君が演じ、僕は歌う   作:ソウリン

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第9話です
千聖編です


第9演目 夢であるように

お披露目イベントから3日が経った。

あれから、雅とは一度も顔を合わせていない。

日課の家事も行えていない。

 

そもそも、この3日間私は家から一歩も外に出ていなかった。到底、外に出る気にならない。学校も仕事も病気を理由に休み、Pastel*Palettesとしての活動も行っていない。

彩ちゃんからのメールで知った。どうやら、Pastel*Palettesは解散せず、活動休止状態にするらしい。もっとも、私としてはどちらでもよかった。

どちらにしても、私が犯してしまった過ちは変わらないのだから。

 

雅に関しても、やっぱりPastel*Palettes関係のことでマスコミに日夜質問攻めにされているらしい。これも、彩ちゃんからのメールで知った。

雅は何も教えてくれない。メールは来るのだけれども、全て私を心配する内容ばかり。自分のことは教えてくれない。とは言っても、度々、心配して家まで来てくれる雅を、千景に頼んで帰るようにお願いしてる私が、そんな雅のことを悪く言えるわけがない。

そもそも、今後、雅とどうやって接していくのかの答えもまだ見つけられていない。

 

この3日間、必死で答えを探した。いえ、正確には違う答えを探した。私の中で、一つの答えはすでに出ている。3日前の、あの日にすでに。だけど、その答えだけはいやで、絶対にいやで、違う答えを必死で探した。

 

答えは見つからなかった。

 

いくら探しても、見つからない。最終的には、全部同じ答えに辿り着く。雅の横で、彼の夢を応援し続ける私の姿はどうあがいても想像できなかった。

 

やっぱり、雅の夢のためには、雅とはもうなるべく関わらないべきなのかも知れない。このまま、雅の横にいると、今回みたいなことがまた起こらないとは言い切れない。その、起こりうる未来を回避するためにも、雅から離れるべきなんだと思う。

 

もちろん、私が距離を開けたところで、壁が現れないとは限らない。だけど、私が側にいるよりは、幾分マシだと思う。

 

問題は二つ。一つは雅の家事に関して。現状では、週に1度は訪問して、まとめて行おうかと思っている。その間の食事に関しては、外食などでなんとかしてもらおう。

 

そして、もう一つ。私の想い。距離を開けるというのは、つまりそういうこと。私の想いを封じる必要がある。この3日間、答え探しと一緒に、私の気持ちを抑えるようにがんばってきた。結果は無理だった。いくら、忘れようとしても、無理だった。逆に、会わない日々が続くにつれて、想いは強まる一方。留まるところを知らない。どうやったら抑えられるのか、皆目見当もつかない。

 

気分転換に外に出てみるのもいいかもしれない。何か、思いがけないヒントが見つかるかもしれない。私はそう思い、立ち上がろうとしてバランスを崩してしまう。この3日間、ろくに睡眠も食事も取っていなかったせいだ。少し足下がふらつく。ほどなくして、なんとか立ち上がることに成功した私は、そのまま外へ向かう。

 

「姉さん。どこに行くんです?そんなフラフラじゃ危ないですよ!」

 

玄関まできた私を、千景が呼び止める。本来ならこの時間学校のはずだけど、確か今日は中学校の創立記念日。要するに、休みになっている。

 

「大丈夫よ。すぐそこまで散歩に行くだけだから。心配ないわ」

 

「それでも、そんなにフラついていたら危ないですよ!せめて私もご一緒します」

 

「千景、お願い。少し一人で考える時間が欲しいの。一人で、行かせて」

 

「・・・わかりました。ですが、今日は夕方から雨が降ってくるそうです。早く帰ってきてくださいね」

 

「ええ、ありがとう千景。行ってくるわ」

 

千景にも相当心配をかけているらしい。それも当然かとも思う。彼女のためにも。早く元の私に戻らないといけない。そのためにも、早く答えを見つけ出さないと。

 

