いていなかった。パスパレ関係のことならば、僕より先に千聖達に話が行くだろう。だけど、千聖は事務所から何も話を聞いていないらしい。となると、おそらく僕の仕事のことについてなんだと思う。新しい仕事の予定でも入ったのだろうか?だとしても、基本的にはその場合、マネージャーさんがメールで教えてくれるようになっている。
事務所に直接呼び出すなんて、そんなこと今まで数えるほどしか無かった。それこそ、非常に大きな仕事が入ったときぐらいだ。まさか、年末恒例のあの歌番組へのオファーが来たのだろうか?いや、でもあの番組は既に参加者全員公表されている。いつかは出てみたいけど、今年は無理だろう。
となると、何か大きなライブでも決まっただろうか?今のところ、クリスマスに大きなライブを行うことが決定しているが、その先はまだ未定だ。来年最初のライブでも決まったのだろうか?まぁ、いくら考えても答えはわからない。結局、直接聞いてみるしか無いのだろう。そうこうしている内に、事務所に着いた。僕は、ソワソワとした気持ちでその扉を開けた。
「おはようございます」
「あ、雅さんおはようございます!朝からお呼び出ししてすいません!お掛けになって下さい!」
そう言って、事務所内のソファーに座るよう促してくるスタッフさん。何も断るような要素も無いので、それに従いソファーに座る。相変わらず、事務所内では多くのスタッフさんが慌ただしく駆け回っている。この事務所ではいつものことだ。よっぽど仕事が多いのだろうか?儲かっているようで良いことだろう。
「さて、早速ですがお話に入らせていただきます」
そう言って、出迎えてくれたスタッフさんが話を持ちかけてくる。どうやら、今日はこのスタッフさん一人が話をしてくれるらしい。この人のことは知っている。パスパレ関係の仕事を一手に受け持ってくれているスタッフさんだ。しかし、そんな人が僕に一体どんな話があるというのだろうか?
「今回、雅さんにお話しすることというのは、Pastel*Palettesのことです」
「パスパレの?」
彼が出てきたことで、そうじゃないかと思っていたが、やはりパスパレ関係のことらしい。そして、千聖達より先に僕に対して話すとなると、間違いなく彼女達の楽曲に対する話だろう。なんだろう?次の楽曲に関する要望とかだろうか?だとしても、態々直接呼び出して話すような事でも無いだろう。ダメだ。考えてもわからない。
「はい。実は、彼女達の楽曲を他の方に作っていただこうかと思いまして」
「え?」
そして、考えていた矢先に言われた言葉に、僕の理解は追いつかなかった。彼女達の楽曲を他の人が作る?それってつまり、僕の曲以外の曲が彼女達の歌になるっていうこと。それってつまり・・・
「僕の曲はもう要らないってことですか!?」
「いえいえそうじゃないですよ!最後まで話を聞いて下さい!」
興奮した僕をスタッフさんが宥めようとしてくれる。だけど、こんなことを言われて落ち着いていられるわけがない。僕の楽曲はもう用済みと言われたようなものだ。確かに、僕の楽曲のレベルは決して高くないかもしれない。仁さんに比べれば雲泥の差だろう。だからと言って、引き下がってなんていられない。僕にだって、音楽家としてのプライドがあるのだから。
「これが落ち着いていられるわけ無いでしょ!?」
「いいえ、落ち着いて下さい!いいですか!何も今後ずっと他の人にまかせるわけではありません!一曲だけ、一曲だけです!次に彼女達に歌っていただく一曲を任せるだけですから!」
「一曲?」
その言葉を聞いて、少しずつ僕の頭に上っていた血が抜けていく。なんだ。一曲だけだったのか。てっきりこれからの全ての楽曲かと思っていた。そもそも、僕がそう勘違いしたのも全部・・・
「言い方が悪すぎますよ・・・」
「あはは、すいません」
そう。スタッフさんの言い方が悪い。あんな言い方をされたら、普通は勘違いしてしまう。とはいえ、本音を言うと一曲だって譲りたくないという気持ちがある。まぁ、スタッフさんにだって何か理由があるはずだ。それを聞いて、納得できるような内容で無ければ再度抗議してみよう。
「それで、理由を聞かせていただいても?」
「理由?そんなものあるわけ無いじゃないですかー」
なるほど。あるわけが無いのか。なるほどなるほど。そんな理由があったとするならば、僕が取る道は一つ。
「それだったら徹底抗戦ですよ!絶対他の人に譲りませんからね!」
「あはは、冗談ですよ冗談。ちゃんと説明しますよ」
