「ヴェルドラ、お前本当に
リムルは自室にてゴロゴロ本を読んでいる彼の2Pカラー、ヴェルドラのその様子に呆れながら問った。
「出て都合の良い事などないだろう。強いて言うなら、
「ふーーん……」
よく考えた上の不参加だったと主張するヴェルドラではあるが、横になってポテチモドキを食べながら漫画を読んでいては、例え正しい判断だとしてもリムルは納得できなかった。
「盟友として腹を割って話すのであれば。カイ・ヤグラに会いたくなかった」
「えーー……」
情けないヴェルドラの本音に、やっぱりとしょうもない本音を隠しているのを察していたリムルではあるが、予想以上にしょうもなくて肩を落とす。
「リムルよ!奴はな、お前が思っている以上に異常な奴なのだ!」
「僕は異常じゃなくて『
「そうは言ってもな、俺には実感がないんだが。変わったスキルを持っているみたいけど、それだけだろう?」
真面目な話をしながら
「馬鹿め!その変わったスキルも異常なのだ!我の解析系
「そういえば、俺のスキルでも解析できてないな……」
「案外
ヴェルドラとリムルがカイのスキルを訝しむが、そんな中で一人はあっけらかんとしていた。
「単純ってお前……。俺の屋敷を砂に変えたり戻したりする事の何処が単純なんだよ」
「我の前から忽然と消えもした。初見の時の言葉が嘘でなければ、貴様は異世界への跳躍もできると言うではないか」
「げっ、マジで?もうそれチートも良いとこじゃないか?」
「そうでもないんだけどなぁ。万能に見えて制約が多いからさぁ、僕のスキルって」
「ふむ、あえて制約を作る事でスキルを強力にしているのか。漫画でもそういうのがあったな。たしか、『ハンター×ハンター』だったか」
「念能力の制約と誓約か、懐かしいなぁ。ちょっと読み返そうかな」
「『ハンター×ハンター』はグリードアイランド編が好きだったな、僕」
「あーー、あそこら辺がなんか俺もピークだったなぁ」
話が逸れて漫画談義へと流れ込みそうになる中で――
「ところでリムル?」
「ん?」
「ポテチモドキ、お代わりあるかい?」
――本人が空になったお椀を掲げ、リムルとヴェルドラの注目を集める事で――
「き、貴様!カイ・ヤグラ!」
「え、あ、は!?い、いつの間に!?」
――ようやくカイの存在にリムルとヴェルドラは気付いた。
「いやぁまぁ。確認しに来たのと、約束を果たしに来たのさ。ヴェルドラちゃん、お久しぶりー、随分可愛らしくなったねぇ」
「止めい!貴様に可愛いなどと言われたら鳥肌が立つ!」
「酷いなぁ、全く。素直に可愛いのを褒めたのに」
自身の体を抱きしめて震えるヴェルドラに、カイは肩を竦める。
美少女と見間違えるリムルの2Pカラーなので可愛い事に当然なのだが、それはそれとして、不気味さを携えるカイにそう言われると気味が悪くなってしまうのは仕方がない。
「さて、再会の約束は果たしたし。確認の方を済ませないと。ぶっちゃけさ、リムル。ルベリオスの対応はどうするの?」
「ああ、あそこはもう暴走した責任者吊ったって言うしさ。俺の国を間接的に攻めたのは水に流す事にした。それで、国交を結ぶための文書を送って、今は返事待ちだな」
「教えちゃうけどね、日向ちゃんとその配下で攻めてくるよ?」
「……」
当然驚愕の真実をカイからぶちまけられた訳だが、リムルはなんとなくそんな気がしていた。それでも悪い予感だったので、それが的中した事に頭痛がしてきたのだった。
「今度は日向ちゃんが暴走したって感じでケリを付けるんじゃない?」
「……まぁ、それ相応の対応はするさ」
元人間の魔王として、リムルは人間の悪性を戒めるつもりでいる。ならば、今回の下っ端を使い潰すような悪性も、戒めなくてはならない。罪悪感があるが、それでも自身の決めた事であるという義務感と共に飲み込んだ。
「ここでの用事は済んだ。次に行かないとね」
「なんか忙しいのか?飯食ってけば良いのに。次ってどこに用事があるんだよ」
「怖い提案をするな、リムル!」
「それは、とてもそそられる提案だけど。ちょっと忙しくてね」
リムルは新しい日本食モドキの試食を頼もうとしたが、カイは魅力的な提案ながらも拒否した。二人ともヴェルドラについてはとり合わない。
「次は、そう。――」
◇◇◇
「――日向ちゃんに用事があるんだ」
ジュラ・テンペストへ進軍する日向率いる聖騎士団、彼らがジュラ・テンペストまで後一日かかるだろう距離で野営する場所に、カイ・ヤグラは現れた。
「戦闘態勢!」