千景は夕方から雨が降ると言っていた。現在時刻は13時過ぎ。夕方まではまだ時間がある。それまでに、ヒントが見つかればいいのだけれど。私は、そんな可能性に(すが)る気持ちで、家を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

特に行き先も決めていない私は、早速困っていた。あまり遠出をする気にもならないし、そもそも、電車には乗りたくない。となると、歩いて行ける範囲に絞って移動することになる。適当にふらついていれば、何か見つかるかもしれない。

 

いつもは、何気なく歩いている街。だけど、意識して見てみると、さりげないところに、雅との思い出が刻まれている。

 

例えば、あのお肉屋。北沢精肉店というお店のコロッケは絶品で、いつも学校帰りに雅と買い食いしていた。食べていたコロッケを羨ましそうに見ていた子供がいたので、雅が新しいのを買ってあげていたのも懐かしい思い出。

 

そして、あの喫茶店。羽沢珈琲店というお店は私のお気に入り。あのお店は何を頼んでも美味しいからいつも贔屓にしている。雅ともよく一緒に行った。花音と雅を初めて会わせたのもあのお店だった。あの時の花音の驚きっぷりは今でも忘れられない。見ていて本当に面白かった。

 

さらに、あの楽器屋。江戸川楽器店も私達の思い出の場所。小学校の時に、ギターを弾く雅に憧れて、私も楽器を弾いてみたいと思った。その際に、楽器を購入したのがあのお店だった。雅と試行錯誤して、二人で楽器を選んだのをよく覚えている。最終的に購入したのが、一つのベースだった。

 

選んだ理由は、雅に聞いた説明。雅は、楽器一つ一つの特徴を説明してくれたのだけれど、ベースの時にしてくれた説明を聞いて、私はこれしか無いと思った。ベースは、縁の下の力持ち。周りの楽器を支える、重要な楽器。

楽器を購入した後に、子供ながらに、いつか雅のことも支えてあげるなんて言ったことも覚えている。

その後二人で、思い切り笑ったのも懐かしい。

 

見渡してみれば、この街には本当にたくさんの雅との思い出が詰まっている。思い出巡りをしてみるのも悪くないかもしれない。私はそう思い立つと、早速行動に移した。まずは、あのテレビ局に行ってみよう。私と雅の始まりの場所へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

テレビ局は、歩いて20分ほどの場所にあった。今の私には、その距離も遠く感じたけれど、少しでもヒントになればと思い、足を伸ばした。相変わらず、人の出入りが多い。その中には当然、知っている顔も多い。テレビ等で見た顔。実際に共演したことがある人。お世話になっているテレビ局の関係者の方。私はそんな人たちになるべく見つからないように、遠目にテレビ局を眺めていた。

 

忘れるはずも無い。私と雅が初めて出会った場所。ここから全てが始まった。私の真の人生が始まった場所とも言える。初めて会ったのは、局内にある一つのスタジオだった。そこで撮影されていた番組、その番組で共演した雅のことが気になった私は、偶然にもテレビ局外で雅と遭遇する。

 

あの時私は、本当に運命的なものを感じた。普段は占いだとか、運命だとか、そういった類いのものは一切信じないのだけれど、その時だけは別だった。そして、今でもそれは間違いでは無かったと思っている。よく、結婚する相手のことを運命の人と例える人がいる。それは正しいと、今なら言える。

 

「あら?もしかして千聖ちゃんじゃない?」

 

不意に、後ろから声がかけられた。振り返ると、そこには妙齢の女性の姿があった。その姿は見間違えるはずがない。芸能界の大御所に数えられるほどの人物。今でも、数多くのレギュラー番組で、司会を務めている名司会者。私と雅が出会った番組、あの番組の司会を務めていた方でもある。

 

「お久しぶりじゃない。元気にしてた?」

 

