転スラ~最弱にして最凶の魔王~   作:霖霧露

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※話の展開的に粗が目立つ部分、文章的におかしい部分、後書きの独自解釈・独自設定捕捉を修正しました。話の内容はほとんど変わっていないので、既読の方はスルーして問題ありません。(2019/7/14 14:18)


第二十五話 ユメの中ならぬ霧の中

「漫画が、漫画の続きが読める……。あああああ本当にエース死んでるううううううう!おのれ海軍……。くすん、美人薄命だ……。ああああああ一護の最後の月牙天衝かっこいいいいいいい!死神の力をすべて使った一撃。最後の一撃は、切なく……。うおおおおおおオビト、カカシいいいいいいいい!カカシ先生にこんな悲しい過去が、こんな悲しい因縁が……!涙が出、出ますよ……」

 

 目の前で漫画を読みながら絶叫する優樹にリムルは少し引き気味になりながらも、もし自身が優樹の立場に置かれていたらと考え、「分かるってばよ」の精神に至った。

 

 さて、ジュラ・テンペスト連邦国(魔国)の国王であるリムル・テンペストと自由組合(ギルド)自由組合総帥(グランドマスター)である神楽坂優樹が対面している経緯だが。ざっくばらんに言ってしまえばリムルが色んなコネを使ってアポイントを取ったという話である。

 

 リムルはブルムンドに所属するギド、カバル、エレンの冒険者三人組とは今でも宜しくやっているし、自由組合支部長(ギルドマスター)であるフューズとは色々あって友誼を図れた。そのフューズの伝手で優樹への紹介状を貰ったのである。途中でブルムンド国王と国交を協議したり、冒険者に登録したりなど様々な事があったが割愛。とにかく、リムルはそうして同郷と思わしき人物と接触の機会を設け、現在対面しているのだ。

 

 そして、会う前こそ組織のお偉いさんである人物との対面に緊張していたが、実際会ってみれば何の事はない。優樹はリムルにとって気さくな良い奴だった。()()()()()()()

 

「ん?あれ?リムルさん、ナルトの最終巻は?」

 

「ああ、悪いな。俺も最終巻までは読んでないんだ。その前に転生しちまったからな」

 

「ふむ、そうですか……」

 

 おそらく次が最終巻だっただろう事にリムルは悔しさを湧き起こす。優樹もそれが悔しくてそう述べたと思ったのだが、一番最後の巻を見つめて考え込む優樹の様子にリムルは違和感を覚えた。

 

「どうしたんだ?ナルトで何かあったか?」

 

「いえ、以前リムルさんとは別の異世界人から、「ナルトはヒナタと結婚した」という話を聞きまして。確かにこの巻でもその結果は予想できるのですが、アイツは予測ではなく断言をしていました」

 

「俺より後に転移してきた奴がいたのか?」

 

「おそらくリムルさんが最新です。それに、アイツはそもそも300年前に転移してきたはず……。そもそもナルトどころか漫画なんて文化を知っているのはおかしい……」

 

 当時は冷静ではなく、今でもその人物を思い出せば腹が立って冷静になれない優樹だったが、他人から糸口を得る事でその不可思議な点を優樹は発見できた。

 

「そこって別に不思議がるところかい?元の世界とこの世界が密接してる訳じゃないんだ。時の流れが同期していないのなんておかしくも何ともないだろう?実際僕も未来から転移してきたっぽい異世界人と会ったし。「約束された勝利の剣(エクスカリバー)」って叫びながらビーム出すとかFate以外あり得ないからね」

 

「え?」

 

 唐突に響く第三者の声にリムルは驚いてそちらを向いた。しかし、リムルがその声の主をしっかり視認するより、優樹がその声の主を蹴飛ばし、壁に叩きつける方が早かった。

 

 次に大きく響いたのは、壁が原型なく罅割れるけたたましい音と、叩きつけられた人間が衝撃に耐えられず爆ぜる生々しい音だった。

 

「え!?」

 

 リムルはその悲惨な光景と優樹の顔を交互に拝む。悲惨な光景は今世でも滅多にお目にかかれない大きな血だまりと粉々になった肉片。優樹の顔は冷徹な復讐者のような理性的な怒りの表情。そんな状態がほんの一瞬で出来上がったのだから、リムルの思考は現実に追いつけるはずもない。

 

「もはや『自動操縦(オートパイロット)』の域だね。僕を視界に入れたら殺す条件反射でも身に着けたのかい?神楽坂優樹」

 

「貴様の穢れた口で、僕の名前を呼ぶな」

 

 そんな惨状も一瞬、何事もなかったかのように、何事もなかった一室に元通り。優樹の顔が今も復讐者の表情でなければ、先程の惨状が現実であったかが疑わしく思えてしまうだろう。

 

「いやいや全く、これじゃお話にならないな。僕は争いに来たんじゃないんだよ?少し話し合おうよ。話し合いで解決するのが、人間の理性だろう?」

 