日向の判断はとにかく早く、彼女の下で訓練してきた聖騎士たちも行動が早い。全員がカイを囲むように並び、剣を構えていた。
「うん、なんだかちょっと前もこんな感じだったね。あれはいつの事だっけ?「あれは確か36万……いや、1万4千年前だったか」、なんてね」
「何の用かしら、カイ・ヤグラ」
カイの言葉には受け応えず、日向はカイを睨みつける。
「短気は損気だよ?もっと気長に行こうじゃないか」
「私は暇ではないの」
「ま、そうだよね。取り逃した魔物の国の主に、暴風龍ヴェルドラも居るんだ。そりゃ焦っちゃうよね」
日向は歯噛みした。何処から情報が漏れたのか、この魔王には知られている。少数精鋭での電撃戦だというのに、そんな事はお構いなしにカイは全てを知っていた。
「こっちの事情を分かってるならさっさと消えてくれない?じゃないと殺すわよ」
「あ、そう。今構えてるのって聖霊武装っていう奴だっけ?なんかルベリオスで大事にしまわれてた大層な武装らしいけど。それを持ってるから強気なのかな?それとも僕に静江ちゃんとの約束があるから?はたまたこの前の戦いで僕には大した攻撃がないと分かったから?」
「そのすべt―――」
「甘ぇよ」
日向が言葉を言い切る直前、日向と聖騎士たちに釘が打ち付けられる。脳と心臓に一本ずつ。彼女らの鎧や対魔法の備えを無視して貫かれた。
「僕が殺そうと思えば、いつだって君たちを殺せるんだ。自身で作った勝敗条件も静江ちゃんとの約束も世界の都合も何もかも考えなければさ」
カイは転がった幾つもの死体を不気味に見下ろす。
「ま!
「……はっ」
釘が打ち付けられた現実が幻想だったかのように消え、日向たちは息を吹き返した。
皆が釘の打ち付けられた場所を手探り、そこに釘がない事を自覚する。ただ、生々しい死の感覚だけが体に刻み付けられており、流れる冷や汗が止まらない。
「
「それでも……」
カイの放つ不気味さに気圧されそうになりながら、しかし日向は立ち上がって武器をカイへと向ける。
「それでも、魔物を許してはいけないの……。教義は絶対よ」
日向の瞳には、微かな濁りがあった。彼女自身に、不純物が混ざっていたのだ。
「なるほど。彼はそういう洗脳をしたのか」
カイは小さく独白し、口の端を吊り上げる。やっぱり彼は、神楽坂優樹は、手段を選ばない男であった事に小さな同族意識が芽生えていた。同時に
「ま、それは後々。ていうか僕にはもうどうでも良い事だね」
独白を切り上げ、カイはしっかりと日向を見据える。
「一つ訊きたいんだけど、どうして魔物を許してはいけないんだい?」
「……え?」
日向は虚を突かれた。当たり前の事としてきて、疑いもしなかったモノ。
魔物を許してはいけない理由、教義として何故そう決められているかのという理由。日向は答えられなかった。
「例えば、何処の誰かも知らないそこら辺の人間が魔物の住処で暴れたとして。被害を受けて魔物たちが、「人間は我々を傷付ける危険な存在だから」と滅ぼしにかかってきたら。納得できるかい?」
「な、納得できるはずがないわ」
「君たちがやろうとしているのは、人間のところを魔物に、魔物のところを人間に置き換えた事だよ?」
日向だけではなく、そこに居る聖騎士全員がはっとさせられた。
「君たちが納得できないんじゃ、魔物たちが納得するはずがない」
それはあまりにも明確な真実だ。自身が納得できない事を、諦めはするかもしれないが、他人が納得するはずがない。
種族が違うから。肌の色が違うから。人種が違うから。生まれた場所が違うから。性別が違うから。
そんな言い訳で通していた理不尽を、カイは暴き立てた。
カイの弁舌に、誰も口を挿めない。人の悪性を暴き出すカイの言葉に、誰もが呆然とした。
「僕の言葉を真に受けるも聞き流すも君たち次第。聞き流すのなんてみんなやってる事だから恥ずかしくないよ?自身に都合の悪い事は忘れる。それが人間の特権だからね」
最後まで心を抉りながら、カイはそう弁舌を締めくくる。
「じゃあ、僕の用事は済んだから。じゃね、バイビ」
にこやかに手を振って、今までそこに居たのが幻想だったかのようにカイは消え失せた。
聖騎士たちはカイが消え失せてからも数秒、身動きが取れなかった。
「……魔物討つべし。教義は、絶対よ」
ようやく口を開いた日向の一言。そこにはやはり、濁りが混じっている。その一言を聞いた聖騎士たちも、そう感じ取れた。
キメラアント編も嫌いではないけど、当時はジャンプ買って読んでたせいか、グリードアイランド編辺りが一番楽しかったなぁと。まぁ、「ゴンさん」とか「ボ」とかは大好きですが。