「ご無沙汰しております。お陰様で元気に過ごせております」

 

「あらあら、そんなに畏まらなくてもいいわよ。あなたのことは私、娘みたいに思っているからね」

 

あの番組以来、本当にこの方にはお世話になった。いつも相談に乗ってくださり、困っていることがあるといつも助けてくれた。私も、この方のことは芸能界での親のように思っている。

 

「今日は雅君は一緒じゃないの?」

 

「いつも、一緒にいるわけではありませんから」

 

この方は、いつも雅とのことをよく聞いてくる。まぁ、よく相談していた内容が雅関係のことが多かったから、そこから私達のことがバレてもおかしくないけど。

 

「あらあら、ふて腐れちゃって、その様子だと、喧嘩でもしたかしら?・・・いえ、見たところもっと複雑な事情みたいね。そんなにやつれちゃって、ファンの子が見たら卒倒しちゃうわよ?」

 

「よ、余計なお世話です」

 

芸能界という荒波の中で、頂点に近い位置に長年座り続けるだけあって、この方の洞察力は凄いの一言に尽きる。こと、人の心情を見抜く目に関しては、芸能界でもトップとの呼び声も高い。この方の前では、隠し事なんて不可能だとも言われているほど。おそらく、私の考えていることも既に見当が付いていると思う。

 

「そういえば、懐かしいわね。この局の入り口。あのあたりだったかしら?」

 

「何がでしょうか?」

 

不意に、局前の一点を指さす。その方向を見てみると、非常に見覚えのある地点だった。確かに見覚えがある。だけど、あの時のことは、私と雅しか知らないはず。この方にも言った覚えが無い。

 

「懐かしいわね。あなたと雅君が初めてお話した場所よね。違ったかしら?」

 

「な、なんでそのことを知っているんです?」

 

素直に驚いた。あの時のことを知っている人がいたなんて。あの番組で初めて共演したことを知ってる人は今までも数人いた。だけど、初めて話した時のことを知ってる人は初めてだった。

 

「もちろん、見ていたからに決まってるじゃない。ほんと、青春よね-。若いって羨ましいわ」

 

「そ、そんなことは。でも、まさか見られていたとは驚きました」

 

まさか本当に見てた人がいたとは驚いた。全く当時気づかなかった。いえ、そもそもあの時、私は雅と話すことに夢中で、周りのことなんて全く見えていなかった。誰かに見られていても、気づくわけがなかった。

 

「本当に夢中で、楽しそうにお話してたものね。気づかないのも当然だわ。あの時から、あなた達二人は本当に仲が良かったわよね。あなた達は知らないと思うけど、業界でも有名だったのよ?あなた達の仲の良さ。まぁ、今でも変わらず有名だけれどもね。まるで、長年寄り添い合ったおしどり夫婦みたいだ、って言う連中もいるほどだもの」

 

「お、おお、おしどり夫婦・・・」

 

その言葉を聞いた瞬間、私の顔が真っ赤になったのを自覚できた。そもそも、業界でも私達の仲が有名になってるなんて初耳だった。恥ずかしいけど、少しうれしくもある。だけど、同時に辛くなる。私がここに来たのは雅への想いを捨てるため。そのヒント探し。なのに、余計想いが強まってしまっている。これじゃ本末転倒もいいところ。

 

「あらあら、まだまだ初心(うぶ)ね。そう、あなた達は仲がいい。良すぎるほどにね。そんなあなた達だからこそ、別離は似合わないわ」

 

「え?」

 

そして、そんな時に言われたその一言に、驚愕が隠しきれなかった。まさか、そこまで読まれるなんて。

 

「あなた達の現状は私も知っているわ。だからこそ読めるわよ。あなたの考えなんて。大方、雅君の夢の邪魔をしてしまった。私がこの先も、雅君に親密に関わっていると、また同じように壁になってしまうかもしれない。それだけは絶対にいや。だからこそ、自分の気持ちを押し殺して、雅君から離れる。なんて考えてるんでしょ?」

