君が演じ、僕は歌う   作:ソウリン

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第50話です
雅編です



第50演目 シックシックシック

千聖が風邪を引いた。

そんな連絡が千景から来たのは、一月二日の朝のことだった。姉さんが風邪を引いたので、よろしくお願いしますとだけ書かれた短いメール。受信時刻は朝7時頃。そして、僕がメールに気づいたのは朝10時頃。気づいた時刻と言うよりは、起きた時刻と言った方が良いかもしれない。つまり、千聖が起こしに来なかったので、ずっと寝てしまっていた。

 

確か今日から千景は、両親と旅行に行っているはず。となると、自然と白鷺家には千聖だけが残されていることになっているはず。これは千聖の一大事だ。僕が一肌脱ぐしか無い。脱ぐしか無いのだが、そもそもの話、そのためには一つ重大な欠点があった。

 

「看病って、何をすればいいの?」

 

僕には一切の看病の経験が無かった。お粥でも作ればいいのだろうか?だとしても、僕に料理とか、できるだろうか?まぁ、やったことが無いからと言って、やらないわけにもいかない。千聖のピンチなんだ。日頃助けられてばかりの僕が、千聖の助けになるためのチャンス。やり方がわからないなら、僕に一つ秘策がある。とにかくその秘策に縋ってみようと思う。

 

「もしもし?」

 

僕は、自身の打ち立てた秘策を試みるため、とある少女に電話をかけた。まぁ要するに、わからないのなら誰かに学んじゃおうというわけなのだが。その電話相手は、急な報せにも気にせず、快く僕の頼みを引き受けてくれた。僕は急ぎ、彼女と待ち合わせした場所へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

待ち合わせ場所に着くと、どうやら目当ての少女はまだ来ていないようだった。まぁ、待ち合わせ時刻よりもかなり前に着いたのだから、当然と言えば当然だ。どうやら、千聖のことを思うあまり気が逸ってしまっている気がする。少し落ち着いて行動した方がいいかもしれない。まだしばらく彼女は来ないだろう。そう思っていたのだけれども、そう時間を待たない内に、彼女はやってきた。予定時刻よりもかなり早い。

 

「やっほー雅!あけおめー!」

 

「あ、リサちゃんあけましておめでとう!急に呼び出してごめんね」

 

「いいのいいの気にしないで。それより待たせちゃったかな?こっちこそごめんね」

 

「ううん!それこそ問題無いよ!時間よりもかなり早いし、僕も今来たばかりだから!」

 

という訳で、僕が頼ったのはリサちゃんだった。おそらく、僕が気軽に連絡が取れて、尚且つ一番家庭的な子が彼女だった。まぁ、リサちゃんとはずっと前から仲良くさせてもらっている。僕の親友である友希那の幼なじみ兼親友。親友の親友はそれまた親友といった感じだ。友希那と三人で、遊びに行ったりなんかんもよくしている。

 

「それで、確か看病の仕方だったよね?教えるのは良いけど、アタシも行かなきゃいけないとこあるんだよね。そこで教えるってことでいい?」

 

「うん!教えてもらえるならどこでもいいよ!ただその前に・・・」

 

「その前に?」

 

そこで、僕のお腹からグーといった音が聞こえてくる。それで、リサちゃんも察してくれたらしい。凄く恥ずかしいタイミングだったけど。

 

「あはは、朝ご飯、どこで食べようか?」

 

「あ、あはは、ど、どこがいいかな?」

 

恥ずかしくて、リサちゃんの顔を見れないままそう返す僕。今朝、千聖が来れなかったために、僕は朝食をまだ食べれてなかった。本当に、僕は千聖がいないと禄に食事もできないらしい。将来、紐とか呼ばれてそうで怖いんだけど。そうなるのは嫌だなと考えつつ、僕はそのままリサちゃんの顔を見れないまま、商店街の中へと入っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

僕とリサちゃんは、商店街内にある羽沢珈琲店へと足を運んでいた。一月二日、多くの飲食店が休みを取っている中、何故かここだけはオープンしていた。ありがたいことなんだけど、何故だか申し訳無い気にもなってくる。

 

「いらっしゃいませ!あ、雅さんと、リサ先輩!あけましておめでとうございます!二人でっていうのは珍しいですね!千聖さんと友希那先輩はご一緒じゃないんですか?」

 

出迎えてくれたのはつぐみちゃんだった。こんな年始にもかかわらず、今日もお家のお手伝いをしているらしい。本当に良い子だ。

 

「つぐみちゃんあけましておめでとう!実は千聖が風邪を引いちゃってね」

 

「あけおめつぐみ!実は友希那も風邪引いちゃったんだよね」

 

え?友希那ちゃんも風邪引いちゃったの?それは初耳なんだけど。

 

「友希那も風邪引いちゃったんだ」

 

「そうなんだよねー。それに友希那の家今日から両親が旅行に行っててさ、誰もいないんだよね。それで、この後友希那の家に看病に行かないといけないんだけど、看病の仕方、友希那の家で教えるってことでいいかな?」

 

なるほど。リサちゃんの行かなきゃいけないところって友希那の家だったのか。そういうことなら僕に(いな)はない。まぁ、元々どこにでもついていくつもりだったんだけど。それにしても、友希那の家も両親が今日から旅行に行ってるのか。千聖の家と状況が全く一緒とは、恐ろしい偶然だ。

 

「二人とも風邪ですか。それは大変ですね。そういうことなら、私も一緒に着いていっていいですか?二人のことが心配ですし、きっと私も力になれると思うんです!」

 

そうつぐみちゃんが言ってくれる。その申し出は非常に嬉しい。非常に嬉しいんだけど、お店の方はいいのだろいうか?

