美遊兄と行く人理修復   作:Lychee

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当初設定していた期限を過ぎてしまい、申し訳ありません。
なるべく早く更新したいとは思っておりますので応援の方よろしくお願いします。


彼の敗因

ヴラドの顔面にマルタの拳が突き刺さる。ヴラドはその勢いのまま後方へと吹き飛ばされ、やがて地面に倒れた。

「ざっとこんなもんよ。ほら、あんた達も行くわよ」

ヴラドを吹き飛ばしたマルタはそう言うと倒れたヴラドの元へと歩き出した。

「あんたその籠手はどっから出したのよ。」

「籠手?なんの話かしら。私はずっと杖で戦っていたでしょう?」

「何言ってんのよ………って⁈」

ジャンヌと一緒にマルタの手を見るとそこに籠手はなく最初に持っていた杖が握られていた。

もう一度マルタを見るとそこには目力だけで威圧してくるマルタの姿があった。あれも投影だとしたらと思って少し聞いてみたかったんだけどあの様子じゃあ聞かない方がよさそうだな。

「私のことは後で教えるから、まずは彼を送りに行くわよ」

マルタに俺とジャンヌはついて行く。

 

ヴラドは倒れてても動かせないようだ。というよりも彼の足は先ほどの再生が嘘のように綺麗になくなり火の粉のようなものが舞っていた。

「狂化に飲まれた哀れな英霊の末路なぞこのようなものか。なあライダー」

「そうね、ランサー。あなたが地に倒れ私があなたを見下ろしている理由はきっとそれも理由の一つなのでしょう。でもね、あなたが負けた最大の理由はあなたが忌避している宝具。ドラキュラの伝承の宝具を使ってしまったからよ。あなたは私に負けたんじゃない。乗り越えなければならない汚名にこそ負けてしまったの」

「そうか……そうだった。我が願いはどこぞの作家によって汚された我が地位を明白なものにすることであった。当初の目的すら忘れてしまう者に願いを叶える資格などないということか……」

ヴラドは今にも消えかかりそうな体を俺の方に向ける。

「少年よ、そなたの戦い見事であった。絶望に屈せぬその心にヴラドの名において経緯を表そう。」

「いや、そんなことはない。俺の心が折れそうな時に彼女がいてくれなかったら今頃どうなっていたことか」

「それでもだ。その気高い魂をゆめゆめ忘れるなよ。そしてライダー。今の余にならば分かるそなたは……」

「それ以上は言わなくていいわ。自分のことは自分が一番わかっているから」

「そうか、ならば余計な口出しはせぬようにしよう。そなたらがこれから戦うのは一騎当千、万夫不当の英雄たちだ。だが恐れることはない。心に自分の信じる芯がある限りそなたらの道は照らされていよう。それではさらばだ。少年、ライダー………そして龍の魔女よ」

龍の魔女?なんだそれは?

ヴラドはそう言うと光の粒となって消えていった

 

 

 

 

ヴラドを送った俺たちは岩陰に隠れていたカトリーヌを回収して村の方へと歩き出していた。

「あなた達、吸血鬼に聖別された装備なしで挑むなんて普通は考えられないわ。それもサーヴァントじゃないただの人の身で挑むなんて死ににいくようなものよ。」

「すまない。」

「ああいう時は逃げるのが正解。まあ、もしあの状態で逃げるようだったら恐らく私はここにいなかったでしょうけどね」

そう言ってマルタは自分が出てきた森の方を指差した。そこにいたのはもともとこの村に住んでいたであろう住人達だった。その中には先程ワイバーンに掴まれていた女の子の姿もあった。

その中から老齢の女性が若い男性に肩を貸してもらった状態で俺たちの前に立った。

「彼らがあなたたちが戦っているって教えてくれたのよ」

俺は村人の前に一歩足を踏み出した。

「そうだったのか。助けを呼んできてくれてありがとう」

「お礼を言うのはこちらの方でございます。この村のために戦ってくれてありがとうよ。あんた達のおかげで怪我人がいないわけじゃないが最低限の人数で済んだ」

そう言ってお婆さんは頭を下げた。

「いや、頭をあげてください。俺たちはやりたくてやっただけなんだから」

ちらりと後ろに立っているジャンヌを見ると、ジャンヌは目を点にしたような顔でお婆さんを見ていた。その顔がおかしくて俺は少し顔がにやけてしまった。それを見たジャンヌはさっき会った時の仏頂面に戻ってしまった。

俺はカトリーヌに連れられて村人たちに紹介された。何故かジャンヌは用があると言って、マルタとどこかに行ってしまったけれど。

俺はカトリーヌや村人たちとひと時の休息についた。

彼らは思い思いのことを俺に話してくれた。この村では麦がよく取れて備蓄庫にはあまり被害がなくてよかったとか私の娘と結婚してくれないかなんて話まで持ち上がってしまった。

そして少し時間が経ってからのことだった。先ほどのお婆さんが俺に疑問を一つぶつけてきた。

「ところでそのおかしな身なり、あんた達はもしかして魔術師ってやつかい?」

「魔術師って言ってもそこまで熟達したことができるわけではないですけど。」

俺がそう言うとお婆さんは先ほどまでの賑やかな雰囲気を一変させて、

「じゃあオルレアンであの娘が……ジャンヌダルクが生き返ったって噂は………あの娘が生きているって噂は本当なのかい⁈」

お婆さんの目は不安と期待に揺れ必死に俺に訴えかけていた。




読んでいただきありがとうございます。
あまり時間が取れず感想を返す時間がないのですが、きちんと読ませていただいているのでこれからもよろしくお願いします。
評価・感想お待ちしております。

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