 

「・・・」

 

私は言葉を失ってしまった。その洞察力はさすがの一言に尽きた。まさか、情報を知っているだけでそこまで看破されるなんて思いも寄らなかった。一種の恐怖すら感じさせる。

 

「仮に、あなたはそれでいいとしましょう。それで、一方的に切られる雅君の気持ちはどうなるのかしら?ちゃんと考えたの?」

 

「・・・雅に取ってもこれが最善の道なはずです。私もちゃんと考えています。そうならないための、違う道だってちゃんと考えています。それでも、これ以外の道が見つからないんです。すみません。長居しました。私はこれで失礼します」

 

そう言って、その場を離れる私。誰の目から見てもわかる。私は逃げた。この場にいると、私は甘い蜜に縋ってしまう。そんな予感がした。だからこそ、逃げた。

 

「まぁ、私の仕事はここまでかしらね。後はしっかりやりなさい」

 

そんな言葉が後ろから聞こえてくる。言われなくても、私は自分が信じる最善を目指して、しっかりとやりきってみせる。次はどこに行こうかと考える。そうだ、あの病院に行ってみよう。あの病院も、私達にとって、重要な思い出の場所だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

その病院は、テレビ局と雅の家のちょうど中間ぐらいにあった。この街では一番大きな総合病院。そこが、私達の思い出の場所。中学一年生の時に、無理をした雅が運び込まれたのがこの病院。あの時は本当にお世話になった。この病院での、あの時の出来事のお陰で、私と雅の距離は急激に近づいた。私と雅との物語を語る上で、絶対に外せない場所。

 

「あれ?もしかして千聖ちゃん?」

 

私は、その言葉にデジャブを感じた。確か、先ほどのテレビ局でも似た場面に遭遇した。見つからないように、離れた位置にいるというのに、どうしてこうも知っている人に見つかるのだろう?今日に限って運が無いみたい。

 

そして、振り返ると案の定知っている顔が合った。看護師さんだった。制服に身を包んだ、綺麗な女性の看護師さんがそこにいた。この人にも本当にお世話になった。雅が運ばれたときに、彼の担当をしてくれたのがこの看護師さんだった。よく気が利いて、患者第一を信条に掲げる、看護師の鑑とも言えるような人。あの時、泣きながら抱き合ってた私達を最初に発見した人でもある。

 

「こんなところでどうしたの?もしかして、うちの病院に来るところだった?」

 

「いえ、たまたま近くを通りかかっただけですので」

 

「そう?それにしては顔色すごく悪いわよ?ちゃんと寝てる?ご飯食べてる?自分の体を大事にしなさいよ?」

 

「ええ、最近忙しかった物ですから。ありがとうございます」

 

私の体調を気にかけて下さる看護師さん。確かに体調は良くない。だけど、そんなこと言ってる場合でも無い。早く答えを見つけないと、

 

「そういえば、雅君は元気?あの子も最近はテレビとかでしか見かけてないから、ちゃんと健康的な生活ができてるか心配だわ」

 

「それは心配ないです。私が保証します」

 

雅の食事を管理してるのは私自身。もちろん、バランスには細心の注意を払っている。栄養面には、文句の付けようもないはず。と、そこまで考えて、ふと気づいた。もし、私が食事を作らなくなったら、どうなるんだろう?雅はおそらく、外食中心の食生活に変わる。果たしてそれが、健康的と言えるのだろうか?いえ、これは今考えても仕方が無いこと。まずは、ちゃんと答えを導き出して、それから考慮しよう。

 

「そう?まぁ、自分の体調管理もしっかりできない子に言われても説得力ないけどね」

 

「そ、それは・・・」

 