全く、冗談にしても質が悪すぎる。これで本当に碌でもない理由だったら流石の僕でも我慢ならない。真面な理由を期待して、僕はスタッフさんの話に耳を傾けた。
「端的に言うと、彼女達の成長の為です」
「成長?」
「そうです。成長です。雅さんも含めて、皆さんは本当に良く頑張って下さっています。雅さんが作るアイドルソングも、磨きがかかってきていて素晴らしいの一言です。ですが、まだ彼女達にはバンドとしての経験値が圧倒的に足りない。そこで、少しでも皆さんの経験値上昇につなげるために、二つの計画を用意しました。それが、年内に行われるライブと、この楽曲提供の話です」
なるほど。経験からくる成長か。確かにそれなら納得もできる。確かに、他の人が作る楽曲を演奏することは、僕が作る楽曲を演奏するのともまた毛色が違って、新しい成長にも結びつくかもしれない。
「それに、これは雅さんにとっても貴重な経験になると思いますよ」
「僕にとっても?」
「えぇ。今度楽曲作りを依頼しようと思っている方は、私の調べによると、楽曲提供の経験が無いんですよね。なので、そのノウハウや楽曲作りのアドバイスを是非雅さんにお願いしたいと考えています。教える事って、以外と良い経験になるんですよね。これって、雅さんの成長にも繋がらないでしょうか?」
なるほど。確かに、教えるという行為は、自身の復習や、新しい発見にも繋がり、以外と良い経験になるものだ。スタッフさんが言うことにも一理ある。
「そうですね。そういうことなら、僕は大丈夫です」
「そうですか!そう言っていただけると有り難いです」
「それで、その楽曲を提供していただく人って誰なんですか?」
「雅さんもご存知かと思います。Afterglowの皆さんです」
Afterglowか。正直、意外な選出だと思う。彼女達の楽曲は王道ロックだ。アイドルとは似ても似つかない。まぁ、それを言うなら僕もロック主体のシンガーな訳だけど。
「彼女達の楽曲は、等身大の自分達を書いた歌詞が魅力です。そんな楽曲を、演奏していただくのは、彼女達にとっても素晴らしい刺激になるのではないかと思います」
なるほど。確かに、それは彼女達の魅力の一つだろう。あのガルジャムの音源で、僕は初めて彼女達の曲を聴いた。そして、思わず引き込まれた。Roseliaの皆とはまた違った魅力。ありのままの自分達を書き表した歌詞と、五人の揺るがない絆。確かに、彼女達の曲を演奏することは良い刺激になるだろう。僕も、彼女達に教えるのが楽しみになってきた。きっと、僕にとっても良い刺激になるだろう。
「それで突然なんですけど、雅さんは彼女達の連絡先をご存知ですか?」
「え?あ、はい。知ってますけど」
「それは良かった。でしたら、雅さんから彼女達に、明日この事務所に来て欲しいと伝えていただいてもよろしいでしょうか?詳しい事情についてはこの場で彼女達に説明しますので」
それぐらいならお安いご用だろう。パスパレの皆に伝える必要もあるし、明日この場で皆に説明すればいいだろう。うん。今から明日が楽しみになってきた。
「わかりました。彼女達には僕から連絡を取っておきます」
「はい!是非お願いします!それでは、私からのお話は以上です!明日もよろしくお願いしますね!」
そう言って、スタッフさんは慌ただしく事務所の奥へ駆けていった。他にも仕事があるのだろう。僕も、邪魔にならない内に帰った方が良さそうだ。それにしても、明日が楽しみだな。一体、どんな刺激が待っているだろう?きっと、間違いなくこれは良い経験になるだろう。僕は、そのまま期待に胸を膨らませて事務所を後にするのだった。
次の日になった。
Afterglowの皆には、既に事務所に来てもらえるように了承は取っている。そして、彼女達が事務所に来る前に、パスパレの皆には事情を説明してある。皆、事情を説明したら好意的に受け取ってくれたと思う。新鮮な気持ちになって、楽しみだと言ってくれていた。
「失礼します」
そして事務所で待っていると、Afterglowの皆がやってきた。待ち合わせ時間ぴったり。素晴らしい時間調整だ。
「あ、皆いらっしゃい。急に呼び出してごめんね」
「そんな、雅様からのお誘いを断れるわけないじゃないですか!」
「ひーちゃん、昨日は興奮して、全然眠れなかったみたいですよー」
「も、モカ!それは言わない約束でしょ!」
どうやら、皆いつも通りの様子だ。急な呼び出しだったけど、不満そうにしてる子は一人もいない。正直、機嫌を損ねてたらどうしようかと考えていたから、安心した。
