美遊兄と行く人理修復   作:Lychee

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以前から読んでくださっていた皆さまお久しぶりです。
時間が取れたので久しぶりに更新しました。
短い内容ですが前回からの続きになります。


虚妄の怪物

俺の黒鍵は確かにヴラドの胸に突き刺さった。確かに彼は胸を押さえて苦しそうにもがいているがそれだけだ。

彼が消滅するような兆候は見られない。

「その程度で吸血鬼などという虚妄に取り憑かれた余を倒せると余ったか?だとしたらあまりにも残念だ。そんなものではこの屈辱を!汚名を!この小さな世界ですら晴らせると思うなあ!」

ヴラドの目は大きく見開かれ充血し、ヴラドの声はこれまでのどんな声よりも怒気をまとっていた。

その姿はまるで失った血を求め彷徨う悪鬼…吸血鬼の姿そのものだった。

 

明らかにさっきの黒鍵はヴラドにダメージを与えた。でも致命傷には至らないっていうのか⁈俺に残された手はあとわずか。

俺は左手につけられた赤の腕輪を見やる。

燃える冬木の地で俺であって俺ではない者に託されたこの腕輪。そしてその使い方をカルデアにいる彼に教えてもらった奥の手としての使用方法。

だが、今それを使ってしまってもいいのか。

ヴラドは己の胸に突き刺さった刃をゆっくりと引き抜いていく。

剣が引き抜かれるのと同時に血が吹き出しその血は槍となり彼の周囲に顕現する。

「ちょっと!さっきの剣はもうないの⁈」

「もうない………っ」

前の世界でエインズワースの結界破りに使えないと知って捨ててしまったことを悔やまれるがそれも後の祭り。

今ある装備でこの状況を打破するしかない。

やっぱり使うしかないのか………

 

「焼け石に水かもしれないけど……」

そう言って彼女は右手に旗を持ち左手に炎を出現させる。

ヴラドが自分の胸から黒鍵を引き抜いたその時だった。

「サーヴァントならサーヴァントらしく誇りを持ちなさい。ヴラド三世。」

凛とした力強い声が響く。声の主は静かに雑木林の中から出てきた。修道女のような頭巾をかぶり白い衣装を身にまとい、豊満な胸を持っていてもなお静粛な雰囲気をまとっている。その手には十字を象った杖を持っている。青い髪に力強い目。だが髪や衣服に木や草を付属させて出てきた。

「あなたは本来ならばその様な悪鬼を身に纏うような人物ではない。私が直接見聞きしたわけではありませんが、貴方の在り方はかつてと同じであろうとしている。」

彼女がその手をあげるたびにハラハラと雑草が落ちる。

「だからこそ貴方はその力に負けてはいけない。狂化されて尚保つその自我を手放してはいけない。」

彼女が言葉を紡ぐたびに髪から葉が落ちていく。

「だから…」

よくみると急いで直したかのように所々彼女の髪がはね、本来の方向とはあらぬ方へと流れている。

「……だから…」

そしてその背中には蜘蛛の糸が垂れ下がっていた。

「ああもう!鬱陶しいわね。タラスクが着地を失敗してあんな森の中に不時着するからこんなになっちゃったじゃないの!」

その女性は自分が先ほど出てきた場所を睨みつけた。

突然の登場に俺とジャンヌは行動を停止しヴラドでさえ黒鍵を持ったまま固まってしまっている。

「ええっと、貴方は?」

たまらず俺が彼女に声を掛けると、

「ああ?…コホン。私はマルタ。ただのマルタです。」

と最初の言葉に剣呑な気配を感じたが、すぐに咳払いをし、先ほどのことは何事もなかったかのように笑顔を振りまいた。

 




次の更新は11月中に必ずやしてみせるので今まで見てくださったかたも今回が初めての方も楽しんでいただけると幸いです。
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