「あなたが今大変な状況にあるのは、私もニュースで知ってるわ。もちろん雅君もね。それとね、今朝のニュースでも雅君出てたけど、テレビ越しに見た彼は体調万全そうだったわよ?そんな彼が今のあなたを見たら、一体どう思うかしらね?あなたの体は、あなた一人の物じゃないのよ?ちゃんと周りの人のことも考えなさいよ?」

 

やはり、どこもかしこもニュースに取り上げられているらしい。あれほどのことをしてしまったのだから、当然かとも思う。これも、私の罪が招いた結果。甘んじて受け入れるしかない。

 

「・・・わかっています。ありがとうございます。では、私はそろそろ行きます」

 

「えぇ、後、雅君のことが好きなら、ちゃんと雅君のことも考えてあげなさいよ?」

 

「考えています。最初からずっと。誰よりも。それでは、失礼します」

 

そう言って私はその場を立ち去る。もうそろそろ、雨が降ってきそうな気がする。結局なんの手がかりも見つからなかった。はっきり言ってしまえば、無駄骨だった。これなら、家に引きこもって考えていた方がマシだったかもしれない。

 

「うーん、意味はちょっと違うけど、これも一種の恋は盲目ってことなのかもしれないわね」

 

後ろからそんな声が聞こえた気がするけれど、私は気にせず足を進めた。目指すは我が家。今日はもう帰ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

帰るまでに間に合わなかった。夕方よりもまだ早い時間。すでに、激しい雨が降ってきていた。降ってくるまでに帰るつもりでいた私は、傘を持たずに来ていた。その結果が今の現状。私は、びしょ濡れになりながら、帰路についていた。

 

家までもう少し。後数分で着くという距離まできている。本来なら、数十秒の距離なのだけれど、今の私はゆっくりとした歩調でしか歩けない。体もフラつきながら、それでもなんとか前に進む。歩いて、歩いて、そして止まる。

 

本当は止まっている場合じゃない。私も、本来は止まるつもりなんて無かった。だけど止まった。理由は公園だった。帰り道にあった公園に、私の足は束縛されていた。ただの公園なら、こうはならなかった。だけど、その公園は、私にとって特別な場所だった。そして私は、まるで吸い寄せられるかのように、その公園へと足を向けた。

 

懐かしい。その公園は、あの日から何一つとして変わっていなかった。この公園は私にとって、特別な場所。私の想いに気づいた場所。

 

中学1年生の時、雅の両親が引っ越したあの日、私は雅の家を訪れた。雅と会って、別れの挨拶をしようかと思っていた私。その時に、別れの場に選んだのがこの公園だった。理由は特にない。たまたま、別れの言葉を切り出すタイミングを計って、二人並んで歩いていたときに、たまたま寄っただけ。本当にたまたま寄っただけだった。だけど、それでも、私にとってこの公園は特別な場所となった。

 

別れの言葉を言おうとした私。その言葉を遮って雅が言う。日本に残ることにした、と。その言葉があまりにも嬉しくて、彼に抱きつき、夢中で泣いた。その時に私は、自分の想いに気づいた。それまで私は、雅に抱いていた気持ちが、ただの憧れだと思っていた。だけど違った。この気持ちは愛だった。それに気づいたのが、この場所。

 

今更ながらに思う。この気持ちを捨て去るのに、これ以上に相応しい場所は無いということに。始まりの場で、終焉を向かえる。なんとも、ドラマチックな話。

 

もしかしたら、役者ではなく、脚本家としてもやっていけるかもな、なんて考えて、自嘲(じちょう)するように笑ってしまう。なんとも馬鹿らしい物語だこと。

 

だけど、これがそんな馬鹿らしい物語であってほしいと願わずにはいられない。これが、夢であるようにと、何度願ったことか。

 

だけど、これは現実。その事実が変わることはない。この3日間は、悪い夢なんかではない。全て現実。むしろ、それまでの日々が幸せな夢物語だったのかもしれない。それが、今現実に帰ってきただけ。そう思うと、少しだけ自分の気持ちが楽になったような気がした。