「それで、あたし達を呼んだ理由は?」
「はい、それは事務所スタッフの私から説明させていただきますね」
そう言って、僕の後ろからスタッフさんがひょっこりと顔を出す。事務所にやってきた彼女達の対応を僕がして、奥でスタッフさんとパスパレの皆で打ち合わせをする形になっていた。どうやらその打ち合わせも一区切り着いたらしい。奥からパスパレの皆も出てくる。
「あ、皆も来てたんですね!」
「あ、つぐちゃんだー!やっほー!蘭ちゃん、るんってくる曲作ってね!」
「曲を作る?」
「日菜ちゃん、まだ蘭ちゃん達は事情を知らないから、今から説明するんだって」
「あれー?そうだっけー?」
どうやら日菜ちゃんは、打ち合わせをあまり聞いてなかったらしい。まぁ、彼女にとってはAfterglowが作ってくれる曲には興味があるけど、そこまでの過程には興味が無かったのだろう。打ち合わせも話半分に聞いていたに違いない。
「それで、曲を作るってどういうことなんですか?すいません、全然事情がわからなくて」
「あ、ごめん巴ちゃん。事情がわからなくて当然だよね。今から説明するね」
「はい、それでは改めまして説明しますね。単刀直入に皆さんにしていただきたいことを述べますと、ここにいるパスパレに楽曲を提供していただきたいのです!」
「楽曲を、提供?」
「そうです!理由としましては、パスパレの皆さんの成長促進のためです!皆さんもご存知かと思いますが、パスパレの楽曲は全て雅さんが手がけてくれています。それはそれで良いのですが、ここで一つ皆さんに殻を破って、更なるレベルに上がっていただきたいのです。そのために、雅さん以外の別の誰かに楽曲を提供していただくのは、良い刺激になるんじゃないかと考えました!」
「なるほど、Pastel*Palettesとしての事情はわかりました。それで、どうしてあたし達なんですか?楽曲提供なら、他にも良いバンドはいくらでもあると思いますけど」
「それは、皆さんの楽曲に感銘を受けたからです!等身大の自分達を描いた歌詞と、その力強いサウンドと、息ぴったりなパフォーマンス。素直に素晴らしいと思いました!そして思ったんです。このバンドの楽曲を提供してもらえたら、きっとパスパレの皆さんにも最高に良い刺激になると!」
「あはは、そこまで言ってもらえるとは嬉しいですね。アタシ達を選んで下さった理由もわかりました。それじゃ最後に、アタシ達にとって今回の話を受け入れるメリットを聞いてもいいですか」
「まず第一に、皆さんの名声向上ですね。ご存知の通り、パスパレの皆さんは芸能人です。通常の高校生バンドよりも、その発信力は高いです。そんな彼女達に楽曲を提供したとなれば、当然その名前も全国に知れ渡ることになるでしょう」
「名声、ですか。でも、第一にってことは他にもあるんですよね?」
「はい。これも皆さんにとっては魅力的だと思いますよ。それは、雅さんからの指導を受けられることです」
「え?」
「マジですか!?」
「へー」
「雅さんが?」
「え、え、えええええええぇぇぇぇ!?」
五者五様の反応を見せてくれるAfterglowの皆。そんなに驚くことなのかな?頼まれたらいつでもしてあげるんだけどな。
「ひーちゃんうるさすぎ-」
「だって、だって、雅様が教えてくれるんだよ!?こんなに嬉しいことないよー!」
「あはは、まぁ、それぐらいは当然だよ。皆、楽曲提供の経験は無いよね?だったら、先輩としてきっちりコツとか教えてあげるよ」
「そういうことです。以上が皆さんに与えられるメリットです。どうでしょうか?皆さんにとっても悪くないと思うのですが?」
「うん!今すぐ受けよう!こんなチャンス滅多に無いよ!」
「そうだね。私もやってみたいかな?」
「うーん、あたしは、皆におまかせで、いいかなー」
「・・・どうする?蘭」
「・・・一日だけ、考えさせてください」
「えぇ、いいですよ。急にお願いしたのはこちらなのですから、無理に今答えを下さいなんて言いません。皆さんで考えて決めて下さい。良いお返事いただけることを期待してます」
「ありがとうございます。行こう、皆」
「え?ちょっと蘭-!受けようよ-!」
その言葉を最後に、Afterglowの皆は事務所を出て行った。明日、きっと返事を聞かせてくれるのだろう。
「それじゃ、皆さんも今日は解散ということで。明日も同じ時間に集合でお願いします」
そして、パスパレの皆も事務所を次々に出ていった。残っているのは僕と千聖だけだ。