 

「あ、お店のことは気にしなくても大丈夫です!毎年、お正月ってお客さん少ないんですよね。だから、私が抜けても全然問題無いです!」

 

と、つぐみちゃんが僕の考えていたことを察して答えてくれる。確かに、お正月に態々喫茶店に来ようって思う人は少ないかもしれない。まぁ、実際に僕は来ているわけだから全くいないわけではないのだろうけど。

 

「つぐみが手伝ってくれるなら助かるよ-。実は、友希那にはちみつティーが飲みたいって言われてるんだけどさー、アタシが作るよりつぐみが作ってくれた方が美味しくできそうだし、お願いしていいかな?」

 

確かに、つぐみちゃんは喫茶店の娘。コーヒーや紅茶を煎れるのも手慣れているはずだ。僕も、千聖のためにつぐみちゃんに紅茶をお願いしようかな。

 

「確かに私も作れますけど、そういうことならお父さんにお願いするのが一番良いと思います!なんたってプロですから!」

 

「あはは!そりゃそうだよねー!今プロがいるお店に来てるんだった!」

 

全くだ。つぐみちゃんの実家じゃないか。確かに喫茶店の娘であるつぐみちゃんも腕は確かだろうけど、その店主であるお父さんはその道のプロじゃないか。頼まない道理は無い。

 

「早速お父さんにお願いしてきますね!できたら直ぐに行きましょう!」

 

「おー!つぐみ張り切ってるねー!よろしくー!でも、直ぐには行けないかな?」

 

「え?」

 

つぐみちゃんがどうして?といった顔を向けてきたタイミングで、僕のお腹がまた鳴る。本当に、タイミングが良いのか悪いのかがわからない。ただ、恥ずかしいタイミングなことだけは間違いない。

 

「あ、そういえばお客さんとしてきてたんでしたね。すいませんすっかり忘れてました・・・」

 

「あはは、気にしないで」

 

「本当にすいません・・・えっと、ご注文はどうしましょうか?」

 

「そうだね。モーニングセットってまだいけるかな?」

 

「ちょっと時間は過ぎてますけど、常連さんサービスでお父さんに許可もらってきますね」

 

「ありがとう。お願いね」

 

「アタシはホットレモンティーもらおうかなー?誰かさんと違って、朝ご飯は食べてきたからね」

 

「うっ、い、一体だ、誰のことなんだろうなー?」

 

「さぁー?誰のことなんだろうねー?」

 

そう言って、悪戯っ子のような顔で僕の方を見てくるリサちゃん。その顔から逃げるように顔を背けると、背けた方に回り込まれてしまった。そのニヤニヤ笑いをやめていただきたい。まぁ、今は何を言われても言い返せないわけだけど。

 

そして、つぐみちゃんはそんな僕達のやり取りに苦笑いしてから、お父さんに二つのお願いをしにいってくれた。つぐみちゃんが注文を運んでくるのを待ちつつ、僕とリサちゃんの攻防はしばらく続くのだった。つぐみちゃんが注文を運んできたタイミングでまたも鳴った僕のお腹。ちょっと君とはゆっくりお話をしないといけないかもしれないね。

 

 

 

 

 

 

 

 

羽沢珈琲店での朝食を終えた僕達は、三人で友希那の家へと足を向けていた。つぐみちゃんのお父さんに、はちみつティーも作ってもらったし、お見舞い用のフルーツまでいただいてしまった。千聖の分までいただいてしまって、本当に感謝しかない。良いお父さんだと熟々(つくづく)思った。

 

「着いたよ。ここが友希那の家。合い鍵預かってるから、今開けるね」

 

そう言って、カバンから合い鍵を取り出すリサちゃん。そのまま鍵を開け、三人で中に入る。リサちゃんはそのまま慣れた足取りでリビングまで進んでいく。流石幼なじみ。友希那ちゃんの家の構造は完璧に把握してるらしい。

 

「冷蔵庫の中の物勝手に使っていいっておばさんに許可もらってるからね。まずはお粥から作っていこっか」

 

「はい!リサ先生!」

 

「うむうむ!熱心で感心感心!それじゃ、さっさと作っていくよ!」

 

そう言って、お米を取り出すリサちゃん。どうやら、まずはお米を研いでいくらしい。

 

「雅って、お米は研いだことある?」

 

「ありません!」

 

「おー、これは思ったよりも教えること多そうだね。友希那が雅のこと紐って言うのもわかる気がするよ」

 

「え?友希那そんなこと言ってたの?」

 

いや、確かに将来的に呼ばれる日が来るかもって考えたことはあったけどさ。もう呼ばれてるの?今度友希那とはゆっくり語り合おうと思う。まぁ、言い負かされる気しかしないけど。

 

「だ、大丈夫ですよ!今からでも覚えればいいんです!まだ間に合いますから!」

 

「つぐみちゃん、フォローありがとう」

 

落ち込む僕を優しくフォローしてくれるつぐみちゃん。つぐみちゃんの優しさが僕の廃れた心に染み渡る。今度から、羽沢珈琲店に通う頻度増やそうかな?週一から週五ぐらいに。

 

「よーし!それじゃ、研ぎ方から教えていくよ!」

 