 悠然と椅子に座り、挑発的にも映る不気味な笑顔をカイは浮かべる。優樹は今更振り切った怒りがその程度で煽られる事もなく、次の殺せる機会をただ待ち続けていた。

 

「ちょ、ちょっと待てお前ら!いい加減俺にも分かるように状況説明をしろ、報告・連絡・相談は社会人の基礎だって学んだだろ!それが徹底されてない会社はブラックだぞ!?」

 

 まだ頭が追い付けていないので多少発言がズレているが、とりあえず現状の理解に努めようとリムルは二人を制止する。

 

「ああ、ごめんよリムル。彼にはちょっと嫌われていてね。僕としては仲良くしたいんだけどさ」

 

「僕の恩人を死地に送っておいて、どの口が言う。これから先貴様が何をしようと、僕の怨敵であるのは変わらない、絶対にだ!」

 

「恩人を死地に?どういう事だってばよ?」

 

 片やニコニコ笑みを絶やさず、片や轟々怒りを絶やさぬ様子の中でもリムルは冷静に、こうなった原因に繋がりそうなワードを探り当てる。

 

「人聞きが悪いな。僕は静江ちゃんが良き最期を迎えられる場所を教えただけだよ」

 

「それさえなければ、貴様がかどわかさなければ、シズ先生はまだ存命だったかもしれない!」

 

「おいおい、希望的観測にも程があるんじゃないか?もう末期だったのは君も気付いていただろう。静江ちゃんはどうあれ死ぬ運命だった、本来魔力を静める精霊のせいで魔力が乱れていたんだからね。手の施しようがなかったのは、君が一番分かっていただろう?」

 

「黙れぇ!」

 

 優樹が怒り吠えれば吠える程、カイのその口角は吊り上がっていく。リムルが見ても、彼らの関係はどうしようもなく破綻していた。

 

「さてさて。もう充分君との話し合いは楽しんだし、ここじゃあリムルとの話し合いは無理そうだしね。僕はそろそろお暇するよ。じゃね、バイビ」

 

 カイは手を振ってにこやかに、幻想だったかのように消え去った。優樹はカイの居た場所を睨みつけ、噛み砕かんばかりに歯噛みしている。

 

「お、おい……。大丈夫か?」

 

「ええ、ええ……。大丈夫です。……見苦しいところをお見せしてしまいました」

 

 事態の理解より先にリムルは優樹の様子を気に掛け、気に掛けられた優樹はゆっくりと怒りを鎮静させていった。

 

「なんか、シズさんの事で争っていたみたいだけど。詳しく訊いても良いか?」

 

 優樹が椅子に腰を落ち着けたところで、リムルは先程の争いの理由を詮索する。正直、カイが静江の関係者というのは当人から聞いていたので分かっているが、優樹が静江の関係者かもしれないのは初耳だった。静江は英雄である前に冒険者であったから冒険者の元締めと関係があるのは当然だろうが、さっきの優樹の怒りを見ると、冒険者と冒険者の元締め以上の関係があるようだった。

 

「何処から話したものか……。そうですね、僕とシズ先生の関係から話していきましょうか」

 

 亡き人との記憶を想起する事に、優樹は寂しさと悲しさに苦しめられながら、ゆっくりと息を整える。

 

「僕はこの世界に転移したばかりの時、右も左も分からぬところをシズ先生に助けられました。魔物との戦いに非力な僕を、先生は安全なこの王都まで守り抜いてくれたんです」

 

「そうか……」

 

 多少無理して話してくれている事をリムルは察しながら、優樹がその苦しみを少しでも吐き出せるように、少しでも分かち合えるように相槌だけを打つ。

 

 本来、静江だけではなく時の勇者も助けてくれたのだが。優樹は不要な情報としてそこは省いていた。

 

「僕はシズ先生に、少しでも恩返しがしたいと思いました。僕には戦う力はほとんどありませんが、幸いにして僕は組織を運営する知識と才能がありました。ですから、間接的にはなりますが、彼女の冒険者活動がサポートできるようにと、冒険者組織を再編したんです。その結果が僕の今の肩書、『自由組合総帥(グランドマスター)』です」

 

 リムルは優樹に感心する。彼は知識や才能があるからと組織再編・運営を実行に移した。高々数年で実際にやってのけるのは、知識と才能だけで果たせる事ではない。人一倍努力をしたのだろうと、リムルは恩返しでそこまでやる優樹を称賛していた。

 

「しかし、そんなモノは本当に間接的で、あまりにも迂遠で、酷く微力で……。僕は、シズ先生を救えませんでした……」

 

 悔しさと涙を滲ませ、項垂れる優樹。リムルは促すような追い打ちの如き行為をせず、彼自身が続きを話すまで静かに待ち続ける。

 

「シズ先生は、身体的な欠陥を抱えていました。憑依していた精霊に拒絶反応を示していたんです」

 

「拒絶反応……。炎に対するトラウマか」

 