「それじゃ、僕達も帰ろうか」
「・・・えぇ、そうね」
そして、僕達も二人並んで事務所を後にする。Afterglowの件は一日お預けを食らったけど、それも仕方ない。急に決めてくれと言うのが無理な話だろう。だけど僕は、彼女達がこの話を断るとは微塵も考えていない。こんな刺激的な話、音楽に携わる者なら断れるはずが無いだろう。僕は、明日からどうやって皆を指導するかを考えながら、寒空の下を歩くのだった。
そして次の日、僕達は昨日と同じ時間に事務所に集まっていた。
そして、Afterglowの皆が来るのを待つ。昨日の内に、蘭ちゃんからは連絡が来ており、今日も同じ時間に事務所に来てくれることになっている。そして、もうまもなく約束の時間になろうとしていた。
「失礼します」
そして昨日と同じように、Afterglowの皆が時間通りにやってきてくれる。その様相からは、どこか決意のようなものを感じ取ることが出来た。
「昨日のお話、受けさせて下さい」
そして、蘭ちゃんの口からは予想通り最高の答えを聞くことができた。予想していたこととは言え、直接その答えを聞けて少し安心してしまった。
「本当に!?良かったぁ、断られたらどうしようかと思ったよぉ!」
「あはは!彩ちゃんは心配性なんだから!蘭ちゃん達なら受けてくれるって、あたしはわかってたけどなー」
「皆さんが受けて下さるのなら、正に鬼に金棒ですね!」
「イヴさん、ジブン達は決して鬼という訳ではないのですが・・・」
パスパレの皆もどうやら皆が受けてくれるとわかって安心したようだ。だけど、ここからが本番だ。Afterglowが提供する楽曲、それが一体どんな曲になるのだろうか?僕がきっちり舵取りしてあげないと。
「それじゃ早速、作曲に取りかかろうか。皆はいつもどこで作曲してるの?」
「学校の屋上だったり、つぐの家でだったり色々ありますけど、今日はこの後いつも通ってるスタジオを予約してます」
「うん、それじゃ早速そのスタジオに行ってみようか!・・・と言いたいところだけど、まずはパスパレの皆のレッスンを見てみない?楽曲を提供するには、やっぱり提供する人のことを知るのも大事だと思うんだよね」
「なるほど、確かに。それじゃ、彩さん、見させていただいてもいいですか?」
「うん、まかせて!それじゃ、事務所内のスタジオに移動しよっか」
そして、彩ちゃんの後ろに続いて皆事務所から出て行く。まずは曲作りのための下準備だ。これもまた、彼女達には良い刺激になるかもしれない。互いに刺激し合って、お互い成長してほしい。そう思いながら、スタジオに向かうのだった。
スタジオに着くなり、早速パスパレの皆はレッスンを始めた。楽器の演奏、ボイトレ、筋トレと、Afterglowの皆が想像していたよりもハードな内容だったのだろう。蘭ちゃん達は口をポカンと開けて見入っていた。
「どう?皆想像以上にハードなレッスンをしてるでしょ?」
「はい。正直驚きました。いつもこんなハードなレッスンを?」
「うん。確かにいつも皆ハードなレッスンをしてるけど、今はそれ以上に皆追い込んでるね。年末に、皆ライブをやるんだ。それに向けて追い込みをかけてる状態だよ」
「あ!雅様との合同ライブですよね!私もチケット欲しかったんだけど、取れなくて・・・」
そう。ひまりちゃんが言った通り、今回僕とパスパレの皆は合同ライブをすることになった。その話題性は十分で、チケットの入手難易度も相当なものになっている。
「あー、そういえばあこがチケットが取れたって大はしゃぎしてたな」
「え!?あこちゃん取れたの!?うぅっ、裏切り者!」
「あたしはひーちゃんに、数えるのもめんどくさいぐらいに、チケットがチケットがって聞かされたよー」
「だって、本当に欲しかったんだもん!」
「ひまり、静かに。皆のレッスンの邪魔だから」
「うっ、ごめんなさい・・・」
「あはは、ひまりちゃん、元気出して?」
どうやら、ひまりちゃんは相当ライブに来たかったらしい。だったら、この報酬は彼女達にはちょうど良かったかもしれない。きっと、やる気の元になってくれるだろう。
「だったら、これは喜んでくれるかな?今回の話を受けてくれたお礼に、今度のライブのチケットを皆に用意したんだ。良かったら来てくれない?」
「え?いいんですか?」
「おー、雅さん太っ腹ですな-」
「わぁ、いいんですか!ありがとうございます!」
「み、雅様、本当にいいんですか・・・?うぅっ、一生大事にします・・・」