そう言って、計量用のカップを取り出すリサちゃん。それにお米を掬い入れ、お箸で飛び出ている分を落とす。

 

「このカップ一杯が一合。友希那一人のお粥を作るぐらいなら、この半分あれば足りるんだけど、今日はこの後皆にお昼ご飯でも振る舞おうかと思ってるからねー。その分も今研いどくよ!」

 

「おー!流石リサ先生!」

 

「そういうことなら、私も手伝いますよ!」

 

「あ、じゃあ僕も」

 

「紐君は大丈夫だよ!看病の仕方だけ覚えていって!」

 

「リサちゃんがそう言うなら・・・って紐君ってなに!?」

 

僕の言葉を笑って受け流すリサちゃん。今日のリサちゃんは悪戯っ子モードみたいだ。まぁ、親友故の距離感みたいなものだから、気にはしないけど、いつか見返してやろうと心に僕は決めた。何年、何十年後になるかわからないけど。

 

「それじゃ、計量も終わったし早速研いでいこうか!」

 

そう言って、リサちゃんは冷蔵庫を開けた。お米を研ぐのに冷蔵庫を開ける必要があるのだろうか?冷蔵庫の中を覗いてみる。そこには、色とりどりの食材が詰められていた。友希那の両親は今日から旅行に行っていると言っていた。それにしては、冷蔵庫の中が充実しすぎているような気がするのだけど。

 

「実は、雅に会う前に(あらかじ)め食材買って友希那の家の冷蔵庫に詰め込んどいたんだよねー。今日から、友希那の両親が帰ってくるまでこの家で生活することになりそうだからさ。流石に、何も用意せず、元からあった分だけ使ってたら申し訳無いでしょ?」

 

なるほど。それで中身が充実していたのか。流石リサちゃん。用意周到なことだ。そしてリサちゃんは、冷蔵庫の中からあるものを取り出した。よく見るペットボトルを。

 

「天然水?」

 

「そう天然水!お米を研ぐだけなら、水道水でも大丈夫なんだけどね。実際、アタシも一人だけだったらそうしてるし。だけど、お米を研ぐときはお水にも拘った方が美味しくできるんだよ。ま、炊きあがってから試してみて!」

 

「なるほど、参考になります!」

 

「そういえば、千聖もよく天然水買ってた気がしたな」

 

いつも天然水が冷蔵庫に入ってたけど、飲料として消費する分よりも明らかに消費が激しい気がしてた。なるほど、お米を研ぐのに使ってたのか。

 

「へー、千聖もやってたんだ。それじゃ、違いがわからないかもしれないね!本当は、家に浄水器でもあればもっと楽なんだけどね。天然水使うのって、消費する量が多いから、自然と出費も多くなっちゃうんだよね。それなのに毎日天然水で炊いてもらって、愛されてるねー。このこのー!」

 

「痛い!痛いから!」

 

脇腹を肘でグリグリしてくるリサちゃん。普通に痛いです。はい。それにしても、リサちゃんには良いことを教えてもらった。近いうちに浄水器を買ってくるとしよう。

 

「それじゃー次の行程いくよ。ここはスピード勝負!」

 

そう言って、計量した米を入れたボウルとカップに移した天然水を用意するリサちゃん。スピード勝負と言われて、僕にも自然と緊張感が走る。

 

「いくよ?まずボウルにお水を注ぐ。そして、ボウルの底から軽く二、三回混ぜたら直ぐにお水だけを捨てる。この行程はスピードが大事だからね。あんまりのんびりしてると、ぬかの匂いまでお米が吸っちゃって、大変なことになるからね。お水は、この後本格的な研ぎ作業に入るから、しっかり切っておいてね!」

 

そしてあっという間に行程を終えてしまうリサちゃん。説明しながらなのに、凄い手際だ。手際が良すぎて、目で見ただけならあまりどういったことをしているのかわからないけど、リサちゃんが懇切丁寧に説明してくれるから、なんとなくこうすればいいというのはわかる。

 

「流石リサ先輩。手慣れてますね」

 

「つぐみもこれぐらいできるんじゃない?」

 

「さ、流石にリサ先輩みたいにはできませんよ!」

 

「僕は門外漢です」

 

「あはは、じゃあ今日覚えていってよ。紐から一歩脱出ってね!」

 

一歩脱出できてもきっとまだ紐なんだろう。千聖にも、音楽以外は基本的にダメ人間って言われてるし、本格的に日常生活の改善を目指してみようかな。

 

「それじゃ、お米を研いでいくよ。お米を研ぐときは、猫の手!指を丸めて、優しく混ぜてあげる。この時、力を入れすぎたり、混ぜるスピードを早くしすぎると、お米が割れちゃったりするから、ダメだからね。大体二十回ぐらい混ぜたらストップね」

 

優しい手つきでお米を研いでいくリサちゃん。猫の手と言われて、何故か友希那を連想する。友希那の猫好きは相当なもの。うっかり猫の話題を振ってしまったら、小一時間ほどその話題から抜け出せないこともある。因みに、僕は犬派だったりする。そう前にRoseliaとの合同練習の時に言ったら、友希那に絶望的な顔をされてしまった。逆に、紗夜ちゃんには凄く食いつかれた。どうやら、彼女は大の犬派らしい。なんなんだこのギャップコンビは。

 

「研ぎ終わったら、次は研ぎ汁を捨てるからね。そのためにまたお水を注ぐ。この時に入れるお水は別に水道水でもいいよ。あまり、お米の味には影響しないからね」

 