 

そろそろ、想いに決着を付けなければいけない。私は、せめて最後にと、瞳を閉じて、夢のようだったあの日々を想った。毎日が、ただ毎日が幸せだった。雅がいる。それだけで私の心は暖かくなる。でも、その日々も終わり。

 

私は、そっと眼を開き、付けていたネックレスを外し、手に取った。

 

このネックレスは私の誕生日に二人で買った物。アメトリンのネックレス。その石言葉は、『愛情』。私は、このネックレスをこの公園に置いていく。愛を置いていくという気持ちを込めて。

 

雨は未だやむ気配が無い。激しい雨が絶え間なく降り続けている。私はふと、この激しい雨が私の罪も洗い流してくれたら、こんなに悩む必要も無いのにな、なんて考えが頭を過ぎり、そんな都合の良い話があるわけないか、とまた考え直して、また自嘲気味に笑った。

 

そろそろ帰らなければいけない。早く帰らないと、また千景に心配をかけてしまう。雨が降り始めてから、結構な時間が既に過ぎている。私は、決心してネックレスを置こうとしゃがもうとした。

 

すると、不思議な現象が起きた。あんなに激しく降っていた雨が急に止んだ。いえ、止んだわけではない。実際に、まだ周りは激しい雨が降っている。だけど、なぜか、私のいる場所だけは雨が降っていない。

 

何故?疑問に想った私は、上を見上げてみた。そこに答えはあった。傘だった。黒い傘が私に当たる雨を遮っていた。黒は好きな色。彼のことを連想するから。だけど、同時に今は見たくない色でもあった。彼のことを連想するから。でも、何故傘が?一体誰がこの傘を?

 

「こんなとこで何してるの?そんなにびしょ濡れになって、風邪引いちゃうよ?」

 

声は背後から聞こえた。聞き間違えるはずが無いその声。毎日、毎日、飽きることもなく聞いてきたこの中性的な声。振り返るとそこには、やっぱりいた。

 

今、最も、会いたくなかった(会いたかった)彼がそこにいた。

 

 

 

 

 




どうもソウリンです。
8000字オーバーしちゃったよ(白目
今回のサブタイトルは、テイルズオブデスティニーより、DEENさんの夢であるようにです。テイルズといえばこれって言う人は多いでしょうね。自分もそう思います。自分は、RPGのシリーズタイトルでは、テイルズシリーズが1番好きです。
テイルズBGMも主題歌も良い曲多いんですよね。
バンドリでは、TOAのカルマだけがカバーされてますね。他にもカバーして欲しい曲多いんですよね。TOSのStarry Heavensとか、TOSRの二人三脚とか、TOX2のSong 4 uとか、TOBのBURN等々。個人的にカバーして欲しい曲が多いです。
後、BURNと言えばFLOWさんですけど、FLOWさんの曲ってまだ1曲もカバーされてないんですよね。
真っ先にカバーされててもおかしくないアーティストだと思うんですけどね。
もしカバーされるとしたら、最初は何がくるでしょうね?無難にGO!!!あたりですかね?個人的にはCOLORSがいいですね、後、無理でしょうけどメロスを(白目
あ、それと今回の本文ですけど、いつもと違い、割と曲の内容にも関係あったりします。聞いたことが無いって方は、もしよかったらこれを機に聞いて見てください。
後、次話タイトルはDEENさんつながりでは無く、テイルズつながりで付けます。
ヒントは作者が一番好きな作品の曲です(わかんねーよ
後、ここで挙げた曲は使用しません
よかったら予想してみて下さい。当たっても特になにもありません。
テイルズ好きの方ならわかってくれるはず。
では、長くなりましたが、今回はこのへんで。
次話は雅編です。午前0時に投稿します。
ではでは、次回もよろしくお願いします!
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