チケットなんだから、一生も大事にされても困るんだけど。まぁ、皆喜んでくれたしいいだろう。
「はい、巴ちゃんも」
「あぁ、実はあこがアタシの分までチケット取ってくれたんで、必要無いんですよね。すいません」
「えええええええ!?そんなの聞いてないよ!うぅっ、てょもえの裏切り者!」
「あはは、悪い悪い。ひまりの様子を見てると、つい言い出せなくてな」
宇田川姉妹は、やっぱり仲が良さそうだな。なんてしみじみと感じてしまう。そういえば姉妹と言えば、日菜ちゃんは紗夜ちゃんと仲良く出来てるのだろうか?千聖からは、二人の間に溝があると聞いたことがある。その溝は埋まったのだろうか?といっても、こんな繊細なこと聞くのも憚られる。まぁ、いつか知る機会もあるだろう。今は静かに見守ってよう。
「あれ?彩さんは何をしてるんですか?」
蘭ちゃんにそう言われて、彩ちゃんの方に目を向ける。そこには、鏡に向かってブツブツと何かを言う彩ちゃんの姿があった。
「あぁ、あれはMCの練習だよ」
「MC?アイドルってそんな練習までするんですか?」
「あはは、普通はしないと思うけどね。彩ちゃんは特別だよ。彩ちゃんは、言うことを決めておかないと、本番で上手くしゃべれなくなっちゃうんだよね」
「おー、なんだか彩さんらしいですねー」
「だな。で、蘭どうする?レッスン風景は十分見させて貰っただろう?このままスタジオに行って作曲するか?」
「待って。最後に、皆の話を聞いてみたい」
「皆の話か。いいよ、皆!ちょっと集まって!」
そう僕が呼びかけると、皆レッスンを中断して集まってくれた。呼んでおいてなんだけど、中断させてしまってなんだか申し訳無い。
「どうしたの雅君?」
「うん、皆がパスパレのことをもっと知りたいから、話を聞かせてほしいんだって」
「お話ですか?なんの話をしましょうか?」
「うーん、あたし達のことを知りたいんだったら、やっぱり結成の時の事じゃない?」
「え、あの話・・・」
「あまり思い出したくありません・・・」
結成の時の話か。確かに、あれには僕達の苦い記憶がたっぷり詰まっている。皆、話したがらないのも無理はないだろう。
「結成の話ですか?」
「・・・そうね。あまり良い話ではないのだけれど、聞いてくれるかしら?」
その千聖の言葉に続いてパスパレの皆は、その壮絶な結成話を語り始めた。それを終始無言で聞き入ってるAfterglowの皆。時折、息を飲む音や、ひまりちゃんの泣きじゃくる声なんかが聞こえてくる。僕も改めて聞いて、あの時の思い出が浮かんでくる。
「・・・とまぁ、こんなものですかね?以上がジブン達の結成話でした」
「ヒマリさん、大丈夫ですか?」
「うぅっ、ひっく、だ、大丈夫だよ・・・」
「あの、聞いておいて、なんですが、そんな辛いお話をさせてしまってすいません・・・」
「巴ちゃん気にしないで。確かにあの時は辛かったけど、今はあの出来事があって良かったなーって思うの。あの出来事が無いと、たぶん今のパスパレは無かったと思うから」
彩ちゃんの言う通りだ。あの騒動は確かに辛かった。だけど、あの騒動があったお陰で今のパスパレがあるというのも事実だ。それに、あの事件のお陰で、僕と千聖も前に進むことができた。今では本当に感謝さえしている。僕達を成長させてくれてありがとうと。
「・・・ありがとうございました。作曲の参考にさせていただきます」
「うん!蘭ちゃん!お願い!」
そう言って、蘭ちゃんを先頭に皆でスタジオを後にする。それに僕も付いていく。この後は、Afterglowの皆にレッスンをしないといけない。
「なんか、本当に凄い話だったな」
「うーん、モカちゃんも流石にビックリしたかもー」
「うぅっ、思い出したらまた涙が・・・」
「雅さんも、大変だったんですね・・・」
つぐみちゃんがそう言ってくる。確かに大変だったのは間違いない。あの時は、連日マスコミに捕まって仕事どころじゃ無かった。家から出るのすら困難な日が続いていた。まぁ、ほとぼりが冷めるのも早かったけど。
「蘭、この後はスタジオに直行でいいよな?」
「うん。早く曲作りに取りかかりたい」
「・・・あ、ごめん!私先に寄りたいところあるから先に行ってて!すぐに行くから!」
そう言ってつぐみちゃんは走っていってしまった。まぁ、彼女のことだから本当に直ぐにくるだろう。先にスタジオに向かってしまおう。
「むむむー。何やらつぐがつぐってる予感が-」
「馬鹿なこと言ってないで早く行くよ」
「むー蘭がひどいこと言ったー。モカちゃんの心はセンチメンタルなんだけどなー」