「なるほど。水道水と天然水を使い分けるんだね」

 

「そういうこと。別に全部天然水でもいいんだけどね。そうすると、天然水の消費がより激しくなっちゃうからね。節約できるところで節約しておかないと」

 

「なるほど。勉強になります!」

 

いつの間にかつぐみちゃんは、紙とペンまで取り出してメモを取っていた。まるでリサちゃんの講習会みたいになってきている。

 

「で、水を注いだら軽く一回ぐらい底から掻き混ぜて水を捨てる。掻き混ぜる理由は、底の方に濃い研ぎ汁が溜まってるからなんだよ。それを上に出すために混ぜてあげる。で、しっかり水を切ったらまたスピード勝負の行程に戻るよ。これを二、三回繰り返すからね」

 

リサちゃんは、その後言った通りにもう一度同じ行程を繰り返す。一度目の時よりは、説明を受けていた分何をやっているのかよく理解できた。本当に、リサちゃん様様だ。説明が本当にわかりやすかったから、非常に助かった。

 

「よし!そろそろ大丈夫かな。天然水を入れて・・・うん!良い感じ!うっすらとお米が透けるぐらいの透明度になったら終わっていいよ」

 

「完全に透明にしなくてもいいの?」

 

「完全に透明になるまでしちゃうと、お米の栄養や美味しさまで一緒に出て行っちゃうんです。だから、ちょっとだけ濁りは残ってるけど、中のお米が透けて見えるぐらいで止めるのが一番良いんです」

 

「つぐみの言う通り!雅君わかったかなー?」

 

「はいリサ先生!つぐみ先生!」

 

「わ、私まで先生って呼ばなくてもいいですよ!ただ、基本的な知識を言っただけですから!」

 

「そんな基本的な知識も知らなくてごめんなさい・・・」

 

「わ!わ!そ、そういう意味で言ったんじゃなくて!えっと、リサ先輩なんとかしてください!」

 

「え?これアタシに振るの?えっと、まぁ雅は今基本を覚えることができたんだから、米研ぎの入り口に立てたんだし、気にしなくていいんじゃない?これから、覚える一方なんだし、直ぐに一人前になれるって!」

 

「うぅっ、はい!一人前になれるようにがんばります・・・」

 

確かに、後は覚えていく一方なんだし成長するしか道はないはず!ぼ、僕もやればできるんだって皆に見せるんだ!目指せ脱ポンコツ!

 

「よし!それじゃお粥作りに入ってくよ!まずは、研いだお米の半合を鍋に移すよ。残りはアタシ達で食べるから、炊飯器で炊いておくね。お粥にするお米は鍋に移す前にしっかり水気を切っておくからね。先にザルに映すよ」

 

ザルに映してしっかり水切りをしていくリサちゃん。その横で、つぐみちゃんが残りのお米をリサちゃんから受け取って、炊飯器にセットしてくれてる。僕がわかりやすいようにと、米研ぎからお粥作りまでの作業は全部リサちゃんがやってくれてるけど、つぐみちゃんもやっぱり手慣れたものだ。普通は誰でもできるものなんだろうか?

 

「それじゃあ、水切りも終わったし、お鍋に移してお粥を作っていくよ。まずは水を注ぐ。基本はお米半合に対して600mlね。ここから、硬めがいいなら少し水を減らして、柔らかめがいいなら水を少し足してもいいよ。今回は友希那の好みに合わせて普通の硬さにするから600mlのままね」

 

なるほど。硬さの好みによって水の量を調節するのか。それなら、千聖も普通の量でいいかな。

 

「注いだら、早速火を付けるよ。中火で付けて、このまましばらく待つからね。本当にしばらくは、何もしなくていいからね」

 

そう言って、鍋から離れてしまうリサちゃん。まぁ、火が目に付く位置にいれば、多少移動しても問題無いのだろう。

 

「今の内にバケツに水を汲んでおこうか。あ、これはお粥の行程じゃ無いからね。看病の行程だよ」

 

「リサ先輩。タオルはどこに置いてあるんですか?私取ってきますよ?」

 

「おー!助かるよありがとう!・・・って言いたいんだけど、実は朝寄った時にあらかじめ用意しておいたんだよね。そのテーブルの上に置いてあるよ」

 

そうリサちゃんが言った方向を見ると、確かにテーブルの上に数枚のタオルが置いてあった。つぐみちゃんも何かお手伝いしたいみたいだけど、リサちゃんが先に済ませてしまってるみたいだ。

 

「うーん、私にお手伝いできることなかったかな?」

 

「そんなことないんじゃない?ほら、アタシは流石にこの後友希那に付いててあげないといけないしさ、雅と一緒に、千聖の看病にいってあげたら?流石に雅一人だと大変だろうし」

 

「なるほど。それもそうですね!精一杯雅さんのサポート頑張りますからね!」

 

「つぐみちゃんがいてくれるなら心強いな。うん、よろしくね!」

 

流石にリサちゃんに着いてきてって無理強いはできないけど、つぐみちゃんがいるなら本当に心強い。最強の助っ人を得た気分だ。まぁ、基本的には僕一人でできるように頑張るつもりだけど。

 

「まぁわかってると思うけど、このお水とタオルで病人の頭を冷やしたり、体を拭いてあげたりするからね。雅、絶対友希那の体拭いてるところ見ちゃダメだからね」

 

「み、見ないよ!」

 

