ぐだぐだと前書きを書いてもしょうがないので本編をどうぞ
俺は何とか少女を落ち着かせてとりあえずお互いの素性について話すことにした。
「それじゃあまずは俺から。俺は衛宮士郎。まず君には訂正しないといけないことがある。俺は英霊じゃないんだ。」
「嘘でしょ?だってあなたからは魔術師のそれとは違う英霊の規格に当てはめられた個体の筈よ。同じ英霊………そのもどきである私でもそれはわかるわ。」
「もどき?」
「いえ、これは後で話すわ。じゃあ英霊ではない貴方は何者なの?」
「そうは言われてもな。説明するのは難しいんだが簡単に説明すると、俺は英霊から力をもらった人間なんだ。」
「じゃあ本当に貴方は英霊じゃないの?」
「ああ、残念ながら違う」
俺がそう言うと少女は明らかに顔に落胆の色が出た。
「じゃあもう貴方に用は無いわ。英霊の力を持った人間ごときにこの状況が変えられるとは思わないし、私はもう出て行くから。」
少女はもう俺には目もくれずに小屋の入口へと向かって行く。だが、少女の腕がそのドアを開くことはない。少女は目線を入り口にある小さな窓から外を見る体勢から動くことができないでいた。
「どうしたんだ?」
俺が少女に話しかけるために立ち上がろうとすると、
「駄目っ。動かないで。」
少女は小声で俺を制した。俺はその言葉に従い動きを止める。その時彼女が何を見ていたのかを知った。ワイバーンだ。
「もうこんなところにまで………っ」
少女の目には村の人たちから感じられる恐怖や俺が感じた驚きとは確かに異なる敵意の炎が宿っていた。
「なあ、よかったら俺に事情を話してくれないか。確かに俺は英霊の紛い物だ。だけどそんな俺でもほんの少しだけでも君の助けになることができるかもしれないだろ?」
少女は俺の方を振り向くと少し考えるように俯き、
「そうねあんたみたいなのでも盾ぐらいにはなるかもしれないし。」
そう言って俺の方へと近づいて来た。
「それじゃあ自己紹介の続きといきましょうか。貴方は竜の聖女の噂を知ってるわよね?」
それはさっきカトリーヌに聞いた言葉だ。ごくわずかに聞いただけだったけどそんなに早くは忘れない。
俺は覚えていることを頷くことで返答した。
「なら話が早いわ。その竜の聖女っていうのは私のことよ。」
「どういうことだ?竜の聖女っていうからにはあのワイバーンを統率しているんじゃないのか?」
「色々事情があってね?私からはその資格が剥奪されたのよ。」
「ちょっと待ってくれ。竜の聖女ってのは俺が聞いた話から考えるとジャンヌダルクなんだけど君がそうなのか?」
俺がそう聞くと少女は首を横に振った。
「私はジャンヌダルクであってジャンヌダルクではないもの用は偽物なのよ私は…。私はとある男の願いから生み出されたの。」
少女は淡々と機械的に自分の身の上を話し始めた。最初にここに現れた時には自分を復活したジャンヌダルク本人だと思っていたこと。彼女を生み出した男、ジルとともに聖杯を使って邪竜ファブニールを呼び出しフランスにワイバーン等の竜種を呼び出したこと。
そして自分を貶めた人達に復讐して回っていたこと。
「でも、ある時突然1人の男が現れたのよ。そいつはジルのやり方を手緩いと批判して、『私ならもっと聖杯を効率的に使える』って言ってね。私のお腹に手を突っ込んだわ。」
「なっ⁈」
驚愕に俺はジャンヌの腹のあたりに目を走らせた。だがそこには簡素な衣服があるだけで外傷は確認できない。
「普通なら私はその瞬間に霊核を砕かれておさらばするはずだった。だけどそうはならなかったのよ。だって私はジャンヌダルクどころかサーヴァントですらなかったのだもの。」
ジャンヌは自身の腹……おそらくはその男に手を入れられた辺りを触りながら話を続ける。
「そこから出て来たのは黄金の杯だったわ。どんな願いも叶える万能の願望器である聖杯。それを取り出された瞬間私の意識に激しいノイズが走ったわ。多分あれは私の消滅の瞬間だったんだと思う。そしてそれと同時に私は知った。自分が英霊召喚術式によって召喚されたジャンヌダルクではなくだだの偽物だったってことをね。」
「でも、今君はここにいる」
「そう。私の中から聖杯が抜かれたのを見たジルが激怒してそいつに襲いかかったのよ。そいつは私を盾にしながらジルと戦った。ジルは何とか私を奪い返してボロボロの体で私と逃げ出した。私の力は半分以上は持っていかれたけどね。ジルは『ここは食い止めておくから先に行ってくれ』って言って私を逃してくれた。ワイバーンに乗って逃げようとしたけれど、私の言うことは聞かなくなってて逆に襲われたわ。そしてどこまで走ったのかは覚えてないほど走っていつの間にか気絶してここに運び込まれて今の今まで気絶してたってわけ。」
俺は目の前の少女の壮絶な話に思わず息を飲んだ。じゃあ今目の前にあるこの子はまだ生まれて間もない赤ン坊のようなものだ。かつての世界で俺と切嗣が初めて美遊を保護した時よりもはるかに幼い。まだこの子は何も世界のことを知らないんだ。聖杯からの情報はあったとしても実際に体験するのとは全く違うことだ。
もしかしたら聖杯そのものだった美遊と彼女を重ねているのかもしれない。こんなものはかつての世界の罪滅ぼしのつもりはないけれど。
だけど身一つでここまで来た彼女を俺は守りたい。
正義の味方としてではなく、だだの衛宮士郎として俺は彼女を守りたい。
「俺は君に着いて行くよ。」
「はっ?」
「足手まといにはなるつもりはない。もし君が俺を切り捨てることで助かるなら俺を見捨ててくれて構わない。」
「ふん。勝手にすれば………どいつもこいつもお人好し過ぎて気持ち悪いわ」
最後の一言もしっかりと聞こえていたが俺は何も言い返さなかった。
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