そんな、仲睦まじい皆の会話を聞きながら蘭ちゃんの先導に従ってスタジオへの道を歩く。なんだか、僕も早くギターに触りたくなってきたな。そんなことを考えながら、目的地へと向かうのだった。
「曲に色はいらない、ですか」
スタジオに着いた僕達は早速皆にレッスンを行っていた。今教えているのは、アイドルソングの作曲のコツについてだ。
「そう。まぁこれは僕のアイドルソングの先生からの教えそのままなんだけどね。アイドルソングに関しては、曲に色を付けるのはアイドルそのもの。そこに、作曲者側の色は一切いらない。この教えが凄く好きなんだよね。言われてみて、実際に作ってみてわかるよ。アイドルソングの奥深さが」
そう。アイドルソングは本当に奥が深い。何曲も実際に作ってみてわかる。自分の色を一切加えない分、逆に多岐に渡って曲を作ることができる。それでいて、作った曲があっという間にパスパレの皆の手によって、個性豊かな、カラフルな色を付けられるのだ。その過程が堪らなく気持ちいい。今ではすっかりハマってしまっている。
「自分の色を出さない・・・難しそうですね」
「あ、蘭ちゃん達は気にしなくていいよ?今のは専属で作曲している僕の作曲スタイルだから。スタッフさんも言ってたでしょ?皆の等身大な曲が好きだって。その色をふんだんに加えて良いよ。むしろ、いつも通りの曲調、歌詞で良いよ。むしろ、その方が良いと思う」
スタッフさんもおそらく、それを望んでいるだろう。Afterglowという色が最初から付いた曲に、パスパレの色をどのように加えるか。それが、パスパレの皆への試練のようなものだろう。その答えを見つけることが出来たならば、きっと彼女達はまた一歩成長することが出来るはずだ。
「あたし達の、曲でですか」
「アタシ達の曲で、パスパレに提供する・・・やっぱあの話を曲に取り入れるのが良いのかな」
「でも、あんな辛い話をどうやって曲にするの?私、出来る気がしないよ!」
「うーむ、これは難問ですなー」
そう言って、あぁでも無いこうでも無いと唸る皆。ちょっと難しく考えすぎじゃないかと思うんだけどな。
「そうだね。因みに、皆はあの話を聞いて、どう感じた?」
「あたしは、あたし達が今まで暮らしてきた世界は、なんてちっぽけだったんだろうって思った」
「アタシも同感だな。アタシ達の今までの歩んできた道とはスケールが違ったもんな」
「うん。私達のバンドって、本当に平和だったんだなーって思った」
「平和、か。皆はバンド結成してから何も障害とか無かったの?」
「そんなことは無かったですよー。蘭と巴が大喧嘩したりー、つぐがつぐりすぎて倒れたりしてー、大変だったなー」
「も、モカ!それは今はいいじゃん!」
「あ、あはは。そんなこともあったっけなー」
「でも、パスパレの皆のお話を聞いたら、そんな障害も小さく見えちゃって」
「小さく見えてもいいじゃん。障害の大小はこの際関係無いよ。そんな障害があっても、結局皆は五人でバンドを続けてるんでしょ?だったらそれでいいじゃん。大小関係無く、絆っていうのは障害を乗り越えれば乗り越えた分だけ強くなるんだよ。乗り越えたっていう、その事実が一番大事なんだ」
僕と千聖も、出会ってからこれまで、多くの障害に阻まれてきた。その度に、二人の力で乗り越えてきた。だからこそ、今では誰にも負けない強い絆で繋がっている。この絆は、まぁ、種類は違うとはいえAfterglowの皆にも負けるつもりはない。
「乗り越えた事実・・・」
「なんか、考え方が大人ですね」
「さ、さすが雅様です!」
「身長の割に大きく見えますな-」
「身長はほっといて!」
これでも、毎日牛乳を飲んだり、陰ながら努力をしてるんだ。それでも伸びないものは伸びないんだから仕方ない。
「・・・うん、良い詞が書けそうな気がします。ありがとうございます」
「気にしないで。力になれたようで何よりだよ」
そう言って、蘭ちゃんはノートとにらめっこしはじめた。その手はしきりにノートに何かを書き込んでいる。本当に良いイメージが浮かんできたんだろう。心なしか、蘭ちゃんも楽しそうに見える。僕も蘭ちゃんを見てると、創作意欲が爆発しそうだ。僕も同じように、ノートにペンを走らせる作業を始めた。
「おー?雅さんも曲作りですかー?」
「うん。僕も新曲を丁度作ろうと思っててね。とは言っても、僕自身の曲じゃなくて、パスパレの曲なんだけどね」
「へー、今度のライブでやるんですか?」
「そうできたらいいなって思ってるよ。楽しみにしててね」