見たらそれこそ、僕が社会的に死んでしまいそうだ。それなのに、見るわけがない。でも、千聖の体を拭くのどうしようかな?僕が拭いてあげた方がいいのかな?でもそうなると自然と千聖の

 

「雅、なんかいかがわしい想像してない?」

 

「し、してないよ!」

 

危なかった。リサちゃんが鋭すぎる。まさかバレそうになるなんて。これ以上は考えないように気をつけよう。

 

「さて、お粥もそろそろいいくらいかな?」

 

そして僕達は、再び鍋の中を覗き込む。覗き込むと同時に、何やら鍋の中が白く煮立ち始めた。

 

「お?ベストタイミングだね。こう煮立ってきたら、沸くのが近い合図だからね。お米が鍋底に引っ付かないように、しゃもじで軽く混ぜていくよ」

 

リサちゃんがそう言いながらしゃもじで鍋の中を混ぜていく。少しの間続けていると、鍋の中がぶくぶくと、完全に沸いてきた。

 

「よし沸いたね!こうなったら、火を弱火にするよ。そしてお箸を一本鍋の縁に置いて隙間が少し空くようにしてから、蓋をする。このまま三、四十分は待つからね。その間に、アタシ達のお昼ご飯の下拵えしておこっか!」

 

「何を作るんですか?私もお手伝いしますよ!」

 

「つぐみありがとねー!お礼に、リサ先輩特製カレーの作り方を伝授するよー!」

 

「おー!リサ先輩特製カレー楽しみ-!」

 

「あはは、アタシは雅の先輩ではないんだけどね」

 

テンションが上がりすぎてつい先輩付けで呼んでしまった。そうだった。リサちゃんは先輩じゃなくて先生だった。それを言ったら、それも違うって突っ込まれそうだけど。二人は、分担して野菜を切ったりカレーの下拵えを進めていく。本当に二人とも凄い手際の良さだ。この二人の経験値が高すぎてそう見えるのか、僕の経験値が低すぎてそう見えるのかよくわからない。きっと両方なのだろう。

 

そして三十分ほど下拵えを進め、一度中断する。まぁ、中断と言っても全て終わってしまってるわけだけど。サイドメニューのサラダに関しては既に完成してしまっていた。恐ろしく早い。

 

「それじゃ、お粥を開けるね。ここで試食タイム!これで、丁度良い硬さになってたらいいわけだけど」

 

リサちゃんが、お粥を口に運ぶ。その表情が、完成度を物語っていた。無事にできたみたいだ。

 

「うん!良い感じ!後は火を止めて、お塩を二つまみほど振りかけてから、軽く掻き混ぜてあげて、完成!好みでお漬け物や梅干しを用意するといいよ。友希那はお漬け物の方が好みだから、小皿に入れてと。それじゃ、友希那の部屋に行こうか。雅、バケツ持ってきてくれる?」

 

「うん!それぐらいさせてよ!」

 

リサちゃんに言われた通り、バケツを持ってリサちゃんの後に着いていく。そして、とある部屋の扉を開けた。そこには、ベッドに横たわる友希那の姿があった。頭には濡れタオルが乗せられている。その顔は、仄かに赤みがかっていた。

 

「友希那起きてる?」

 

「リサ、年明けから、悪いわね。それに、雅と羽沢さん?」

 

「どうも研修生の黒城雅です」

 

「あはは、成り行きでお手伝いに来ました」

 

「・・・よくわからないけど、ありがとう」

 

まぁ、これだけの説明だとなんのことだかわからないだろうね。だけど、あまり興味が無かったのか、それとも聞く元気も無かったのか、友希那はそれ以上聞いてこなかった。

 

「というわけで、お待ちかねのお昼ご飯だよ。はい、お粥。それと、つぐみのお父さんがはちみつティー作ってくれたよ。プロの作ったはちみつティーだから、絶対美味しいよ」

 

「そう。羽沢さん、ありがとう。今度、お父さんにもお礼を言いに行かないといけないわね」

 

「そんな!大したことじゃないから大丈夫ですよ!」

 

「あはは、まぁまずはご飯だよ。どう?一人で食べれそう?」

 

「それぐらいなら大丈夫よ。問題無いわ」

 

そう言って、ベッドから起き上がる友希那。その動きは少し弱々しい。リサちゃんからお粥とスプーンを受け取り、食べ始める。その間に、リサちゃんはタオルを濡らし、水を絞っていた。つぐみちゃんははちみつティーの準備をしている。僕は、何か手伝える事は無いかと考えてみたけど、無さそうなので少し落ち込む。結局、そのまま友希那の食事が終わるのを待つことしかできなかった。

 

「ごちそうさま」

 

「はい、お粗末様!それじゃ、アタシ達はリビングでお昼ご飯食べてるからね。ちゃんと安静にしててよ」

 

「えぇ。私のことは気にせずゆっくりしてて」

 

「あはは、まぁゆっくりもできないんだけどね。この後千聖の看病に行かないといけないし」

 

「白鷺さんの?・・・あぁ、そういうことだったのね。リサ、私のことは気にせず雅の手伝いに行ってきてくれてもいいわよ」

 

「流石に病人の友希那を一人にできないって。ほら、友希那って雅と似て音楽以外の事だとポンコツなところあるし」

 

「・・・雅よりはマシよ」

 

「ひどっ!」

 

どうして今の話から僕がポンコツだって話になるんだろうか?このコンビ、なんか僕に辛辣じゃないかな?まぁ、それだけ僕に気を許してくれてるってことかもしれないけど。そう、これは親友故の距離感というやつなのだ。きっとそうなんだ。・・・そうなんだよね?