 リムルはその言葉に思い当たる記憶がある。静江は「炎が嫌い」で、憑依しているのは「炎の精霊」と言っていた。

 

「シズ先生は空襲の経験者。炎がトラウマになっているのは当然でしょう。しかし、トラウマで憑依が上手く行っていないにしても、それが生命力を削る程魔力を乱すなんてあり得ないんですよ」

 

「ま、マジでか……」

 

(告。精霊と憑依者の相性により魔力の操作に何らかの不具合が起きる可能性はあります。しかし、生命に不具合を起こす可能性は非常に低いです)

 

(マジか……)

 

 リムルはちゃっかり『大賢者』に正否を確認し、優樹の論述が正しい事を裏付ける。

 

「僕は炎の精霊に何か仕込まれたのではないかと考え、シズ先生に憑依された時の事を訊ねました。炎の精霊の元の所有者はレオン・クロムウェルという魔王であり、彼がイフリートに憑依を命じたそうですが。その場にカイ・ヤグラも居り、憑依される直前に、彼に不思議な問い掛けをされたとの事です」

 

「ま、まさか……」

 

「炎の精霊に、カイ・ヤグラが何か仕込んだのかもしれない。僕はそう考えました。実際、憑依された直後にレオンとカイが言い争っていたのをシズ先生は記憶していました。もしそれが、何かを仕込んだカイにレオンが怒っていたという事ならば……」

 

「カイ犯人説が濃厚になる……」

 

 驚愕のままリムルが頭に過った思考を呟けば、優樹は確信を持って力強く頷く。

 

「それだけではありません、リムルさん。貴方がシズ先生を食べたと伺っていますから、シズ先生が最期はジュラの大森林で何かしようとしていたのはご存知でしょう。それで、どうやらシズ先生は、カイに促されてジュラの大森林に向かったようなのです、暴走直前の状態で」

 

「……っ」

 

 リムルは固唾を飲んだ。

 

 状況証拠が揃っていく。もはやカイに何らかの企みがあったのは疑いようもない。

 

 リムルの中で、カイという男への印象が揺れ動いていた。

 

 静江からの視点では、彼女を救った善人。優樹からの視点では、彼女を貶めた悪人。リムルとしてはまだカイを図りかねていて、どちらが正しい視点なのか判断が付かない。

 

「リムルさん、カイは貴方も標的にしていた。何を目的としているのかは推測できませんが、暴走直前の人間を送り込む爆弾を仕掛けるような所業をしておいて、貴方と友好的に有ろうとしている。貴方を謀ろうとしているのは明白です」

 

 優樹の言い分も客観的に見れば正しいだろう。しかし、リムルはカイの「良き最期を迎えられる場所を教えた」という言葉を聞き逃していなかった。文面そのままを受け取れば、カイはもうどうしようもない静江にせめてもの手向けを贈った事になる。

 

「リムルさん、カイ・ヤグラを倒しましょう。彼は危険だ。彼の打倒は並大抵の策では無理です。彼は多くの冒険者と戦って生き残っています。それどころか、『勇者』でも倒しきれなかった噂があります。彼を倒すには、多くの協力と、入念な準備が必要です。リムルさん、貴方もどうかご助力の程を」

 

 真摯で真剣で本気の目がリムルを見つめる。優樹がどれ程復讐に執念を燃やしているか、問うまでもないくらいに伝わってきていた。

 

「少し、考えさせてくれ……」

 

 何が正しいのか分からず五里霧中に陥る中、リムルはほぼ放心しながらもカイという男を間違った解釈に当てはめる事を恐れ、決定を保留にした。




1・異世界人の中には召喚が不安定で魔力が制御できておらず、その代償で生命力を削られ続けている者がいる。(独自解釈&独自設定)
2・井沢静江も「1」の状態だった。(独自解釈&独自設定)
3・精霊を憑依させる事で、精霊に魔力の制御を代行させられ、「1」の状態は改善させられる。(独自解釈&独自設定)
4・憑依した精霊と相性が悪い場合、精霊は魔力の制御を十全に行えない。(独自解釈&独自設定)
5・井沢静江は「4」の状態だった。(独自解釈&独自設定)
6・井沢静江に憑依していたイフリートはカイの影響により、(直接的な原因は静江の『当然変異』のせいだが)精霊変異体となり、魔力の状態が十全に行えない状態だった。(独自設定)
7・井沢静江は「4」と「6」の影響で、「1」の状態よりは長命だったが、「3」の状態よりは短命だった。(独自設定)
8・リムルと優樹は「2」と「7」の事を知らないため、全面的にカイが悪いと勘違いしている。(独自設定)


 以上、私氏の独自解釈・独自設定でした。……以前のこの捕捉が後で自分で読んでも意味不明だったために修正しました。……今でも他人には分かりづらい気がする。
 
 今回私が得るべき教訓は、締め切りは余裕を持って守れらないと推敲する時間がない事と、眠い頭で設定を語ると意味不明になる事だ。

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