「もちろんです!全力で応援しますから!」
「あはは、ありがとう」
ひまりちゃん達に応援されつつ、作曲を僕はする。その合間にも、巴ちゃん達の演奏に対するアドバイスも行っていく。真剣に皆聞いてくれるので、アドバイスする方としても教え甲斐がある。そして、そんなことを数十分続けているときだった。
「遅くなってごめんなさい!」
つぐみちゃんがやってきた。どこに寄っていたのかはわからないけど、その流している汗から急いできたことはわかる。
「あー、つぐおそーい」
「ごめんモカちゃん。お詫びに、山吹ベーカリーでパン買ってきたよ」
「うむ。許してしんぜよー」
「あはは、そりゃモカには効果覿面だな」
「なんで毎日そんなにパン食べて太らないの?本当に羨ましいんだけど・・・」
「それはー毎日ひーちゃんが眠ってる間にあたしの摂取カロリーをひーちゃんに送りつけてるからだよ-」
「怖いこと真面目に言わないで!」
摂取カロリーを送りつけるって、どんな魔法を使っているんだろうか?神様でも無い限り不可能だろう。実はモカちゃんの正体はモカ神様っていう神様だったりして。そんなわけ無いか。
「あれ?雅さんも作曲ですか?」
そんな馬鹿なことを考えていると、つぐみちゃんが僕のノートを覗き込んできていた。作詞自体は、既にイメージはできあがっていたからスムーズにできている。もう、ほぼほぼ完成している状態だ。
「うん。僕もパスパレの皆に一曲贈ろうかと思ってね」
「へー。ふふっ」
と、僕のノートを覗き込んでいたつぐみちゃんが急に笑い出した。なんだろう?何かおかしなフレーズでもあっただろうか?
「どうしたの?何かおかしなところでもあった?」
「いいえ、ごめんなさい。ただ、やっぱり雅さんは雅さんだなって思って」
僕は僕?よくわからない。まぁ、歌詞におかしな所があっったわけでも無いみたいだし、別にいいや。とそこで、ふと時計を見る。あらもうこんな時間か。
「ごめん皆。僕これからRoseliaと合同練習の予定が入ってるんだよね。先に帰らせてもらうよ。本当にごめんね?」
「・・・湊さん達と?」
何気ないことを言っただけのはずだった。友希那達と練習する予定があるのも事実だ。その事実を言っただけなんだけど、なんだろう?なんとなく蘭ちゃんの様子が少し変わったような気がする。
「湊さんとは、いつも練習を一緒にしてるんですか?」
「え?あ、うん。週に一度はしてるかな?」
「週に一度雅様と練習!?あ、あこちゃん羨ましすぎるよ・・・」
「あはは、そういえばあこのやつそんなこと言ってたな」
「紗夜さんからもこの前聞いたよ。凄く勉強になるから有り難いって」
「おー、これがRoseliaの秘密というやつですかなー?」
秘密ってほどでも無い気がするけどな。現にあこちゃんや紗夜ちゃんも普通に話してるみたいだし。そういえば、友希那もこの前雑誌のインタビューで他のバンドが取り入れてないような練習を聞かれて、僕との合同練習って答えたって言ってたっけ。それは取り入れてないじゃなくて、取り入れれないの間違いでしょってツッコんだ覚えがある。
「・・・なら、あたし達とも合同練習してください。今回の件が終わってからも、ずっと」
「え?あ、うん。都合が合えば、いつでもするよ」
そういえば、千聖が言ってた気がする。蘭ちゃんは、友希那にライバル心を燃やしてるって。なるほど。だから友希那達と合同練習してるって聞いて対抗心を燃やしてるわけか。まぁ、合同練習するぐらい、どうってことないし、別にいいいけど。逆に、彼女達の音楽は、聞いてて好きだし、これも僕の成長に繋がるかもしれないと考えると、ありだと思う。
その後は、明日何時に集合するかを取り決めて僕はスタジオを後にした。しばらくはAfterglowの皆とは毎日レッスンすることになる。そして今回の一件が終わってからも、彼女達と定期的に合同練習する約束をしたし、彼女達と関わる機会も自然と増えるだろう。僕は、明日は彼女達にどんなことを教えてあげようかと考えつつ、Roseliaが待つスタジオへと向かった。
蘭ちゃん達とのことを友希那に言ったら、合同練習の頻度を増やそうかと言われたことを追記しておく。僕の都合も考えて欲しい。
それから数日が経過した。その後も、Afterglowの作曲は順調に進み、ついに完成した曲のお披露目をすることになった。
「これが私達からPastel*Palettesに贈る曲、Y.O.L.O!!!!!です」