 

その後、僕達はリサちゃんとつぐみちゃんが作ってくれた特製カレーをご馳走になって、リサちゃんと別れ、つぐみちゃんと二人で友希那の家を後にした。リサ先輩特製カレー、あれは美味しすぎた。リサちゃん、料理の腕では千聖に引けを取らないかもしれない。リサちゃん、恐ろしい子!

 

 

 

 

 

 

 

 

友希那の家を後にした僕とつぐみちゃんは、千聖の家へとやってきていた。時刻は丁度お昼時といったところだろうか。この後、僕は人生初のお粥作りに挑戦する。ちょっと緊張してきた。

 

「あんあん!」

 

「やぁレオン久しぶりだね。後で散歩に連れて行ってあげるからね」

 

「あん!」

 

千聖の家に来ると、ゴールデンレトリバーのレオンが出迎えてくれた。レオンに会うのもなんだか久しぶりな気がする。後で思いっきり遊んであげよう。

 

「千聖さんの犬ですか?かわいいですね」

 

「あんあん!」

 

「わ!わ!急にそんな飛びつかれたら、きゃっ!」

 

レオンに飛びつかれて、後ろに転んでしまうつぐみちゃん。どうやらレオンも遊びたくて仕方が無いらしい。これは、後で行く散歩もハードなものになるかもしれない。覚悟しておこう。

 

「あはは、レオンは本当に人懐っこいからね。レオン、後でたくさん遊んであげるからその子を離してあげてよ」

 

「あん!」

 

「ふぅ、私、もうダメかもと思いました・・・」

 

「あはは、それは大げさだよ。それじゃ、中に入ろうか」

 

僕は、カバンから白鷺家の合い鍵を取りだした。千聖が僕の家の合い鍵を常備しているように、実は僕も白鷺家の合い鍵を常備している。まぁ、使ったのなんて数えるほどだけど。

 

「それじゃ、入ろうか。レオン、また後でね」

 

「あん!」

 

「あはは、本当に人懐っこいですね」

 

「ゴールデンレトリバーって皆こうなのかな?他を知らないからわからないんだけど。よし!それじゃ早速始めようか!」

 

僕は意気込み、お米と買ってきた天然水を用意する。米研ぎ人生初挑戦。僕は今日人生に新たな一ページを刻む。まぁ、やることは小学生でもできそうなことだけど。

 

「わからないことがあったらなんでも聞いて下さいね!」

 

「ありがとうつぐみちゃん!でも、たぶん大丈夫かな?リサちゃんの説明、本当にわかりやすかったし」

 

実際にやったことはないのに、何故か既に経験したことがあるかのようにやるべきことが頭に浮かんでくる。本当にリサちゃん様様だ。

 

「本当にリサ先輩、丁寧に説明してましたもんね。うーん、でもそれだと本当に私着いてきただけになっちゃうし・・・」

 

「それなら、タオルの準備お願いしていいかな?ダイニングを出て左の突き当たりにある部屋に置いてあるはずだから」

 

「わかりました!直ぐに取ってきますね!」

 

つぐみちゃんは本当に何かお手伝いがしたくて仕方が無かったらしい。ただ、タオルを取ってくるだけなのに凄い意気込んでいってくれた。その間に僕は米研ぎを進めていく。ちょっと不安に思っていたスピード勝負の行程も、無事滞り無く終えることができた。この分なら、問題無く米研ぎも終えれそうだ。

 

「雅さん取ってきましたよ!米研ぎは大丈夫ですか?」

 

「うん!もう終わるよ!・・・よし、これでいいかな?これぐらいの透明度でいいと思う?」

 

「はい!バッチリです!前から思ってましたけど、雅さんって普段からやらないだけでやれば大抵のことはできますよね?」

 

「あはは、よく言われるよ」

 

ただやらないだけ。まぁ、昔から音楽以外の知識なんて別に無くてもいいかな?なんて思ったりもしていた。だけど、今は僕も少しずつ変わってきている気がする。これも、千聖との関係が進んだ影響なのかな?今度、千聖に家事の仕方を教えて貰おうかな。熱でもあるのかって心配されそうな気がするけど。

 

そうこうしている内に、お粥作りも順調に進んでいっていた。後はお鍋に隙間を空けて三十分ほど弱火にして待つだけ。ここまで来たら一段落といったところだろうか?僕は、安心して大きく息を吹き出した。

 

「ふぅ、つぐみちゃん、見ててどうだった?何か間違ってたところとかない?」

 

「はい、全然問題無かったですよ!本当に初めてとは思えないくらいでした!」

 

「あはは、つぐみちゃんにそう言われると安心するな。うん、料理ってなんだか楽しいね」

 

「そうですよね。実際に作って、誰かに美味しいって言ってもらえた瞬間は特に楽しいって思えますよ。雅さんも、きっとこの後千聖さんに言ってもらえたらそう感じるはずです!」

 

「あはは、まずは言ってもらえるかどうかだけどね」

 

「きっと言ってもらえますよ。千聖さんが、一生懸命作った雅さんの料理を不味いって言うと思えませんから」

 