そう言って、蘭ちゃんが予め録音してきた音源を流す。事前に聞かせてもらってたけど、本当に良い曲に仕上がった。Afterglowの良さをふんだんに詰め込んだ至極の一曲に仕上がっている。はっきり言って、大好きな曲だ。
「す、凄い!こんな良い曲、本当に私達がもらっていいの?」
「勿論です。そのために作ったんですから」
「エモーい曲ができましたなー」
「Y.O.L.O!!!!!・・・どういう意味なのでしょうか?」
「You Only Live Onceの略で、人生は一度きりって意味です!皆で一生懸命考えました!」
「つぐってば、一番張り切ってたもんね」
「だな!完成が早くなったのもつぐのお陰だしな」
「スーパーつぐってたもんねー」
「だ、だって大事な初日に遅れちゃったんだもん!遅れを取りもどさないとって頑張るよ!」
「あはは、つぐみちゃんらしいね」
「皆、本当にありがとう!この曲、大事にするね!」
パスパレの皆の顔には、自然と笑顔が浮かんでいた。本当に良い曲は、無条件に人を魅了し、笑顔にする。皆が力を合わせて作ったこの曲が、それだけ良い曲に仕上がったという証拠だろう。本当に、僕が提供して欲しかったぐらいの名曲だ。僕も彼女達に負けてられないな。そう思い、僕も一枚のCD音源を手に取るのだった。
どうも、ソウリンです
お待たせして申し訳ございませんでした!(ジャンピング土下座
千聖編まだお待ち下さい!(トリプルアクセル土下座
ではまずはお礼から、久々に評価いただきました!
本当にありがとうございます!いただいて二ヶ月以上経ちますけどありがとうございます!(白眼
しかも☆9評価!しかもお二人に!本当にありがとうございます!
お陰様で超絶久々に日間ランキングにも乗せていただいたみたいです
重ね重ねありがとうございます!
これからも更新はゆっくりになるかと思いますが、いただいた評価に負けないような作品に頑張ってしていきますので、応援していただけるとありがたいです!よろしくお願いします!
そして、今回のサブタイトルはAfterglowのY.O.L.O!!!!!です
アフグロで一番好きな曲と言っても過言じゃありません
いやーもう本当に最高ですね
ライブでも凄く盛り上がるんですよね
7thのさっちゃんのギター最高だったなー
RAS神戸も熱かったなー
ラウクレでもやってくれないかなー
流石に無理かなー
RAS静岡ワンチャンあるかなー
とまぁ、それは置いといて次話サブタイトルはバンドリオリジナル曲から付けます
一体どのバンドの曲なんだろうなー(棒)
まぁね、わかりやすいぐらいに伏線入れておいたんで皆さんもうわかってるかもしれないですね
わからんかった人は、なんでわからんかったか千聖編投稿までに考えとってください。ほな、いただきます。(何をだよ
それとバンドリーマー近況報告
先月、アニマックスミュージック神戸2days両日いってきました
さいっこうの一言でしたね
day1は唯ちゃん可愛かった(小並感
まぁ、唯ちゃんは置いといて、やっぱRASですね
参加した人ならわかるんじゃないでしょうか?RASのターンが来た瞬間会場の空気が明らかに変わりましたよね
その空気からのInvincible FighterとEXPOSE 'Burn out!!!'
あんなんブチ上がるに決まってるじゃないですか
もう気づいたら叫んで跳ねてヘドパンしてましたね(笑)
しかも、それで終わったと思ったら激動やってくれるんですもん
カバー前から大好きだった楽曲
7月神戸で生で聞いて鳥肌立ったのをまだ鮮明に覚えてます
それをまた、同じ会場で聞けるなんて・・・
前奏のれおちゃんのキーボードソロ聞きながらもう、放心状態になってましたね
本当に、RAS推しで良かったって思える最高のパフォーマンスでした
終わった後、RASを知らなかった周りの人も口々にヤバイとか、惚れたとか言ってるのを聞いて、また誇らしい気持ちになってましたね(笑)
本当に、ありがとう
day2も語りたかったけど、ちょっと長くなりすぎそうなんで千聖編で書きます(笑)
では、今回はこの辺で
千聖編なんですけど、ラウクレまでに投稿する予定ってことで(笑)
今月末がラウクレな訳ですけど、そこは間違いなく執筆できないですからね
それどころか、来週はポケモン発売でまた執筆どころじゃなくなっちゃう・・・
できたら、この土日で仕上げたいですね
ということで、まぁ一応予定としては、今月中の午後12時ってことにしておきます
ではでは、次回もよろしくお願いします!