それって、不味くても無理して美味しいって言うってことだろうか?そういう意味に聞こえるんだけれど。そうつぐみちゃんに言うと、慌てて否定しだした。その姿が、なんとも可愛らしかったので、思わず笑ってしまう。つぐみちゃんには笑うなんてひどいって言われたけど、そう言う姿がまたまた可愛らしかったのでしばらく笑いが止まらなくなってしまった。笑い終えたころには、すっかり臍を曲げてしまったつぐみちゃんがそっぽを向いていた。

 

「いやー、ごめんねつぐみちゃん」

 

「ふんだ。もう知りません」

 

「いやー、慌てて否定するつぐみちゃんが可愛かったものだから」

 

「か、かわ!?きゅ、急に何言い出すんですか!?」

 

しまった。つい口が滑ってしまった。顔を真っ赤にしてあたふたしているつぐみちゃん。そういうところが可愛らしいと思うんだけど。

 

「ごめんごめん。つい口が滑っちゃって」

 

「はぁ、これは後で千聖先輩に報告しないといけませんね。雅さんに口説かれましたって」

 

「え、え!?そ、それだけは本当にやめてください!ち、千聖のお説教が・・・」

 

「あはは、冗談ですよ」

 

心臓に悪い冗談だ。本当に心臓が止まるかと思った。もしこんなこと千聖に知られたら・・・想像もしたくない。まぁ、つぐみちゃんと何気ない・・・何気ないよね?うん、何気ない会話をしていたら三十分が経過した。蓋を空けて、試食をしてみる。うん、丁度良い硬さになっている。

 

「よし、これで塩を二つまみ振りかけて、梅干しを乗せて、完成!」

 

「お疲れ様です!雅さん凄いです!全然初めてには見えなかったですよ!」

 

「これもつぐみちゃんとリサちゃんのお陰だね。うん、僕も一歩ポンコツから成長できたかな?・・・自分で言ってて悲しくなってくるけど」

 

「あはは、それでは、無事に終わったみたいなので、私は帰りますね」

 

「え?もう帰るの?千聖に会っていってくれたらいいのに」

 

「会っていきたいんですけど、あんまりお二人の邪魔もしたくないですからね」

 

「あはは、気を使わせちゃってごめんね。お礼に今度から羽沢珈琲店に通う頻度増やすよ。週五ぐらいに」

 

「増やしすぎじゃないですか!?まぁ、常連さん特典でサービスしますから、いつでも来て下さいね」

 

「うん、本当に今日はありがとうね」

 

そしてつぐみちゃんは僕達に気を使って一足先に帰っていったのだった。外からレオンの鳴き声とつぐみちゃんの悲鳴みたいな声が聞こえた気がしたけど、きっと気のせいだろう。気のせいってことにしておこう。

 

そして僕はお粥を持って千聖の部屋に向かった。バケツも一緒に持とうかと思ったんだけど、流石に両方一度に持つのは厳しかったからとりあえずお粥だけ。バケツはダイニングに置いてきた。

 

「千聖、起きてる?入って大丈夫かな?」

 

扉越しに千聖に声をかける。声が返ってこなければきっとまだ寝ているのだろう。流石に、声が出ないほどひどい風邪だとは千景も言ってなかったし、きっとそうなのだろう。悪化して出なくなりましたとか言わないよね?

 

「えぇ。大丈夫よ」

 

どうやら、その心配は杞憂だったようだ。中から千聖の声が返ってくる。その声を聞き、僕は扉を開け千聖の部屋へと入った。

 

「体調は大丈夫千聖・・・って千聖どうしたの!?」

 

そして、思わぬ光景に思わずお粥を落としてしまいそうになる。部屋に入り視界に飛び込んできたのは、涙を流す千聖の姿だった。

 

「それはこっちのセリフよ。どうかしたの?」

 

「だって千聖、泣いてるじゃないか」

 

「え?」

 

どうやら、千聖は自分が泣いていることに気づいていなかったらしい。目元に手を持って行き、それで初めて自分が泣いていることに気づく千聖。大丈夫だろうか?

 

「大丈夫よ。ちょっと欠伸をした拍子に出ちゃっただけよ」

 

「そうなの?だったらいいんだけど。あんま無理をしないでね?」

 

「えぇ、ありがとう。それにごめんなさい。ご飯を作りに行けなくて」

 

「そんなの気にしないでよ!いつも千聖にはお世話になってるんだから!だから今日はほんの少しの恩返し。じゃん!お粥を作ってきたよ!」

 

「え?雅が?」

 

その僕の言葉に、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をする千聖。まぁ、それも無理ないことだろう。僕自身、未だに自分でお粥を作ったって信じられていない節があるのだから。

 

「これを、雅が?」

 

「えっへん!僕だってやればできるんだよ!」

 

「ま、まぁ味が悪ければ意味ないわよね。味見させていただくわ」

 

「そ、そこまで僕って信用無いかな?」

 

どうやら、よっぽど僕は信用されていないらしい。それも仕方の無い事だと思うけど、流石に少し落ち込んでしまう。ま、これから僕も成長していくし、今に見てるといいさ。そして千聖は、恐る恐るといった様相で、お粥に口を運ぶ。その表情は、直ぐに驚きへと変わった。

 

「・・・おいしい」

 

「でしょ!僕だってやるときはやるんだよ!」

 

なるほど。つぐみちゃんが言ってたこともよくわかる。自分が作った料理を誰かに美味しいって言ってもらえるのって、こんなにも嬉しいことだったなんて。これは確かに、ハマってしまいそうだ。そして千聖は、そのままお粥を黙々と食べ進め、あっという間に完食してしまった。

 

「ふぅ、ごちそうさま」

 

「うん!お粗末様!千聖、何か欲しいものとか無い?今日は日頃お世話になってる恩返しがしたいからね。僕にできることならなんだってするよ!」

 

「ふふっ、ありがとう。そうね、それじゃ、食後のデザートにアサイーボウルが食べたいわ。作ってくれるかしら?」

 

「えー!そんなの僕作れないよ!しょうがないな。買ってくるから待っててよ」

 

「えぇ、ありがとう。ついでに、紅茶もお願いね」

 

「はいはい。もう我が儘なお姫様なんだから」

 

「あら?知らなかったの?女の子はみんな、我が儘な生き物なのよ?」

 

その発言は世の中の女の子を皆敵に回すんじゃないかな?まぁ、今は僕しか聞いてないからいいか。僕は千聖に苦笑いを返しつつ、千聖の部屋を後にした。そして、玄関の扉を開くと、レオンにのしかかられて顔中を舐めまくられてるつぐみちゃんがいた。え?あれからずっとこの状態だったの?

 

「えっと・・・何してるの?」

 

「み、雅さーん、助けて下さい・・・」

 

僕は、レオンをつぐみちゃんから引きはがし、つぐみちゃんに手を貸して立ち上がらせる。その顔は涎まみれになっていた。

 

「うぅ・・・顔中が気持ち悪い・・・」

 

「あはは、ほら、ハンカチ」

 

「ありがとうございます・・・紗夜さんには申し訳無いですけど、ちょっと犬が苦手になりそうでした」

 

なんでだろう?それを聞いて絶望したかのように落ち込む紗夜ちゃんの姿が想像できた。おもしろそうだから、今度会った時につぐみちゃんが言ってたって報告してみようか。いや、後が色々と怖そうだからやめておこう。

 

「よし、それじゃ気分を一新して、羽沢珈琲店に行こうか」

 

「え?雅さんまた家に来るんですか?本当に頻度増えるんですね」

 

「あはは、実は千聖にアサイーボウルと紅茶買ってきてってお願いされちゃってね。またつぐみちゃんのお父さんにお願いできないかな?」

 

「そういうことなら大丈夫ですよ!作っておいてもらえるようにお父さんに連絡しておきますね」

 

「ありがとう」

 

つぐみちゃんはスマホを取り出し、お父さんにメールを打ち出した。アサイーボウルか。作るのって簡単なのかな?簡単そうだったら、今度挑戦してみようかな。今日の出来事を切欠に、僕も本格的に料理に目覚めてしまったかもしれない。

 

「今度リサちゃんに、本格的に料理教えてもらおうかな」

 

「そういうことなら、私もお手伝いしますよ!」

 

「うん、ありがとう」

 

誰かに作った料理を美味しいと言ってもらう。ただ、それだけのことがこんなにも嬉しいだなんて知らなかった。その相手が千聖だったとすると、その喜びも一入(ひとしお)だ。愛する人に褒められる。なんて素敵なことなんだろう。また、千聖に喜んで貰おう。褒めて貰おう。そう決意を込めた、お正月のとある一幕だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その数日後。

 

「雅、ほらお粥作ってきたわよ。それとお客さんよ」

 

「やっほー雅!お見舞いにきたよ!」

 

「はちみつティーを持ってきたわよ。喉に良いから、是非飲むといいわ」

 

「雅さん、大丈夫ですか?あまり無理をしないでくださいね」

 

「うぅっ、リサちゃん、友希那、つぐみちゃん、それに千聖もごめんね」

 

風邪を引いて寝込む僕がいたのだった。本当に散々な年明けだ・・・




どうも、ソウリンです
この作品のヒロインは千聖ちゃんです
この作品のヒロインは千聖ちゃんです(大事なことなので2回言いました
千聖編とは打って変わってのほほんとした日常回
ここまでのほほんとしただけの回も当作品じゃ珍しいんじゃないかな?
またの名を、リサちーのお粥作り教室
これで今日から君もお粥マスターだ!
まぁそれは置いといて、今回、何気に俺の推しトップ5から三人も出てるんですよね
ナンバー2つぐ、ナンバー3千聖、ナンバー4リサちー
ここにさよひなが入ればトップ5完成だ!
まぁ、そんな感じでね、書いてたら楽しくなってきちゃって予定文字数大幅にオーバーしてました(白眼
ま、そういうこともあるよね
気にしない気にしない
それと、今回のサブタイトルはピノキオピーさんのシックシックシックです
今のご時世にはシャレにならないサブタイトル
この作品消されたりしないよね?(汗
皆さんも、コロナには気をつけましょうね
俺は最近、五月のバンドリドームが無事開催されるのかばっかが気になってやばいです
どうなるんでしょうね・・・
そして、ガルパ3周年おめでとうございます!
もう3年経つのかって感じですね!
リリースから毎日欠かさずやってるけど、全然飽きないゲーム
こんなゲーム俺の人生でも初めてなんですよね
基本飽き性なもんで、同じゲームが一年続いたためしがない
それが3年続くって、本当に神ゲーと出会えたんだなって熟々思います
モニカ、RASと新たな仲間が増えて、これからも盛り上がっていくこと間違いなしのガルパ、バンドリ、これからもずっと応援し続けます!
末永くよろしくお願いします!
では、今回はこの辺で
次回は雅編です。オリジナルストーリーです。投稿日は、4月6日午前0時
これから早める気も遅らせる気もないのでよろしくお願いします
ではでは、次回もよろしくお願いします!
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